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第一章 世界の終わり、世界の始まり

祈世

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 武尽が祈世の分身体と戦闘している頃、祈世は自分を結界の中に閉じ込め考え込んでいた。



 分身体に何かあれば自動的に祈世にもそれが伝わるようになっているのだが、今の祈世には分身体の状況を気にかけるほどの余裕が無かった。



 世界への復讐をとるか、少年を選ぶか。祈世はこの究極の二択に迫られているのだから。



「創造主様………………アリアナ……」



 いや、祈世にとっては自分と自分カミロ、どちらを選ぶのかという選択でもあった。





 現在祈世は自身が管理している世界――インフェスタの上空にいた。



 インフィスタの空の上で、結界に閉じこもりながら思い悩んでいた祈世は気づいていなかった。自分の意思とは関係なく、祈世の神としての力が暴走していることを。



 頭では世界への復讐か少年かの二択で悩んでいても、本能的に祈世は世界への憎しみをその力で爆発させていたのだ。



 インフェスタだけでなく、他の世界にも祈世による魔法攻撃が降りかかっていた。だが祈世にはその自覚がなかった。その為現在の世界の状況をまるで理解しておらず、祈世の頭は究極の二択だけになっていた。



 不幸中の幸いだったのは祈世が結界の中に閉じこもっていることだ。結界の中にいなければ祈世が無意識のうちに放出している力がそのまま世界に降りかかっていたのだから。



 遠隔的な魔法攻撃より、祈世の身体から発せられる直接的な魔法の方が脅威になるのは当たり前のことなので、それが封じられている間は世界滅亡の危機にはならないのだ。





 一方少年は祈世の居場所を特定するとすぐにその場所へ向かった。少年の目に映ったのは結界の中で蹲り、涙を流している祈世の姿だった。



 少年はここに来る間、そして祈世の方へ歩み寄ろうとする間に、祈世が無意識のうちに放っている世界への魔法攻撃の威力を殺していた。



 創造主である少年が世界に干渉することはあまりいいことではない。だがそれは世界の中だけで起こっていることに関してだけだ。



 そこに神などの力が介在してくると話が変わってくる。



 世界への攻撃が神である祈世によるものだと確定した今、遠慮する理由が無くなったのだ。



 神も創造主と同じく世界ではなく天界に住まう者だ。神もまた世界への干渉を良しとされてはいない。そんな神が原因で世界が窮地に陥っているのであれば、創造主の関与が問題ではなくなるのだ。



 世界で起こる全ての現象は世界の、そして世界に住まう者が原因で起こる。だが今回は天界に住む神が原因でこんなことが世界で起こっている。それは天界に住む者の責任であり、その責任を天界に住まう少年が解決することは当たり前のことなのだ。



 少年は世界に今後影響が無いよう、一時的に祈世の遠隔的な魔法攻撃を封じた。もちろん自分が魔法を放っていることにさえ気づいていない祈世は、少年がそれを封じたことなど全く気付いておらず、自分のすぐ近くにある創造主のオーラさえも感じ取っていなかった。



「みぃつけた」



 祈世の姿を確認した少年は心底安心したような表情をした。



 少年はすぐさま祈世の結界を丸ごと包み込むような大きな結界を張ると、祈世の造った結界を一瞬で壊した。



 祈世の結界が祈世の暴走する力をいつまでも制御できるかは不確定なので、少年が結界を張った方が世界への影響力は確実にシャットダウンできるのだ。



 祈世と対話をするために結界を壊したことで、祈世の暴走した魔法が少年に襲い掛かった。



 その魔法は少年の皮膚をボロボロと崩していった。結界の地面に少年の皮膚が落ちていったが、少し時間を置くとすぐにそれは少年の身体に戻っていった。傷を負っても少年は自動的に再生することが出来るからだ。



