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第1章 飛ばされたんだけどなにこれ
#8. イヤマテホントマテ
しおりを挟むうん、これ、私の小説だ。間違いない。
それが綺麗な青い革表紙の本に製本されてここに有る。
なにこれ。
しかも通常著者が書かれる場所には見知らぬ名前が書いてある。
なにこれ。
更に言えば元の文が無かったり書いた覚えの無いエピソードが増えていたりしている。
……いやホントなにこれ。
「……一応確認しておくけど……これロザリィが出版したわけじゃ……ないよね?」
ロザリィはふるふるとかぶりを振った。
そうすると、どうしてコレがこんな姿で外に?
「……ロザリィ、アレ、誰かに見せた……?」
こくん。
金の頭が俯いたまま頷く。
確かに、私は他人に見せちゃダメなんて言わなかった。言わなかったけど、読者がロザリィだけだと思っていたからそれだけでも少し……いやかなりショックだ。
「えっと、それは」
「……わたくし、このお話が本当に好きなの」
えーと、うん、それは知ってる。ご愛読ありがとう?
「……最初はね、お休みや芸術学習の時間にこのお話を題材にした絵を描いたりしていただけなのだけれど」
ちょっと待て。ファンアートってことか?そっちも初耳だわ。しかも学校で……ってまじか。
「その絵を褒めてくれた同級生がいてね?……わたくし嬉しくて、カナタのお話を紹介してしまったの。そうしたら瞬く間に広がってしまって、写本が」
…………………………。
……は?
……いやいやいやいやちょっと待てホントに待て。なんだ写本って。
「……わたくしの知らないところにまで届いてしまって、ジギタリス家から出版されてしまったのよ……」
もうツッコミどころが満載過ぎて。
「……こっちの出版って……家単位なの?」
なんというか、全然的外れな質問を投げかけてしまったのだった……
さて、問題を整理しよう。何故こんなことが起こったのか。
先ず、書籍事情だ。
ロザリィに聞いたところによれば、こちらの書籍事情は甚だおよろしくない。
印刷や製本の技術が低くてきちんと製本された書籍がやたらに高価。メダマドコーするレベル。
書籍自体が軒並み高価なのだから、読書が特権階級の嗜みになってしまうのも致し方ないっちゃ致し方ない。
蔵書が有るというのはそれだけでも上流貴族のステータス。図書館や学校の図書室が無いわけではないけれど会員制なうえに歴史書や専門書が多くて、更に持ち出し禁止。この家みたいに書庫が有る邸なんぞ、稀もいいところなんだそうで。
そんなわけで娯楽本なんて贅沢オブ贅沢。故に、読みたい人間はみんな写本に頼る。本と呼べるもので出回っているものは、ほぼ全部がソレ。
図書室の蔵書だったり、知人から回ってくる写本だったり、そういったものを書き写して楽しむのだそうだ。
……うん、室町時代か?
ついでに言えば途中で書き足されたり削られたりもして、出回っている写本からはもう最初の話がどこにどんな形で存在したのか判らなかったり……
……って、いやホント室町時代か?!
まぁそんなわけで原作への敬意も何処へやら。国民こぞって大・改・変・大・会ですよ。
まぁ、お国の事情が事情だから書き写しちゃうところまでは理解を示そう。ここがこうだったら良いなー、って乙女が夢見るのも止めない。私は心が広いからな。
しかーし!だ!
改変はあかんやろ、改変は。
しかも配布してるし。ついでに配布先でも改変してるし。
物語ってのはな、小説ってのはな、隅々の隅々まで作者が丹精込めて調整するんだぞ。平仮名一つで何日も悩むことだってあるんだぞ。それを……それをだなぁ……!
……熱くなってしまった。深呼吸深呼吸。
ともかくこの世界、著作権なんてものは基本的に存在しない、世知辛~い世界なのである。
ついでにこのあと、この世界における作家の立場について聞いた私は更に頭を抱えることになったのであった……まる。
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