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GCの作戦
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千鶴が戦力に加わって数日後、人類側は魔王に対する一大反抗作戦を決行する事になる。
この要塞に残った全兵力とギデオンクラスターの面々による作戦だ。
作戦の最終確認として千鶴のネクシレウス ギデオンが全体のブリーフィングを行う。
『作戦を説明します。』
紳士的な男性の声でギデオンは通信越しに語る。
『我々はここから西に進軍し魔王城に侵攻します。道中では多数のゴーレムとの戦闘が予想されます。しかし、そのゴーレムは千鶴が請け負います。彼女があなた方の進撃路を確保し魔王軍までの道を作ります。千鶴の持つロンゴミリアドは”対物特攻“と言うスキルを有しておりゴーレムに対して非常に高い打点を出せます。あなた方はロンゴミリアドの主砲発射後、敵陣に強襲し魔王城に潜入し魔王を討伐に協力して下さい。なお、魔王へのトドメはリリーシャさんが勤める事になっています。』
「えぇ!ちょっと待って!」
それをリオが制した。
「リリーシャねえがトドメを刺すって事はリリーシャねえが次代の魔王になるって事だよね?!」
『その可能性は極めて高いです。しかし、彼女には虚無の魔眼と言う特異な魔眼があるらしいです。なんでも、彼女が視覚に収める範囲の全ての魔眼の効力を無効にする能力であり人類側の決定打と言えるでしょう』
千鶴との共同作戦が決定した時点でリチャードは人類側の手札を明かした。
それがリリーシャだ。
リリーシャの魔眼が有れば、全ての魔眼を無効に出来る。
無効に関する能力なら反理の魔眼の上位互換であり理の魔眼であったとしても一定時間その能力を無効にするだけのレジストが出来る。
リリーシャは魔王を倒す上でこの上ない逸材なのだ。
「でも、そんなの……」
リオも分かっているのだ。
それしか手がない。
魔王を討伐した者は次代の魔王になる。
そうなれば、いつかリリーシャを殺さねばならないだろう。
その頃にはリオは戦える歳ではないかも知れないがそれでも拒否感を抱いてしまう。
あんなに強くて優しい彼女が死の運命……それも世界から憎まれる運命にあると言うのが嫌だった。
普通の死以上にこれほど残酷な殺し方はないのだから……。
『ですが、我々ギデオンクラスターはその作戦には賛同しかねる』
次にギデオンから発せられた言葉は先程の作戦とは反する発言であり全員がその言葉に息を呑んだ。
それには千鶴が答えた。
「たしかに人類としてはそれが一番無難なやり方だと思う。それを一概に責める事は出来ないわ。でも、それだと根本的な解決にはならないわ。それにわたし自身、誰か1人を犠牲にして世界を生き残らせるって言うのあんまり好きじゃないのよ。わたしの後輩に凄く良い娘な娘がいたの。その娘は凄く献身的で利他主義な娘だった。でも、その事はある時に自分を犠牲にして世界を救おうとしたわ……いや、生贄にされたと言うべきかもね」
千鶴は遠い昔を思い出すように感慨に耽る。
その視線はどこか遠くを見ており、まるでその人物を見つめているようだった。
事情は分からないが少なくとも千鶴にとって良い気分ではいられなかったと言う事だけはわかった。
「たしかに多くを救う為に誰かが犠牲にならないといけない時があるわ。特に犠牲になる人間は他人よりも無垢だったり高潔な人間と相場が決まっているわ。それは仕方がない事かも知れない。でも、やっぱりそれだと納得がいかないわ。わたしは実際にそう思った。」
何があったのかは敢えて、聴かない。
何があったのか察する事はできた。
その人物がどうなったのかは分からない。
無事なのかそれとももうこの世にはいないのかそれは分からないが千鶴はその件でかなり心を痛めていた事は分かる。
