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第1話 嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。
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しおりを挟むどどどどどどどどどうしよう!!!
いやいやまって、落ち着け、わたし。
そもそもあれは、ただの罰ゲームだったわけで。
わけを! わけを話してですね!!
誤解を、とかなければ……っ!
と、ここで脳裏に蘇る昨日の容赦のないちゅー……。
ああああああ!!!!!
めっちゃ、キス、したよね!?
なにあれ、すっごい、濃いの、しちゃったよね!?
っと、ヤバ! ちょっとだけグラスの水こぼしちゃった。水。あ、そだ。お水飲もう。ほら、落ち着け。落ち着いて、わたし。
えーっと。
キスは、した。うん、したぞ。覚えてる。はい。ファースト、キス、しちゃったわけで。
よりにもよってファーストキスをラルフに奪われるかなぁ……いや。わかってるよ? わかってますって?
どう考えても、わたしが悪い。最低だ。冗談でも嘘で告白なんかするからだ。全部わたしのせいで自業自得なんだから、一切文句言っちゃだめ……わたしに、……文句を言う権利は、ありません。うう……。
ラルフはあれかな……ほら、いつもの調子でさ?
わたしがイケるって思ったから、調子に乗ってキスしたとか?
……うん、ラルフなら、ありえる。ありえるんだよ。
体だけ弄んで、ぽい、みたいなの。いろんな女の子にさ、しょっちゅうしてたはずだしさ?
……いや、だからってラルフのこと悪く思うのも気がひける。
だってだって、今回のことに限ってはわたしが全面的に悪いんだもん。すぐに手を出したからって、彼を悪者にしていいはずがないわけで。
あやまって、全部話さなきゃ。
大丈夫、ラルフもきっと、本気じゃない。
大勢いる女の子のひとり、みたいな扱いしただけだよね……そうだよね……?
………………そう、思ってたんですけどね?
「リリー。準備できたぞ。起きれるか?」
「へっ!? ふぁ……ふぁい!」
「ぷっ――なんだ、その返事」
隣の部屋から顔を出したラルフってば、わたしが手に持ってた空のグラスをひょいってうけとってさ?
「まぁー……今さらだもんな。緊張、するよな。オレもだ。でもまあ、ちょっとずつ慣れてってくれよ?」
なんて、気恥ずかしそうに言われたものだから、また頭真っ白になってしまった。
だって、いつもだったらさ、飲み潰れて、今だって、髪の毛もぐしゃぐしゃだし、わたし、くさいと思うし。つっこみたい放題、バカにし放題なんだよ?
なのにひとこともバカにしないし、からかわないし、……なんか、気をつかってくれてるし。
「……昨日は、悪かったな?」
「え?」
「その、オマエ、真面目だから、あんなところでキスとか……イヤだったろ? オレ、ちょっと、嬉しくて、有頂天になってたっつーか……むしろ、頭回ってなかったっつーか……その、ほんと、バカで」
「……」
「あの! ほんと、今まで遊んでたの知ってるだろうし、今さらなにをって思うかもだけど!! ほんと。オマエのことは、ちゃんとするから。だから、その、……」
「……」
「~~~~っ。メシ! 食おう! だめだ、マジで照れるっ」
なんて、体支えられて、起こされて、手を引っ張られて、隣のダイニングに……って。
え?
ほんと、誰……?
目の前にはトーストと、焼いたベーコンと卵。卵は両面よく焼き。これは、わたしの好みに合わせてくれているわけで。
「ほら、ぼさっとしてないで、食ってくれ。今日も仕事だろ? 送っていくからよ?」
ほんき、なのではないでしょうか。
だって、こんなラルフ、見たことないよ?
下手な演技とか絶対できないひとですよ? っていうか、これが演技だったらわたし、立ち直れないよ? いや、なにから立ち直れないかはわかんないけど。とにかくこれは、マジの、マジ。
「あの……ラルフ、あの、ねっ」
「ん?」
コーヒーを渡しながら向けてくれた、彼の笑顔にひるんだ。
「…………美味しそう、ありがと」
「おう」
……言えなかった。
あれは嘘だなんて、とてもじゃないけど、言えなかった。
「オマエが素直に礼言ってくれるなんてな」
しかも彼は、はにかむ笑顔でなにかを噛みしめていた……。
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