色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ

谷島修一

文字の大きさ
48 / 66
人民革命

オレガの証言~人民革命~その7

しおりを挟む
【現在】

 大陸歴1710年5月4日・パルラメンスカヤ人民共和国・首都アリーグラード

「プリブレジヌイ付近での戦いの後半、そこで私は師を倒したのよ」。
 次の言葉で三人に再び重い沈黙が包んだ。

 クララはこの空気を変えるために話題を一旦、変えようとした。
 オレガのカップを見ると紅茶が無くなっているのに気が付いた。
「紅茶のおかわりは?」
「いただこうかしら」。
 オレガはカップを差し出して、クララに手渡した。クララがそれを持って台所の方へ向かう。
 オレガはクララが紅茶を持って戻ってくるのをしばらく待ってから話を続ける。

 クララはカップに紅茶を入れて戻って来た。それをオレガに渡すのを見て、イリーナが恐る恐る尋ねる
「師を倒したっていうと、それは…」。
「私は師に剣を突き刺したのよ」。
「「ええっ?!」」
 イリーナとクララは驚いて見せた。
「ということは、お爺さまは死んでしまったのですか?!」
 クララが思わず叫んだ。イリーナも間髪を入れず尋ねた。
「待って、待って、そうしたらクララが存在しているのはおかしいです。それに、お爺様が死んだのは十年ほど前の事だと」。
「その時は、クララのお父さんは、もう、彼はヴァーシャお婆様のお腹の中にいたのよ」。
 オレガは微笑みながら話を続ける。
「それに、師は数か月後、元気な姿でひょっこり私の前に現れたわ」。
「致命傷では無かったのでは?」
「いえ、確かに私の剣は師の胸を貫いて致命傷だったはず。あの時、私は倒れた師を抱き上げようとしたけれど、即死でもう息はしていなかったわ」。
「「ええっ?!」」
 イリーナとクララは再び驚きの声を上げた。
「どういうことでしょうか?」
「それが、全然わからないのよ。元気で現れた師に話を聞くと、一命は取り留めて何カ月も治療を受けていたと言っていたわ。それ以上のことは教えてくれなかった」。
「何か秘密が」。
 クララは前のめりなって言う。イリーナは、はっとなって思いついたことを口にする。
「そういえば、人を生き返らせる魔術があったはずです」。
 この問いに、オレガはゆっくりと答える。
「ヴィット王国だと何人かその魔術を使える人がいるみたいだけど、さっきも言ったけど、革命の時期、知る限りではヴィット王国は全く関与していなかったわ。もし、生き返りの魔術を使ったとしても、あの国に師を生き返らせる理由がわからないわ」。
「お爺さまが、ヴィット王国とかかわっていたことはないのですか?」
「聞いたことはないわね。私が遊撃部隊に所属する前にヴィット王国の女性魔術師が所属していたと聞いたことはあったけど、それぐらい」。
 そのヴィット王国の魔術師は、共和国の首都ズーデハーフェンシュタットでブリュンヒルデに聞いた、アグネッタ・ヴィクストレームという魔術師のことだろう。
 しかし、途中で革命軍を守った雹の話、ユルゲンを倒した後にあたりに立ち込めた霧の話、これは大気魔術だ。ヴィット王国の魔術師が関与している可能性が高いと二人は感じた。

 オレガは尋ねた。
「お二人はまだ時間はある?」
「平気です」。
「じゃあ、もう少し話をするわね」。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...