気づいたらスパダリの部屋で繭になってた話

米山のら

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番外編

繭生活

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カタカタカタカタ……

どうも、ロスに来ても相変わらずロジックの構築に励む、立花玲です。

「あーん」

毎回こうして、同じ椅子にむりやり入り込んで、俺の背中にぴったりくっついてくる“ひっつき虫”こと一条さん。
リンゴとバターの香りがふわりと広がるパイを、俺の口元に差し出してくる。

パクリ。

むしゃむしゃ。

カタカタカタカタ……

「美味しい? これは昨日から仕込んだリンゴのコンポートを具にしたパイだよ。自分で煮詰めたリンゴは、また味が違うからね」

こくり。

カタカタカタカタ……

「あーん」

パクリ。

むしゃむしゃ。

カタカタカタカタ……

現在、夜の9時半。
俺は、本日0時締め切りと決めた個人プロジェクトのために、ひたすらコードを書き続けている。

「ねえ玲、あんまりコードに夢中になってると……焼けちゃうよ?」

(うざ……)

「……」

心でそう思っても、うっかり危険なことは口に出さない。
過去に数度、うっかり口にしてしまった結果――ダーク・一条さんを降臨させてしまったから。

羞恥プレイにお仕置きプレイ、SMプレイ、鏡プレイ、拘束プレイに目隠しプレイ――
ありとあらゆるプレイのてんこ盛りを食らってきた。

(うう……考えただけで……身体の奥が……)

ふるふると頭を振って、再びコードに集中する。

カタカタカタカタ……

「玲、喉乾かない? 私が飲ませてあげようか?」

(うざ……)

「……」

カタカタカタカタ……


*****************************


11時59分。

できた!

会社の資料を読んで静かになっていた“ひっつき虫”に、ちょいちょいと合図を送る。
そして、完成したてのプログラムを起動する。

パソコン画面の右下に、ひょこひょこ歩いて現れる男の子のキャラクター。

「これは……玲?」

こくりと頷く。

そう、これは――
会社が提供しているキャラクターの中から、俺に似た雰囲気の男の子を選び、俺がよく着るコーディネートを着せ、髪型も寄せて仕上げた、“アキラくん”。

アキラくんが手を上げたり下げたり、パタパタしながら吹き出しを出す。

『一条さん、仕事頑張って』

『一条さん、俺も家で仕事頑張ってるよ』

このプログラムは、先週ふと思いついた――
今日の一条さんへの誕生日プレゼント。

毎朝の出勤時、「今生の別れか!」っていうくらい寂しがる一条さんが、少しでも会社に行くのを楽しみにしてくれるように、と思って組み立てたもの。

時間になると、たくさん登録したセリフの中からランダムで表示されるようにしてある。

またアキラくんが手をパタパタと動かしながら、しゃべり出す。

『一条さん、かっこいい』

『一条さん、大好き』

はっと一条さんが息を呑む。

そして、その切れ長の瞳から、大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

(あれぇ? あれれれれ?)

俺は一条さんの方に向き直り、ぎゅむむっとその身体を抱きしめた。
そして、いつも一条さんがしてくれるように、広い背中をぽんぽんする。

「だって、ずっと一方通行だと思っていたから……」

(ふふ、一条さん。
他のことは何でもできるのに……
こんな俺を愛してくれる王子さまを、愛し返さないなんて――ありえませんよ)

「す……」

でも、それ以上は言えなかった。
いつかのように、俺のくちびるは、一条さんのくちびるにふさがれていたから。

そして俺たちは――
甘くて、ちょっぴりしょっぱいキスを、ゆっくりと味わい続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


このお話をもって、ロス編は完結となります。
読んでくださったみなさま、そしてフォローやいいね、応援も……本当にありがとうございました!

感謝の気持ちを込めて、おまけのエピソードを1話、後日アップする予定です。
最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです!
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