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第一章 世界の終わり、世界の始まり
前創造主の魂
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一人の少年が創造主になり、創造主と神々が住まう空間を創り、神々と世界を創造してからかなりの年月が経った。
その年月、およそ五〇〇年。
人間からすれば途方もない年月だが、創造主や神々にとっては瞬きする間のような時間だ。創造主や神でもない、ただの世界の住民であるエルフでさえも一〇〇〇年生きる者がいると言われているのだから、少年たちにとって五〇〇年という年月がいかに些細なものなのかは容易に想像できる。
その間特に重大な問題が起こることもなく、神々は世界の管理という己の仕事を全うし、創造主である少年は毎日生物の魂をどこへ輪廻転生させるか決定していた。
因みに少年の第二の目標である以前の創造主について調べるという件は、順調に進んではいなかった。
理由は以前の創造主が己の魂を殺していたからだ。
少年は以前の創造主の魂をまず探そうと試みた。その試みは成功しなかった。絶対的な力を持つ少年が見つけられないということは、その探し物が既に存在していないからである。
そこで少年は知ったのだ。以前の創造主は創造主としての自分を殺したのではなく、己の魂ごと消滅させたという事実を。
魂の死はいわば真実の死。輪廻転生することなくその存在そのものが消えてなくなってしまう。
それを以前の創造主が望んだということは、その人物は生まれ変わりたくもなかったということになる。どういう理由で魂の死を望んだのかは分からないが、少年にはその事実だけを明確に感じることが出来た。
以前の創造主の魂が消失していると分かった少年が次に起こした行動は、消失した魂の復活だった。
創造主の力は限りなく絶対的で、それに敵う者など存在しない。だが創造主と創造主がその力を競い合うとどうなるのか?
答えは〝引き分ける〟だ。といっても同じ時間軸で二人以上の創造主は存在することが出来ない為、その力を比べる術はないのだが。
ただ今回の場合は、以前の創造主が己の魂の死を望み、そして今の創造主がその望みを打ち砕くという構図だ。
創造主の魂の死は絶対的だが、それを覆すことが出来るのが少年だ。少年が願えば以前の創造主の魂は生き返る。つまり創造主の力を比べようとしてもただのいたちごっこでしかなく、あまり意味がない。
要するにより新しく願った創造主の望みが現実のものになるというだけの話なのだ。
以前の創造主の魂を復活させた少年はついに困ってしまうことになる。理由は簡単、本来魂には意識というものが無いからだ。
魂だけの存在で意識を保っていられるのは創造主だけで、他の魂はその意識が存在していないのだ。少年は魂の声を聞くことが出来たが、それは声というよりも音で明確な言語にはなっておらず、その魂が無意識下で鳴らしている感情の音なのだ。
だから以前の創造主の魂にいくら問いかけようがそれに返事が来ることは無い。そして創造主である少年でも魂に意識を持たせることはできない、というかしてはいけない。
魂に意識を持たせれば世界の基盤が崩れかねないからだ。魂が意識を持つとどうなってしまうかなんて、少年でも想像できない。もしその魂が暴走すれば世界を崩す大事件が起きてしまうかもしれない。だからこそ万が一のことを考えると、少年は魂に意識を持たせることは避けたいと考えた。
この状況で以前の創造主が世界を消失させた理由を探れる可能性は一つ。
以前の創造主の魂が生まれ変わり、その生物が前世の記憶を取り戻すことだ。
これなら仮に生まれ変わった時の生物が自身の力で前世のことを思い出さなくても、創造主の力でその記憶を引き出すことが出来る。そうすればおのずと世界消失の謎が解き明かされるという寸法だ。
だがここで困ったこと二つ目が生じてしまった。
以前の創造主の生まれ変わり先がいつも虫や動物になってしまうのだ。
虫や動物にいくら前世の記憶を取り戻させても、虫や動物にはそもそもそれが前世の記憶という概念であることを理解する頭が備わっていないのだ。
