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婚約破棄編
第14話・学園に通うにあたっての問題点
しおりを挟むーーーエミリアは、お花大好き!殺意たっぷり!あなたの背後に忍び寄るこの僕、カイベル・フォンディナムさ!とカイベルが言っているのを脳内で再生しながら、冷たい紅茶をちびちびと飲んでいた。
だってこの紅茶高いんだもの。美味しいものは味わって食べたい派なのである。
ーーーそんなことはどうでもいいのだ、問題は、王妃の問題も問題、大問題発言のことである。
「良いですか、エミリア・クロケット。あなたの通う学園は、以前通っていた貴族だけの魔法学園ではなく、全国民のための魔法学園なの。つまり、平民達もたくさんいるわ。そこで、あなたには平民のふりをして学園に入学してほしいの。ついでに、その、言いづらいのだけれど、男の子のフリをしてくれないかしら。」
エミリアは、ひっくり返りそうになった。
典型的なずでーんを王妃の前で披露するわけにもいかないのでなんとか耐えたが、エミリアの顔は大層おかしな事になっている。
「え、と、あの、どういうことでしょうか…?」
「…あなた、聖女っていうの、あれ本当なんでしょう?少し魔法を齧ってたらわかるわ、あなたの周り、まるで月明かりのように優しく輝いていているもの。だからね、その明かりに惹かれるものは、あまりにも多いの。もちろん、明かりだけで惹かれてるわけじゃない。あなたのその美しい顔に身体、愛しい性格、いろいろあると思うけれど、老若男女問わずとても危険だわ。」
そう言うと、紅茶を優雅に口に持っていき、また話し始めた。
「それとね、そういった輝きは魔法の適正が高ければ高いほど惹かれてしまうものなの。アルベルトがいい例ね。いや、悪い例かしら。そして、リリーシオでは全国民から魔法適正が高く、魔力量も多いものから選別する。だから、この国の貴族達がのほほんと通っている学園とは違って、将来魔法使いを目地す者たちの集いなの。言いたいことは分かるわね?貴女、とっても危険よ。以前は、守ってくれる集団がいたようだけれど、今回はそうも行かないわ。」
真剣な桃色の瞳が、エミリアの森色の瞳を見つめていた。
王妃は、ああ、これは本当に危ないと目を細めながらエミリアの返答を待つ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいませ、王妃様…!娘は、女として生活することさえも…っ」
「いいえ、嫌だと言うなら、女性のまま生活するのも構わないわ。ただ、あの学園は、みんながみんなお育ちの言い訳ではないの。聖女だというあなたは、その輝き以外、惹かれる要素は全て隠したほうがいい。身分も、容姿も、言動も。何なら、変身魔法でも使ってみては如何?」
王妃は平然とそう言うが、変身魔法ががどれだけ高度な魔法か分かってはいるのだろう。だが、あまりにも静かにそういうものだから、エミリアは驚き息を呑んだ。
誤解されやすいが、変身魔法や変声魔法など自身を偽る魔法は、自分自身にかけるのではなく、自分以外、つまり、偽る対象者の目や耳にかけるのだ。
それが大勢となれば、全員の目に術をかけなくてはいけなくなる。
ーーーそんなの、普通は無理だ、が。
「……私なら、できますわ。わかりました。私は、平民として、男として、変身魔法と変声魔法を使いながら学園へ通いましょう。」
天才だとか鬼才だとか聖女だとか、そんな簡単な言葉で例えられては困る程、エミリアほ、自分が優れた者だという自覚がある。
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