42 / 42
第1章:別れと出会い
41.薬草の評価/気にしない胸騒ぎ
しおりを挟む「これは……素晴らしい薬草だ」
あの森から戻ってくる時に持ってきた薬草をラゼル様に見せた。
「大きさ、色、艶、どれを見ても今までのものと一線を画す」
私の知る限り、この街で最も薬草に詳しい魔術師であるラゼル様がこうまで言うのだ。私の考えは正しかった!
そもそもあのフェルネス商会の息子が利益にもならない無茶を起こすわけがないのだ。
「このクオリティの薬草を入れられるのなら、いつもの倍だそう」
「……! 倍ですか!?」
「あぁ。むしろ安いくらいだ。これよりもさらに良くなるならさらに増やそう」
「それは……ありがたきことです」
「あぁ、頼んだぞ」
私は頭を下げてラゼル様の研究室を後にした。
こうなったらなんとしてもあの薬草の情報を手に入れねばな。
私は企みを思い浮かべながらつい先日手に入れた魔道具を力強く握りしめた。
・
・
・
・
・
「だから、これはもう少し配置を変えましょうって!」
薬草の栽培法がわかってから一ヶ月が経った。
俺たちは薬草の量産体制に入って、色々とわかってきたことがある。
薬草は魔力が満たされれば短時間で栽培が可能なこと。
そのために効率のいい方法で育成する必要性があるわけだが……。
「でもこっちの方が他の野菜にいい影響が出るだろ!」
それで薬草を育てるための配置でルッテとトニーの意見が真っ向からぶつかった。
研究者気質のルッテが出す薬草の種子散布の段階で収穫を楽にする配置と、トニーが出す野菜を美味しくする配置だ。
ムー爺さん曰く、薬草を育てるための魔力が周りの植物にもいい影響を与えて、美味しくなるらしい。
だから俺が薬草を取っていたところも綺麗な花畑になっていたということらしい。
「薬草を採る時に野菜を避けながらは邪魔でしょう!」
「でも子供たちのことを考えたら美味しい野菜の方がいいだろ!」
トニーはトニーで、料理が好きなだけあって野菜が美味しく育つのは嬉しいんだろう。毎日俺も食べていてわかるが、薬草を育て始めてからの料理が明らかに美味しくなっているのは良くわかる。
お互いの言い分がぶつかるのを俺とロネットで眺めているが、俺もロネットもどっちの言い分も大事なことがわかるから何もいえずにいた。
「とりあえず、二人とも落ち着けよ」
「でもシノさん!」
「でもシノ兄!」
俺が止めに入ったところで二人ともフンッと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「ほっほっほ。毎日賑やかじゃのぉ」
2階からムー爺さんがいつもの警戒な笑い声をあげて降りてきた。
「ムー爺さん、珍しく部屋の中にこもってたな。何してたんだ?」
「うむ、実はしばらく出かけさせてもらおうかと思っての。その準備じゃ」
「出かけるのは全然大丈夫だが、どこにいくんだ?」
「ほっほっほ。ガルドと一緒に街の酒蔵巡りじゃよ」
ガルドさんと酒を飲んでからすっかり酒好きになったムー爺さん。ガルドさんともめちゃくちゃ仲良くなってんな……。
「数日は戻らんが、大丈夫かの?」
「あぁ、楽しんできてくれ」
「そう言ってもらえるとありがたいのう。では行ってくるの」
ムー爺さんが出ていくのを見て、ほんの少しだけ胸騒ぎがした。
でも、それはムー爺さんがいることが当たり前になったんだなと思って、気にしないことにした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる