【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

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第3話 まさか聖夜にプロポ……いえ、わたしなにも気がついていません。

3−14

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 ラルフたちがわたしを追ってきてくれたそのあと。

 真っ白になってたアレクシスさんの背中をみんな、バシバシたたいてた。
 なんだかめちゃくちゃ励まされてたけど、大丈夫かな……。
 エイルズの街の方ではね? アレクシスさんの行動が、どう見ても誘拐としか考えられなかったってことでさ。なんだか大騒ぎになっちゃってたみたいで。

 通信の魔道具で連絡をとりあって、職人ギルドの方に問い合わせたりとかしてくれたり……あとは、ミリアムの魔法で、わたしの居場所も探してくれたみたいでさ。いろんなひとに、めちゃくちゃ迷惑かけてしまっていたみたい。

 ここで衝撃だったんだけど。
 ……聞いた話だと、アレクシスさん……仕事やめてたっぽい……。しかも、つい最近。
 ぜんっぜん部署替えなんかじゃなかったし、職員のふりして、今日、一緒に倉庫街回ってたの!? って思ったらなんだかめちゃくちゃ怖くなってさ。
 まとめると……アレクシスさん、わたしのことすごく気に入ってくれてたみたいで。
 ラルフとつきあっているのが、洗脳によるものだって思い込んでて。その魔法をといて、わたしを……。

 ……。
 …………いや。うん。あのね。
 その。
 そこまで聞いて、わたしもようやく、怖くなったというか。
 現状を正確に把握したといいますか。
 うん。

 アレクシスさんには悪いけど、ちょっと……こわい、かな。うん。
 わたしが昔からラルフの愚痴をついつい言っちゃってたせいってのももちろんあるからさ、申し訳なかったなって気持ちもあるんだけど。
 ほんと、その気持ちには、ごめんなさいというしかないといいますか!

 あ。でもねっ。
 お世話にはなったから。すごく。
 だから、アレクシスさんのことはそんなに悪いようにはならないよって言ってもらって、ほっとした。

 それに、もう十分罰が下ったからって。
 罰っ??? って焦ったけど、みんなカラカラ笑ってたから、冗談のようなものなのかな?
 っていうか、ミリアムさんたちはこれから、さっきの宿の1階の食堂で、アレクシスさんを囲む会をするんだって。うん? なぜ???
 ……なんでそうなるのかはさっぱりわからないけど、面白がってるんだよね、みんな。で、明日、アレクシスさんをエイルズに責任もって連れてってくれるってさ。
 もちろん、わたしとは別行動に。
 わたしには、ラルフがついてたら大丈夫だろうからって。
 みんな、めちゃくちゃ笑ってたけど、ラルフは――、

 ラルフは――真剣、で。



「ねえ、ラルフっ」
「……」
「あの……ラルフ?」

 呼びかけるけど、こたえてくれない。
 ラルフは口を閉じたまま、もとの宿を出る。

 どこに行くつもりなのかはわからない。
 でも、彼の目がね? なんだか、不安で揺らいでいるような――そんな感じがして。
 わたしは彼に抱き上げられたまま、ちょっと恥ずかしいけど、でも――離れがたくて、ぎゅっとしがみつくように腕を回す。

 ……そっか。
 そだよね。
 きっと、めちゃくちゃ心配させた。
 だから、わたしも、いっぱいラルフに謝らなくちゃ。
 心配させてごめんね。
 助けに来てくれてありがとう、って。


 ラルフはどうやら、別の宿に向かってたみたいでさ。
 もう目星はつけてたみたいで、中へと入る。
 抱きかかえられたままなのはちょっと恥ずかしいけど――あっ、宿屋の旦那さんっ、そんな、悟った顔はしないでっ!! 
 恥ずかしすぎるので、ラルフの胸をかりて、顔は隠させてもらっちゃう。

 で、2階の角部屋借りてさ――ラルフは無言で中に入ってさ? そっとわたしを、窓際のふたりがけのソファーにおろして。

「……っ」

 眉をぎゅっと寄せて、わたしに顔を近づける――。

「ン……っ」
「……っ」

 むちゃくちゃ激しいキスをされた。
 むりやり唇をこじ開けられて、乱暴なくらい、舌を絡められて。
 彼はソファーに片膝をかけて、わたしにのしかかるようにして。

「ま……」
「リリー」

 焦るように、もう一度キスされて。わたしは胸がいっぱいになる。
 ほんとに心配させたんだ。
 こんなにも真剣に、好きでいてくれるんだって。

 だって、あのラルフだよ? いつもフラフラしてて、お調子者でさ?
 ……すぐえっちしたがるし。もちろん、好いてくれるのはわかるけど――こんな真剣な顔させることって、いままでなかったもん。
 だからね?

「ね、ラルフ……」
「ん」
「好きだよ?」
「……ぉ、う」
「助けに来てくれて、ありがと」
「……っ」

 顔をぐしゃぐしゃにして。ちょっと泣きそうな目をしてさ。
 しんぱいした、って。
 掠れた声で、彼はそう言って、わたしを強く抱きしめるんだ。

「変なこと、されなかったか?」
「うん」
「……ほんとに?」
「たぶん」
「……多分?」
「えっと。途中、なんか、眠っちゃってたみたいで」

 みしっ!

「!? んんんっ、痛っ!! 痛いよ、ラルフっ」
「! す、スマン……つい……!」

 よっぽど動揺したのか、めちゃくちゃ強く抱きしめられて焦った。
 ……そだよね。連れ去られて、眠らされて、宿とか……。
 でも、服とかも、変なところなかったし。アレクシスさん、妙に紳士的なところあったし。だいじょうぶ、なはず……!

「ご、ごめんなさい……」

 でも、心配するの、当たり前だ。
 ごめん。
 ごめんね。
 何度も、伝える。

「うん。……いや、オレも。警戒が甘かった。アイツが色目使ってたの、気がついてたのに」

 取引先だからって、何もしなかったんだよね。
 わたしの仕事を大切にしてくれたんだ。

「ラルフのせいじゃないよ……」

 そもそも、わたしがのんきにしてたことが原因だ。
 油断して、何も考えないで。
 ばかみたい。
 せめて、ラルフのことを誤解のないようにさ。大切な人がいるって、主張していたら、もう少しちがっていたかもしれない。
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