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保健室
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「あれ?先生居ないじゃん」
「別に日誌なんか手渡ししなくてもいいだろ?机に置いときゃいいんじゃね?」
保健室に入ってきた2人の生徒が部屋から出ていく。
「山吹センセ、応対しなくてよかったの?」
2人が出て行った事を確認した僕は準備室の椅子に座りクルリと回転させた。
「お前が邪魔してるからだろうが。そろそろ下校時間だぞ? ぼちぼち帰る用意しろよ」
「なんかボク発情期来そうなんだよ」
「まだ早いだろう?」
僕はΩだけど発情抑制剤が効かない体質だ。初めての発情期を迎えたのは学校で、その時緊急抑制剤が効かず保健室の隔離室に避難した経緯がある。
僕はβばかりの家庭に変異的に生まれたΩのため、家庭で発情期への理解が得られない事もあって、こうして保健室でお世話になっている事が多い。
抑制剤が効かない番の居ないΩにとっての発情期は、一人で部屋に閉じ篭ってのたうち回る地獄だ。
僕の家庭環境と抑制剤が効かない身体の事を知った山吹先生は、そんな僕の後見人になってくれて発情期を乗り切る為の協力をしてくれている。
αに抱かれれば楽になるけれど、抱いて貰えなくてもαのフェロモンを嗅ぎながら中を刺激するだけでも苦しさはかなり軽減されるし発情期を早く終わらせる事が出来るから。
僕がまだ純潔を保ってられるのは山吹先生のお陰なんだ。
「だってちょっとムラムラするんだもん……」
こういう感じの時は早く始まる事が多いんだよね。
近くにいる人に手当たり次第に縋り付きたくなるあの悍ましい感覚、心と身体が噛み合わないあの恐怖は二度と味わいたい物じゃない。
「分かった。ならとりあえず隔離室入っとけ。今日は俺のマンション来とけば安心だろ」
「うん、ありがとセンセ」
発情期の間マンションに泊まり込みでお世話になる僕はお荷物だろうけど、先生の事が大好きな僕は優しい先生の好意につけ込む形でズルズルと甘え続けている。
先生が保健室を出て行き、奥にある隔離室に向かおうとした瞬間心臓が急に拍動を変えた。
ドクドクと脈打ちはじめる心臓、熱くなる身体、掌に汗が滲み出して身体が震えだす。身体中の力が抜けてその場に座り込んだ。ヤバイ……なんかいきなりキタ。早く隔離室に行かなきゃ……。
犬みたいにハッハッと息を吐き、なんとか這うようにして奥に向かう。熱い熱い熱い……。お尻の間にヒンヤリとした感触が広がって濡れているのが分かる。なんでこんな急に?!
いつもならこんな急激に来ないのに!!焦りながら必死に隔離室に行こうとするのに身体が動かないのはどうしてなんだ。冷や汗が滴り落ち、下腹部に心臓が移動したみたいにズクズクと熱を発している。
「……なん……で……」
フェロモンをブワリと発してしまうのも止められず、痛い程に張り詰めた股間を押さえる。今誰か来たらきっと僕は縋り付いてしまう。そんなのは嫌だ。助けて先生……。
じりじりと床を這いながらなんとか隔離室に入る。今回の発情期は今までで一番キツイのは間違いない。どうしようと焦りばかりがぐるぐるして頭が回らない。
息苦しさから襟元からネクタイを引き抜けばシャツのボタンも千切れてしまうし、もう何がなんだか分からない。
「桜っ!?」
ようやく先生が戻って来てくれた。
「……ったす…けて……っセンセ……怖い…っ」
先生はいつも自分に抑制剤を使って僕の発情を早く終わらせる為に手や道具を使って手伝ってくれる。先生が来ればもう大丈夫だと思った。なのに先生から僕の発情を促す強烈な甘いフェロモンを感じる。どうして? まさか先生抑制剤使ってない?
「なん……で……?……」
見れば先生は慌てて自分の足に緊急抑制剤を打ってる。なのに全然フェロモンは抑えられてなくて、むしろ増え続けてる。どうしてっ…?!
