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少年との出会いと
四話「先輩言い訳聞いて!」
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「お、もう夕方かぁ……」
「かなり歩いたからへとへとっス~」
食べ終えた後も、進めるうちに進んでおこうという話になり結構歩いた。現実世界なら足が痛くなりそうなくらい歩いたがそれ程痛くない。異世界に来て、体力も変わってしまったのだろうか。
「そうだな……丁度洞窟あるし、ここで夜過ごすか」
「洞窟っスかぁ~なんかこういう場所って普通は……おぉ!?」
先に洞窟へと入ったソルトくんが、嬉しそうに声を上げる。何かと、私達も洞窟に入るとそこは思ったより広く明るく奥まで道が続いているようだった。
「ダンジョンみてぇ!」
「ダンジョン?」
「あーあれだ。ゲームでいう道が迷路みたいな場所で奥には宝あったりするやつだな」
「あぁ……なるほど」
一般的ゲームでモンスターが邪魔して来るのを倒して進んでいく感じのアレだろうか。私にもなんとなくわかる辺り冒険するゲームを現実でやっていたのかもしれない。
「宝……! 先輩、俺ちょっと探検して来るっス!」
「え、ソルトくんモンスターが出てくるから危ないんじゃ……」
「そうだぞ~ソルー。お前、今日何度戦闘不能になって陽菜ちゃんに回復して貰ったんだ?」
「う……」
洞窟に辿りつく前の戦闘でソルトくんはかなり戦闘離脱……倒れる事が多く、その度私が回復させていた。そのお陰かコツが掴め、回復させるのを早くなった気がする。
「ちょっと見てくるだけっスよ……ちょっとス! モンスター出てきたらすぐ戻って来ますから!」
「……」
「本当スから!」
「まぁ、休む洞窟でモンスター出るのも怖いしなぁ……じゃあ、ちょっとだぞ」
「先輩……!」
「また考え事して落ちて、出れなくなったとかになるなよ!」
「~~! なりません!!」
ソルトくんは柏谷さんに怒ると、ずんずんと洞窟の奥へと進んで行った。その姿を見てから、柏谷さんはため息を吐き、石に座る。
「はぁ……アイツもガキだよなぁ~まぁ、わからなくもないけど」
「柏谷さんも行きたかったんですか?」
「まぁ、ちょっとは……。宝があるかもしれない! と思うとワクワクして進みたくなるよなぁ」
男の子だなぁっと思いながら、私は綺麗そうな石に腰を下ろす。服が汚れるなぁと思ったが、不思議とここは時間が経つと綺麗になるので、まぁいいかとぼんやり眺めていたら柏谷さんが話しかけて来た。
「陽菜ちゃんってさー」
「?」
「俺の事を柏谷さんって呼ぶよな」
「はい? 嫌でしたか?」
「俺的に柏谷さんよりソルみたくちろるくんって呼ばれたいなー」
「え」
「駄目?」
茶色かかった黒い瞳が私を見つめる。別に駄目じゃないが、柏谷さんは。
「柏谷さんは私より一つ年上かと思い……」
「陽菜ちゃん自分の年齢わかるのか?」
「はい……多分中学二年生の十三歳かと」
「へー。確かに俺より年下だな。俺は中学三年生の十四歳だ」
「だから……」
名前で呼ぶのも、悪いと続けようとしたが柏谷さんは楽しそうに笑う。
「そういうの気にしなくていいしさ。俺は陽菜ちゃんには名前で呼ばれたい」
「でも……」
「駄目か?」
「う……」
そう言われると、駄目と言えない性格の私は困った顔でこう答えるしかなかった。
「わかりました……ちろるくん」
「うん。陽菜ちゃんにはそう呼ばれてみたかったんだよなぁ~」
「はぁ……」
