流行りの異世界転生とやらに巻き込まれたら何故かぼっちのご令嬢にやたら気に入られましたなにこれ

緋宮閑流

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第1章 飛ばされたんだけどなにこれ

#6. ナニガドウシタ

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異変は更に数日後、唐突に起こった。
「あ、おかえ……り?」
いつもの時間、学校を終えて門をくぐったロザリィにおかえりの挨拶をしようとしたら無視されてしまった。
ぷいと目を逸らし逃げるように邸へと入っていく。
なんだなんだ?ムシの居所でも悪いのか?
無視だけに。

……いや、そうじゃなくてさ。

むくれたような表情に何かしてしまったかと心配になったのだけれど、昼食の席に着いたロザリィはいつも通り快活な笑顔を見せた。
挨拶の件についても薔薇の背丈が伸びすぎていてこちらに気づかなかったのだと言い切った。
あずまやで原稿を読み、キラキラした目で感想をくれて大切そうに紐で綴じる、そんな様もいつも通りだ。

「カナタのお話もだいぶ溜まってきたわね!」
前と後ろを厚紙で挟み、目打ちで穴を開けて組紐で閉じた、なんともレトロ感溢れるバインダー。それを掲げてロザリィは目を細める。
「組紐の長さが足りなくなっちゃうかも」
書くたびロザリィに感想をもらってノリノリになった自分の筆は日に3枚ほどの執筆をするようになっていた。文字にすると…3千字くらい?もうちょっとかな?
……少ないって言うな。
こちとら万年筆なんだ。手書きなんだ。
そもそもが長い長いナカズトバズで筆鈍ってんだ……


……うぅ、言い訳みっともないな?


「そうしたら2冊目を作ればいいよ」
ともかく、簡単な造りだから何冊でも増やせる。
何気なく言った一言に、少しだけ、ロザリィの視線が落ちた。
「……そうね」
白い指が表紙を撫でる。
「簡単に作れるものね」
「……ロザリィ?」
「わたくし、お腹が空いてしまったわ」
空色のドレスがふわんと立ち上がり、大きな巻き髪がその肩で弾む。
「お茶にしない?今朝料理長にカナタが好きな『丸いの』を頼んでおいたの」
最初の朝に朝食で頂いたスイーツ。名前は聞いたのだがなんだかモニョモニョしていて言いづらく、覚えられていない。とうとうロザリィは自分に合わせて『丸いの』と呼んでくれるようになってしまった。
「……いいね、じゃあお茶にしよう」
帰宅時の様子といい、さっきの表情といい、妙に引っかかりはしたけど、ロザリィ自身が隠したがっているんだ。学校で何かあったのかもしれない。そんなときって身内にはちょっと打ち明けにくいよね。


しばらく様子を見よう。
できればロザリィが自分から話してくれるまで。


……なんて後から考えれば、だけど。
先送りにした行動が厄介ごとを呼び込むなんてセオリーじゃん──ねぇ?
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