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謎めいた指令
新たな指令1
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大陸歴1658年3月9日・ズーデハーフェンシュタット
私は、朝、いつも通り執務室の椅子に座り書類の山を眺める。
最近は、街の外にいる盗賊の類の数は減り、遊撃部隊の任務は治安維持の活動がほとんどであった。書類の山の内容は頻発する小規模な暴動について、それを鎮圧するための命令書や事後の報告書。また、一部、警察から頼まれて協力した窃盗、殺人などの事件の報告書などがたくさん積みあがっていた。また部隊の予算組みや装備の調達などで提出する申請書を作成しなければならないなど、地位が上がるほどこういった書類に振り回される機会が多くなることを知った。
いくつか報告書を読んでいてしばらくすると、ドアをノックする音がするので、外の人物に入るように言う。扉を開けて入って来たのは私の弟子のオットー・クラクスだった。
「師、皇帝からの命令書をつい今しがた伝令が持ってきました。急ぎの物のようです」。
オットー・クラクスは、私よりも長身で金髪、碧眼の男性だ。ズーデハーフェンシュタットの北方にあるモルデンという街の出身だ。モルデンは“ブラウロット戦争”で戦場となり、街は破壊され大部分が焼野原となった。その時、彼は義勇兵として参戦していたが、モルデン陥落直前に脱出し、ズーデハーフェンシュタットまで逃げ延びた。共和国が無条件降伏した後、オットーは、剣術を極めたいと傭兵に志願。そこで私と知り合った。私が“深蒼の騎士”だったということで、その騎士道を学びたいということで弟子入りした。
オットーの剣さばきは大胆で、力強くかつ巧みな剣さばきで、相手の懐に飛び込んで積極的に戦うスタイルだ。
「ありがとう」。
私は命令書を受け取り、礼を言った。
「明後日の午後、時間はあるかい?」
「あります」。
「では、海岸で修練をやらないか?」
「是非お願いします!」
「最近は、なかなか時間が取れなくて、修練ができなくて申し訳なかった。ソフィアにも声を掛けておいてくれ」。
「わかりました。しかし、本当にお忙しそうですね」。
オットーは私の様子を見て、不安そうに言う。
「見ての通りだよ」
私は積みあがっている書類を指さした。
「皇帝からの命令書、アクーニナからの報告書を読んだり、遊撃部隊の武器や備品の申請書類の承認やら、遊撃部隊になってからは以前より紙に追われる日々だよ」。
オットーは思わず苦笑した。
「秘書でも付ければどうでしょうか」。
「それもありかも知れん。考えてみるよ。ありがとう」。
「では、失礼します」。
オットーは敬礼して部屋を去った。
秘書と言えば、海軍の総司令官ベススメルトヌイフには秘書が付いていたな。彼はあんなに暇そうにしているのに。
オットーに手渡された命令書を見ると封蝋は皇帝の印璽で閉じてあった。確かにこれは間違いなく皇帝からの命令書だ。
傭兵部隊が遊撃部隊と名称を変え、皇帝の直属となった後、特に急ぎの命令が無い際は皇帝からの命令書などは、月一回程度届けられていた。その皇帝からの命令書は皇帝の側近のヴァシリーサ・アクーニナが届けるようになっている。
アクーニナは、帝国でも剣の腕が立ち、忠誠心の高い者を選抜して編成された“皇帝親衛隊”に所属している。彼女は、今では親衛隊は皇帝の護衛だけでなく秘書や書記のような仕事もやっているようだ。チューリン事件での戦いの中、五十名の親衛隊員のうち半数以上が死亡したため、親衛隊も軍同様に人手不足なのであろう。皇帝の傍にいて命令をこなす為、何かと忙しくしているようだ。
以前、私が首都を訪問した際、アクーニナと剣の手合わせをしたが、彼女は非常に手強く、かろうじて引き分けにすることができた。当時、城で召使いとして働いていた弟子のオレガは、その話を聞いて驚いていた。アクーニナとの手合わせで勝てた者や、引き分けた者は、これまでにいなかったというのだ。
その後、私とアクーニナとは妙な信頼関係ができ、“チューリン事件”では、帝国を不法に支配していた魔術師アーランドソンを倒すために、共に戦ったりした。
この一年の書類のやり取りで、命令書だけでなく、アクーニナとは私信のやり取りもするようになった。今では私は彼女のことを“ヴァーシャ”、彼女は私のことを帝国風に“ユーリ”と、ファーストネームの愛称で呼び合っている。
また昨年、“チューリン事件”で帝国の危機を救って以来、皇帝は私に対して何かと気遣ってくれているようだ。それは、いつも命令書の端々から読み取ることができた。最後に首都を訪問した際には、皇帝に首都に残って側近として仕えてほしいと言われたほどだ。
私は、手にした皇帝からの新たな命令書を丁寧に開いて内容を確認して驚いた。その内容は、私の想像を超えるものであった。内容はブラミア帝国と北側で国境を接するテレ・ダ・ズール公国が帝国へ侵攻する準備をしており、その対応の為、遊撃部隊を二百名、首都まで進軍させろと書いてあった。
他にも旧共和国領内にいる帝国軍の第一旅団、第四旅団、第五旅団それぞれから兵力の一部を首都付近まで進軍させる命令を出していると書いてあった。