立ち上がり、「んー」と言いながら腕を伸ばしているちろるくんを見つめる。そんなに呼ばれてみたいものなのかと聞こうとする前に悲鳴が奥から聞こえ私も立ち上がった。
「今の声は……」
「ソルの声だな。本当にモンスターいたのか? たくっ……世話の焼ける奴だな……」
そう言いながらちろるくんは武器のナイフを持ち、奥へと進み私も後を追った。
洞窟は不思議と足元が明るく見え薄暗いが怖さを感じなかった。ちろるくんは慎重に進んでいくので、私も辺りに警戒しながら進む。
道が広い場所に辿り着くとそこにソルトくんの後ろ姿があり、大丈夫だったと安心し駆け寄ろうとするとちろるくんが止め、そうだモンスターの罠かもと思い任せると頷く。
「よう、ソル。大きな声出してどうした?」
「先輩……」
「ソル?」
「借金返せやぁ……」
「ひぃあぁぁぁぁ!!」
「おっと」
どこから声が聞こえ、ちろるくんに抱き付くソルトくん。聞いた声に何かと覗き込めばソルトくんの足元にしがみついているのは……
「あれ? 唯是くん?」
三月うさぎの唯是くんだった。
「ひよこ案外冷静やなぁ……そっちの子なんか話し掛けただけで驚いて……面白くなってからかってしもたわ」
唯是くんはソルトくんの足から離れ私達に近寄ってくる。正体がわかったソルトくんはちろるくんから離れ、慌てて話し出す。
「べ、別に驚いただけだし。けして何か出そうだと思った時に話しかけられビビったわけじゃねぇし」
「ソル、お化け苦手だもんなぁ」
「そうなん。えぇ情報聞いたわ」
「ち、ちげーし! 見えないものを俺は……」
「へーそう。何で帽子屋連中ここにいるんだ?」
「先輩言い訳聞いて!」
「ソルトくん」
慌てているソルトくんに私は近寄り、服の裾をちょいちょい掴み呼びかけるとこちらを向く。
「いきなり話しかけられたら驚きますよね。わかります」
「陽菜……! そ、そうだよ。いきなり……ってアンタちけぇ!」
「……すみません」
「あ、いや……」
そう言われて距離を取ると、顔を赤くし眉を下げ困った顔をしていた。困らせたかったわけじゃなかったのにと落ち込む私に帽子屋さんは優雅に紅茶を飲み終えてから口を開いた。
「気が付いたらここにおった」
「え? いやいや、洞窟に入る前に気が付かね?」
「そう言われても気が付いたらここにおった……俺も驚いたわ」
「えぇ……そういうもんなのか?」
「紅葉は方向音痴なん」
「くれは?」
唯是くんがぴょこぴょこと私達の方へと来る。
「あぁ、俺の名前や。あれ、名乗ってへんかったか?」
「はじめて聞いた……そこのうさぎの名前も」
「あぁ……じゃあ改めて」
ティーカップを優雅にソーサーの上に置き、私達をエメラルドグリーンの瞳が見上げる。
「俺の名前は帽子屋の紅葉。名乗ったけど、今まで通りに帽子屋でえぇよ」
「そして、ひよこにはいったけど俺の名前は三月うさぎの唯是や! まぁ、よろしゅう」
「あぁ……」
唯是くんに握手求められ、屈みながらちろるくんは握手をする。その光景がなんだか、かわいくてふふっと笑ってしまう。
「……お前らなんで名前は隠していたんだよ? なんか理由あるのか?」
「ん? 別にあらへんよ」
「あの……」
「つか方向音痴って……」
「あの、すみません」
「ひぃああ!!」
「!!」
「あ……」
ソルトくんは肩をポンっと叩かれ、悲鳴を上げ逃げるようにちろるくんの後ろに隠れる。
そんなに驚かれると思わなかったのだろう。私と同じ位の背丈の可愛いが少年らしさのかっこよさも持つ男の子は申し訳なさそうな顔をし、ぺこりと頭を下げる。
「すみません……そんなに驚くと思わなくて……」
「え、いや……こちらこそ悪かったな……」