だから結局は以前の創造主が何を思っていたのかを知ることはできない。
ではなぜ以前の創造主の転生先が虫や動物に偏るのか。理由は世界を消失させるということが大罪だからである。
以前の創造主は世界を消失させるまできちんと世界を維持させてきたので、転生先が終わりなき孤独しかない世界にはならなかったが、世界を消失させたという罪はそれだけでチャラになるはずもなく。
以前の創造主の魂は何百回も虫や動物に転生しなければならなくなったのだ。
これは少年にとって創造主としての責務だったので、自分の目的優先で転生先を変えるという方法は論外だった。
だから少年は今、以前の創造主の虫や動物への果てしない転生が終わるのを待っていなければならない状況に陥っているのだ。
「次は豚かぁ……僕の先輩、結構大変な目に合ってるなぁ」
そんなこんなで現在少年は武尽・静由ペアが管理している世界を観察することが出来る部屋で、液晶パネルを死んだ目で見つめていた。
その部屋は少年が世界の管理という仕事をする神々のために創ったもので、ペアと同じ数創られている。つまりはペアが共同で使用する部屋なのだ。
仕事用とは別に神々には一人一人に自分の部屋が与えられている為、この仕事部屋は神々の趣味一色というよりはシンプルな造りになっている。
部屋にあるのは世界を観察することが出来る液晶パネルと椅子やテーブルぐらいで、とても広々としていた。
少年が空中でうつ伏せになりながらボーっとしていると、その部屋の主である武尽・静由ペアが入室してきた。
「あ、たけたけ、しずしず、おはよー」
「何だよたけたけって」
「えっ!武尽知らないの?僕が普通の人間として生きていた日本では、名前の頭二文字を繰り返して呼ぶのは最上位の人にしか許されていない、名誉ある呼ばれ方なんだよ!(※大嘘である)」
「ほぉ、そうなのか。ふんっ!そういうことなら好きなだけ呼ぶと言い」
チョロの武尽は健在である。基本的にマイペースな静由と違って、武尽は少年のおかしな呼び方に逐一反応してしまう。その度に少年はこじつけ甚だしい理由で武尽を黙らせるのだ。それもこれも武尽のチョロさが無ければ成し得ない技ではあるのだが。
「ねぇ、たけたけでしょ?僕の先輩の転生先を豚に決めたの。ちょっと悪意感じるなぁ」
「あぁ、あれか?くくっ……元創造主ともあろう奴が良い様だろ?」
「豚、可愛い……」
輪廻転生する先を決定する権利は少年だけではなく神にもある。もちろん転生先が神々程上位な存在になると創造主にしかそれを実行することはできないのだが。
少年一人に生物の魂の管理を任せるのはあまりにも大変なので、自分たちの管理下にある世界の輪廻転生は神々も少し担当しているのだ。
なので少年は以前の創造主の魂を豚に転生させたのが武尽だと思い軽い抗議をしたのだ。静由だと基本的に鳥系の動物に転生しがちだと少年は知っていたのでなおさらだった。
完全に以前の創造主の魂で遊んでいる武尽を余所に、静由は肥えたその豚のフォルムに釘付けになると、見惚れたように呟いた。
「ていうか、豚はともかく今この世界結構ヤバいね」
「あぁ、派手にやってるよなぁ」
少年が話題に出したのは、現在の炎乱の状況だった。
武尽・静由ペアが管理している世界――炎乱では現在大規模な戦争が起きていた。少年たちが住まう空間と他の各世界の時間の進み方は異なっている為、今の炎乱は西暦一二七五年になっている。
戦争の大きな原因はこの世界の特徴が関係していた。
この世界は魔法を行使することのできない人間が優れた頭脳を用いて科学を、それ以外の種族が魔法を発展させているのだが、その大きな違いが戦争を引き起こしてしまったのだ。
人間側は読み書きや簡単な計算もできない他種族を馬鹿にし、逆に魔法の才に恵まれた他種族は才能の無い人間を愚弄する。そんな分かりやすすぎる亀裂が二つの勢力の間にくっきりと入っているのだ。
その長年の因縁がついに爆発し、科学と魔法、どちらがこの世界を牛耳るにふさわしい勢力かを白黒つけようと、かれこれこの戦争は一〇〇年続いている。
人間は科学の力で作り上げた兵器を、他種族は己の持つ魔法の力を武器に、終わりの見えない戦争を続けているのだ。