先生に手を伸ばし抱き付けば全身を包み込むような香りに安心を覚えた。
「くそ……効かない……。桜、ダメだ」
先生は縋り付く僕を引き剥がし部屋の外に出て鍵をかけてしまった。
「やだ……せんせ……置いてかないで……」
泣きながらドアを引っ掻く。苦しくて苦しくて、爪が割れるのも構わずドアに爪を立てる。
「必ず戻るから待ってろっ!」
先生が待ってろって言った。待たなきゃ……。でも苦しい。
我慢出来ずベルトを緩めて自らを慰める。お尻に指を這わせればそこはもうドロドロに濡れそぼっていた。指を含ませ自分を誤魔化そうとしても全然ダメで、ただ欲しくて欲しくて。朦朧とする意識の中、ただひたすら山吹先生を呼び続けた。
□□□□□□□□□□□□
再び先生の香りを嗅いだ事はぼんやりと覚えている。匂いに安心した途端何かを注射されて僕は眠らされ、気が付いた時には先生のマンションに居た。
「ここ……あれ……?」
眠っていたからか、少し発情は落ち着いていて、なんとか状況を把握する。
「桜、結婚しよう」
「え?!」
いきなり先生にプロポーズを受けた。
高校を卒業した後も抑制剤を効かないのを理由に先生に引っ付いていようと目論んでいた僕に異論なんてある訳がない。というか大好きな先生からプロポーズされるなんて、夢じゃないかな?
ほっぺを抓れば痛かった。
「夢……?」
「そんな訳あるか」
「僕先生のお嫁さんになれるの?」
「なってくれって言ってるんだが?」
こんな幸せな事があっていいんだろうか。僕は返事の代わりに大量に先生を誘うフェロモンを出しながら先生に口付けた。
□□□□□□□□□□□□
僕みたいに最初から抑制剤が効かないタイプの人間は時々居るけど、効いていた抑制剤が効かなくなるのは好きな人が身近な所に居る場合によくある事ならしい。先生に薬が効きにくくなったのは僕の事を好きになり過ぎたせいじゃないかって事だった。
好きな人を全力で誘惑しようとする本能を薬じゃ抑えきれないってすごいよね。僕が誰よりも頼りにしていて安心できる大好きな人が山吹先生が僕の夫になるなんてまだ少し信じられない。
先生の予定では僕の卒業を待ってプロポーズしようと思ってたんだって。でも思いが強くなる事で薬がどんどん効かなくなっちゃったせいで待てなくなったって事だった。
そうして僕は学生だったけど、その日先生のお嫁さんになったんだ。
「別に日誌なんか手渡ししなくてもいいだろ?机に置いときゃいいんじゃね?」
保健室に入ってきた2人の生徒が部屋から出ていく。
「山吹センセ、応対しなくてよかったの?」
2人が出て行った事を確認した僕は準備室の椅子に座りクルリと回転させた。
「お前が邪魔してるからだろうが。そろそろ下校時間だぞ? ぼちぼち帰る用意しろよ」
「なんかボク発情期来そうなんだよ」
「まだ早いだろう?」
僕はΩだけど発情抑制剤が効かない体質だ。初めての発情期を迎えたのは学校で、その時緊急抑制剤が効かず保健室の隔離室に避難した経緯がある。
僕はβばかりの家庭に変異的に生まれたΩのため、家庭で発情期への理解が得られない事もあって、こうして保健室でお世話になっている事が多い。
抑制剤が効かない番の居ないΩにとっての発情期は、一人で部屋に閉じ篭ってのたうち回る地獄だ。
僕の家庭環境と抑制剤が効かない身体の事を知った山吹先生は、そんな僕の後見人になってくれて発情期を乗り切る為の協力をしてくれている。
αに抱かれれば楽になるけれど、抱いて貰えなくてもαのフェロモンを嗅ぎながら中を刺激するだけでも苦しさはかなり軽減されるし発情期を早く終わらせる事が出来るから。
僕がまだ純潔を保ってられるのは山吹先生のお陰なんだ。
「だってちょっとムラムラするんだもん……」
こういう感じの時は早く始まる事が多いんだよね。
近くにいる人に手当たり次第に縋り付きたくなるあの悍ましい感覚、心と身体が噛み合わないあの恐怖は二度と味わいたい物じゃない。
「分かった。ならとりあえず隔離室入っとけ。今日は俺のマンション来とけば安心だろ」
「うん、ありがとセンセ」
発情期の間マンションに泊まり込みでお世話になる僕はお荷物だろうけど、先生の事が大好きな僕は優しい先生の好意につけ込む形でズルズルと甘え続けている。
先生が保健室を出て行き、奥にある隔離室に向かおうとした瞬間心臓が急に拍動を変えた。
ドクドクと脈打ちはじめる心臓、熱くなる身体、掌に汗が滲み出して身体が震えだす。身体中の力が抜けてその場に座り込んだ。ヤバイ……なんかいきなりキタ。早く隔離室に行かなきゃ……。
犬みたいにハッハッと息を吐き、なんとか這うようにして奥に向かう。熱い熱い熱い……。お尻の間にヒンヤリとした感触が広がって濡れているのが分かる。なんでこんな急に?!
