14 / 15
番外編
繭生活
しおりを挟む
カタカタカタカタ……
どうも、ロスに来ても相変わらずロジックの構築に励む、立花玲です。
「あーん」
毎回こうして、同じ椅子にむりやり入り込んで、俺の背中にぴったりくっついてくる“ひっつき虫”こと一条さん。
リンゴとバターの香りがふわりと広がるパイを、俺の口元に差し出してくる。
パクリ。
むしゃむしゃ。
カタカタカタカタ……
「美味しい? これは昨日から仕込んだリンゴのコンポートを具にしたパイだよ。自分で煮詰めたリンゴは、また味が違うからね」
こくり。
カタカタカタカタ……
「あーん」
パクリ。
むしゃむしゃ。
カタカタカタカタ……
現在、夜の9時半。
俺は、本日0時締め切りと決めた個人プロジェクトのために、ひたすらコードを書き続けている。
「ねえ玲、あんまりコードに夢中になってると……焼けちゃうよ?」
(うざ……)
「……」
心でそう思っても、うっかり危険なことは口に出さない。
過去に数度、うっかり口にしてしまった結果――ダーク・一条さんを降臨させてしまったから。
羞恥プレイにお仕置きプレイ、SMプレイ、鏡プレイ、拘束プレイに目隠しプレイ――
ありとあらゆるプレイのてんこ盛りを食らってきた。
(うう……考えただけで……身体の奥が……)
ふるふると頭を振って、再びコードに集中する。
カタカタカタカタ……
「玲、喉乾かない? 私が飲ませてあげようか?」
(うざ……)
「……」
カタカタカタカタ……
*****************************
11時59分。
できた!
会社の資料を読んで静かになっていた“ひっつき虫”に、ちょいちょいと合図を送る。
そして、完成したてのプログラムを起動する。
パソコン画面の右下に、ひょこひょこ歩いて現れる男の子のキャラクター。
「これは……玲?」
こくりと頷く。
そう、これは――
会社が提供しているキャラクターの中から、俺に似た雰囲気の男の子を選び、俺がよく着るコーディネートを着せ、髪型も寄せて仕上げた、“アキラくん”。
アキラくんが手を上げたり下げたり、パタパタしながら吹き出しを出す。
『一条さん、仕事頑張って』
『一条さん、俺も家で仕事頑張ってるよ』
このプログラムは、先週ふと思いついた――
今日の一条さんへの誕生日プレゼント。
毎朝の出勤時、「今生の別れか!」っていうくらい寂しがる一条さんが、少しでも会社に行くのを楽しみにしてくれるように、と思って組み立てたもの。
時間になると、たくさん登録したセリフの中からランダムで表示されるようにしてある。
またアキラくんが手をパタパタと動かしながら、しゃべり出す。
『一条さん、かっこいい』
『一条さん、大好き』
はっと一条さんが息を呑む。
そして、その切れ長の瞳から、大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
(あれぇ? あれれれれ?)
俺は一条さんの方に向き直り、ぎゅむむっとその身体を抱きしめた。
そして、いつも一条さんがしてくれるように、広い背中をぽんぽんする。
「だって、ずっと一方通行だと思っていたから……」
(ふふ、一条さん。
他のことは何でもできるのに……
こんな俺を愛してくれる王子さまを、愛し返さないなんて――ありえませんよ)
「す……」
でも、それ以上は言えなかった。
いつかのように、俺のくちびるは、一条さんのくちびるにふさがれていたから。
そして俺たちは――
甘くて、ちょっぴりしょっぱいキスを、ゆっくりと味わい続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このお話をもって、ロス編は完結となります。
読んでくださったみなさま、そしてフォローやいいね、応援も……本当にありがとうございました!
感謝の気持ちを込めて、おまけのエピソードを1話、後日アップする予定です。
最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです!
