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彼
パンケーキ戦争
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パンケーキ屋さんにはたくさんの人が並んでおり、待ち時間は1時間ほどだという。
私たちは行列に並んでる間に、スマホでパンケーキ屋さんのメニューを見て、当てをつけておくことにした。
「これなんかいいんじゃない?イチゴパーティーだって」
フミがスマホの写真には、ふっくらと焼けたパンケーキの上に、きらきらとシロップのついたいっぱいのイチゴが乗っていた。
私はフミのために料理の勉強をしている間に、パンケーキなどの洋菓子が好きになり、こういうお店にたびたびフミと一緒に来ることがしばしばあった。
「おいしそう…でも、こっちのチョコチョコサンデーも捨てがたいよね…」
「あぁ!それもおいしそう!でも普通のプレーンも食べてみたいよね…」
当てをつけるといってもほとんど私とフミで写真を見てはしゃいでるだけで、広木さんと鹿野さんは二人でスマホのゲームをして時間を潰す。
そんなことをしていると、あと一組で店の中に入れるところまできた。
「あぁどーしよー!全然決まらないよー!」
「まだ決めてないのかよ」
「だってだって!どれもおいしそうなんだもん!」
うん。フミの気持ちはよくわかる。
この店はパンケーキのトッピングにとてもこだわっていて、どれもすごく魅力的だ。
かくいう私もどれにするか決めかねている。
「どれか候補はあるの?」
「イチゴパーティーとチョコチョコサンデーとプレーンかなって思ってるんですけど…」
「普通に一人一つ頼んじゃダメなの?」
「写真を見るとけっこう大きくて…一人一個はちょっと厳しいかも」
私とフミの話を聞いて鹿野さんはうーんとうなって何かを思いついたようだった。
「じゃあその三つを頼んで、それぞれみんなで食べたらいいんじゃないかな?優太もそれでいいか?」
「ん?俺は別にいいぞ」
「いいの!?ありがとー!」
「あ、ありがとうございます!」
私とフミは鹿野さんの手をとってお礼を言った。
「い、いや…大したことじゃ…」
じゃっかん鹿野さんの顔が赤くなっているように見えた。
「次にお待ちの4名様~、どうぞ~」
「あ、はーい!いこ、ヒナ」
「うん!」
私たちは店員さんの案内で席に案内されて、さっきの三種類の味を注文をしてからわくわくしながら待っていた。
「ほんと女の子はこういうの好きだよな、俺にはどれにも一緒に見えるよ」
「全然違うよ!そういうのがわからないと女の子にもてないよ?」
「文香がいれば別にいいよ」
なんだこのカップル…いちゃいちゃして、とは思わない。いつものことだから。
でも、鹿野さんがそういう顔をしていた。
「あ、そういえば鹿野さんも本が好きだったりするの?」
急にフミが鹿野さんに話を振るから、鹿野さんがちょっとびっくりしていたように見え、こういうところがフミは唐突すぎると、常日頃感じる。
「そうだね。本は月に10冊くらい読んでるかな」
「10冊!?スゴイ読んでるじゃん!」
「私は20冊読んでるもん」
なぜか本のことになると張り合ってしまって、つい対抗してしまった。
「もぉーヒナは本のことになるとこれなんだから」
そうは言っても、普段は本ばかり読む私のことをいろいろ言うくせに、鹿野さんはそんな風にほめるのはなんだかずるい。
「あ、わかった。私が鹿野さんをほめるからヤキモチやいちゃったんでしょー?」
「べ、別にヤキモチなんてやいてないもん…」
フミに気持ちを当てられて少し焦ったのか、それとも見透かされてちょっと怒ったのか、顔が熱くなっているのがわかってちょっと下を向いた。
「ふふふ…ヒナは可愛いなぁ」
「もぉーフミ…」
「ごめんごめん」
謝りながらもフミはクスクス笑っていた。
私がふてくされるのを見て慌てる鹿野さんと広木さん。
そこで、店員さんがお盆にパンケーキをのせて運んできた。
写真よりもずっとおいしそうな見た目にテンションがあがる私。
「お待たせしました、チョコチョコサンデーとイチゴパーティーとプレーンのパンケーキになります」
「わぁ!おいしそう!ね?ヒナ」
「うん!」
さっきまでのふてくされていた私はどこへ行ったのか、フミと一緒にフォークとナイフを持った。
その様子を見てほっとする鹿野さん。
私とフミがパンケーキにフォークを刺そうとしたところで、広木さんに止められた。
「文香、陽菜乃ちゃん、ちょっと待った」
「もーなに?早く食べたいんだけど」
「パンケーキをしっかり四等分しよう」
広木さんがわざわざ止めに入るから何事かと思ったけど、意外と普通のことだった。