いつもならこんな急激に来ないのに!!焦りながら必死に隔離室に行こうとするのに身体が動かないのはどうしてなんだ。冷や汗が滴り落ち、下腹部に心臓が移動したみたいにズクズクと熱を発している。
「……なん……で……」
フェロモンをブワリと発してしまうのも止められず、痛い程に張り詰めた股間を押さえる。今誰か来たらきっと僕は縋り付いてしまう。そんなのは嫌だ。助けて先生……。
じりじりと床を這いながらなんとか隔離室に入る。今回の発情期は今までで一番キツイのは間違いない。どうしようと焦りばかりがぐるぐるして頭が回らない。
息苦しさから襟元からネクタイを引き抜けばシャツのボタンも千切れてしまうし、もう何がなんだか分からない。
「桜っ!?」
ようやく先生が戻って来てくれた。
「……ったす…けて……っセンセ……怖い…っ」
先生はいつも自分に抑制剤を使って僕の発情を早く終わらせる為に手や道具を使って手伝ってくれる。先生が来ればもう大丈夫だと思った。なのに先生から僕の発情を促す強烈な甘いフェロモンを感じる。どうして? まさか先生抑制剤使ってない?
「なん……で……?……」
見れば先生は慌てて自分の足に緊急抑制剤を打ってる。なのに全然フェロモンは抑えられてなくて、むしろ増え続けてる。どうしてっ…?!
先生に手を伸ばし抱き付けば全身を包み込むような香りに安心を覚えた。
「くそ……効かない……。桜、ダメだ」
先生は縋り付く僕を引き剥がし部屋の外に出て鍵をかけてしまった。
「やだ……せんせ……置いてかないで……」
泣きながらドアを引っ掻く。苦しくて苦しくて、爪が割れるのも構わずドアに爪を立てる。
「必ず戻るから待ってろっ!」
先生が待ってろって言った。待たなきゃ……。でも苦しい。
我慢出来ずベルトを緩めて自らを慰める。お尻に指を這わせればそこはもうドロドロに濡れそぼっていた。指を含ませ自分を誤魔化そうとしても全然ダメで、ただ欲しくて欲しくて。朦朧とする意識の中、ただひたすら山吹先生を呼び続けた。
□□□□□□□□□□□□
再び先生の香りを嗅いだ事はぼんやりと覚えている。匂いに安心した途端何かを注射されて僕は眠らされ、気が付いた時には先生のマンションに居た。
「ここ……あれ……?」
眠っていたからか、少し発情は落ち着いていて、なんとか状況を把握する。
「桜、結婚しよう」
「え?!」
いきなり先生にプロポーズを受けた。
高校を卒業した後も抑制剤を効かないのを理由に先生に引っ付いていようと目論んでいた僕に異論なんてある訳がない。というか大好きな先生からプロポーズされるなんて、夢じゃないかな?
ほっぺを抓れば痛かった。
「夢……?」
「そんな訳あるか」
「僕先生のお嫁さんになれるの?」
「なってくれって言ってるんだが?」
こんな幸せな事があっていいんだろうか。僕は返事の代わりに大量に先生を誘うフェロモンを出しながら先生に口付けた。
□□□□□□□□□□□□
僕みたいに最初から抑制剤が効かないタイプの人間は時々居るけど、効いていた抑制剤が効かなくなるのは好きな人が身近な所に居る場合によくある事ならしい。先生に薬が効きにくくなったのは僕の事を好きになり過ぎたせいじゃないかって事だった。
好きな人を全力で誘惑しようとする本能を薬じゃ抑えきれないってすごいよね。僕が誰よりも頼りにしていて安心できる大好きな人が山吹先生が僕の夫になるなんてまだ少し信じられない。
先生の予定では僕の卒業を待ってプロポーズしようと思ってたんだって。でも思いが強くなる事で薬がどんどん効かなくなっちゃったせいで待てなくなったって事だった。
そうして僕は学生だったけど、その日先生のお嫁さんになったんだ。
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