【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

文字の大きさ
3 / 59
第1話 嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

1−3

しおりを挟む

 頭がくらくらする。
 っていうか、痛ったい……。

 わたしが頭を押さえながら体を起こすと、そこは見慣れた家だった。
 ……うん、見慣れた家ではあったのよ?

「…………えー……と……」

 ……ただ、自分の家でなかっただけで。


 間取りはうちとまったく同じ。寝室が北向きでちょっと寒い、小さなアパート。
 しかも寝室になってるこの部屋には、剣やら槍やら弓やらが所狭しと並べられている。
 ラルフは器用だからね……クエストによって、持っていく武器もいろいろ変えているのは知っている。
 腕は若手だとナンバーワンで、相当稼いでいるはずなのにね。ラルフはいつまで経ってもこの部屋から出ていく気配はなくってさ。
 ……っていうかここ、どう考えても、やっぱりラルフの部屋ですよね……?

 瞬間、昨日の夜のアレヤコレヤが頭によぎって、わたしはばばばっと、自分の体を弄った。

 服っ!
 服は、着てる……よねっ!?
 だいじょうぶ!?
 …………あ、大丈夫っぽい……? うん。昨日の服のまんまだ。
 ちょっと、上のほうボタンゆるめてあるけど、まあ、それは寝苦しかったからだろうし……うん、体、へんなとこ、ない。だいじょぶ。だいじょうぶ。

 いつもゆるっと編んである量の多い茶色い髪はほどいてあって、ぐしゃぐしゃになってる。
 いつもと変わらない、地味なわたし。

 そだよね。夢だ。
 うん。わたし、呑みすぎ。
 だから仕方なしにラルフに連れて帰られたってだけ。

「はぁー……」

 安心感からか、ついつい大きなため息がでちゃった。
 まあ、あのラルフが? 今さら? わたしに手を出すとか絶対ないもんね。

 っていうか、本気で呑みすぎた。わたし、くっさい。
 ラルフが連れて帰ってきてくれたみたいだし、寝室占拠しちゃった。それはちょっと申し訳ないなあとは思うけどさ。
 いやでも、いっつも迷惑かけられてるのはわたしだもん。たまには、いいかな、とも思うわけで。
 でもいまは、わたしの家に戻って、体きれいにして、はやく着替えたい。
 お仕事には間に合うと思うけど……って思ったところで、となりの部屋から足音が聞こえてきた。

「お。――起きたみたいだな」
「!」

 もちろんね、ラルフですよ。
 そりゃあ、いるよね……。

 見慣れた顔すぎて、特別感もなにも出てこない。
 どうせ酔いつぶれたわたしを介抱してやったんだぞ、寝床占拠されたんだぞって、このさき1ヶ月くらいずーっと言われ続けてこき使われるんだ。
 わたしにはわかってるんだからね。
 だからつい身構えちゃう。

 ほーら、見てみなよ。ラルフの顔。
 いつものようにいたずらっ子な顔つきになってさ?
 なって……なって……、
 …………あれ。
 ならない。

「どうだ、気分は悪くないか?」

 え?
 いやいやいや、なにそのやさしい顔。

「ほんと、バカだな。呑みすぎだ。今度から、オレのいないところで、そんな呑むんじゃねえぞ?」
「え……あ、の……」

 ぐしゃってわたしの頭を撫でてさ?
 っていうか、その手に持ったグラス、何?

「喉渇いてないか? 飲んどけ、な? いま、朝メシの用意してっからさ」

 なんて、お水の入ったグラスを両手に握らせてくれてさ?
 少し迷うように視線を彷徨わせたあとにさ、ちゅって。
 ……!?
 ……ちゅって、おでこに、ちゅーしてくれちゃってさ!?

「ま、オマエほど凝ったモンはつくれねーけどよ。そこは文句言うんじゃねえぞ?」

 なんて、ちょっと早口にいいながら、隣の部屋に去っていく彼は――、
 ――え。ええ。えーっと。どなた、かな?

 握らされたグラスを見つめたまま、わたしはしばし考える。
 さっきのラルフの表情、あれは、なんだ。
 妙に落ち着きなくて、妙に優しくて、妙に早口だった彼は、なんだ。


『信じてもらえるかわかんねーけど、オレも……ずっと、オマエのこと、好きだったからよ……?』

 オレも……ずっと、オマエのこと、好きだったからよ……?

 オマエのこと、好きだったからよ……?

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………ゆめじゃ、なかった……?


 つまりだ。
 信じがたいことだけれども、つまり。

 わたしが、(嘘だけど)告白して。
 彼が、(嘘だと気がつかずに)受け入れてくれて。
 むしろ……告白し直してくれて?

 あれ……これ、ラルフの方からしたらさ……まさかの……両想い状態、だったり、するっ!?
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。

カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」 なんで?! 家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。 自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。 黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。 しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。 10人に1人いるかないかの貴重な女性。 小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。 それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。 独特な美醜。 やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。 じれったい恋物語。 登場人物、割と少なめ(作者比)

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

処理中です...