だが圧倒的に違いのある両者を同じ世界に存在させればいずれはこうなってしまう。それが分からない程武尽は阿呆ではない。静由は武尽とペアを組んだ際に、どんな世界にするかという問題を全て武尽に任せていたので問題外である。
要するにこの状況は武尽の思うつぼというわけだ。なので武尽はこの地獄絵図とも呼べる状況を面白おかしそうに観察した。
「あんまり酷いようなら神子でも作って神託告げといてよ。炎乱が滅びかねない」
「それぐらい吾輩にも分かってる。だからこれは荒療治だ。未来の炎乱の奴らがもう二度とこの悲劇を起こさないようにするためのな」
〝神子〟というのは、武尽のような神々が神託を告げる唯一の人間で、神に仕え、その神託を世界に住まう者たちに伝える役目を担っている存在だ。
だが今まで神々が神子を作ったことは無いので、もし武尽がその存在を用意することになったのなら、それは炎乱という世界が未曽有の危機に陥っているということになるのだ。
少年の助言については武尽もきちんと理解していたようだ。武尽には武尽の考えがあり、きちんとこの炎乱を管理しようとしている様子が見て取れたので、少年はひとまず安心したのか破顔した。
「創造主、武尽……炎乱が、変」
「なに?」
静由が珍しく自分から発言したかと思うと、その不穏な内容に武尽と少年は炎乱の様子を確かめるため、液晶パネルを食い入るように見つめた。
そこにはいつものように科学武力と魔法武力による戦争が繰り広げられており、ぱっと見では普段との違いを見つけることはできそうになかった。
武尽は静由の言った〝変〟という言葉の意味をすぐに理解することはできなかったが、少年の方は気づいてしまった。その異様な変化に。
「これは……」
少年が呟くと、武尽にもその異様さが理解できたようで、武尽は液晶パネルを睨むようにして眺めた。
液晶パネルに映る炎乱に住まう者たちもその変化に混乱している様子だった。その変化の原因が全く分からないというのも困惑の理由になっているのだろう。
「一気に消えていってるな、炎乱の奴らが」
「うん……凄まじい力でね」
そう、消えていたのだ。人間も他の種族も動物も。空から舞ってきたどこの誰からのものかも定かでない、圧倒的な攻撃によって。
どちらの勢力も同じ状況に陥っている為、どちらかの勢力による攻撃でないのは目に見えていた。だからこそ不可解だったのだ。
一体どこの誰が、何の目的で、炎乱の者たちを無作為に殺しているのかと。
そしてその日、炎乱に住まう人間や他種族は元の半数にまで減ったのだった。
その年月、およそ五〇〇年。
人間からすれば途方もない年月だが、創造主や神々にとっては瞬きする間のような時間だ。創造主や神でもない、ただの世界の住民であるエルフでさえも一〇〇〇年生きる者がいると言われているのだから、少年たちにとって五〇〇年という年月がいかに些細なものなのかは容易に想像できる。
その間特に重大な問題が起こることもなく、神々は世界の管理という己の仕事を全うし、創造主である少年は毎日生物の魂をどこへ輪廻転生させるか決定していた。
因みに少年の第二の目標である以前の創造主について調べるという件は、順調に進んではいなかった。
理由は以前の創造主が己の魂を殺していたからだ。
少年は以前の創造主の魂をまず探そうと試みた。その試みは成功しなかった。絶対的な力を持つ少年が見つけられないということは、その探し物が既に存在していないからである。
そこで少年は知ったのだ。以前の創造主は創造主としての自分を殺したのではなく、己の魂ごと消滅させたという事実を。
魂の死はいわば真実の死。輪廻転生することなくその存在そのものが消えてなくなってしまう。
それを以前の創造主が望んだということは、その人物は生まれ変わりたくもなかったということになる。どういう理由で魂の死を望んだのかは分からないが、少年にはその事実だけを明確に感じることが出来た。
以前の創造主の魂が消失していると分かった少年が次に起こした行動は、消失した魂の復活だった。
創造主の力は限りなく絶対的で、それに敵う者など存在しない。だが創造主と創造主がその力を競い合うとどうなるのか?
