傭兵部隊の任務報告1~物語の始まり

谷島修一

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グロースアーテッヒ川の戦い

第2話・夜襲

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 大陸歴1655年3月4日

 翌日、エッケナーは望遠鏡で帝国軍の様子を覗いていた。
 偵察からの情報の通り、夕方ごろには帝国軍が土埃を上げて近づいてくるのが見えた。しばらく観察していると、帝国軍は停止し陣地を作り始めた。

 双方の兵力は以下の通り。帝国軍の編成は偵察からの情報による推測だ。

 ●共和国軍(18,000)
 8000 第1旅団 総司令官・旅団長ウォルフガング・エッケナー
 5000 第2旅団 旅団長エメリッヒ・メルテンス
 5000 第3旅団 旅団長アーベル・ヴァイスゲルバー

 ●帝国軍(45,000)
 12000 第2旅団 総司令官・旅団長デニス・ソローキン
 12000 第3旅団 旅団長セルゲイ・キーシン
 7000 第1旅団 旅団長ミハイル・イワノフ
 7000 第4旅団 旅団長ミハイル・イェブツシェンコ
 7000 第5旅団 旅団長ボリス・ルツコイ

 共和国軍は各旅団が横一列で、中央にエッケナー、東にヴァイスゲルバー、西にメルテンスの旅団という配置。
 帝国軍は前方に二つの旅団、後方に三つ旅団が並ぶ陣形になっているのが確認できた。

 夜襲を仕掛けるヴァイスゲルバーは、出撃前にエッケナーの元を訪れて最後の報告をする。
「これより夜襲の準備をします。深夜一時、三時、五時と三度にわたり敵陣に対して夜襲を仕掛けます」
 ヴァイスゲルバーの待機している場所から一番近い敵の東側の陣を攻撃することになる。
「予定通りだな」。エッケナーは満足そうにうなずいた「よろしく頼む。戦果を期待しているぞ」
「お任せください」
 ヴァイスゲルバーは敬礼をして、夜襲をするため少し離れて待機をしている部隊の方へ戻って行った。
 エッケナーは、その後ろ姿を見送った。ヴァイスゲルバーの夜襲の成功如何がこの戦いを左右するかもしれない。

 エッケナーは夜襲の結果に関わらず、翌朝、予定通り草原に火を点けて帝国軍の攻撃を足止めする。特に重装騎士団の動きを止めなければいけない。火を点けた後は、魔術師と弓兵による長距離からの攻撃で敵の戦力を削いでいく作戦だ。
 力押しで攻めてくるであろう帝国軍の土俵には、なるべく乗らないようにする作戦だ。

 日付が変わって、深夜。
 ヴァイスゲルバーは望遠鏡で帝国軍の陣地の様子を眺める。暗闇の中、微かに松明の灯りが見える。当然、警戒をしているようだが、やるしかない。

 ヴァイスゲルバーはまず、夜襲の第一陣三百の騎兵を率いて整列させた。
「これより予定通り敵陣に対して攻撃を仕掛ける。テントに火矢を放ち、敵陣を混乱させるのが主な目的だ。不利な状況になったら、私の命令を待たず各自の判断で退却してよい」
 命令を伝え終わるとヴァイスゲルバーは告げた。
「よし、出撃だ」

 ヴァイスゲルバーの馬を先頭に、三百の騎兵が突撃を開始した。
 馬を走らせ十五分もすれば敵陣に到着した。
 それぞれの兵が馬の上から火矢を放つ。一部の兵が敵陣の柵を鉤付きの縄を引っ掛けてなぎ倒す。
 引き倒された柵のところから、侵入しさらに火矢を放つ。

 警戒をしていた帝国軍兵は思ったより少なく、共和国軍を侮っていたようだ。帝国軍兵士たちはようやく起き上がり剣を取って反撃を開始した。帝国軍の魔術師が火の玉や稲妻を放ち、共和国軍を狙い撃ちする。帝国軍も剣を抜いてそれに立ち向かう。

 三十分弱の戦いのあと、共和国軍は撤退を開始した。
 帝国軍は追撃してくる様子はなかった。

 ヴァイスゲルバーは帰還した兵士達の数を確認した。帰還したのは二百四十名ほどで、六十名が犠牲となったようだ。
 成果はまあまあだが、満足できるものであった。
 ヴァイスゲルバーは、休みなく次の夜襲のための準備に取り掛かった。
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