人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら

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おまけ

ミケの猫人生

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蜜月という名の快楽地獄を三日三晩味わい――
ようやく、洸がマネージャーの梅ちゃんと仕事に出かける準備をしている。
その間、オレは洸のベッドの上で、呪いの上下を着たまま運動座り。

オレ、ちんまりしてる。

「ミケ、もう行くよ」

洸が手を広げてくる。

いつもなら、ぴょーんと飛びつくオレ。でも今日は――

「オレ、行がね」

洸がベッドに上がり、そっとオレを抱きしめてくる。

「疲れちゃった?」

オレ、洸の足、ひっぱっちゃダメ。

「仕事せねば、行がれねはんで」

洸の声が低く響く。

「誰かに何か言われたのかな?」

「大丈夫っすよ。ミケさんが来てくれたら、洸さんテンション上がっていい仕事するっす。助かってるっす」

でも……寄生虫はダメだ。

「虫っこ、なりたぐね……」

じっとオレを見ていた洸が、ぽつりとつぶやく。

「じゃあ……」


***


――そして。

オレは洸の撮影スタジオで、梅ちゃんの後ろについてちょこまか歩いてる。

オレのパーカー、血塗りの“ミケ”の横に、新たな役職――
『マネのマネ』が追加された。

今は洸が広告用の撮影中。

パシャ、パシャ……

カメラマンが夢中でシャッターを切っている。

「洸さんナイスです! じゃあそのまま、甘さちょい足しでいきましょう。大人のとろけるやつ、お願いします!」

その声に、梅ちゃんがふと足を止めて振り返る。

「ミケさん、出番っす。カメラマンの後ろで、水持って待機っす」

うんっとオレはうなずいて、ペットボトル片手にカメラマンの背後へ。

その瞬間――
洸のキラキラ笑顔が、甘くとろける。

スタジオ全体が色気に包まれ、誰ともなくため息が漏れた。

パシャ、パシャ……!

