【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

文字の大きさ
53 / 59
第3話 まさか聖夜にプロポ……いえ、わたしなにも気がついていません。

3−13

しおりを挟む
「ええ、ラルフの」
「ラルフ魔力ないですよ?」
「アイツは魔道具のエキスパートでしょう? 魔力がなくてもどうとでもするでしょう。だから、とかなければ」
「洗脳を? わたしに?」
「当たり前じゃないですかっ。でないと、ありえないでしょう!? あなたが、ラルフとだなんて!!」

 アレクシスさんってば、すっごく心配そうでさ。
 真剣に、両肩に手を置かれて告げられて、わたしははっとした。

 そうだった!
 なんてことだろう!
 わっ……いままで気がつかなかったとか……!

「ごめんなさい! アレクシスさん!」

 そうだよね!
 アレクシスさんには、昔からめちゃくちゃお世話になってるから、ひっどい幼なじみがいるんだって散々愚痴っちゃってた過去がああああ……!!
 それをわたしが訂正せずにいたから、もしかして、無理矢理つきあわされているとか? なんかラルフに脅されたとか!? 裏があるって、考える可能性、たしかにあるもんね!!
 うわわわわ、アレクシスさんにも、ラルフにもっ!! すっごい申し訳ないことした!!!

「かっ! 勘違いなさっているみたいですがっ」
「?」
「わっ。わたしっ! あのっ、わた……」

 いやでも改めて知人にこういうこと言うの、恥ずかしいけどっ、でもっ。

「あの。わたしが……ラルフのこと……す…き……になっちゃって」
「うっ」
「あの。つきあいはじめたら、いいとこ、いっぱいあったこと知ったっていうか。
 誤解というか、わたしが愚痴ばかりいってたからですよね? ごめんなさいっ。あの、わたしもちゃんと気がついてあげられなかったんですけど、ラルフ、すごく優しいとことかもあったりして……」
「ううっ」
「心配されているようなことは全っっっ然ないっていうか。ほんとに。ちゃんと――うん。言いきるの、恥ずかしいけど。でも。その…………好きなんですっ!」
「っ……!」
「アレクシスさんがいいひとすぎて、ついつい愚痴りすぎてたんですよね。すみませんっ。
 勘違いさせて、助けようだなんて……ご親切に、ありがとうございます。アレクシスさん、ほんっとうにいいひとですよね……っ!」
「ぐぐぐぐぐっ……」
「アレクシスさん? アレクシスさんー???」

 あれっ?
 反応がないよっ???

 アレクシスさんってば、肩をぶるぶる震わせながら、なんだか顔色が悪くなっているというか、無の表情になってきているというか……。
 よっぽど心配させちゃったんだなって思う。
 いきなり隣町まで連れてこられたのはびっくりしたけど、でも、たしかに相手があのラルフだもんね……。
 確かに、ラルフから逃げようと思うと、隣町くらい来なきゃいけないと思う。

 わたしが愚痴ばっかり言い続けてたせいで、そこまで実行してくれたってこと?
 えっ?
 アレクシスさんいいひとすぎない?
 わたしが洗脳されてるから、騙すような形で連れてきてくれたとか、リスクも考えただろうにさあ!

「ほんっっっとに、ご心配……ううん、誤解させるようなことをして。ご迷惑かけてごめんなさいっ! ラルフはぜんっぜん悪くないので、あの、責めるならわたしを……っ」
「――――」
「あれっ。アレクシスさん? アレクシスさーん???」

 なんか若干白目むいてるけど大丈夫かな!?
 気疲れ!? 思い詰めすぎ!? ベッドに寝かした方がいい!?
 ――って、わたわたしてたらさあ。



「ぷっ……!!」
「ふふ……ふふふふっ……」

 なんか、入り口のドアの向こうから、吹き出すような笑い声が聞こえてきたんだけど?
 あれっ、この声……?

 がちゃ。

 部屋のドアがひらかれて、見慣れた面々が押し合いながらこっちの様子に聞き耳立てていた事実を知った。
 っていうか、ラルフ!
 ミリアムに!? ジャックさんまで!!??

 靴とかどうでもいいから立ち上がって、わたしはベッドから降りる。

「リリーちゃん……最強すぎる……」
「ふふふっ。そいつ、もう再起不能なんじゃない?」
「あははっ、いやでも。わかる。わかるよ。リリーちゃんはこうでないと」

 なんかジャックさんとミリアムが好き勝手言ってるんだけど?

「ええと?」
「ぷっ……いやいや。これ。この天然に、ラルフも長年苦労してたからさ? くくっ……!」
「ほんっと。……あはは、おかし……!」

 みんなゲラゲラ笑ってるんだけど。

「あの、みなさん。ここ、宿らしいんだけど? 夜だからね? 他のお客さんに迷惑が」
「ぶぶぶぶっ!!」
「くっ……!!!」

 なんで余計に笑うかなあ!?
 ねえ、ラルフ。って、わたしは彼の方に視線を向けたらさ、なんか。

「……っ」

 めちゃくちゃ、真っ赤になって、固まってて。

 ……あ。
 そっか。
 さっきの話。めちゃくちゃ聞き耳たてられてたってわけで。

 つまり、好きっていう気持ちとか。
 優しくなったってこととか。
 ついつい気恥ずかしくて、ごまかしちゃう言葉もぜんぶぜんぶ聞かれちゃってたわけで。

「…………ええと。その。――全部、本心だよ?」
「お、おう……」
「つきあう前のことだけど。いっぱい、悪口言っちゃってた。……ごめんね?」
「いいよ……オレも、ロクな男じゃなかったし……」
「うん……ちゃんと、いま、とってもやさしいと、思う」
「……おう。これからも、オレ、ちゃんとする」
「ありがと……」

 なんて、モジモジしてたらさ。

「おーい、このおにいさん白目剥いてるから、そこでイチャイチャするのやめてあげてくれるー?」
「??? あっ……ごめんなさいっ。なんか、アレクシスさん具合が悪いみたいでっ」
「ぎゃはは!」

 もう! みんなどうしてそんなに大笑いしてるのかなあ!!

 あ。でも。
 そっか。心配して、隣町まで助けに来てくれた、とか!?

「あの、アレクシスさん、わたしのせいでなにか勘違いしてたみたいなので、責めないであげてください。とってもいいひとなので!!」
「ぶぶぶっ」
「すげえな、リリーちゃん……」

 えええ? なんでそうなるの……???
 ね? ラルフ???

 ってラルフのほう見上げたらさ?
 ラルフ、わたしのことぎゅーって抱きしめて、そのまま抱き上げられちゃったんだよね。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。

カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」 なんで?! 家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。 自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。 黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。 しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。 10人に1人いるかないかの貴重な女性。 小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。 それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。 独特な美醜。 やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。 じれったい恋物語。 登場人物、割と少なめ(作者比)

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

処理中です...