色彩の大陸2~隠された策謀

谷島修一

文字の大きさ
60 / 75
共和国派の内紛

解散

しおりを挟む
 大陸歴1658年4月26日・ベルグブリック

 ホルツ達の部隊は、モルデンの共和国派によって攻撃を受け、多くの者が討ち取られ、生き残り、なんとか逃げ延びた仲間たちも散り散りとなっていた。
 数日後、辛うじて、ホルツ、ブロンベルク、リヒター、数名の深蒼の騎士たちはベルグブリックまで逃げ延びた。
 そして、先日まで使っていた宿屋のロビーに集まって今後について話し合っていた。リーダーであるホルツは態勢を立て直すべく、どのようにすべきかをまくし立てる様に話をしていた。

 ホルツは怒声を上げている。
「あれは間違いなくモルデンの共和国派だった。なぜ、我々を攻撃してきたのか?」
「我々の事が分からなかったということも考えにくい」。ブロンベルクが口を開く。「そうなると、モルデンの者達が我々を排除しようとしているのではないでしょうか?」
「一体何のために?」
「それは、わかりませんね」
「彼らが主導権を握るためでは?」
 マリアが発言した。
「我々はまだ帝国軍との戦いが控えているんだ、仲間内で殺し合っている状況ではないはずだ」
「ひょっとしたら、クリーガー隊長の帝国への説得が成功して、帝国軍の攻撃はもうないのかもしれません」
「なるほど、それであれば可能性は考えられなくもない」。ブロンベルクがマリアの意見に同調する。「いずれにせよ、我々は先日の戦いでほぼ壊滅状態です。最早、戦力と呼べるほどの人数にもなっていません。帝国軍はおろか、モルデンの連中とも戦うことはかなわないでしょう」
 ホルツは怒り抑えきれず、机を拳で叩いた。
「なんということだ」

 その後、長時間の議論が行われ、いくつか案が出た。しかし、最終的に全員の意見が一致することはなかった。そして、結局、それぞれが別行動することになった。
 ホルツは、もともと自分が居たモルデン郊外のアジトに向かい、そこに残っているはずの仲間と共に再度、戦力を増やし再起を図ると言う。
 ブロンベルクや深蒼の騎士たちは、状況を見ながらズーデハーフェンシュタットなどのそれぞれの故郷に戻ると言う。
 マリアも以前の戦いでの怪我が原因で十分に戦える状態でなかったので、故郷フルッスシュタットに戻ることにした。
 逃げ延びてきた若干の義勇兵達にもベルグブリックで、ホルツ達の部隊はここで解散すると伝えた。この後は、それぞれが自由に行動するだろう。

 ヴァイテステン収容所を襲撃し共和国再独立のきっかけとなった最初の立役者ホルツ達の部隊は不本意な形で、あっけなく消滅となった。

 会議の後、ブロンベルクがマリアに話しかけて来た。
「遊撃部隊に戻らないのですか?」
「遊撃部隊はモルデンに居るはずですが、モルデンがあの状況では街に入ることは難しいでしょう」
「そうですか」。ブロンベルクは、少し考えこんだようにうつむいて話を続ける。「クリーガーの帝国の説得がうまく行っていればいいですね」
「ええ、あの人なら、うまくやってくれると思います。ところで、クリーガーさんとは面識があるのですか?」
「彼も“深蒼の騎士”だったから、共和国軍の時は良く一緒に行動することが多かったね」
「そうでしたか」
「今回は、一緒に戦うことができず残念だが」
 ブロンベルクは軽くため息をついた。
「私はしばらくここに留まって、少し様子をみてからズーデハーフェンシュタットに戻ろうと思っています。機会があれば、また会うこともあるでしょう」
 そう言うとブロンベルク宿屋の奥の方へ去って行った。
 それを見送った後、マリアも自分の使っている部屋に戻って行く。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...