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彼女
友人
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「お前それでどうしたの?」
「いや、けっきょく声をかけれずに…」
「そのまま帰したのか!?うわーお前、それはありえないわー」
大学からの友達の優太が缶ビールを飲みながら僕に言った。
僕は彼女に会ってから心がざわついて、いてもたってもいられなくなった結果、友達の家に泊まりに行き、話を聞いてもらうというのがベストだと判断した。
「いや、だってさ…今日会ったばっかりで、しかも偶然空いてたベンチに座っただけだぞ?」
「いやいやいや、1回話せたんだろ?ちょっと話題を広げてもいいもんじゃねーの?」
「やっぱりそうだよなぁ…」
僕はため息をついて、顔を机に伏せた。
それを横目に、優太はつまみのさきいかを口に入れた。
「それにしても珍しいな、お前がそんなに気にする女なんて。どんな人だったんだ?」
「え?美人で、肌が白くて、黒髪ロングで、おそらく本好き」
「なんだよおそらくって」
優太は笑いながらビールをまた1口飲んだ。
「読書をわざわざ公園に来てする人なんて、よっぽど本好きなんだろ?」
「いやいや、わかんねーぞ。彼氏と待ち合わせで、暇つぶしに本を読んでただけかもしんねーだろ?」
「た、たしかに…」
想像はしたくないがじゅうぶんありえることだ。
誰かとの待ち合わせのあいだ、好きな本を読んでいただけ。
彼女がほかの男の人と楽しそうに笑っている。そういう想像をすると胸がきゅっと苦しくなるような感覚がした。
「そういうこと確認するためにもやっぱ話しかけねーとさ、名前だってわかんねーじゃん」
「やっぱり失敗だったよなぁ…」
僕はおそらく1度であろう最大のチャンスを逃した失敗に、だいぶ気持ちが参っていた。
またしても大きなため息をついて下を向く。
「お前…さすがに落ち込みすぎだろ?」
「いや、だってさ…ほんとに一目見てこの子だって思える子だったんだよ…。今までこんな風に思ったことなかったしさ…」
「まーまー、お前のヘタレを恨むんだなぁ」
「それはわかってるよ…はぁ…」
「んー…お前明日暇か?」
「え?あぁ…特に何もないけど」
「じゃあ明日ちょっと俺につきあえよ」
優太の突然の誘いに、僕は不思議に思いながら了承した。
「でも何するんだ?」
「いや、俺が思うに、お前は寄ってくる女の子が残念だっただけだと思うんだよ。普通の女の子でも意外と似たようなもんかもしんねーぞ?」
「そんなわけ…それに、明日何するかっていう答えになってないし」
この感じだと、いかがわしい店に連れていかれるのではと僕は少し警戒したが、それを察した優太はすぐに否定した。
「変なとこには連れてかねーよ。そんなとこ行ったら俺が彼女に殺されるわ」
優太にはすでに彼女がいる。
1度写真を見せてもらったが、なんかすごく元気のよさそうな大学生って感じの雰囲気だった。
今日会った女の子とは真逆そうなタイプだ。
「じゃあどこだよ」
「明日、俺の彼女とその友達で一緒に出かけるからお前もこい」
「それ僕全然関係なくない?」
優太の話を聞く限り完全に僕は他人で、アウェー確定だ。
そんなところにいけるものだろうか。
「いいから、自慢じゃないけど俺の彼女はいい女だぞ?少なくともお前の今まで付き合ってきた見た目に惹かれてきたようなやつらよりな」
「なんか今日は辛辣じゃないか?」
「目の前でそこまで凹まれるとビールも美味くないからな、ま、楽しみにしとけって」
「楽しみにって言われてもな…」
「ちなみに、彼女の友達も黒髪ロングの本好きだぞ?」
「って言ってもな…」
「まーとりあえず来いって。今日は寝るぞ。どうせあいつは遅刻してくるけど、念のためな」
そう言って優太は机を片付けて、布団を引いた。
「お前が布団使っていいぞ」
「いや、傷心中の友達を床に転がしておくのは心が痛むだろ?いいから寝ろよ」
そう言って優太は毛布をかぶって床に横になった。
優太はいつもこういうやつだ。
友達思いで、こんなにいいやつはそうそういないだろうと思える親友だ。
そんなやつが付き合う女の子はもその友達もきっといい子なんだろう。
でも、公園であの人に会ったばかりのこの気持ちで、他の女の子に魅力を感じられるだろうか。
あの人に会ったとき、ほんとに不思議な感じがしたんだ。今でも覚えてる。昔の小さな頃の初恋の時のような、全身でこの人だ!って思えるほどだ。
「……我ながら気持ち悪いな」
横から優太の寝息が聞こえ、僕も自分に呆れながら眠りについた。
朝、目が覚めてスマホを見ると、時計は7時30分だった。
もう少し寝たかったが、今二度寝すると確実に昼まで起きないだろうと思い、起き上がる。
「あぁ…最悪だ」
スマホを見て思ったが、充電器にさすのを忘れていて、充電が残り38%しかない。
こういう時に携帯充電器があればいいのだろうけど、買おう買おうと思いつつ買わずにいた自分に後悔した。
うん、次はちゃんと買っておこう。
「おぉ…朝か…」
「おはよう」
「おう、よく寝れたか?」
「まぁ…充電さすの忘れたくらいだな」
「あぁ…そういう時けっこうショックだよな」
優太は欠伸をしながら言うと立ち上がった。
「朝飯はいるか?」
「お前が食べるなら」
「じゃあ、なしだな」
マジか…。
ほしいといえば良かったとこれまた後悔して、僕は布団をたたみ始めた。