彼女はそう言った“理不尽”と出くわしたのだろう。
だからこそ、この作戦を否定しようとしている。
「それにわたしの感情もあるけど、仮にリリーシャが討伐してもこの世界に未来は無いわ。その後に50年後に現れるのは虚無の魔眼持ちの魔王よ。それを考えると流石に労力に見合わないのよ」
千鶴的には5代目魔王が現れても倒せると言う事なのだろう。
だが、倒せるが倒すコストに見合わない。
だからこそ、4代目の内に決着をつけたいと言うのが本音だ。
「だから……シュウ。やって良いわよ」
千鶴はシュウに目線を向けた。
シュウもそれを見つめ返す。
千鶴は「大丈夫、全て承知している」と言うような眼差しを向けて頷いた。
シュウもそれを聴いて安心できた。
もしかすると、自分の作戦は反対されるのではないかと言う不安があったが、他でもない彼女が同意するなら躊躇う理由はなくシュウはまるで無敵駆逐艦でも手に入れたようにフッと不敵に微笑んた。
「全てお見通しと言うわけですか」
「当然よ。これでも伊達にあなたのボスをやっているわけじゃないわ」
「なら、そのボスの期待には応えてみましょう」
2人の間だけで成立する会話。
その静寂を真っ先に破ったのはリオだった。
「シュウにい!何か策があるの?!」
「えぇ、作戦はあります。この方法なら次代の魔王を生まずに封殺できるでしょう。」
「その方法なら魔王を殺せるの!」
「いえ、殺せません」
その言葉に疑問を抱いたドレイクが聴いた。
「殺せないってどういう事だ?」
「そのままの意味です。魔王は殺せない。ですが、封印に近い形で封殺する事はできる。」
「一体、何をする気だ?」
「なに、単純な事です。要は……」
シュウは一泊置いてから宣言した。
「リリーシャではなく、わたしが魔王にトドメを刺す。皆さんにはリリーシャがトドメを刺す時にそれを止めて頂ければ問題ありません」
作戦はシンプルだった。
リリーシャがトドメを刺す前にリリーシャを止めてシュウがトドメを刺す。
メンバーにはその概要が説明された。
この要塞に残った全兵力とギデオンクラスターの面々による作戦だ。
作戦の最終確認として千鶴のネクシレウス ギデオンが全体のブリーフィングを行う。
『作戦を説明します。』
紳士的な男性の声でギデオンは通信越しに語る。
『我々はここから西に進軍し魔王城に侵攻します。道中では多数のゴーレムとの戦闘が予想されます。しかし、そのゴーレムは千鶴が請け負います。彼女があなた方の進撃路を確保し魔王軍までの道を作ります。千鶴の持つロンゴミリアドは”対物特攻“と言うスキルを有しておりゴーレムに対して非常に高い打点を出せます。あなた方はロンゴミリアドの主砲発射後、敵陣に強襲し魔王城に潜入し魔王を討伐に協力して下さい。なお、魔王へのトドメはリリーシャさんが勤める事になっています。』
「えぇ!ちょっと待って!」
それをリオが制した。
「リリーシャねえがトドメを刺すって事はリリーシャねえが次代の魔王になるって事だよね?!」
『その可能性は極めて高いです。しかし、彼女には虚無の魔眼と言う特異な魔眼があるらしいです。なんでも、彼女が視覚に収める範囲の全ての魔眼の効力を無効にする能力であり人類側の決定打と言えるでしょう』
千鶴との共同作戦が決定した時点でリチャードは人類側の手札を明かした。
それがリリーシャだ。
リリーシャの魔眼が有れば、全ての魔眼を無効に出来る。
無効に関する能力なら反理の魔眼の上位互換であり理の魔眼であったとしても一定時間その能力を無効にするだけのレジストが出来る。
リリーシャは魔王を倒す上でこの上ない逸材なのだ。
「でも、そんなの……」
リオも分かっているのだ。
それしか手がない。
魔王を討伐した者は次代の魔王になる。
そうなれば、いつかリリーシャを殺さねばならないだろう。
その頃にはリオは戦える歳ではないかも知れないがそれでも拒否感を抱いてしまう。
