え?公爵令嬢さまと婚約破棄して私と婚約したい?いやいや、ありえないから

やノゆ

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婚約破棄編

第一話・いやいやいや、ただのストーカーが何言ってんの!?

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ーーーふわりとなびく蜂蜜色の髪は、見た目の通り蜂蜜の香りがすると云う。硝子の様に透き通った瞳には、森の妖精が閉じ込められているとか何とか。白く透き通った肌は、その清い心を体現していて、華奢な体の究極美は、天使の生まれ変わりだからなのだ、などと宣う者もいる。
そして、その容姿以上に注目されたのが、圧倒的なまでの魔法学に関しての優秀さであった。特に、光属性の魔法をいとも容易く扱う姿は、聖女のようだと比喩されていた。

子爵令嬢エミリア・クロケットは、学院内でそんな噂がたっている生徒であった。

優しく親しみやすい人柄から、男女共に人望がある令嬢で、その美しい容姿も相まってファンクラブなるものがある程であった。


ーーーだからこそ、今の状況に、ついていけていない者が、ほとんどである。

「スカーレット・フォンディナム公爵令嬢!貴様とは、この場を持って婚約破棄させていただく!そして、私はエミリア・クロケット子爵令嬢と婚約する。」

一瞬、呼吸音が煩いと感じてしまうほど、静寂が訪れた。
隅の方でジュースを飲んでいたエミリアは、思わず吹き出しそうになる。
これでも子爵令嬢、表情こそ変わらないように見えなーーーいや、見える。驚きで固まった顔と身体は、彼女の容姿が優れていなかったら大層滑稽に見えたことだろう。両親の遺伝子に感謝するべきである。

「…殿下、どういうことですの…!?あなたの婚約者は、私ですわよ」
「知っているんだぞ、お前がエミリアに度重なる嫌がらせをしていたことは!」

確かに、スカーレット嬢に嫌がらせらしきものを何度も受けた覚えがある、とエミリアは思い出す。
だが、なぜそれを殿下が存じ上げており、しかも自分を婚約者に、などと考えるのだ。

「そっ、それは…!証拠はありますの!?」
「証拠はないが、私がこの目で見たのだ!毎日エミリアと共にいたからな!」

いやストーカーじゃねえか!とエミリアは心内で口汚くツッコんだ。
だが、第2王子と公爵令嬢の間に、子爵令嬢であるエミリアが割って入れるはずもなく、言い争いはヒートアップしていく一方。


エミリアは、深い深いため息を吐きそうになったが、ジュースと共に飲み込んだ。
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