傭兵部隊の任務報告1~物語の始まり

谷島修一

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グロースアーテッヒ川の戦い

第3話・共和国軍第二旅団長 アーベル・ヴァイスゲルバー

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 大陸歴1655年3月5日・深夜

 ヴァイスゲルバーは二回目の夜襲の準備に取り掛かる。

 先ほど行った一回目の奇襲の首尾はまあまあだろう。こちらの兵も討たれたが、敵陣に火を放ち、敵兵も多数打ち取った。
 敵は、まさか奇襲が続けてあることは予想していないだろう。

 そして、深夜三時となった。
 二回目の襲撃のためヴァイスゲルバーは部隊を整列させた。
 先ほど同様、部隊に対し作戦の説明を行うと、号令を掛けた。

「出撃だ!」

 ヴァイスゲルバーを先頭に三百の騎兵が後に続く。
 敵陣近くに到着すると、一回目と同様に敵陣に対し火矢を放つ。

 敵陣は再び混乱状態となったが、反撃を始めるのが前回より早かった。警戒を強めたのだろう。
 ヴァイスゲルバー達は建て直されていた敵陣の柵を引き倒すことはできず、両軍ともの遠巻きに矢の応酬をする状況となった。

 しばらくして、ヴァイスゲルバーは撤退の指示を出した。
 帰還後、兵士を数えた。今回の犠牲者は数名のみで留まった。敵にも大きな被害を与えることはできなかった。
 ヴァイスゲルバーは自陣に戻ると急いで三回目の夜襲の準備に取り掛かる。

 さらに二時間が経った。日の出も近い。水平線が白みを帯びて来たが、予定通り三回目の夜襲を掛ける。
 一、二回目と同様に三百の騎兵を率いて敵陣に夜襲を掛けた。

 さすがに夜襲が三回あるとは思わなかったのだろう。最初のうちは全く抵抗がなく、陣地の柵も簡単に引き倒した。
 そして、陣の中に侵入し次々に火矢を放つ。混乱状態の帝国軍の中、共和国軍は容赦なく攻撃を続ける。

 最初は、戦う準備が出来ていなかった帝国軍に対し一方的な戦いとなっていたが、しばらくして正面に騎馬の一団が立ちはだかった。テントについた火によって照らし出されたのは、帝国軍の重装騎士団だった。辺りの火が赤く、彼らの分厚い鎧に反射しているのが目に入った。
 重装騎士団の先頭の人物が大声で怒鳴った。
「これ以上、好きにさせん!」
 そして、号令を掛けると剣を抜いて突撃をしてくる。

 それを見てヴァイスゲルバーはすぐさま撤退の指示を出す。あえて今、強敵と戦うことはない。共和国軍は馬を帰し、元の陣地に向かう。
 その様子を見た重装騎士団はすかさず追撃を開始した。

 このままでは追いつかれる。
 ヴァイスゲルバーがそう思った時、横から鬨の声を上げて突撃してくる一群があった。
 早朝の薄明りの中、よく見ると、それらは共和国軍の騎兵だ。
 その部隊が重装騎士団の横から突撃した。
 その場で、両軍はしばらく謬着状態であったが、共和国軍のほうが数が多かったため、重装騎士団の犠牲者が増えてきたようだ。

 しばらくして、共和国軍に押されて重装騎士団は撤退を開始する。
 共和国軍も深追いせずに本陣へ退却を開始した。
 ヴァイスゲルバーは助けに入ってくれた共和国軍に近づいた。
 そこには総司令官エッケナーの姿があった。
「エッケナー司令官!」
 驚いたヴァイスゲルバーは声を掛けた。
「司令官。助かりました」
「念のため、君たちの動きを追っていてよかったよ」
 エッケナーはヴァイスゲルバーを見て安堵の表情を見せた。そして、本陣を指さして言った。
「間髪を入れずに次の作戦を開始する。予定通り草原に火をつけて、敵の進軍を遮りつつ、攻撃を開始する」
 エッケナーの部隊は急いで陣に戻った。ヴァイスゲルバーの夜襲部隊もそれに続いた。

 三度目の夜襲で、敵を多く討ち取った。成果は上出来だろう。東側の敵陣は一晩ほとんど休む間もなかっただろう。ヴァイスゲルバーもほとんど休めていなかったが共和国軍のほとんどすべてが待機し休息できていた。
 この帝国軍への三度の夜襲が、これからの戦闘で共和国軍に有利に働くだろう、エッケナーとヴァイスゲルバーは考えていた。
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