ちろるくんから出て来て、頭を下げた少年の元へとソルトくんは向かう。顔を上げた少年は整った顔つきをし、将来は女の子に囲まれるような美形になりそうだ。
「白桜学園の……中等部のやつか」
「はい。俺の名前は楪依智と……言います。白桜学園中等部一年でテニス部に所属しています」
「へぇー白桜ねー通りで顔がいいと思った」
「……」
頭に浮かんだ知識によると、白桜は顔がいい生徒が集まることが多く、それが気にくわない他校生が多く、宝桜は他にも理由があるが特に絡んできて仲が悪いらしい。
「い、いえ、俺は整えて雰囲気だけそうさせているだけで……顔がいいわけじゃありません……」
「嫌味か?」
「え……そ、の……」
「ソルすぐ喧嘩売るなよ。年下相手だぞ」
「……」
喧嘩になりそうなソルトくんをちろるくんが止める。何かもっと言いたげソルトくんだったが、ぷぃっと視線を逸らす。
「それで、楪くんは私達に用事ですか?」
「用事というか……その、桃色の髪でここに髪を結っている子に会いませんでしたか?」
「あぁ……君のお友達の天久雨音くんのことか」
「は、はい。それで帽子屋さんは……」
「会ってへん。唯是は?」
「会ってへんなぁ……」
「そうですかぁ……」
肩を落とす楪くんに私はなんだか、ほっとけなくて話しかけてしまう。
「もしかしてその人とはぐれてしまったのですか?」
「はい、そうなんですよ……」
はぁっと楪くんは大きくため息を漏らす。
「俺は危険だしもう遅いからやめようと言ったんですが、雨音はここに宝石があると聞いて欲しいから取りに行くという事聞かなくて……そして、勝手に走ってはぐれて……はぁ。最悪だ……これも俺が説得が下手だから……」
「え」
「いや、俺じゃ足手まといだから置いて行ったんでしょうか? もうやだ……俺なんか……」
「おいゆず……長いからいさ!」
「!?」
ソルトくんががしっと楪くんの肩を掴む。自分の世界に入り込んでいた楪くんは驚いてソルトくんを見つめる。
「ここの洞窟に宝石あるんだな?」
「え? はい……結構な額になる」
「帽子屋、本当か?」
「せやなぁ……結構いい値段の宝石がある」
空中に地図らしきものを浮かび出させ、帽子屋さんがいう。すると、ソルトくんの目がキラキラ輝きだして……
「よーし! いさ、俺らその友達一緒に探してやるよ!」
「え?」
「俺ら? おい、ソル?」
「そうと決まったら……奥に行くぞ~!」
「え? え? ちょっと待ってくださ……うわぁぁぁ」
ソルトくんは楪くんの手首を掴むと、引きずるように洞窟の奥へと進む。残された私達は。
「……あのままじゃ、ソルが楪くんに何するかわかんねぇし着いて行くか」
「そう……ですね」
ちらりと帽子屋さんたちの方を見ると、紅茶の二杯目をいれているところで。
「ひよこ、無茶せんとってな」
「はい」
着いて行く気がないんだなっとわかり、私は唯是くん達を置いてソルトくん達の後を追った。
**
「ソルトくんはおもろい子やな~」
「ひよこが心配やけど、アイツおるし大丈夫やろ……ん?」
カツカツと足音が響き、二人が足音がした方に振り返るとそこには刀を持つ少年が。
「お、何や? 今日もスキルを買いに来たんか?」
「いや……違う。今日は……」
刀を指差し、あぁっと二人は納得する。
「先に二組程居るから大人気みたいやで。」
「そうか……」
少年はそれだけ言うと、また歩き始め奥へと行ってしまった。
「相変わらずクールなやつやなぁ」
「せやなぁ……」
「紅葉?」
「……紅茶うまいわぁ。唯是、いれるのうまくなったんちゃうん?」
「え、ほんま?」
嬉しそうにする唯是の声を聞きながら、洞窟の奥の方に視線を向ける。