「えー?別にいいじゃん。いつもこんな感じだし。ね?ヒナ」
「そうだね…今さらとは思うけど…」
広木さんがいうのだから何か理由があるに違いない。
そう言おうと思ったけど、鹿野さんがきょとんとした顔で広木さんに言う。
「二人もそう言ってるし、いいんじゃないか?」
「…そうか、じゃあ食べろ」
広木さんが半分あきらめたように許可を出したところで、私とフミは今度こそパンケーキをナイフで小さくとって頬張った。
「んー!チョコおいしっ!」
「イチゴもいい甘さでおいしいよぉ!」
私たちの様子を見て、鹿野さんが満足そうな顔をしているのに対して、広木さんがなんとも言えない顔をしていた。
なんだかんだで、4人で食べれば普通に食べれる量だったらしく、現在の残っているパンケーキはイチゴパーティー一口分となった。
「あ、俺はもうけっこう腹はふくれたわ」
「僕ももういいかな」
「「じゃあ私が…」」
私とフミの声が重なった。
「ヒナは最初にイチゴパーティー食べてたよね?だからこれは私が…」
「いや、フミは私よりもプレーンとチョコチョコサンデーを多く食べてたと思うよ?」
私とフミの様子に鹿野さんはあたふたとし始め、広木さんはため息をついていた。
「でもヒナはイチゴたくさん食べてたしさ」
「フミは前のパンケーキ屋さんでもそうやって最後の一口食べたよね?」
バチバチと私とフミの間に火花が散る。
「あーもう」
「んむぅ!?」
広木さんがフォークで残りのパンケーキを刺し、鹿野さんの口の中にねじ込んだ。
「「あぁー!?」」
私とフミが同時に声をあげた。
「こうなるから最初に4等分しようつったんだろ?」
なるほど。いや、納得はしないけど。だからって鹿野さんに食べさせなくても!
落ち込む私とフミをよそに、広木さんが席を立った。
「さーて、パンケーキうまかったし、いくかー」
鹿野さんが口をもごもごさせながら広木さんについていく。
私たちもそれにのろのろとついていき、会計は広木さんと鹿野さんが済ませてくれていた。
ふたたび車にのるが、私とフミは先ほどのパンケーキショックから帰ってこれずにいた。
「お前ら…いつまでへこんでるんだよ。お詫びに奢ってやっただろ?とりあえず次はどこに行くか言ってくれ」
もうこういうのはフミにおまかせだ。
私はもう少しパンケーキのショックに身を任せておこうと思う。
「…ボーリング」
フミがそういうと、広木さんはウィンカーをつけて、目的地に方向を変えるのだった。
私たちは行列に並んでる間に、スマホでパンケーキ屋さんのメニューを見て、当てをつけておくことにした。
「これなんかいいんじゃない?イチゴパーティーだって」
フミがスマホの写真には、ふっくらと焼けたパンケーキの上に、きらきらとシロップのついたいっぱいのイチゴが乗っていた。
私はフミのために料理の勉強をしている間に、パンケーキなどの洋菓子が好きになり、こういうお店にたびたびフミと一緒に来ることがしばしばあった。
「おいしそう…でも、こっちのチョコチョコサンデーも捨てがたいよね…」
「あぁ!それもおいしそう!でも普通のプレーンも食べてみたいよね…」
当てをつけるといってもほとんど私とフミで写真を見てはしゃいでるだけで、広木さんと鹿野さんは二人でスマホのゲームをして時間を潰す。
そんなことをしていると、あと一組で店の中に入れるところまできた。
「あぁどーしよー!全然決まらないよー!」
「まだ決めてないのかよ」
「だってだって!どれもおいしそうなんだもん!」
うん。フミの気持ちはよくわかる。
この店はパンケーキのトッピングにとてもこだわっていて、どれもすごく魅力的だ。
かくいう私もどれにするか決めかねている。
「どれか候補はあるの?」
「イチゴパーティーとチョコチョコサンデーとプレーンかなって思ってるんですけど…」
「普通に一人一つ頼んじゃダメなの?」
「写真を見るとけっこう大きくて…一人一個はちょっと厳しいかも」
私とフミの話を聞いて鹿野さんはうーんとうなって何かを思いついたようだった。
「じゃあその三つを頼んで、それぞれみんなで食べたらいいんじゃないかな?優太もそれでいいか?」
「ん?俺は別にいいぞ」
「いいの!?ありがとー!」
「あ、ありがとうございます!」
私とフミは鹿野さんの手をとってお礼を言った。
「い、いや…大したことじゃ…」
じゃっかん鹿野さんの顔が赤くなっているように見えた。
「次にお待ちの4名様~、どうぞ~」
「あ、はーい!いこ、ヒナ」
「うん!」
私たちは店員さんの案内で席に案内されて、さっきの三種類の味を注文をしてからわくわくしながら待っていた。
「ほんと女の子はこういうの好きだよな、俺にはどれにも一緒に見えるよ」