あんなに強くて優しい彼女が死の運命……それも世界から憎まれる運命にあると言うのが嫌だった。
普通の死以上にこれほど残酷な殺し方はないのだから……。
『ですが、我々ギデオンクラスターはその作戦には賛同しかねる』
次にギデオンから発せられた言葉は先程の作戦とは反する発言であり全員がその言葉に息を呑んだ。
それには千鶴が答えた。
「たしかに人類としてはそれが一番無難なやり方だと思う。それを一概に責める事は出来ないわ。でも、それだと根本的な解決にはならないわ。それにわたし自身、誰か1人を犠牲にして世界を生き残らせるって言うのあんまり好きじゃないのよ。わたしの後輩に凄く良い娘な娘がいたの。その娘は凄く献身的で利他主義な娘だった。でも、その事はある時に自分を犠牲にして世界を救おうとしたわ……いや、生贄にされたと言うべきかもね」
千鶴は遠い昔を思い出すように感慨に耽る。
その視線はどこか遠くを見ており、まるでその人物を見つめているようだった。
事情は分からないが少なくとも千鶴にとって良い気分ではいられなかったと言う事だけはわかった。
「たしかに多くを救う為に誰かが犠牲にならないといけない時があるわ。特に犠牲になる人間は他人よりも無垢だったり高潔な人間と相場が決まっているわ。それは仕方がない事かも知れない。でも、やっぱりそれだと納得がいかないわ。わたしは実際にそう思った。」
何があったのかは敢えて、聴かない。
何があったのか察する事はできた。
その人物がどうなったのかは分からない。
無事なのかそれとももうこの世にはいないのかそれは分からないが千鶴はその件でかなり心を痛めていた事は分かる。
彼女はそう言った“理不尽”と出くわしたのだろう。
だからこそ、この作戦を否定しようとしている。
「それにわたしの感情もあるけど、仮にリリーシャが討伐してもこの世界に未来は無いわ。その後に50年後に現れるのは虚無の魔眼持ちの魔王よ。それを考えると流石に労力に見合わないのよ」
千鶴的には5代目魔王が現れても倒せると言う事なのだろう。
だが、倒せるが倒すコストに見合わない。
だからこそ、4代目の内に決着をつけたいと言うのが本音だ。
「だから……シュウ。やって良いわよ」
千鶴はシュウに目線を向けた。
シュウもそれを見つめ返す。
千鶴は「大丈夫、全て承知している」と言うような眼差しを向けて頷いた。
シュウもそれを聴いて安心できた。
もしかすると、自分の作戦は反対されるのではないかと言う不安があったが、他でもない彼女が同意するなら躊躇う理由はなくシュウはまるで無敵駆逐艦でも手に入れたようにフッと不敵に微笑んた。
「全てお見通しと言うわけですか」
「当然よ。これでも伊達にあなたのボスをやっているわけじゃないわ」
「なら、そのボスの期待には応えてみましょう」
2人の間だけで成立する会話。
その静寂を真っ先に破ったのはリオだった。
「シュウにい!何か策があるの?!」
「えぇ、作戦はあります。この方法なら次代の魔王を生まずに封殺できるでしょう。」
「その方法なら魔王を殺せるの!」
「いえ、殺せません」
その言葉に疑問を抱いたドレイクが聴いた。
「殺せないってどういう事だ?」
「そのままの意味です。魔王は殺せない。ですが、封印に近い形で封殺する事はできる。」
「一体、何をする気だ?」
「なに、単純な事です。要は……」
シュウは一泊置いてから宣言した。
「リリーシャではなく、わたしが魔王にトドメを刺す。皆さんにはリリーシャがトドメを刺す時にそれを止めて頂ければ問題ありません」
作戦はシンプルだった。
リリーシャがトドメを刺す前にリリーシャを止めてシュウがトドメを刺す。
メンバーにはその概要が説明された。
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