「ソルトくんと気があわなそうやな、あの子」
ぼそりと呟いた言葉は、唯是は拾うことなく嬉しそうに自分もにんじんケーキを取り出しお茶会を始めていた。
「かなり歩いたからへとへとっス~」
食べ終えた後も、進めるうちに進んでおこうという話になり結構歩いた。現実世界なら足が痛くなりそうなくらい歩いたがそれ程痛くない。異世界に来て、体力も変わってしまったのだろうか。
「そうだな……丁度洞窟あるし、ここで夜過ごすか」
「洞窟っスかぁ~なんかこういう場所って普通は……おぉ!?」
先に洞窟へと入ったソルトくんが、嬉しそうに声を上げる。何かと、私達も洞窟に入るとそこは思ったより広く明るく奥まで道が続いているようだった。
「ダンジョンみてぇ!」
「ダンジョン?」
「あーあれだ。ゲームでいう道が迷路みたいな場所で奥には宝あったりするやつだな」
「あぁ……なるほど」
一般的ゲームでモンスターが邪魔して来るのを倒して進んでいく感じのアレだろうか。私にもなんとなくわかる辺り冒険するゲームを現実でやっていたのかもしれない。
「宝……! 先輩、俺ちょっと探検して来るっス!」
「え、ソルトくんモンスターが出てくるから危ないんじゃ……」
「そうだぞ~ソルー。お前、今日何度戦闘不能になって陽菜ちゃんに回復して貰ったんだ?」
「う……」
洞窟に辿りつく前の戦闘でソルトくんはかなり戦闘離脱……倒れる事が多く、その度私が回復させていた。そのお陰かコツが掴め、回復させるのを早くなった気がする。
「ちょっと見てくるだけっスよ……ちょっとス! モンスター出てきたらすぐ戻って来ますから!」
「……」
「本当スから!」
「まぁ、休む洞窟でモンスター出るのも怖いしなぁ……じゃあ、ちょっとだぞ」
「先輩……!」
「また考え事して落ちて、出れなくなったとかになるなよ!」
「~~! なりません!!」
ソルトくんは柏谷さんに怒ると、ずんずんと洞窟の奥へと進んで行った。その姿を見てから、柏谷さんはため息を吐き、石に座る。
「はぁ……アイツもガキだよなぁ~まぁ、わからなくもないけど」
「柏谷さんも行きたかったんですか?」
「まぁ、ちょっとは……。宝があるかもしれない! と思うとワクワクして進みたくなるよなぁ」
男の子だなぁっと思いながら、私は綺麗そうな石に腰を下ろす。服が汚れるなぁと思ったが、不思議とここは時間が経つと綺麗になるので、まぁいいかとぼんやり眺めていたら柏谷さんが話しかけて来た。
「陽菜ちゃんってさー」
「?」
「俺の事を柏谷さんって呼ぶよな」
「はい? 嫌でしたか?」
「俺的に柏谷さんよりソルみたくちろるくんって呼ばれたいなー」
「え」
「駄目?」
茶色かかった黒い瞳が私を見つめる。別に駄目じゃないが、柏谷さんは。
「柏谷さんは私より一つ年上かと思い……」
「陽菜ちゃん自分の年齢わかるのか?」
「はい……多分中学二年生の十三歳かと」
「へー。確かに俺より年下だな。俺は中学三年生の十四歳だ」
「だから……」
名前で呼ぶのも、悪いと続けようとしたが柏谷さんは楽しそうに笑う。
「そういうの気にしなくていいしさ。俺は陽菜ちゃんには名前で呼ばれたい」
「でも……」
「駄目か?」
「う……」
そう言われると、駄目と言えない性格の私は困った顔でこう答えるしかなかった。
「わかりました……ちろるくん」
「うん。陽菜ちゃんにはそう呼ばれてみたかったんだよなぁ~」
「はぁ……」
立ち上がり、「んー」と言いながら腕を伸ばしているちろるくんを見つめる。そんなに呼ばれてみたいものなのかと聞こうとする前に悲鳴が奥から聞こえ私も立ち上がった。
「今の声は……」
