え?公爵令嬢さまと婚約破棄して私と婚約したい?いやいや、ありえないから

やノゆ

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婚約破棄編

第4話・国王陛下のおな〜〜り〜

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ーーーエミリアは、泣きそうになりながらも頭を下げ、礼を取る。
陛下よりも身を高くしたり、視線や目線を高くするのは不敬に当たる。

「みな、おもてをあげよ。」

ゆっくりと、エミリアは顔を上げた。
国王陛下が、ゆっくりとこちらへ向かってくる。

美しく歳を重ねた正妃様も、傍らに寄り添いながら優雅に赤絨毯の上を歩いていた。
ああ、終わったーーー。
エミリアは瞬時にそう悟り、涙を引っ込めすっと真顔に戻った。

人間、許容できない辛いことがあれば、自然と表情など浮かばないものだと、そんなくだらないことを頭の中に浮かべては水泡のように消えていく。

「スカーレット嬢、どうしたのだ。」

国王陛下が、優しげに尋ねる。

「ああっ、あの、あの女が殿下を誑かしたのです!わたくしと、婚約破棄をするとおっしゃって…っ、」

それ以上言葉にならない、とでも言わんばかりに大粒の涙をボロボロこぼし、国王陛下に訴える。
まずいまずいまずい、とエミリアは思案する。
違うと否定したくても、子爵令嬢であるエミリアが公爵令嬢で一応まだ第2王子の婚約者であるスカーレットと、この国の頂点である尊きお方の間に割って入るなど出来るはずもない。

「人聞きの悪いことを言うな、私とエミリアが会話したのは今日が初めてだぞ?そもそも、婚約破棄はお前が嫌いなのと、私がエミリアを愛していたから成したものだ。」

エミリアは、背に冷や汗をかきながら場を見守る。

というか、国王がスカーレットに妙に優しげで気になるが、まあ、公爵令嬢だし。当たり前なのかな。と現実逃避に近い事柄をぐるぐる考えては出そうになったため息を飲み込んだ。

「ふむ、エミリア嬢、発言を許可しよう」
「ありがたきことに御座います。」

そう言って礼をし、すすすと伸びてくるアルベルトの手を躱しながら、エミリアは口を開く。

「事の始まりは、この会場での殿下からフォンディナム公爵令嬢様に対する婚約破棄宣言ですわ。フォンディナム公爵令嬢様が理由を尋ねると、私へのいやがーーいえ、ちょっかいと、私への好意を理由としたものでした。勿論、フォンディナム公爵令嬢様は論しましたが殿下は発言を撤回することなく、私も傍にと呼ばれました。」

国王は、静かにエミリアの話に耳を傾けていた。
傍らにいる正妃は、微笑むだけでなんら反応はない。

「そこで、私は初会話かつ初対面に近い形であることを告げましたが、殿下もそれはすでに承知であったようで…。私へのちょっかいの理由を殿下が尋ねると、フォンディナム公爵令嬢様は、自身が聖女の生まれ変わりであることと、弟君のことについてお答えになりました。そこからは、私が殿下への発言の撤回を促す会話と、殿下の、私への了承を求める会話が続きました。」

少々控えめに説明をしたエミリアだが、アルベルトが顔をしかめながら発言を訂正していく。

「ちょっかいではない、嫌がらせだ。机の上に葬花を置いたり、履物に針を仕込んだり、靴箱に虫や小動物の死骸を入れたり、」
「ーーーそうか。」

陛下は静かに頷くと、視線を私へと這わせた。

「だが、公爵令嬢であるスカーレット嬢が子爵令嬢のそなたにその程度のことをしても、不問になるのは承知かね?」

内心、だよね~~と軽いノリで国王に同意しつつ、エミリアはゆったりと頷いた。

「もちろんです、陛下。殿下の婚約者の座も、子爵令嬢である私には到底縁のない話でございます。」


その時、スカーレットが口を開いた。
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