「はい、大人の甘さ、いただきましたー! 一旦休憩入りまーす! 次の準備お願いしまーす!」

カメラマンが興奮気味に、カメラを下ろす。

オレはすかさず洸にペットボトルを差し出す。

「ミケのおかげで、うまくいったよ」

洸が、オレの顔にキスを降らせる。
最初は軽いバードキス。けれど――
そのキスはじわじわと熱を帯びていき、洸の目に、ぽっと情欲の光がともる。

そして――
オレをふわりと抱き上げた。
耳もとにくちびるを寄せて、甘くつぶやく。

「ミケ……もう帰ろうか?」

「まーだまだ、撮影終わらないっす」

梅ちゃんが、オレと洸の間に、
一口サイズのおしゃれ団子がぎっしり詰まった大箱を、ぬっと滑り込ませた。

「ミケさん、今のうちに差し入れ配ってきてくださいっす」

オレはうんっと頷くと、洸の腕の中からぴょーんと飛び出して、スタジオのスタッフたちのほうへ。

「赤いのはミケさん用なんで、配っちゃダメっすよー」

うんうんと頷きながら、オレは箱の中からひとつずつ取り出して、カラフルな包みを順番に手渡していく。

「洸がらだじゃ」

「洸さーん、いただきまーす!」

洸はキラキラした笑顔で応対する。

――忙しい。
でも、オレ、ゴロゴロしてた時より、なんか充実してる。

よし、残りは二個。白い包装と、赤い包装。

そして――“細長い女”のもとへ。

女は、オレをにらみつけてきた。

「……なに?」

オレの血塗りパーカーに目を走らせ、鼻で笑う。

「は? あんた、マネージャーの真似? 新しい遊び?」

「オレ、雇われだんず。マネージャーのマネージャーだじゃ」

「なにそれ、聞いたことねぇわ」

その女の前に、オレはむんずと赤い団子をつかみ、つき出す。

「洸がらだじゃ」

すると女は、急に声色を変えて、

「洸さぁん♡ ありがとうございまぁす♡」

と黄色い声を上げた。

オレは洸と梅ちゃんのもとへ走って戻り、洸の腕にすっぽり隠れて、こっそり女を盗み見る。

「辛っ……かっらーーーーい!!」

女の悲鳴がスタジオに響く。

「あー言ったすよねー。唐辛子入りはミケさんが頼んだ特注だから、間違って配っちゃダメって」

「けけっ……けけけっ……」

オレはご機嫌で、洸の胸に頭をぐりぐり。

洸と梅ちゃんは、悲鳴をあげる女を見つめながら――

「……あの人、誰かな?」

「あー…先々週からずっと一緒の、洸さんの妹役の新人モデルさんっすよ。……忘れてるとか、逆に才能っす」

洸が、冷たい目で女を見つめる。

「じゃあ、今後はNG出しといてね」

梅ちゃんが頭を抱える。

「あー……無理っす、続編も決まってる妹役っす……」

「大丈夫。作中で海外にでも留学してもらえば」

「もうシナリオ、続々と出来上がってるっすよー」

ふと、梅ちゃんと目が合う。

「ミケさん、仕事っす! ミケさんなら洸さんもお願いきくっす。可愛くお願いしてくださいっす!」

さっと洸が、オレを梅ちゃんの視界から隠す。

「ミケが可愛いって……私に挑戦してるのかな?」

「なっ……可愛くって言ったっす、可愛いじゃなくて!」

「けけっ……」

オレはまた楽しくなって、洸の首に両腕をまわしてぎゅっ。

「ミケさん、小悪魔化してる場合じゃないっす! 仕事っす!」

洸の空気が一気に凍りつく。

「つまり……ミケが小悪魔のように魅力的だと……私に挑戦しているんだよね?」

「あー……この流れ、もうやったっす! 洸さん、めんどくさいっす―――!!」

細長女に続いて、今度は梅ちゃんの悲鳴がスタジオに響いた。

「けけけっ……」

オレは洸の腕の中で、いつまでもケタケタと笑っていた。


……これが、オレの波乱万丈な猫人生のお話。

オレは、今日も洸の腕の中で胸を張って言う。

「オレ、洸のマネージャーのマネージャーだじゃ」

――みんな、読んでけで、ありがどな。
また、どこかでな。

めでたし、めでたし……(?)


***


最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
フォローやいいね、コメントに励まされ、楽しく完走することができました。
これからも妄想をふくらませながら、書き続けていきます。
またお会いできる日を、心より楽しみにしています!
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感想 7

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みんなの感想(7件)

KAI
2025.07.19 KAI

コメント失礼します🙏
全ての作品見ました📚
凄く面白いおはなしでした😊
自分の癖💓に刺さりまくってます🔪
次の作品も楽しみに待ってます❤️

2025.07.20 米山のら

KAIさん、

コメントありがとうございます!
そして全ての作品を読んでくださって、本当にうれしいです✨

同じ“癖💓”を持っている方に出会えることの喜びを、KAIさんのコメントからしみじみ感じました。
「書いてよかった〜!」と感じた瞬間でした。

次の作品を楽しみにしてくださっていることが、本当に励みになります。
あらためて、ありがとうございました😊

解除
丼ママ
2025.07.18 丼ママ

おーっ!
最後にミケちゃんの猫パンチ(?)が
華麗にきまりましたね!(笑)

前作、前々作は「ふたりの世界」で
なにかと完結してましたが
今作はなんだかんだと「梅ちゃん」の
存在が不可欠だなぁと感じました。
ツッコミ役、ダイジ (*^^*)

2025.07.19 米山のら

丼ママさん、

今回もあたたかいコメントをありがとうございます!
はい、ラストは猫パンチでしっかり決めさせていただきました(笑)ミケ、頑張りました!

ふふ、気づけば梅ちゃん、本当に出ずっぱりでしたね。

『ツッコミ役、ダイジ (*^^*)』

お笑い好きな私としても、丼ママさんのお言葉に痛感しました。
ミケと洸だけだと延々ボケ続けてしまうところを、梅ちゃんがしっかり締めてくれていて、書いていてもとても頼もしい存在でした。

そして何より、以前からずっと優しく見守ってくださって、本当にありがとうございます。
いつもあたたかい声をかけていただいたことが、大きな励みになっていました。
心から感謝しています!

解除
ノーリ
2025.07.18 ノーリ

完走おめでとうございます!お疲れさまでした。
ミケくんがとっても可愛くてずっと癒やされていました。
ミケくんに執着する洸との相性が最高でした。
お話が更新される度、すごく嬉しかったです。
すごく好きな作品です。
素敵な作品をお届けくださり、心よりありがとうございます!

2025.07.19 米山のら

ノーリさん、

心温まるメッセージを本当にありがとうございます!

私のあふれる猫愛をたっぷり詰め込んだミケを「可愛い」と感じていただけて、本当に嬉しいです。
洸との関係も楽しんでいただけたとのことで、作者冥利に尽きます……!

こちらこそ、作品を読んでくださり、こうしてあたたかなお言葉を届けてくださって、心から感謝しています。
ミケに癒やされた、更新が嬉しかった、すごく好きな作品、と言っていただけたこと、一つひとつが本当に励みになりました。

解除

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