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番外編(後日談)
〈文庫化記念〉番外編7−4(完)
しおりを挟む————で。
「…………レオルドの、ばか」
「だから、悪かったって」
「ぅぅっ、せっかく、心を込めて作ったのに……そっちのけでアンナコトしちゃうし……」
いじいじいじ。
いじけるシェリルの仕草がすっげえ可愛くて、オレはうしろから、石鹸の香りがする彼女を抱き込む。
「だから。ほら。手伝ったじゃねえか。……だ、だめか?」
たっぷりコイツを愛してから、ふたりして昼間から風呂して、着替えて、キッチンもかたづけてな?
——やー。アンナのやつ、気をきかせてはくれたけど、しっかり最後まで責任は持てって感じでよ。
汚したキッチンまで、まあ、綺麗にさせてもらいました。
もちろん、オレが。ひとりで。
溢した生クリームを片付けて……まあ、他にも色々な? ……うん、色々、綺麗にしなきゃいけねえもんがな。はい。
…………おかしいよな。オレ、アンナの主人なはずなんだけど。……なんだろうな……罰を受けているこの感覚……。
っとまあ、きちんと片付けたから、その話はもう終わりにして。
シェリルが途中まで作ってたケーキ。結局、オレも手伝って仕上げまで一緒に作ることになった。
つっても、生クリーム作り直して、飾り付けしたら終わりってことらしいから。
オッケーオッケー。オレの芸術センスに任せとけっつって、ありったけの苺ぶっさしたらスネられた……なぜだ……。
「いやいや! でも、最高の! うん、美味そうだし! 最高のプレゼントだって! マジで!!」
「えっちの方がよかったんでしょ……?」
「うっ……!」
そ、それは……。
男なんだから仕方ねえ……つったら、キレられそうだな。ぐぅ……。
ばつが悪くて頬をぽりぽり掻いていると、ぐりんとシェリルのヤツ後ろ向いて——だから、その上目遣い。可愛いから。やめろ……って。
ぎゅって、手首引っ張られて。オレはシェリルのなすがまま。
屈んだところを、ちゅってキスされて。
「これで、許してあげる」
「っ……!」
「……今日、いろんなところにキスくれたのに。唇には、一回だけしかしてくれなかったんだから……」
なんて、唇を尖らせて拗ねるシェリルを前にして、オレはどうすりゃいいのかわかんねえ!!!
ああ!
くっそ! かわいい!!
風呂ったのに、またヤりたくなっちまう! どーしてくれんだ!!
オレは頭を抱えたい気持ちになりながら、はああああ、と大きく深呼吸する。
うん、我慢だ。オレ。夜まで。……いいよな? 夜だったら、もう一発……二発、三発……くらい、頂いても……よし、夜までに溜めとこう。
オレはそう心に決め、今はこの、シェリルの本当のプレゼントだっつうケーキに向きあうことにする。
「……しかし。祝ってくれるのは嬉しいが……なんか、くすぐったいものだな?」
「来年も、お祝いしちゃ、だめ?」
「ぐっ……」
澄んだ黒い瞳に見つめられ、オレはたじろぐ。
「いや。大歓迎なんだが。——なんだか悪いな。気ィつかってもらってよ」
「気を遣うとか、そういうのじゃなくてね?」
シェリルはそう言って、見目の悪くなっちまったケーキを、茶のセットと一緒にトレイに乗せ、持とうとする。
ま、そこはオレが持つべきだからな。シェリルからサッと奪ってよ。
はにかむシェリルが赴くまま、オレはトレイを持って一緒に歩いていく。
どうやらシェリルは、自分の部屋に向かうつもりらしい。
「一緒に、ちゃんと歳を数えていきたいなって思ったの」
「だいたいだが数えてるぜ? 毎年、春に」
「うーん。そうなんだけどさ。もっと。ちゃんと」
言わんとしてることはわかる。
コイツは根が真面目だし。オレのこと、しっかり考えてくれてるからな。
困ったように笑う彼女がいじらしくて、抱きしめたくなる。
ま、今、手元が塞がってるから、出来ないんだけどよ。
——つまり、態度で示すことが出来ないから、言葉を尽くさなければいけないわけで。
「別に。誕生日を教えるのが嫌だったわけじゃ、ねえんだ」
「レオルド……」
「ただ——オレは。お前とは、結構歳が離れてるからよ」
毎年。
これからずっと。
歳をとるたびに、その現実に直視するのが嫌になるんじゃねえかって、思うことがある。
オレは、自分の年齢とかあんまり考えたこともねえし、精神もガキのまま止まっちまってる自覚もあるし。一人で生きてる分には、気にならなかったのにな。
でも、オレはきっと先に死ぬ。コイツを残して。
気が遠くなるような未来のことを直視するのが、たまらなく辛くなることがある。
……なんてオレのちっぽけな感情、シェリルにはお見通しかもしれねえがな。
それでも、オレは誤魔化すように笑う。
「なんつーか。…………まあ、大人の意地? つーか。別に、若作りしたいわけじゃねえんだけど、その」
「……」
「たまに。無性に悔しくなることがあるっつーか。……もう少し、歳が、近かったらとか、思っちまうっつーか……」
「…………レオルド」
かっこ悪いよな、オレ。
結局、怖くて。ダセエ、ガキみたいな理由で。
祝われるような歳でもねえからとか誤魔化して、直視するのを避けてた。
「…………ガキみたいな大人だって、笑うか?」
「ふふっ」
子供みたいだって、笑う?
それが彼女の口癖で。ことあるごとに、そうやってオレにうかがいを立てるシェリルのマネみたいになっちまって、さらにカッコつかねえ。
でも、シェリルは嬉しそうに笑いながら、自分の部屋のドアを開ける。
お茶をするためにと綺麗に整えられた部屋に、彼女はするりと先に入ってから、どうぞ、お席にと手をかざす。
「ガキみたいな大人と、子供みたいなわたし。お似合いだと思わない?」
「————くっ、そうだな」
得意の屁理屈かまして笑うシェリルが可愛くてしかたねえ。
早く、コイツの頭を撫でて、キスをしたくて——オレも彼女に導かれるまま、彼女の部屋に足を踏み入れたのだった。
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お声をお届けくださいまして、ありがとうございましたヾ(*´▽`*)ノ
本買いました!手に入れました!(* ̄∇ ̄)ノ
レ……レオルドが……めっちゃ爽やか好青年………!Σ( ̄□ ̄;)
いや、カッコいいっすよ!……( ̄▽ ̄;)
シェリルちゃんも可愛いwww
イメージイラストも掲載ありがとうございますw
また読み直ししてニマニマしてます(///∇///)
わーい!ご購入くださいまして、ありがとうございます〜!
とってもとっても嬉しいですっ三└(┐卍^o^)卍!!!
レオルドが凄まじいイケメンに進化を遂げておりますし、シェリルもめっちゃ綺麗ですよね(*ノωノ)
おにゅうなビジュアルのふたりも、可愛がって頂けますととても嬉しいです〜!
そしてかつてのイメージイラストも、かなり高解像度でアップできましたので、是非細部まで眺めてくださいねヾ(*´▽`*)ノ
読み返しも嬉しいです…!たくさんの嬉しいお言葉、ありがとうございました(*´∀`*)