「ソルの声だな。本当にモンスターいたのか? たくっ……世話の焼ける奴だな……」
そう言いながらちろるくんは武器のナイフを持ち、奥へと進み私も後を追った。
洞窟は不思議と足元が明るく見え薄暗いが怖さを感じなかった。ちろるくんは慎重に進んでいくので、私も辺りに警戒しながら進む。
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「ソル?」
「借金返せやぁ……」
「ひぃあぁぁぁぁ!!」
「おっと」
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「あれ? 唯是くん?」
三月うさぎの唯是くんだった。
「ひよこ案外冷静やなぁ……そっちの子なんか話し掛けただけで驚いて……面白くなってからかってしもたわ」
唯是くんはソルトくんの足から離れ私達に近寄ってくる。正体がわかったソルトくんはちろるくんから離れ、慌てて話し出す。
「べ、別に驚いただけだし。けして何か出そうだと思った時に話しかけられビビったわけじゃねぇし」
「ソル、お化け苦手だもんなぁ」
「そうなん。えぇ情報聞いたわ」
「ち、ちげーし! 見えないものを俺は……」
「へーそう。何で帽子屋連中ここにいるんだ?」
「先輩言い訳聞いて!」
「ソルトくん」
慌てているソルトくんに私は近寄り、服の裾をちょいちょい掴み呼びかけるとこちらを向く。
「いきなり話しかけられたら驚きますよね。わかります」
「陽菜……! そ、そうだよ。いきなり……ってアンタちけぇ!」
「……すみません」
「あ、いや……」
そう言われて距離を取ると、顔を赤くし眉を下げ困った顔をしていた。困らせたかったわけじゃなかったのにと落ち込む私に帽子屋さんは優雅に紅茶を飲み終えてから口を開いた。
「気が付いたらここにおった」
「え? いやいや、洞窟に入る前に気が付かね?」
「そう言われても気が付いたらここにおった……俺も驚いたわ」
「えぇ……そういうもんなのか?」
「紅葉は方向音痴なん」
「くれは?」
唯是くんがぴょこぴょこと私達の方へと来る。
「あぁ、俺の名前や。あれ、名乗ってへんかったか?」
「はじめて聞いた……そこのうさぎの名前も」
「あぁ……じゃあ改めて」
ティーカップを優雅にソーサーの上に置き、私達をエメラルドグリーンの瞳が見上げる。
「俺の名前は帽子屋の紅葉。名乗ったけど、今まで通りに帽子屋でえぇよ」
「そして、ひよこにはいったけど俺の名前は三月うさぎの唯是や! まぁ、よろしゅう」
「あぁ……」
唯是くんに握手求められ、屈みながらちろるくんは握手をする。その光景がなんだか、かわいくてふふっと笑ってしまう。
「……お前らなんで名前は隠していたんだよ? なんか理由あるのか?」
「ん? 別にあらへんよ」
「あの……」
「つか方向音痴って……」
「あの、すみません」
「ひぃああ!!」
「!!」
「あ……」
ソルトくんは肩をポンっと叩かれ、悲鳴を上げ逃げるようにちろるくんの後ろに隠れる。
そんなに驚かれると思わなかったのだろう。私と同じ位の背丈の可愛いが少年らしさのかっこよさも持つ男の子は申し訳なさそうな顔をし、ぺこりと頭を下げる。
「すみません……そんなに驚くと思わなくて……」
「え、いや……こちらこそ悪かったな……」
ちろるくんから出て来て、頭を下げた少年の元へとソルトくんは向かう。顔を上げた少年は整った顔つきをし、将来は女の子に囲まれるような美形になりそうだ。
「白桜学園の……中等部のやつか」
「はい。俺の名前は楪依智と……言います。白桜学園中等部一年でテニス部に所属しています」
