書きの種(エッセイ日記)

佐藤遼空

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『スカイハイ』『ネメシス』を読んだが…

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『フェイスレス 警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結』(沢村鐡著 中公文庫)の続編の二冊。前作では、人の顔を覚えることができないという相貌失認の大学講師が、その学校で起きた爆破事件の犯人を目撃してるんだけど、覚えてない……という特殊な設定で始まる事件だった。

一作目からドローンが特殊音波兵器で警察庁を襲撃したりして、かなり派手な展開ではあったのだが、二作目はさらに派手さを増した。スカイツリーがモデルと思しきタワーに2500人が閉じ込められ、JR、地下鉄、テレビ局や地域がハッキングされて電力が止まり、東京がハイジャックされるという前代未聞の事件が起きる。

ハッキングしたのは世界的なハッカーなのだが、このハッカーが実は相貌失認の講師と知人なのだ。そういう形で前作とつながってくるのだが、事件は前作でハッカーの名をかたって謎のレーザー兵器を使った中国筋の勢力との三つどもえの様相をなす。

この東京の危機という大事態に、警察庁長官、警視総監、総理大臣補佐官など国の中枢にいる人物たちが集合して、打開策を練るという展開で、ある意味ゴジラが襲来したくらいの危機対応体制なのが、話の大きくして中々よかった。展開もスピーディーで実に面白かった。

しかしこれに続く三巻では、そのハッカーが狙っていた世界的武器商人が黒幕として登場し、この男を巡る攻防が事態を動かす。しかし、どういう訳か相貌失認の講師とハッカーとの間で繰り広げられる哲学談義が差しはさまれ、スピード感は落ちた。が、これがまた僕にはなかなか面白かった。

しかしアマゾンレビューなんかを読むと、この談議に不満か、あるいは物足りない、という両極な意見が散見されバランスって難しいんだな、と思った。僕は面白いと思ったけど、ぶっちゃけアメリカの軍産複合体を相手にするようなもので、それを一人の人間に代表させるという方法はどうかな、と思った。

で、この三部作で終わるかと思ったら――終らんじゃん! 四巻があるじゃん! しかし最後に、およそ主役なのに何もしてなかったヒロインがやっと主役になる。……ただし、闇落ちで。さて、どうなるのか楽しみだ。
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