【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

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第1話 嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

1−2

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 ちがうの。
 ちがうのです。
 これには深いわけがあるのです。

 そもそも、今日はわたしの誕生日だったわけでして。


 わたし、リリーがこのエイルズの街に出てきてから5年。
 ギルドでもそこそこ真面目に働いてきたから重用されて、冒険者の顔見知りもすごく増えた。

 釈然としないけど……まあ、ラルフと幼なじみだったおかげで? 難しいクエストは彼に押しつけて、実績を上げさせてもらったってのもあるよ?
 いやでもさ。
 幼なじみの縁だからって、彼ってば、わたしの借りてる部屋のすぐ近くに住むし、朝ご飯とか夜ご飯もしょっちゅうたかりに来るし、のくせ、コロコロ彼女変えてはギルドの受付まで自慢しに来たりするしさ?
 部屋が汚くなったから掃除しろだのなんだの、家政婦かっていうの!

 でもまあ……そのかわり、難しいクエストとか、めんどくさいクエストとか? ぶつぶつ文句言いながらも率先してやってくれるからさ。持ちつ持たれつみたいな感じで、許してはいたよ?
 つまり! わたしとラルフは! ほんとうに! ただの腐れ縁なわけですよ。
 それ以上でもそれ以下でもない。

 っていうか、ラルフに彼女いたときとか、わたしの方がさ、こっちの部屋に来るなーって追いだしてたくらいだしね。
 そのへん、めちゃくちゃ気を利かせたわけで。……っていうか、よく彼女らしき人からやっかみも受けていたわけで。
 ラルフってば全っ然女の子大切にしないから、そのあたりのわたしの被害は莫大だったもんね。
 というわけで、腐れ縁ではあるけれども、わたしはずっと、ラルフとは線を引き続けていた。
 冒険者としては凄腕だし、尊敬するけれど、仕事と私生活は別。
 っていうか、私生活になると、本当にだらしなくって、どうしようもない、でっかい弟……っていうのかな。むしろ弟以下だよ。
 あ、歳はね? 彼が1コ上なんだけどね?
 とにかく、厄介な隣人の腐れ縁、それがラルフの位置づけだった。


 で、まあ、そんな彼になぜ告白しなきゃいけなくなったのか。
 あ、もちろん、嘘告白なのですが……。
 それもこれも、今日わたしが誕生日だからって、ギルドで呑んでた冒険者さんたちが、仕事終わりのわたしを呼び止めたのがはじまりなんですよ。

 エイルズの街に出てきてから5年……ずっと、ずーっと、彼氏なんていませんでしたからね? どうせ一緒に過ごす男もいないだろうからって。
 ふんだ、いませんよ、どうせ。
 22もなって処女ですよ、わたしはっ。
 ここはそこそこ大きな街だし、ギルド嬢ってさ、一応花形なんですよ?
 まわりの女の子たちは、それはもう、モテてるコばかりだしさっ。

 いやいやわたしだって、男の人にそれなりに声をかけられたことはあるんだよ?
 ……でもね? デートする前に、なんでか向こうから断られちゃうっていう……。
 デートに誘っておいて、やっぱりなかったことにしてってどういうことかな!?
 好き、まで気持ちのふくらんでない人に、なぜか一方的に振られる気持ち、わかります!?

 っていうわけでね!
 もうね、やけ酒ですよ。
 彼氏いない歴22年。お祝いされてやろうじゃないですか。
 みんながおごってくれるっていうしさ、親友で同じギルド職員でもあるケーシャも来てくれたからね? 一緒に騒ぐ女の子がいたから、わたしもついついはしゃいじゃいましたよ。

 ハイハイわたし22になりましたよ。彼氏いません。彼氏募集中! ってね?
 みんなに慰められながらさあ、いつもよりちょーっとだけいいお酒呑ませてもらってさ。ふわふわーってしてたら、はしっこのテーブルでカードゲームしだす連中がいてさあ。
 普段はあんまりそういうの参加できなかったんだけど、誘われて……楽しそうだったし、断れなかったしで……参加したらね。まあ、普通に負けましたとさ。めでたしめでたし。

 で、罰ゲームだなって話になって。
 いやいや、わたしは誕生日なんだから、免除ですよねって主張したんだけど、みんな盛り上がっちゃってさ。
 そこで、ケーシャが、誰かに告白とかぁー? って。冗談でもいいからって、すっごくニヤニヤ言って。
 あろうことか、そのタイミングで、丁度クエスト報告終えたラルフがやってきたっていう……。


 いえ。
 周囲に流されたわたしが、悪かったんです。
 悪かったのですとも。

 でもまさか……ラルフが、あんな反応するだなんて、予想できるはずがないじゃん!?
 大まじめな様子でさ?
 オレも、オマエが、好きだった…………??? とかなんとか言ってたよね?????

 え???

 いや……?????


 …………ないでしょー……。

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