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本編
ep11_2
「……すご……」
さっきまで逃げるだけで精一杯だったのに、あっさりと勝負はついた。ちょうど市場を出たところで、追っ手のひとたちみーんな倒れてて。
……でも、あたしは、腰が抜けて立ち上がれないの。あはは、かっこわるい。
そうやって、ただ呆然とギリアロさんの方を見つめてたらさ、急に視界に影が落ちる。
誰? って思って顔をあげたらさ。
「大丈夫でしたか、愛し子どの」
……あ、ああ。そっか。
ギリアロさん来てくれたからちゃんと気づけてなかったんだけど、応援にきてくれたの、ヴィリオってあの赤髪のひとだったのか。
でも――、
「チセ!」
ザッザッ! って、こっちに近づいてくる足音に気づいて、あたしはそっちの方を見る。
「ギリアロさん! あ、あの、ごめんなさい……っ」
ヴィリオってひとが邪魔で、軽く会釈して、手を斜め前にむけて差し出す。
ギリアロさん、ヴィリオを押しのけて、あたしの手握ってくれて。
「大丈夫だったか?」
って。
ゴーグルずらしてさ、すごく心配そうな顔でこっちを見てくれた。
灰色と――そして碧色の瞳と目があった。左眼の碧色がすごくキレーで、目を奪われる。
その左眼は、すぐにもとの灰色に戻ってはいったけれど――。
……どくんって。
心臓、めちゃくちゃおっきく鼓動した。
どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ。
あれ?
安心したからかな? なんか急に、心臓が、めっちゃ暴れてることに気がついて。
ギリアロさんが目を細めて、あたしを立ち上がらせてくれて。すごく近いところにギリアロさんの顔があって……あ、あれ……っ?
どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ。
「怖い思いをさせたな、悪ぃ」
「……っ」
「だ、大丈夫か? お前さん、顔が真っ赤だ」
「……っ!!!」
どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ。
顔をのぞき込まれて、ますます心臓はねる。
ギリアロさん、あたしたち身長近いからっ、めちゃくちゃ、顔近っ……うっ。なにこれなにこれ。
いやいやいやいや、おかしいっ。そんな。うそでしょ……。
ギリアロさんが、めちゃくちゃかっこよく見える……!
くしゃくしゃの、適当に梳かしただけの黒い髪も、それを無造作にゴーグルで止めてるとことかも、適当にのばしっぱなしの無精髭も、年齢不詳のくたびれた肌に、しかめっ面。どれもこれも、ものぐさな彼らしいもので。
そんな彼が、こうやって、あたしを助けに来てくれて――めちゃくちゃ心強くて。近くにいるだけで安心できちゃうくらい、実際、強くて。
や、やばい。
かっこいい、よ……?
「おい、どうした? どこか、怪我したか? って……擦りむいてるじゃねえか……!」
転んだときに擦りむいちゃってたのにも気がついて、すぐに車を手配してくれて。
なにそれあたしのためならテキパキ動いてくれます、てきな? てきな!!??
こんなの、はじめてすぎて笑っちゃうのを通り越して震えてるんだけどさ。
あたし……。すき。…………かもしれない。
ギリアロさんに。
恋、しちゃったかもしれない……!!!
ふあああああああ!!!
ピンチを助けてもらって好きになるなんてベタベタでは!?
でもさ、マジで男らしくて、頼もしくて――飛行機から飛び降りて応戦してくれるんだよ!? それってどんなアクションスター!? かかかかか、かっこよすぎじゃない!?
「今日はもう城に帰るぞ? いいな?」
迎えの車が来たらきたで、お姫さま抱っこ!? してくれて!!??
「…………うん。あ、りがと……」
「おう」
「こ、わかった……から。ぎゅって、して、いい……?」
「…………おう」
めちゃくちゃ勇気いったけど、甘えてしまった。
そして甘えさせてくれたー……!
はー……ギリアロさんのにおい。落ち着く……。
心臓痛いけど、安心しちゃうって、ほんと何って思うのに。
恋しちゃった…………あああ、マジか……マジかあ……。
ううう、ギリアロさんずるい……かっこよすぎるよ……。
こんなの、好きになるに決まってるじゃん!!
もうね、頭の中がすぐにギリアロさんでいっぱいになっちゃったから、気がつけなかったんだよね。
そんなあたしたちを、ヴィリオがどんな目で見てたかってことを、ね……。
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