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しおりを挟む「あ……あの、ロラン……?」
「だっ! だめですからねっ! いくらティキちゃんが嫌だと言っても、僕はやめませんっ!」
「それは、わかってるけど……っ」
ティキ側の事情を説明してすぐのことである。
すでにティキの身体が病に侵されていたことはロランも理解はしていたし、だからこそ彼は眠っていたティキを治療し続けていたわけだ。
しかしそれは、嘘か本当かもわからない史実と、目の前の彼女の病に向きあっていただけ。
あらためてティキが説明したことで、彼女の抱えた事情を本当の意味で共有した。
史実がおおよそ正しかったという事実を知った瞬間、ロランの目の色が変わったのだ。
まるで、裏がとれたと言わんばかりに。
慌ててベッドの方へと連れていかれ――今。
「あっ……ひゃ、あん……っ」
「おっ……おとなしく、しててくださいっ。本当に病が治ったのか、きちんと検査せねばなりませんっ。
魔力を蝕む病魔菌を血液内に発見しましたからね! 僕は、それを取り除いてきましたけれどっ。ティキちゃんの魔力が廻りはじめて、眠っていた病魔菌がまた活動をはじめたかもしれませんしッ!
――って、魔力脈750-2511!? す、すごい数値っ。だけど、異常はない……のかなっ、経過観察が必要ですね、ええ必要ですっ。ええと、こっちは……?」
「あ、ひやああ!」
うつぶせの状態で白衣を捲られて、背中になにやら片手で持てるサイズの装置をあてられる。滑りのある薬のようなものを塗りたくられ、そこに熱を照射された。
魔力脈が傷ついていないのか、病魔菌が残っていないか、正常に魔力生成ができているのか改めて確認している――ということなのだろうけれども、身体の至るところに触れられ、ティキは身をよじる。
「んっ……ロラン」
もともと、サイズの大きなロランの白衣を一枚羽織っていただけだ。白衣をまくり上げられている今、ほとんど裸の姿を再び晒すことになってしまった。
あのティキを治療するための液体に満たされた筒の中で、ずっと裸の状態を観察されていたこともわかっている。
けれども、実際に目ざめているときに、こうしてキワドイ姿に触れられているのはワケがちがう。
「だめ……お薬で……シーツが……シーツが汚れちゃう……」
それっぽい理由を重ねてみたけれどもムダ。ロランは真剣な表情で、ティキの身体に触れている。
「汚れても洗えばいいですからっ、気にしないで、ええ全然気にしないでいいのですっ。
このローションは魔力の状態を調べるためにゼッタイに必要なものですから、我慢してくださいっ」
「で、でもっ……んっ……」
彼の言っていることは本当だ。
身体の表面に塗ることで、魔力を通しやすくするものなのはまちがいない。……のだけれども、ここでひとつ、大きな問題が発生している。
完全に偶然だと思うのだが、あまりにも、ロランと魔力の相性が良すぎるのだ。
他人の魔力を流されると、大抵は悪寒が走ったり、多少気持ち悪くなったり、拒否感を伴うことがほとんど。
けれども、相性がいい場合は、その心地よさに自分の官能を引きずり出されると言われているわけで。――すなわち、ティキは今、感じたことのない快感をその身に受けているのである。
彼の手が触れるたびに。
彼が検査のための機械を当てるたびに。
――さらに、その機械から彼の魔力を流されるたびに。
検査をされるのは背中だけではない。
おしりを丸出しにされて、そこにも機械が触れていく。
ティキはその白い肌にてらてらと透明なローションをまとって、艶めかしく身を捩っているわけである。
さらに両方の太ももから足先まで、じっくりねっとりと、ロランによってローションが広げられ、そして機械がすべっていく。
「ふおおお、ティキちゃんの魔力、僕とぴったりみたいで歓喜しかないのですがっ。あっ、ティキちゃん、いまのところ身体に異常はないですからねっ。ティキちゃんの病気、しっかりよくなってるみたい」
「だったら、もう……!」
「いいや、だめです、まったくもってだめですからっ! 少なくとも2日に1回、ゼッタイに検査必要ですから、これに関しては譲れません。何かあったらどうするんですかっ」
「そ、それは……っ」
ティキは自身の身体を蝕んでいた病気のことなど、さっぱりわからない。
だから自分を治してくれたロランの言うことは聞くべきなのだろうけれども――、
(ふ、……2日に1回!?)
そんな頻度で、こんな恥ずかしいことをやらなくてはいけないのか!
「ほら、反対向いてくださいっ。ま、前もっ、診ますからっ」
(どうしてそこでどもるかなあ!)
ティキは心の中で全力でつっこんだ。なんだかこれじゃあ、イケナイことをしているみたいじゃないか。
「ん……」
全身にピリピリとした心地良い快感を覚える。
ティキは己を抱くように胸の前で腕を交差させながら、ちらりとロランの方に顔を向けた。
相変わらず長い前髪に両目は隠れてしまっているけれど、その表情は真剣である。
――一見変人に見えるけれども、ティキを見つけて、永い眠りからさましてくれたひとだ。
(わ、私が信用しなくてどうするのっ!!)
とティキは自分に言い聞かせる。
たくし上げていた白衣を一度降ろし、おそるおそる身体をころりと反転させる。背中や脚の裏っかわはローションでたっぷりと濡れているために、少し気持ちが悪い。
ただ、さすがに前を全開にするのは気が引けて、ティキは白衣をぎゅっとつかんだ。
「ああああのティキちゃん大変言いにくいのですが、白衣をですね……っ」
「そ、そこでどもるのやめて……ほしい……」
ティキの裸はすでに見慣れているだろうに、ロランの両頬は真っ赤になっている。
あわあわと落ち着かない様子で、彼はローションで汚れた手で自分の頬や首を触ってしまっていた。そんな彼が妙に艶めかしく見えるのは、今、ティキが魔力で酔っているような状態になっているからだろうか。
「あのそのやましい気持ちはな――」
ぼたっ。
…………ときに鼻血は非常に雄弁であった。
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