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第2章
#03
しおりを挟む流石に軍船を流用している調査船の離脱は早かった。そもそも船員の多くは訓練された軍人であるから行動も情報も船足も早い。それなりに隻数を抱える艦隊であるにもかかわらず、竜巻が湾に到着する頃には既に沖へと避難していた。
商船達も続々と後へ続く。キャンディストライク号も辛うじて湾を離れることができた。
できた……のだが。
波間を縫って迫り来る竜巻に目を移す。
キャンディストライク号の船足は決して遅いほうではなかった。魔石ブースターを積んだ大商船の比ではないが、小さく軽い船体と特殊な動力、行き届いた整備、そして有能な操舵者が速い移動と細やかな立ち回りを実現可能にしている。
それなのに、竜巻はもう目の前。
全ての原因は衝突事故だった。
湾を出ていくらか進んだところで追走してきた他の商船に衝突されたのだ。
黒い竜巻は明らかに船団を標的にしていた。
自然物には害を及ぼしていないにもかかわらず、逃げ遅れた船を数艘巻き込んで引き裂いた。パニックに陥った船もあったがキャンディストライク号はガナッシュやジャーキーの指示のもと、比較的スムーズに湾を離れた……筈だった。
横波を受けた船体が大きく揺れ、ガナッシュの眉が歪んだ。
「……っく……」
握った伝声管からグランマの焦りが伝わってくる。パニック寸前になった船の意思に引きずられそうになる。
「お願いだから落ち着いて……グランマ……!」
進路が衝突コースまっしぐらであったような気もするが……相手の船も慌てていたのだと思いたい。
そんなこんなで、グランマの力を受けて動作する動力装置の一部を破損してしまった。幸いにして舳先を突き刺されるようなことは無かったが船足は格段に落ちた。
『大将!どうすりゃいい?!次はどっちだ?!』
「……ジャーキーさん……進路……」
そうだ。しっかりしなくては。
「……しん……ろ……」
……しっかり……
どうすればいい……どうすれば……
どうすればみんなを守れる……?!
パニックに陥りかけたガナッシュを現実に引き戻したのは伝声管から微かに響くプラリネの声だった。
しきりにグランマへと話しかけている。
悲鳴にも似た金属音を奏でていたグランマが心なしか落ち着きを取り戻してきたようだ。
ごくりと喉を鳴らし、拳を握り締めて海上を見渡す。
「……速度……落として……!」
『いいのか?!』
「ギリギリまで岸壁に寄るよ……左舷確認して貰って……!」
波の反射で見間違えたのでなければ、あれは。
「左前方12分の1刻、窪みか横穴がある。この船ならなんとか入れるはず……そこで竜巻を遣り過ごすよ」
伝声管と共に巻貝を握り締める。
ガナッシュの指示に応えて船体は静かに岸壁へと向かい速度を落とし始めた。グランマも落ち着きつつあるのだろう。
しかし、思ったよりも隙間は狭い。
ともすれば浅くなる呼吸を制御する。
「……総員衝撃に備えて……!」
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