どうも、ロスに来ても相変わらずロジックの構築に励む、立花玲です。
「あーん」
毎回こうして、同じ椅子にむりやり入り込んで、俺の背中にぴったりくっついてくる“ひっつき虫”こと一条さん。
リンゴとバターの香りがふわりと広がるパイを、俺の口元に差し出してくる。
パクリ。
むしゃむしゃ。
カタカタカタカタ……
「美味しい? これは昨日から仕込んだリンゴのコンポートを具にしたパイだよ。自分で煮詰めたリンゴは、また味が違うからね」
こくり。
カタカタカタカタ……
「あーん」
パクリ。
むしゃむしゃ。
カタカタカタカタ……
現在、夜の9時半。
俺は、本日0時締め切りと決めた個人プロジェクトのために、ひたすらコードを書き続けている。
「ねえ玲、あんまりコードに夢中になってると……焼けちゃうよ?」
(うざ……)
「……」
心でそう思っても、うっかり危険なことは口に出さない。
過去に数度、うっかり口にしてしまった結果――ダーク・一条さんを降臨させてしまったから。
羞恥プレイにお仕置きプレイ、SMプレイ、鏡プレイ、拘束プレイに目隠しプレイ――
ありとあらゆるプレイのてんこ盛りを食らってきた。
(うう……考えただけで……身体の奥が……)
ふるふると頭を振って、再びコードに集中する。
カタカタカタカタ……
「玲、喉乾かない? 私が飲ませてあげようか?」
(うざ……)
「……」
カタカタカタカタ……
*****************************
11時59分。
できた!
会社の資料を読んで静かになっていた“ひっつき虫”に、ちょいちょいと合図を送る。
そして、完成したてのプログラムを起動する。
パソコン画面の右下に、ひょこひょこ歩いて現れる男の子のキャラクター。
「これは……玲?」
こくりと頷く。
そう、これは――
会社が提供しているキャラクターの中から、俺に似た雰囲気の男の子を選び、俺がよく着るコーディネートを着せ、髪型も寄せて仕上げた、“アキラくん”。
アキラくんが手を上げたり下げたり、パタパタしながら吹き出しを出す。
『一条さん、仕事頑張って』
『一条さん、俺も家で仕事頑張ってるよ』
このプログラムは、先週ふと思いついた――
今日の一条さんへの誕生日プレゼント。
毎朝の出勤時、「今生の別れか!」っていうくらい寂しがる一条さんが、少しでも会社に行くのを楽しみにしてくれるように、と思って組み立てたもの。
時間になると、たくさん登録したセリフの中からランダムで表示されるようにしてある。
またアキラくんが手をパタパタと動かしながら、しゃべり出す。
『一条さん、かっこいい』
『一条さん、大好き』
はっと一条さんが息を呑む。
そして、その切れ長の瞳から、大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
(あれぇ? あれれれれ?)
俺は一条さんの方に向き直り、ぎゅむむっとその身体を抱きしめた。
そして、いつも一条さんがしてくれるように、広い背中をぽんぽんする。
「だって、ずっと一方通行だと思っていたから……」
(ふふ、一条さん。
他のことは何でもできるのに……
こんな俺を愛してくれる王子さまを、愛し返さないなんて――ありえませんよ)
「す……」
でも、それ以上は言えなかった。
いつかのように、俺のくちびるは、一条さんのくちびるにふさがれていたから。
そして俺たちは――
甘くて、ちょっぴりしょっぱいキスを、ゆっくりと味わい続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このお話をもって、ロス編は完結となります。
読んでくださったみなさま、そしてフォローやいいね、応援も……本当にありがとうございました!
感謝の気持ちを込めて、おまけのエピソードを1話、後日アップする予定です。
最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです!
971
あなたにおすすめの小説
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
距離を取ったら、氷のエースに捕獲された件
米山のら
BL
無口でクール、誰も寄せつけないバレー部の“氷のエース”隼。
そんな完璧な隼が追いかけてくる相手が――
よりによって、才能ゼロで平凡な幼馴染の俺(直央)。
バレー部を辞めようとした日から、
距離を置こうとするほど逃げ道を塞がれ、気づけば抱え上げられてて……いや、何で!?
氷の瞳の奥に潜んでいたのは、静かな狂気と、俺だけへの独占欲。
逃げたいのに逃げられない。
“氷のエース”に愛され続ける、青春ど真ん中(?)の恋物語。
世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)
かんだ
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。
ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。
支配者に囚われる
藍沢真啓/庚あき
BL
大学で講師を勤める総は、長年飲んでいた強い抑制剤をやめ、初めて訪れたヒートを解消する為に、ヒートオメガ専用のデリヘルを利用する。
そこのキャストである龍蘭に次第に惹かれた総は、一年後のヒートの時、今回限りで契約を終了しようと彼に告げたが──
※オメガバースシリーズですが、こちらだけでも楽しめると思い
学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました
すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。
第二話「兄と呼べない理由」
セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。
第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。
躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。
そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。
第四話「誘惑」
セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。
愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。
第五話「月夜の口づけ」
セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる