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千鶴の戦闘

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 作戦が開始された。
 生き残った人類による歩兵部隊とゴーレム部隊が要塞から進軍していく。
 それに随伴する形でネクシル達がついていく。



「人が動かすゴーレムとは……なんとも新鮮だな」



 リリーシャは現在、グランゲートのコックピットに乗っている。
 これは対魔王である彼女の体力の温存の為とグランゲートのコックピットが最も安全と言えるからだ。




「使えればかなり便利は相棒ですよ。まさに自分の体の一部と言って良い。」

「そう言うモノか?」

「そう言うモノです」

「……そうか、是非使ってみたいモノだな」




 それ以上は言わなかった。
 これ以上喋るとシビアな話になると思われたので口を開かない事にした。
 しばらく、進軍すると前方に魔王のゴーレム部隊が見えて来た。
 今や世界のほぼ全てが魔王の勢力下にあるだけゴーレムを見つけるのはそう難しくない。



「来たわね。総員、わたしの後ろに!」



 千鶴の合図と共に全員が進軍を止め、千鶴の背後で待機した。
 千鶴は魂の空間収納からロンゴミアントを取り出し腰構えで右手に保持した。



「ギデオン!魔王城までの距離は?」

『230kmです。敵も多数確認。1立方mに2機はいます。』



千鶴の乗機であるネクシレウス ギデオンの搭載OSギデオンが状況を報せる。



「大軍ね。その範囲に人間は?」

『いません』

「なら、範囲内に敵を全滅する出力に調整して放つわ」

『了解。シーケンススタート』



 それと共にロンゴミアントの螺旋状のワイヤーが花のように開き、内部から砲身が展開された。



『ターゲットインサイト。概念照準ロックオン。出力調整。第1段階解放。第2段階解放。エネルギー充填……チャージ完了。いつでもどうぞ』

「行くわよぉぉぉ!ロンゴ!ミリアド!」



 千鶴が引き金を引いたと同時に閃光が奔った。
 暗雲とした大地に光を齎さんばかりの蒼白光の閃光が大地を駆けた。
 それがゴーレム部隊に直撃したと思うとあの堅牢なゴーレムが紙でも破るように破砕されていく。



「滅びなさい」



 千鶴はロンゴミリアドを横薙ぎで払った。
 払われた光線はゴーレムをだけを破壊していく。
 周辺にあるはずの森などには一切ダメージを与えずゴーレムだけを的確に狙った。
 そして、いつの間にかゴーレムが進軍していた足音が消えていた。



「まぁ、こんなモノね」



 千鶴は満足気にこの結果に納得する。



「すげー」

「ゴーレムの大軍を一撃かよ」

「流石、異界のゴーレムだ」



 兵士達はこの結果に感嘆した。
 この世界においてゴーレムを討伐するのは“戦術”的に行うモノであり“戦略”的に行うと言う発想がない。
 
 人員等を割いてゴーレムを倒そうと考える傾向にある。
 それ故に彼らはここまで追い詰められていたのだが、そもそも戦略級の攻撃ができる人間自体が歴史を見ても少ないので致し方ない結果とも言えるだろう。




『敵、更に接近』



 ギデオンのレーダーが敵の接近を感知した。
 魔王城までの道のりまでの敵は掃討したがその外円部から大勢の敵が進軍してきた。
 千鶴達の周りにも次々を集結し始めている。



「本当数だけは多いわね。なら、これでどう!」



 千鶴はロンゴミリアドを格納して全体の半分以上が巨大なバレルで出来ており弾頭は見るからに通常規格ではない巨大な弾道がマウントハンガーに搭載されたボックスから給ベルト式で弾頭が伸びた170mm電磁投射砲を取り出した。



「さぁ、過激に行くわよ!」



 千鶴はゴーレムをロックオンすると引き金を引いた。
 電磁砲は凄まじい轟音を立てながら連射される。
 ゴーレムに直撃すると額の宝石が砕け、衝撃波でもゴーレムの肉体が破損し宝石に直撃しなくてもあまりの威力に肉体が崩壊する。

 だが、そんなゴーレム達も千鶴を最大の脅威と認識したらしく、宝石からレーザー光線を発射する。
 圧倒的な物量から放たれるそれはさながら赤い雨とレーザーと言えるだろう。



「ちょっと不味いわね」



 千鶴はすぐに上空に飛び上がった。
 千鶴がいた地上の地点に放たれたレーザーは地上のゴーレムに命中した。
 それ以外のレーザーが人間に直撃しそうだったので千鶴は“障壁”を展開して人間を防護した。

 空中に飛び上がった千鶴をゴーレム達は上空に向けてレーザーを発射する。
 これなら地上に被害はでない。
 それを良い事に千鶴は170mm電磁投射砲を腰に構えながらまるで瞬間移動でもするように左右上下に機動を取る。
 ゴーレム達のレーザーは彼女にかすりもしないが千鶴の弾丸は確実にゴーレム達を抉っていた。



「は、速い!」

「なんだあの速度……どうなってるんだ?」

「軽く光速に迫る速度出てますね」



 リオやドレイク、シュウ達はその戦いぷりに感嘆した。
 あまりに圧倒的と言えるだろう。
 光速に迫る速度で確実に敵の攻撃を避け、高火力な兵器を手足のように使いこなし、危なげない戦いを演じている。

 これだけで千鶴がパイロットとして相当格上なのは理解できた。
 少なくともシュウ自身、今の自分では勝てないと思うくらいには実力差があった。



「何をしているの!速く行きなさい!」

「「「りょ、了解」」」



 千鶴のその言葉に我に返ったメンバーは千鶴が開けた道を最大速度で直進した。
 千鶴はその背中を見送りながら言った。



「上手くやりなさいよ。大丈夫。あなた達ならできるわ」



 その顔はまるで大切な人を見送る母親のような微笑みを浮かべていた。
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