答えは〝引き分ける〟だ。といっても同じ時間軸で二人以上の創造主は存在することが出来ない為、その力を比べる術はないのだが。
ただ今回の場合は、以前の創造主が己の魂の死を望み、そして今の創造主がその望みを打ち砕くという構図だ。
創造主の魂の死は絶対的だが、それを覆すことが出来るのが少年だ。少年が願えば以前の創造主の魂は生き返る。つまり創造主の力を比べようとしてもただのいたちごっこでしかなく、あまり意味がない。
要するにより新しく願った創造主の望みが現実のものになるというだけの話なのだ。
以前の創造主の魂を復活させた少年はついに困ってしまうことになる。理由は簡単、本来魂には意識というものが無いからだ。
魂だけの存在で意識を保っていられるのは創造主だけで、他の魂はその意識が存在していないのだ。少年は魂の声を聞くことが出来たが、それは声というよりも音で明確な言語にはなっておらず、その魂が無意識下で鳴らしている感情の音なのだ。
だから以前の創造主の魂にいくら問いかけようがそれに返事が来ることは無い。そして創造主である少年でも魂に意識を持たせることはできない、というかしてはいけない。
魂に意識を持たせれば世界の基盤が崩れかねないからだ。魂が意識を持つとどうなってしまうかなんて、少年でも想像できない。もしその魂が暴走すれば世界を崩す大事件が起きてしまうかもしれない。だからこそ万が一のことを考えると、少年は魂に意識を持たせることは避けたいと考えた。
この状況で以前の創造主が世界を消失させた理由を探れる可能性は一つ。
以前の創造主の魂が生まれ変わり、その生物が前世の記憶を取り戻すことだ。
これなら仮に生まれ変わった時の生物が自身の力で前世のことを思い出さなくても、創造主の力でその記憶を引き出すことが出来る。そうすればおのずと世界消失の謎が解き明かされるという寸法だ。
だがここで困ったこと二つ目が生じてしまった。
以前の創造主の生まれ変わり先がいつも虫や動物になってしまうのだ。
虫や動物にいくら前世の記憶を取り戻させても、虫や動物にはそもそもそれが前世の記憶という概念であることを理解する頭が備わっていないのだ。
だから結局は以前の創造主が何を思っていたのかを知ることはできない。
ではなぜ以前の創造主の転生先が虫や動物に偏るのか。理由は世界を消失させるということが大罪だからである。
以前の創造主は世界を消失させるまできちんと世界を維持させてきたので、転生先が終わりなき孤独しかない世界にはならなかったが、世界を消失させたという罪はそれだけでチャラになるはずもなく。
以前の創造主の魂は何百回も虫や動物に転生しなければならなくなったのだ。
これは少年にとって創造主としての責務だったので、自分の目的優先で転生先を変えるという方法は論外だった。
だから少年は今、以前の創造主の虫や動物への果てしない転生が終わるのを待っていなければならない状況に陥っているのだ。
「次は豚かぁ……僕の先輩、結構大変な目に合ってるなぁ」
そんなこんなで現在少年は武尽・静由ペアが管理している世界を観察することが出来る部屋で、液晶パネルを死んだ目で見つめていた。
その部屋は少年が世界の管理という仕事をする神々のために創ったもので、ペアと同じ数創られている。つまりはペアが共同で使用する部屋なのだ。
仕事用とは別に神々には一人一人に自分の部屋が与えられている為、この仕事部屋は神々の趣味一色というよりはシンプルな造りになっている。
部屋にあるのは世界を観察することが出来る液晶パネルと椅子やテーブルぐらいで、とても広々としていた。
少年が空中でうつ伏せになりながらボーっとしていると、その部屋の主である武尽・静由ペアが入室してきた。
「あ、たけたけ、しずしず、おはよー」
「何だよたけたけって」
「えっ!武尽知らないの?僕が普通の人間として生きていた日本では、名前の頭二文字を繰り返して呼ぶのは最上位の人にしか許されていない、名誉ある呼ばれ方なんだよ!(※大嘘である)」
「ほぉ、そうなのか。ふんっ!そういうことなら好きなだけ呼ぶと言い」
チョロの武尽は健在である。基本的にマイペースな静由と違って、武尽は少年のおかしな呼び方に逐一反応してしまう。その度に少年はこじつけ甚だしい理由で武尽を黙らせるのだ。それもこれも武尽のチョロさが無ければ成し得ない技ではあるのだが。
「ねぇ、たけたけでしょ?僕の先輩の転生先を豚に決めたの。ちょっと悪意感じるなぁ」
