元・純白天使が、腹黒悪魔になって俺の前に舞い戻った件

米山のら

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番外編

元・天使

俺は自分の部屋で、宗が来るのを待っていた。

迷うこともなく、宗は階段を上がり、まっすぐに入ってくる。

無言で目が合った。
しばらく、お互い何も言えなかった。

やっと、俺が口を開く。

「……ずっと、メロリちゃんだと思ってたけど、宗だったんだね」

宗は何も言わずに、ただ俺を見ていた。
表情も、声もない。
ただ、その水色の瞳だけが、痛いくらいにまっすぐだった。

「何年も前から……アプリを作って、セキュリティカメラまで無料で提供して。
……楽しかった? 俺をだまして」

宗のまなざしは、変わらない。

「飼い主は、なにか気づいてたみたいだったけど――
俺はバカだから、何にもわかんなくて。……笑えた?」

氷で閉ざしたみたいに、宗の表情は微動だにしない。
感情が、読み取れなかった。

「それとも……俺が、約束を忘れたから?
メロリちゃん越しに宗と話してたのに――
他の子のことばっかり、話してたから?
……浮気性だって宗は言ってたけど、本当にそうだったね。
だから……俺のことをはめて、一人にして……復讐したの?」

そのとき、宗の目から涙がこぼれた。
音もなく、ほおを伝って落ちていく。

「違う……! 私は、ずっと、ずっと待ってて……!」

その声は震えていて、幼くて、苦しかった。

「ユズが、約束を忘れたせいじゃない……」

宗は、ふらりと力を失ったように膝をついた。

「私のこと……忘れて……他の子を、好きになって……
ずっと……ずっと待ってたのに……」

その瞬間だった。

胸の奥に――小さな針が、ちくりと刺さる。

俺の怒りも疑いも、全部、そこから崩れていった。

(……そっか)

気づいたら、俺は宗の前にしゃがみ込んでいた。

(……これは、復讐なんかじゃない)

「アプリも、カメラも……宗は、ずっと俺を守ってたんだね。
やり方はちょっと…………いや、かなり怖いけど」

宗はしゃくり上げながら、言葉を絞り出した。

「ユズが、好き……だったから。
誰もいなくなったら……
私のこと、好きになって……くれるかもって……思って」

(わー、真っ黒……)

でも、その泣き顔は、あの純白の天使ちゃんだったころと、どこか同じで――
俺は、あの別れの日のように、そっと宗のほおにふれて、涙をぬぐった。

「……宗は、俺のために天界から堕ちてきたんだね。
真っ白だった翼を失って、地上で醜悪にまみれて、真っ黒に汚れて……」

宗は何も言わなかった。
ただ、涙だけが静かに、止まらずに流れていた。

「宗……ありがとう。
俺のところに、堕ちてきてくれて。
ずっと……俺を守ってくれて」

俺はもう一度、宗のほおに手をそえた。
冷たかったそのほおに、少しだけ熱が戻ってるのを感じながら――
そっと、くちびるを近づけた。

「宗……もう泣かないで」

「……好き」

宗も、そっと顔を寄せてきて――

「……俺も」

そして、俺たちは――
今まで離れていた時間を、そっと取り戻すように、
ゆっくりと、ゆっくりとキスを交わした。
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