2人で交互に洗面所を使って準備をし、しばらく2人で最近ハマっているアプリをしたあと、僕達はアパートを後にした。
「いや、けっきょく声をかけれずに…」
「そのまま帰したのか!?うわーお前、それはありえないわー」
大学からの友達の優太が缶ビールを飲みながら僕に言った。
僕は彼女に会ってから心がざわついて、いてもたってもいられなくなった結果、友達の家に泊まりに行き、話を聞いてもらうというのがベストだと判断した。
「いや、だってさ…今日会ったばっかりで、しかも偶然空いてたベンチに座っただけだぞ?」
「いやいやいや、1回話せたんだろ?ちょっと話題を広げてもいいもんじゃねーの?」
「やっぱりそうだよなぁ…」
僕はため息をついて、顔を机に伏せた。
それを横目に、優太はつまみのさきいかを口に入れた。
「それにしても珍しいな、お前がそんなに気にする女なんて。どんな人だったんだ?」
「え?美人で、肌が白くて、黒髪ロングで、おそらく本好き」
「なんだよおそらくって」
優太は笑いながらビールをまた1口飲んだ。
「読書をわざわざ公園に来てする人なんて、よっぽど本好きなんだろ?」
「いやいや、わかんねーぞ。彼氏と待ち合わせで、暇つぶしに本を読んでただけかもしんねーだろ?」
「た、たしかに…」
想像はしたくないがじゅうぶんありえることだ。
誰かとの待ち合わせのあいだ、好きな本を読んでいただけ。
彼女がほかの男の人と楽しそうに笑っている。そういう想像をすると胸がきゅっと苦しくなるような感覚がした。
「そういうこと確認するためにもやっぱ話しかけねーとさ、名前だってわかんねーじゃん」
「やっぱり失敗だったよなぁ…」
僕はおそらく1度であろう最大のチャンスを逃した失敗に、だいぶ気持ちが参っていた。
またしても大きなため息をついて下を向く。
「お前…さすがに落ち込みすぎだろ?」
「いや、だってさ…ほんとに一目見てこの子だって思える子だったんだよ…。今までこんな風に思ったことなかったしさ…」
「まーまー、お前のヘタレを恨むんだなぁ」
「それはわかってるよ…はぁ…」
「んー…お前明日暇か?」
「え?あぁ…特に何もないけど」
「じゃあ明日ちょっと俺につきあえよ」
優太の突然の誘いに、僕は不思議に思いながら了承した。
「でも何するんだ?」
「いや、俺が思うに、お前は寄ってくる女の子が残念だっただけだと思うんだよ。普通の女の子でも意外と似たようなもんかもしんねーぞ?」
「そんなわけ…それに、明日何するかっていう答えになってないし」
この感じだと、いかがわしい店に連れていかれるのではと僕は少し警戒したが、それを察した優太はすぐに否定した。
「変なとこには連れてかねーよ。そんなとこ行ったら俺が彼女に殺されるわ」
優太にはすでに彼女がいる。
1度写真を見せてもらったが、なんかすごく元気のよさそうな大学生って感じの雰囲気だった。
今日会った女の子とは真逆そうなタイプだ。
「じゃあどこだよ」
「明日、俺の彼女とその友達で一緒に出かけるからお前もこい」
「それ僕全然関係なくない?」
優太の話を聞く限り完全に僕は他人で、アウェー確定だ。
そんなところにいけるものだろうか。
「いいから、自慢じゃないけど俺の彼女はいい女だぞ?少なくともお前の今まで付き合ってきた見た目に惹かれてきたようなやつらよりな」
「なんか今日は辛辣じゃないか?」
「目の前でそこまで凹まれるとビールも美味くないからな、ま、楽しみにしとけって」
「楽しみにって言われてもな…」
「ちなみに、彼女の友達も黒髪ロングの本好きだぞ?」
「って言ってもな…」
「まーとりあえず来いって。今日は寝るぞ。どうせあいつは遅刻してくるけど、念のためな」
そう言って優太は机を片付けて、布団を引いた。
「お前が布団使っていいぞ」
「いや、傷心中の友達を床に転がしておくのは心が痛むだろ?いいから寝ろよ」
そう言って優太は毛布をかぶって床に横になった。
優太はいつもこういうやつだ。
友達思いで、こんなにいいやつはそうそういないだろうと思える親友だ。
そんなやつが付き合う女の子はもその友達もきっといい子なんだろう。
でも、公園であの人に会ったばかりのこの気持ちで、他の女の子に魅力を感じられるだろうか。
あの人に会ったとき、ほんとに不思議な感じがしたんだ。今でも覚えてる。昔の小さな頃の初恋の時のような、全身でこの人だ!って思えるほどだ。
「……我ながら気持ち悪いな」
横から優太の寝息が聞こえ、僕も自分に呆れながら眠りについた。
朝、目が覚めてスマホを見ると、時計は7時30分だった。
もう少し寝たかったが、今二度寝すると確実に昼まで起きないだろうと思い、起き上がる。
「あぁ…最悪だ」
スマホを見て思ったが、充電器にさすのを忘れていて、充電が残り38%しかない。
こういう時に携帯充電器があればいいのだろうけど、買おう買おうと思いつつ買わずにいた自分に後悔した。
うん、次はちゃんと買っておこう。
「おぉ…朝か…」
「おはよう」
「おう、よく寝れたか?」
「まぁ…充電さすの忘れたくらいだな」
「あぁ…そういう時けっこうショックだよな」
優太は欠伸をしながら言うと立ち上がった。
「朝飯はいるか?」
「お前が食べるなら」
「じゃあ、なしだな」
マジか…。
ほしいといえば良かったとこれまた後悔して、僕は布団をたたみ始めた。
2人で交互に洗面所を使って準備をし、しばらく2人で最近ハマっているアプリをしたあと、僕達はアパートを後にした。
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