 だが祈世の魔法の暴走が収まっている訳ではないので、皮膚が剥がれては再生するといった流れが繰り返されていた。



「祈世」

「………………創造主、様?」



 少年が祈世の名を呼ぶと、祈世はゆっくりと少年の方へ泣きじゃくったその顔を向けた。祈世の目には何故か傷を負っては再生をしている少年の姿があり、その理由を理解するまで祈世は多少の時間を要した。



「!創造主様っ、結界から出てください!今の私にこれを収めることはできませんっ。あなた様を傷つけてしまいますっ!」

「大丈夫だよ。祈世」

「私が大丈夫ではありませんっ!」



 自分の魔法が暴走していることに気づいた祈世は、少年に危害を加えたくない一心で叫んだ。だがそんな祈世の望みとは裏腹に、少年はどんどん近づいていった。



 そして祈世の乱れた心を落ち着かせるように、少年は祈世の頭を優しい手つきで撫でた。



「っ……私は、あなたを傷つけたくありませんっ」



 創造主である少年は傷ついたりしない。傷ついてもすぐに治るからだ。そんなことは祈世も分かっている。それでも祈世はその気持ちを伝えないことができなかった。



 少年も祈世のその主張に対し、自分は傷つかないから大丈夫などと、無神経なことは口にはしなかった。



「もう……もうこれ以上…………アリアナのように誰かを傷つけたくないっ……でも、世界を壊したい…………もう頭の中がぐちゃぐちゃで、おかしくなりそうっ……」



 祈世は頭を抱えると震える声で泣き叫んだ。



 その二つの感情はどちらも本物だ。もうこれ以上自分のせいで誰かが傷つくのを見たくないのに、世界への恨みがそれを許してくれない。



 矛盾する二つの感情が祈世の中で渦巻き、祈世自身を壊してしまいそうな勢いだった。



「いいんだよ。傷つけても」

「えっ……?」



 その言葉で呆けたような表情を見せた祈世は少年の顔を見上げた。少年は眉を下げつつ笑っていて、その言葉に嘘が無いことなど祈世にも分かるほど明らかだった。



「魂ある者は、生きている限り、たくさんのものを傷つける。それは僕も同じ。愛しい愛しい君たちのことも傷つけてしまうだろう。今までも、これからも。でもそれは当たり前のことなんだ。だって僕たちは家族なんだから。互いが互いを傷つけずに生きるなんて無理なんだよ。だから祈世も僕を傷つけてもいいんだ」



 少年の言葉に祈世は更にその表情を崩し涙した。そしてそんな自分に自己嫌悪してしまう。自分はこの慈悲深い目の前の少年の優しさに甘えて、自分を許すのか?と。



「ですが、世界に対する憎しみ……運命の非情に対する恨みがどうしても消えてくれないのです」

「……祈世は僕のことを好いてくれているのかな?」

「?……もちろんです!我々神如きに慈悲と愛情を分け隔てなく与えてくれて、こんな失態を犯している私でさえも受け入れようとしてくれる創造主様をお慕い申しております」



 世界に対する憎しみが消えない限り、祈世は無意識のうちに世界への攻撃をしてしまうだろう。それは神としてあるまじき行動だ。少年が祈世を許してくれても、世界にとってそんなことは関係ない。



 祈世の嘆きを聞いた少年は唐突にそんな質問をした。その質問の意図が分からず困惑した祈世だったが、自分の素直な気持ちを少年に告げた。



「祈世。僕は世界を創造する創造主だ。だから約束しよう。僕が世界を、必ず君が好きになってくれるようなものにする。君が、守りたくなるような世界にする。君が、君が好きだと言ってくれる僕を信じて欲しいんだ」



