鈍感手芸部員

KAIE

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鈍感手芸部員

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手芸部というのはそう珍しい物ではないと思う。が、この男子校において手芸部は非常に不人気でマイナーな部活である事は否定できない。

何が言いたいかのと言うと、俺はこのマンモス校にもかかわらずたった一人の手芸部員であるということだ。そして今日も一人黙々とクラブハウスの一室でセーターを編んでいる。

畳敷きの8畳ほどのこの部室はもともと茶道部の部室であったらしいが、今は俺一人の個人用手芸部部室となり、有り難く使わせて貰っている。

コンコンっと軽い音を立てて部室がノックされた。以前は誰も訪ねて来る事のなかった部室に最近妙に来客が増えた。

「いる?」

「居るよ」

開かれた部室のドアから匂ってくるのは甘い香り。調理部部長の差し入れのようだ。

「今日は何ですか?」

「今日はドーナツだよ」

ドーナツは好物だ。まだ暖かいそれを受け取り、口へと運べば甘い喜びが口へと広がった。

「うまっ!!」

「良かった。ドーナツ好きだろ?」

「もごっ」

「付いてるよ?」

頬に付いてしまった塗してある砂糖を調理部部長は躊躇う事なく舐めてくる。最近何故だかこういった事をされる事が多い。特に害もないので放置しているのが良くないのだろうか?

「ほら、こっちも」

今度はドーナツを持っていた指を齧られた。

「んふっ…?!」

指先からビリリとした物が走り思わず声が出た。

「指も弱そうだね?」

ニコニコとしている調理部部長の視線が怪しい気がしなくもないが、実害はないし美味しいお菓子には変えられない。

その時どんどんっと荒っぽい音が部室のドアから響き返事をする前に水泳部のエースと陸上部の期待の新人が乱入してきた。

「やっぱりここか!餌で釣るなんて抜け駆けすんなよな!」

「僕はただオヤツを差し入れに来ただけだ」

「おい、変なことされてないだろうな?」

最近毎日のように乱入者がこうして現れるのだ。こんな陰キャが一人いるだけの所に来て何が楽しいのやら分からないがきっと息抜きでもしているのだろうと、お腹の膨れた僕はまた黙々とセーターを編み始めた。
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