お菓子の船と迷子の鳩

緋宮閑流

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第2章

#02

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「伝令!」

手にした巻貝がほわりと熱を持つ。

「大至急出航準備!キャンプに降りた人も戻ってきて!早く!」

この巻貝には子機が有る。コンク・タグと呼ばれる小さな巻貝の首飾りはクルー全員が装備しているはずだ。きちんと身につけていればこちらの声を伝えてくれる。残念ながら連絡は船からの単方向だが。

同じ内容を数回繰り返して、振り返る。
「ガナッシュ?」
「プラリネ……一刻、いや、半刻だ。手分けして艀舟を下ろすよ。クルーのみんなを置いて行くわけにはいかない」
見張り台の手すりを飛び越えた。
艀舟に集まってきたクルーを見遣る。なんだかんだで察しが良いのだ。ここのクルー達は。
「キャンプにいるクルーだけでも回収しなきゃ」
ここまでついてきてくれたこの人達を、こんなところで失うわけにはいかない。
「……ガレットさんたちは大丈夫かしら」
「……調査隊のほうはわからないよ……信じるしか無い」



そこからは目まぐるしく時間が過ぎた。
手の空いている船員たちで小舟を往復させ、キャンプに降りていた人員を母船へと運ぶ。
半刻後、湾を離れ始めた時には得体の知れない脅威が既に目視できるところまで迫っていた。

黒い、竜巻。

雷雲や嵐雲とは違う。黒インクをそのまま気化させ巻き上げたらこんな色の竜巻ができるだろうか。
しかもそれは、何一つ巻き上げてはいなかった。
樹木も岩も、動物たちも。
つむじ風と呼ばれる規模でも船をひっくり返し張られた硝子を破ることはままあるというのに。森を超える規模の竜巻が何も巻き上げない筈がないのに。

「……ガナッシュ、あれって……」
「今は全速で沖へ逃げる。他の話は逃げ切ってからだよ」

妹の言葉を遮って伝声管を開けた。

「ジャーキーさん、聞こえる?南西に4分の1刻、まっすぐ」
おうよ、と声が返る。伝声管を伝わる音声は明瞭だ。

「進路変わらず。足がすごく早い。最速でお願い」

『最速で逃げきれそうか?』
「正直言ってわからないんだ。正面から向かってくる嵐雲みたいに急激に大きくなってる。ただ」

伝声管を握り締める。

「……多分、グランマが本気で嫌がる相手だ。グランマの底力に賭けよう」
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