 少年は魔法が溢れ出している祈世の身体を抱きしめると、優しくその身体を摩りながらそう告げた。



 少年は創造主だ。祈世の持つ憎しみを消すことも、魔法の暴走を止めることも、簡単にできてしまう。でも少年はそれをしなかった。したくなかったのだ。



 祈世が望んでそれを自身の力で成し遂げて欲しかったから。



 祈世が自分の意思で、少年を信じるという選択肢を選ぶことを、少年は望んだのだ。



「っ……ふうっ…………はいっ…………創造主様を、信じたいです……あなたを、信じさせてください!」



 抱きしめられた祈世が泣き崩れ、少年の肩に顔を埋める音を少年は耳にした。そして祈世は顔を上げると、上ずった声で、確かな声で、少年に自身の意思をはっきりと告げた。



 少年は祈世を自身の腕から解放するとその顔を覗き込んだ。涙を溜めたその目を細め、頬を桃色に染めた祈世は確かに、しっかりと笑顔を見せている。



 すると祈世の暴走していた魔法がだんだんと静まっていき、最後には少年が結界を壊しても問題ない程になった。



 祈世は魔法を使い過ぎたのに加え、泣き疲れたこともあり、そのまま少年に凭れかかると意識を失うように眠ってしまった。



「よしよし…………祈世、おかえりぃ」



 少年は祈世を抱きしめたまま空の上で寝転がるような態勢になると、自身の身体の上で寝息を立てる祈世の頭をしばらく撫で続けた。















「武尽。分身体を一瞬で倒したんだって?えらいえらい」

「ふっ、当然だろうが。そしてさりげなく頭を撫でるな」



 祈世を抱えて天界へと戻った少年は、分身体のとの戦闘の様子をデグネフから聞いたのだ。武尽は至極当然といった様子で踏ん反り返っていたが、少年が頭を撫でると鬱陶しそうな顔をした。



「前世の人格に乗っ取られたとおっしゃっていましたが、どんな奴だったのですか?」



 祈世とペアを組んでいるリンファンはそれなりに祈世のことが心配だったのか、詳しい話を少年に聞いた。



 祈世は前世で男だったこと。ある女性と恋に落ちたこと。だが家族の仇である男の娘が、その女性だったこと。男を殺すつもりが、愛する女性を誤って殺してしまったこと。そんな非情な運命を用意した世界を恨んだこと。



「彼はカミロって名乗った。僕はカミロのこと、そんなに嫌いにはなれなかったな。だって彼が祈世に前世の記憶を取り戻させたのは、祈世にこの復讐を止めて欲しいって、心のどこかで思っていたからじゃないかと思うから」



 少年の言葉に神々は各々思うところがあるのか口をつぐんだ。



 もちろん少年が本物の祈世相手に手荒なことが出来ないと分かっていて、祈世に復讐を託そうとした思いもあったのだろう。だがそれだけでは無い気が少年にはしていたのだ。



 どこかでこの行き場のない怒りを、憎しみを、悲しみを、今の祈世自分にぶっ壊してもらいたかったのではないのかと、少年は思わずにはいられなかったのだ。



「カミロ……名前…………あれ?です」

「どうしたの?クラン」



 〝空気を読む〟という言葉を知らないおっちょこちょい系女神のクランは、何かに気づいたように突然考え込んだ。



 どうやら名前というワードに何か引っかかることがあったらしく、少年の問いかけにしばらく答えることもなく頭を悩ませていた。



「あの、創造主様」

「何だい?」

「創造主様のお名前は、何と言うのですか?」

「「………………………………………………あ!!」」



 ようやく思考がまとまったクランは少年にそんな質問をした。クラン自身、それは本当にふと疑問に思ったことで、特別意味があって尋ねたことではなかった。



 だがその質問は、約五〇〇年の間の神々と少年の大きすぎる失態を浮き彫りにするものだった。もちろんクランにそんな自覚はない。



 何と驚くことに神々はこの数百年の間、創造主の名前を一切知らないまま過ごしていたのだ。



「名前……あー、名前ねぇ…………みんな創造主様って呼ぶから気にしてなかったけど、そんなのもあったねぇ」

「「…………」」



 神々は自分たちの犯した重大なミスに気づいたことにより、しばらく口をパクパクとさせるだけで声を発することが出来なかった。当人の少年はあまり問題視していない様子だったが、神々からすればそんなわけにはいかない。



 創造主に絶対な忠誠を誓う神々が、主の名前すら知らないなんてとんだお笑い草だからである。



 この状況で平然としている神を挙げるとすれば、それは武尽しかいない。最初はこの重大なミスを自覚していなかったクランもだんだんと状況を飲み込んでいったのか、非常に焦った表情をしているぐらいだ。



「……はぁ、たくっ……で?何て名前なんだよ」



 周りの雰囲気に痺れを切らした武尽は少年に再度確認した。このままでは一向に話が進まないと危惧したのだ。



「えっと……それがね…………忘れちゃった」

「「は?」」



 少年の衝撃発言に神々の声が全員はもった。困惑しかしていない神々を余所に、少年は能天気に自分の後頭部をポリポリと掻いている。



「いやぁ……何百年も呼ばれてないと自分の名前って忘れちゃうんだね。勉強になったよ。……あっ!そうだ!何ならみんなが僕の名前つけてよ。前の名前に愛着なんて全くないしさ、みんながつけてくれたら僕、どんな名前でも嬉しい!」

「「…………」」



 少年の提案に神々は顔を見合わせた。



 何百年も名前を呼ばれなかったせいで名前を忘れてしまったと言う割には、少年はケロッとしていた。自分に愛情を注いでこなかった両親がつけた名前などどうでも良かったのだ。その名前に対して何の執着も持っていなかったことも、忘れた要因の一つなのだろう。



 そんな過去の名前よりも、少年は今自分を慕ってくれている神々に名前をつけて貰いたかったのだ。



「あっ、あの!私たちで良ければ是非とも名付けをさせてくださいです!」

「うん、よろしくね。みんな」



 神々が答えを渋っているとクランが頬を染め興奮気味に少年の提案を受けた。他の神が悩んでいたのは、神如きが最上位である創造主の名前を付けるなど、失礼に当たるのではないかと危惧していたからだ。もちろんクランはそんなこと一切考えていないので即答してしまったのだが。



 だが少年が嬉しそうに破顔したのを見て、少年が喜ぶのならいいだろうと他の神も名付けすることを受け入れた。



「ふぁ……何だか少し寝たい気分だなぁ……。そういえば僕、創造主になってから一回も寝てないや。少し寝ようかな?」



 少年は欠伸をするとそんなことを呟いた。



 創造主である少年は寝なくても死ぬことが無い。なので普通睡魔というものに襲われることが無い。だが今回は精神的な疲れが出たのか少々眠くなったようだ。



 少年としては軽い気持ちで放った発言だったが、神々の方は本日二度目の大失態の発見に目を泳がせていた。



「申し訳ありません!創造主様。創造主様にお休みを与えていないことに気づかないなど……私たちはとんだご無礼を…………」

「いいよいいよ。僕の身体が全然疲れない体質だから気づかなかったんでしょ?ちょっと寝ようかなって思っただけだから」



 デグネフは創造主である少年に休みがなかったことを必死に謝罪した。もちろん神にも休みなど無いのだが、少年とは違い睡眠などはきちんととっていた。静由がいい例である。



 しかも静由とペアを組んでいる武尽は不真面目の象徴のような男神なので、二人一組のペアでの唯一の失敗は武尽・静由ペアなのではないかと少年は内心思っていた。



「僕が寝ている間に、僕の名前考えといてね。あ、もし緊急事態とかが起きたら叩き起こしていいから。祈世のこと、よろしくね」

「承りました」



 少年は抱えたままだった祈世をリンファンに預けると神々にそう伝えた。神々が叩き起こさずとも、世界や神に何か脅威が及んでいれば、本能的に察知できるのが創造主である少年なのであまり必要はないが、万一のために少年は念を押しておいたのだ。



