色彩の大陸2~隠された策謀

谷島修一

文字の大きさ
48 / 75
共和国再興

モルデン掌握2

しおりを挟む
 大陸歴1658年4月18日・旧共和国モルデン

 私は、ブルガコフに言って、街の通りで市民の監視を続けている兵士達を全員引き上げさせた。次に、帝国軍の兵士をできるだけ多く城の中の広場に集める様に言った。
 私の司令官就任の挨拶をするためだ。もちろん、これは偽の就任の挨拶だ。
 まずは、兵士達の私が指揮官だと思わせる必要がある。
 夜もやや遅い時間となってしまったが、事は早く進めた方が良い。城の中庭の四千五百名近い兵士が集まった。

 集まった兵士たちに対し、私が第四旅団長となったと宣言した。
 私が、旅団長就任を打診されていることは多くの兵士達の耳にも入っていたので、彼らにさほど動揺はなかったようだ。
 私は、兵士達には命令があるまで、待機するように伝え解散させた。

 次に上級士官を会議室に全員集めるように言った。
 会議室にブルガコフを含め上級士官五名が集まった。
 私の合図でオットーとコフを始めとする共和国派が二十名ばかり部屋に入ってきた。
「これはどうしたことですか?」
 ブルガコフは驚いて立ち上がった。
「これよりモルデンは共和国派の支配下となります。申し訳ありませんが、しばらくあなた方を拘束します」。
「何だと?! クリーガー旅団長、裏切ったのか?!」。
 ブルガコフは抵抗しようとしたが、すぐにコフ達に押さえつけられた。共和国派の者たちに両脇から押さえつけられて連れて行かれた。

 ここまでの首尾は上々だ。 
 次の問題は、こちらに向かっている本来の旅団長イェプツシェンコ率いる旅団と、そして、モルデンを経由してズーデハーフェンシュタットへ向かうルツコイの旅団だ。その二つの旅団は、おそらくほぼ同時にモルデンの近くに到着するだろう。
 合わせて六千の兵力だ。モルデンに残っている兵力は五千、モルデンにいる共和国派は五百程度、合わせて五千五百。
 兵士達が、上級士官達がいない異変に気付くのはそう遅くはないだろう。そうなった時、モルデンの兵士達全員が私の指令に従うかどうかは分からない。もし、兵士達のほとんどが私に従ったとしても、相対するルツコイは機知に富む戦略家だ。こちらには用兵のできる者はいないと考えると、ほぼ同数の戦いではおそらくこちらには勝ち目はないだろう。

 私は考えを巡らせ一つの案が浮かんだ。そして、それを実行するためにオットーを呼んだ。ブルガコフたちを牢に入れたあと会議室に戻って来たオットーに言った。
「我々は明日、遊撃部隊と合流し、モルデンへ急がせよう。ルツコイ達をモルデンの前で足止めさせる」。
「わかりました」。
 私はコフに向き直る。
「コフさん。モルデンを任せても良いですか?」
「わかりました。任せてください」。

 すでに外は暗くなっていた。
 私は街を一望できる城の窓から外を見下ろした。
 街中では市民が騒ぎ続けているようだ。あちこちで火が上がっているのが見える。この様子ではしばらくは騒ぎが治まらないだろう。
 一般市民も帝国からの解放を喜んでいるようだ。モルデンは元々は共和国の都市だった。今でも住民のほとんどが元共和国の者達だ。帝国から抑圧されていたので三年ぶりの自由を謳歌している。

 私は再びコフを呼んだ。
「住民を静かにさせることはできないか?」
「こうなっては、我々でも手が付けられません」。
「しばらくはこんな状態なのか」。
「おそらく、数日すれば治まるでしょう」。
 私はため息をついた。自分がやったこととはいえ、この状況は良くない。
「住民を城の中に入れないようにしてくれ」。
「すでに手は打ってあります。城門は閉じてあります」。
「ありがとう」。
 私は再び窓の外に目をやった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...