「あぁ、あれか?くくっ……元創造主ともあろう奴が良い様だろ?」
「豚、可愛い……」
輪廻転生する先を決定する権利は少年だけではなく神にもある。もちろん転生先が神々程上位な存在になると創造主にしかそれを実行することはできないのだが。
少年一人に生物の魂の管理を任せるのはあまりにも大変なので、自分たちの管理下にある世界の輪廻転生は神々も少し担当しているのだ。
なので少年は以前の創造主の魂を豚に転生させたのが武尽だと思い軽い抗議をしたのだ。静由だと基本的に鳥系の動物に転生しがちだと少年は知っていたのでなおさらだった。
完全に以前の創造主の魂で遊んでいる武尽を余所に、静由は肥えたその豚のフォルムに釘付けになると、見惚れたように呟いた。
「ていうか、豚はともかく今この世界結構ヤバいね」
「あぁ、派手にやってるよなぁ」
少年が話題に出したのは、現在の炎乱の状況だった。
武尽・静由ペアが管理している世界――炎乱では現在大規模な戦争が起きていた。少年たちが住まう空間と他の各世界の時間の進み方は異なっている為、今の炎乱は西暦一二七五年になっている。
戦争の大きな原因はこの世界の特徴が関係していた。
この世界は魔法を行使することのできない人間が優れた頭脳を用いて科学を、それ以外の種族が魔法を発展させているのだが、その大きな違いが戦争を引き起こしてしまったのだ。
人間側は読み書きや簡単な計算もできない他種族を馬鹿にし、逆に魔法の才に恵まれた他種族は才能の無い人間を愚弄する。そんな分かりやすすぎる亀裂が二つの勢力の間にくっきりと入っているのだ。
その長年の因縁がついに爆発し、科学と魔法、どちらがこの世界を牛耳るにふさわしい勢力かを白黒つけようと、かれこれこの戦争は一〇〇年続いている。
人間は科学の力で作り上げた兵器を、他種族は己の持つ魔法の力を武器に、終わりの見えない戦争を続けているのだ。
だが圧倒的に違いのある両者を同じ世界に存在させればいずれはこうなってしまう。それが分からない程武尽は阿呆ではない。静由は武尽とペアを組んだ際に、どんな世界にするかという問題を全て武尽に任せていたので問題外である。
要するにこの状況は武尽の思うつぼというわけだ。なので武尽はこの地獄絵図とも呼べる状況を面白おかしそうに観察した。
「あんまり酷いようなら神子でも作って神託告げといてよ。炎乱が滅びかねない」
「それぐらい吾輩にも分かってる。だからこれは荒療治だ。未来の炎乱の奴らがもう二度とこの悲劇を起こさないようにするためのな」
〝神子〟というのは、武尽のような神々が神託を告げる唯一の人間で、神に仕え、その神託を世界に住まう者たちに伝える役目を担っている存在だ。
だが今まで神々が神子を作ったことは無いので、もし武尽がその存在を用意することになったのなら、それは炎乱という世界が未曽有の危機に陥っているということになるのだ。
少年の助言については武尽もきちんと理解していたようだ。武尽には武尽の考えがあり、きちんとこの炎乱を管理しようとしている様子が見て取れたので、少年はひとまず安心したのか破顔した。
「創造主、武尽……炎乱が、変」
「なに?」
静由が珍しく自分から発言したかと思うと、その不穏な内容に武尽と少年は炎乱の様子を確かめるため、液晶パネルを食い入るように見つめた。
そこにはいつものように科学武力と魔法武力による戦争が繰り広げられており、ぱっと見では普段との違いを見つけることはできそうになかった。
武尽は静由の言った〝変〟という言葉の意味をすぐに理解することはできなかったが、少年の方は気づいてしまった。その異様な変化に。
「これは……」
少年が呟くと、武尽にもその異様さが理解できたようで、武尽は液晶パネルを睨むようにして眺めた。
液晶パネルに映る炎乱に住まう者たちもその変化に混乱している様子だった。その変化の原因が全く分からないというのも困惑の理由になっているのだろう。
「一気に消えていってるな、炎乱の奴らが」
「うん……凄まじい力でね」
そう、消えていたのだ。人間も他の種族も動物も。空から舞ってきたどこの誰からのものかも定かでない、圧倒的な攻撃によって。
どちらの勢力も同じ状況に陥っている為、どちらかの勢力による攻撃でないのは目に見えていた。だからこそ不可解だったのだ。
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