「あ!いいこと思いついちゃった!」

「嫌な予感しかしないんだが」

「僕が寝ている間、みんな暇だったら添い寝してくれない?」



 少年の嬉々とした表情から、ろくなことを言い出しかねないと予想した武尽は、心底嫌そうな顔で少年の提案を聞いた。



 添い寝というワードに武尽は更にその顔を歪めたが、他の神々はポカンとした表情で上手く状況を飲み込めていないようだった。



「嫌だったらしなくていいんだけど、誰か暇な時に少しだけ添い寝してくれたら、僕すっごく嬉しい!特にハクヲ!」

「…………創造主様がお望みなら」



 誰かからの愛情に常に飢えている少年だからこそこんな提案をしたのだろう。創造主になる前では経験できなかったようなことを、自分の子供たちと体験したいのだ。



 まぁ理由の半分はハクヲの毛並みを寝ている間に楽しみたいからだろうが。



 ハクヲは戸惑いつつも少年の申し出を受け入れ、他の神々もそれに倣うように頷き始めた。



「やったー!ありがとう!じゃあ僕早速眠ってくるね。おやすみー」

「「お、おやすみなさいませ」」



 神々から〝おやすみ〟と言われたのが余程嬉しかったのか、少年はスキップをしながら約五百年ぶりの睡眠をするために自分の部屋へと向かった。





 その時の少年にこれから起こる実にな事件を予測する術はなかった。だからこそ少年は自分の部屋に創造したベッドで呑気に寝息を立て始めたのだ。

































 少年は自分のベッドの上で寝返りを打った。すると自分の身体に誰かの身体が触れる感触を感じて、ゆっくりとその目を開いた。



「んんっ…………うーーん……ふぁ…………よく寝たなぁ……」



 少年が目を覚ますとぼんやりとした視界に、自分と同じように寝転がっている静由の姿が映った。少年は添い寝して欲しいという自分の望みを叶えてくれたことに喜びを感じ、最高の目覚めを手に入れた。



 だが一方で、視界がクリアになってくると、静由の様子がおかしいことに気づいた。



 静由の性格は少年が一番よく分かっているつもりだ。マイペースで眠ることが大好き。創造主である自分に遜るわけでもなく、かといって武尽のようにライバル心を燃やす訳でもなく、いつも冷静沈着に周りを見ている…………ただボーっとしているだけにも見えるが。



 そんな静由は少年が目を覚ましている時には既に起きていたようで、少年の顔を見るなり何故かひどく驚いたような、泣きそうになっているような……とにかく無表情が通常運転の静由にとってはあり得ない表情を見せたのだ。



「おはよう、静由…………どうしたの?そんな驚いた顔して」

「…………起、きた?」

「うん、おはよう?」



 静由が驚きで固まっている理由を探ろうと、少年が静由の心の声を聞こうとした時、少年の部屋の扉が勢いよく開けられた。



 部屋の扉を開けた人物はリンファンで、どうやらそのご自慢の聴覚で少年の声をキャッチし、急いでここに来たようだった。



 部屋に入り少年の姿を目にしたリンファンは、静由より驚いたような表情で口をあんぐりと開けた。少年はそんなリンファンの反応で首を傾げることしかできなかった。



「み…………皆さん!来てください!創造主様が目覚められました!」



 リンファンは平静を取り戻すとすぐさま大声で他の神々を呼んだ。するとすぐに神々が転移で少年の部屋まで現れ、少年は人口密度が一気に増した自分の部屋を見て目を白黒とさせた。



 神々はやはり静由やリンファンと同じような反応を見せ、いつも少年に冷たい態度をとる武尽でさえも驚いた表情を見せていた。



 千歳や双子の神に至っては涙を流していて、少年はおろおろと困惑するしかなかった。



「え、みんな……どうしたの?」

「創造主様…………目覚められて安心いたしました。あなた様は約一〇〇〇〇年の間、眠り続けていたのですよ」

「………………………………………………………………へっ?」



 少々涙ぐんでいるデグネフから告げられた何とも信じがたい間抜けな真実に、少年が間の抜けた声を出したのは言うまでもない。







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