「全然違うよ!そういうのがわからないと女の子にもてないよ?」
「文香がいれば別にいいよ」
なんだこのカップル…いちゃいちゃして、とは思わない。いつものことだから。
でも、鹿野さんがそういう顔をしていた。
「あ、そういえば鹿野さんも本が好きだったりするの?」
急にフミが鹿野さんに話を振るから、鹿野さんがちょっとびっくりしていたように見え、こういうところがフミは唐突すぎると、常日頃感じる。
「そうだね。本は月に10冊くらい読んでるかな」
「10冊!?スゴイ読んでるじゃん!」
「私は20冊読んでるもん」
なぜか本のことになると張り合ってしまって、つい対抗してしまった。
「もぉーヒナは本のことになるとこれなんだから」
そうは言っても、普段は本ばかり読む私のことをいろいろ言うくせに、鹿野さんはそんな風にほめるのはなんだかずるい。
「あ、わかった。私が鹿野さんをほめるからヤキモチやいちゃったんでしょー?」
「べ、別にヤキモチなんてやいてないもん…」
フミに気持ちを当てられて少し焦ったのか、それとも見透かされてちょっと怒ったのか、顔が熱くなっているのがわかってちょっと下を向いた。
「ふふふ…ヒナは可愛いなぁ」
「もぉーフミ…」
「ごめんごめん」
謝りながらもフミはクスクス笑っていた。
私がふてくされるのを見て慌てる鹿野さんと広木さん。
そこで、店員さんがお盆にパンケーキをのせて運んできた。
写真よりもずっとおいしそうな見た目にテンションがあがる私。
「お待たせしました、チョコチョコサンデーとイチゴパーティーとプレーンのパンケーキになります」
「わぁ!おいしそう!ね?ヒナ」
「うん!」
さっきまでのふてくされていた私はどこへ行ったのか、フミと一緒にフォークとナイフを持った。
その様子を見てほっとする鹿野さん。
私とフミがパンケーキにフォークを刺そうとしたところで、広木さんに止められた。
「文香、陽菜乃ちゃん、ちょっと待った」
「もーなに?早く食べたいんだけど」
「パンケーキをしっかり四等分しよう」
広木さんがわざわざ止めに入るから何事かと思ったけど、意外と普通のことだった。
「えー?別にいいじゃん。いつもこんな感じだし。ね?ヒナ」
「そうだね…今さらとは思うけど…」
広木さんがいうのだから何か理由があるに違いない。
そう言おうと思ったけど、鹿野さんがきょとんとした顔で広木さんに言う。
「二人もそう言ってるし、いいんじゃないか?」
「…そうか、じゃあ食べろ」
広木さんが半分あきらめたように許可を出したところで、私とフミは今度こそパンケーキをナイフで小さくとって頬張った。
「んー!チョコおいしっ!」
「イチゴもいい甘さでおいしいよぉ!」
私たちの様子を見て、鹿野さんが満足そうな顔をしているのに対して、広木さんがなんとも言えない顔をしていた。
なんだかんだで、4人で食べれば普通に食べれる量だったらしく、現在の残っているパンケーキはイチゴパーティー一口分となった。
「あ、俺はもうけっこう腹はふくれたわ」
「僕ももういいかな」
「「じゃあ私が…」」
私とフミの声が重なった。
「ヒナは最初にイチゴパーティー食べてたよね?だからこれは私が…」
「いや、フミは私よりもプレーンとチョコチョコサンデーを多く食べてたと思うよ?」
私とフミの様子に鹿野さんはあたふたとし始め、広木さんはため息をついていた。
「でもヒナはイチゴたくさん食べてたしさ」
「フミは前のパンケーキ屋さんでもそうやって最後の一口食べたよね?」
バチバチと私とフミの間に火花が散る。
「あーもう」
「んむぅ!?」
広木さんがフォークで残りのパンケーキを刺し、鹿野さんの口の中にねじ込んだ。
「「あぁー!?」」
私とフミが同時に声をあげた。
「こうなるから最初に4等分しようつったんだろ?」
なるほど。いや、納得はしないけど。だからって鹿野さんに食べさせなくても!
落ち込む私とフミをよそに、広木さんが席を立った。
「さーて、パンケーキうまかったし、いくかー」
鹿野さんが口をもごもごさせながら広木さんについていく。
私たちもそれにのろのろとついていき、会計は広木さんと鹿野さんが済ませてくれていた。
ふたたび車にのるが、私とフミは先ほどのパンケーキショックから帰ってこれずにいた。
「お前ら…いつまでへこんでるんだよ。お詫びに奢ってやっただろ?とりあえず次はどこに行くか言ってくれ」
もうこういうのはフミにおまかせだ。
私はもう少しパンケーキのショックに身を任せておこうと思う。
「…ボーリング」
フミがそういうと、広木さんはウィンカーをつけて、目的地に方向を変えるのだった。
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