さらには、首都に控える第二旅団、第三旅団と、もともと帝国の北部に展開している第六旅団も部隊の大半を国境線付近まで進軍し、テレ・ダ・ズール公国をけん制するという。
私は、朝、いつも通り執務室の椅子に座り書類の山を眺める。
最近は、街の外にいる盗賊の類の数は減り、遊撃部隊の任務は治安維持の活動がほとんどであった。書類の山の内容は頻発する小規模な暴動について、それを鎮圧するための命令書や事後の報告書。また、一部、警察から頼まれて協力した窃盗、殺人などの事件の報告書などがたくさん積みあがっていた。また部隊の予算組みや装備の調達などで提出する申請書を作成しなければならないなど、地位が上がるほどこういった書類に振り回される機会が多くなることを知った。
いくつか報告書を読んでいてしばらくすると、ドアをノックする音がするので、外の人物に入るように言う。扉を開けて入って来たのは私の弟子のオットー・クラクスだった。
「師、皇帝からの命令書をつい今しがた伝令が持ってきました。急ぎの物のようです」。
オットー・クラクスは、私よりも長身で金髪、碧眼の男性だ。ズーデハーフェンシュタットの北方にあるモルデンという街の出身だ。モルデンは“ブラウロット戦争”で戦場となり、街は破壊され大部分が焼野原となった。その時、彼は義勇兵として参戦していたが、モルデン陥落直前に脱出し、ズーデハーフェンシュタットまで逃げ延びた。共和国が無条件降伏した後、オットーは、剣術を極めたいと傭兵に志願。そこで私と知り合った。私が“深蒼の騎士”だったということで、その騎士道を学びたいということで弟子入りした。
オットーの剣さばきは大胆で、力強くかつ巧みな剣さばきで、相手の懐に飛び込んで積極的に戦うスタイルだ。
「ありがとう」。
私は命令書を受け取り、礼を言った。
「明後日の午後、時間はあるかい?」
「あります」。
「では、海岸で修練をやらないか?」
「是非お願いします!」
「最近は、なかなか時間が取れなくて、修練ができなくて申し訳なかった。ソフィアにも声を掛けておいてくれ」。
「わかりました。しかし、本当にお忙しそうですね」。
オットーは私の様子を見て、不安そうに言う。
「見ての通りだよ」
私は積みあがっている書類を指さした。
「皇帝からの命令書、アクーニナからの報告書を読んだり、遊撃部隊の武器や備品の申請書類の承認やら、遊撃部隊になってからは以前より紙に追われる日々だよ」。
オットーは思わず苦笑した。
「秘書でも付ければどうでしょうか」。
「それもありかも知れん。考えてみるよ。ありがとう」。
「では、失礼します」。
オットーは敬礼して部屋を去った。
秘書と言えば、海軍の総司令官ベススメルトヌイフには秘書が付いていたな。彼はあんなに暇そうにしているのに。
オットーに手渡された命令書を見ると封蝋は皇帝の印璽で閉じてあった。確かにこれは間違いなく皇帝からの命令書だ。
傭兵部隊が遊撃部隊と名称を変え、皇帝の直属となった後、特に急ぎの命令が無い際は皇帝からの命令書などは、月一回程度届けられていた。その皇帝からの命令書は皇帝の側近のヴァシリーサ・アクーニナが届けるようになっている。
アクーニナは、帝国でも剣の腕が立ち、忠誠心の高い者を選抜して編成された“皇帝親衛隊”に所属している。彼女は、今では親衛隊は皇帝の護衛だけでなく秘書や書記のような仕事もやっているようだ。チューリン事件での戦いの中、五十名の親衛隊員のうち半数以上が死亡したため、親衛隊も軍同様に人手不足なのであろう。皇帝の傍にいて命令をこなす為、何かと忙しくしているようだ。
以前、私が首都を訪問した際、アクーニナと剣の手合わせをしたが、彼女は非常に手強く、かろうじて引き分けにすることができた。当時、城で召使いとして働いていた弟子のオレガは、その話を聞いて驚いていた。アクーニナとの手合わせで勝てた者や、引き分けた者は、これまでにいなかったというのだ。
その後、私とアクーニナとは妙な信頼関係ができ、“チューリン事件”では、帝国を不法に支配していた魔術師アーランドソンを倒すために、共に戦ったりした。
この一年の書類のやり取りで、命令書だけでなく、アクーニナとは私信のやり取りもするようになった。今では私は彼女のことを“ヴァーシャ”、彼女は私のことを帝国風に“ユーリ”と、ファーストネームの愛称で呼び合っている。
また昨年、“チューリン事件”で帝国の危機を救って以来、皇帝は私に対して何かと気遣ってくれているようだ。それは、いつも命令書の端々から読み取ることができた。最後に首都を訪問した際には、皇帝に首都に残って側近として仕えてほしいと言われたほどだ。
私は、手にした皇帝からの新たな命令書を丁寧に開いて内容を確認して驚いた。その内容は、私の想像を超えるものであった。内容はブラミア帝国と北側で国境を接するテレ・ダ・ズール公国が帝国へ侵攻する準備をしており、その対応の為、遊撃部隊を二百名、首都まで進軍させろと書いてあった。
他にも旧共和国領内にいる帝国軍の第一旅団、第四旅団、第五旅団それぞれから兵力の一部を首都付近まで進軍させる命令を出していると書いてあった。
さらには、首都に控える第二旅団、第三旅団と、もともと帝国の北部に展開している第六旅団も部隊の大半を国境線付近まで進軍し、テレ・ダ・ズール公国をけん制するという。
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