「へぇー白桜ねー通りで顔がいいと思った」
「……」
頭に浮かんだ知識によると、白桜は顔がいい生徒が集まることが多く、それが気にくわない他校生が多く、宝桜は他にも理由があるが特に絡んできて仲が悪いらしい。
「い、いえ、俺は整えて雰囲気だけそうさせているだけで……顔がいいわけじゃありません……」
「嫌味か?」
「え……そ、の……」
「ソルすぐ喧嘩売るなよ。年下相手だぞ」
「……」
喧嘩になりそうなソルトくんをちろるくんが止める。何かもっと言いたげソルトくんだったが、ぷぃっと視線を逸らす。
「それで、楪くんは私達に用事ですか?」
「用事というか……その、桃色の髪でここに髪を結っている子に会いませんでしたか?」
「あぁ……君のお友達の天久雨音くんのことか」
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「会ってへん。唯是は?」
「会ってへんなぁ……」
「そうですかぁ……」
肩を落とす楪くんに私はなんだか、ほっとけなくて話しかけてしまう。
「もしかしてその人とはぐれてしまったのですか?」
「はい、そうなんですよ……」
はぁっと楪くんは大きくため息を漏らす。
「俺は危険だしもう遅いからやめようと言ったんですが、雨音はここに宝石があると聞いて欲しいから取りに行くという事聞かなくて……そして、勝手に走ってはぐれて……はぁ。最悪だ……これも俺が説得が下手だから……」
「え」
「いや、俺じゃ足手まといだから置いて行ったんでしょうか? もうやだ……俺なんか……」
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「!?」
ソルトくんががしっと楪くんの肩を掴む。自分の世界に入り込んでいた楪くんは驚いてソルトくんを見つめる。
「ここの洞窟に宝石あるんだな?」
「え? はい……結構な額になる」
「帽子屋、本当か?」
「せやなぁ……結構いい値段の宝石がある」
空中に地図らしきものを浮かび出させ、帽子屋さんがいう。すると、ソルトくんの目がキラキラ輝きだして……
「よーし! いさ、俺らその友達一緒に探してやるよ!」
「え?」
「俺ら? おい、ソル?」
「そうと決まったら……奥に行くぞ~!」
「え? え? ちょっと待ってくださ……うわぁぁぁ」
ソルトくんは楪くんの手首を掴むと、引きずるように洞窟の奥へと進む。残された私達は。
「……あのままじゃ、ソルが楪くんに何するかわかんねぇし着いて行くか」
「そう……ですね」
ちらりと帽子屋さんたちの方を見ると、紅茶の二杯目をいれているところで。
「ひよこ、無茶せんとってな」
「はい」
着いて行く気がないんだなっとわかり、私は唯是くん達を置いてソルトくん達の後を追った。
**
「ソルトくんはおもろい子やな~」
「ひよこが心配やけど、アイツおるし大丈夫やろ……ん?」
カツカツと足音が響き、二人が足音がした方に振り返るとそこには刀を持つ少年が。
「お、何や? 今日もスキルを買いに来たんか?」
「いや……違う。今日は……」
刀を指差し、あぁっと二人は納得する。
「先に二組程居るから大人気みたいやで。」
「そうか……」
少年はそれだけ言うと、また歩き始め奥へと行ってしまった。
「相変わらずクールなやつやなぁ」
「せやなぁ……」
「紅葉?」
「……紅茶うまいわぁ。唯是、いれるのうまくなったんちゃうん?」
「え、ほんま?」
嬉しそうにする唯是の声を聞きながら、洞窟の奥の方に視線を向ける。
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