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22話 悲願
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「「「「ありがとぉーございましたぁー」」」」
ガキ共が声を揃えて一斉に頭を下げた。
勿論、その“ガキ共”の中には俺だってきっちり含まれている。
俺たちは今、丁度護身剣術の授業を終えて、自警団から教練のために出張って来てくれた先生たちに向かって終了の挨拶をしていた所だった。
辺境にある田舎のこの村では、“自分たちの村は自分たちの手で守る”それが当たり前の事だった。
もし不測の事態に陥ったとしても、助けを呼ぼうにも近くには何もないし、誰もいないのだ。
隣村や町までだって馬(っぽい生き物)をとばしても一日は掛かるくらい離れているからな。
故に、子どもの内から少しずつでも戦う術を知っていかなければ、いざと言う時、何も守れない。
……とは言え、ここアストリアス王国はここしばらく戦争もしていない、比較的平和な国だ。
そんなに肩肘を張る必要もないだろう、と俺は思うのだが……
極稀に、野盗が出た、と言う話も聞くには聞くが、専ら大きな街道沿いで隊商を襲ったと言うウワサを聞くくらいで、現物なんて見たこともない。
まぁ、見たいとは思わないけどな……
そもそも、奴等が狙っているのは金持ちの商人とかな訳だから、こんなビンボー村を襲っても得になる事なんて、何一つない。
それが、この村が安全である理由の一つだ。
それにもし犯罪を犯して“お尋ね者”にでもなろうものなら、そこら中から賞金稼ぎたち(俗に、冒険者と呼ばれている連中)に付回されるのがオチだ。
この世界……と言うか、国では治安を維持する保安機構の様なもの(自警団なんかがその代表)はあるようなのだが、犯罪者を取り締まる警察のようなものはないらしい。
代わりに、そう言った犯罪者は国や自治体から“賞金”を掛けられ冒険者組合を通して、全国に一斉指名手配される。
短期間で確保すると賞金が上乗せされる、と言うシステムもありその検挙率(?)は意外と高いと言う。
しかも、その刑罰は“目には目を、歯には歯を”のハンムラビ法典も真っ青な過激な物が多く、まず、殺人は基本死刑。放火も同じく死刑。サギも死刑で、強盗も死刑だ。
死刑、多すぎだろ……と、思ったのだが、死刑よりも上の“死ぬまで重労働”と言うのがあるので、楽に死ねるだけマシ……なのか?
変わり処の刑罰では、強姦等の性的暴力犯罪を犯した者は、“アソコ”をチョン切られた上で、“新宿二丁目”のような所に放り込まれる、と言うような物があった。
襲われる側の恐怖を味わえ……と言うことなのだろうか?
何故、そんな事を知っているのかと言うと、神父様の所に所蔵されている一冊に、刑罰について書かれたものがあったからだ。
案外面白かったので、記憶に残っているものが多い。
まぁ、まっとうに生きている人たちにとっては、まったくもって関係ない事なのでどうでもいいと言えばどうでもいいのだけどね……
良からぬ事をしても良い事はないよ、と言うことだな。
じーさんたちの話だと、ここ数十年はそう言った“野盗に襲われる”と言う様な事案は発生していないと言う。
じーさんたちが若かった頃は、結構あったようだがその時も村人が団結して立ち向かい、撃退したのだと聞かされていた。
その時の武勇伝は、ウチのじーさんから耳がタコになるほど聞かされている……
だが、この世界では人間以外でも脅威となる物がある。
それが、魔獣だ。
魔獣は通常の獣より大きく、凶暴だと言う。
ここ、ラッセ村の北側にも、魔獣が潜む大きく深い森が広がっているのだが……
どういうわけか、ここに住む魔獣は滅多なことでは森の奥深い所からは出て来ないのだと言う。
稀に極少数が、森の浅い所まで出て来る事があるらしいが、それも自警団が巡回などをして討伐しているので特に問題はないらしい。
何故、森の奥から出てこないのか……
何か理由があるのか、それともただの引きこもりなだけなのか……
それは分からないが、どちらにしろ村にとっては良いことだ。
そんなこんなで、ここラッセ村は比較的平和なのだが、“転ばぬ先のつっかえ棒”“備えあれば嬉しいな”と言う言葉もある。
いつ何時、野盗が襲ってくるとも限らないし、どんな気まぐれで魔獣が群れを成して村にやってくるかもわからない。
だからこうして“備える”ために、日夜厳しい訓練に身を捧げているのだが……
ここ最近気付いたことだがある。
それは、どうやら俺に剣術の才能はない、と言う事だ。
今の体の性能自体は生前のものより遥かに高性能だ。
体は柔らかいし、体力だってある、機敏に動くし、視力もいい、足腰だって丈夫だ。
……生前のあの体はなんだったのか……
初めてガンダ○に乗った、アム○の気分がよく分かるよ……
しかし……
事、剣術になるとからっきしだった。
素振りをしていると「筋は悪くない」と褒められるのだが、いざ掛かり稽古(格上の者に対して、一方的に攻めの練習をするやつ)となると棒が相手に当たらないのだ。
避けられるとか、そう言う次元の話ではない。
当たらない、のだ。
自分では当てるつもりで振っているのだが、手前過ぎて空振りしたり、逆に突っ込みすぎて体当たりになったりと散々な結果を出している。
体術(護身剣術には、相手を投げ飛ばしたり、動きを封じたりする体術も一部組み込まれている)の方はまだマシではあったが、あくまで剣術の補助的技能であるため、基礎となる剣術がしっかりできていなければあまり役に立つことはない。
しかも、ここ最近ではタニアを相手にした模擬戦でも連戦連敗中だ……
あいつはすばしっこくて、棒を振り下ろした時には、もうそこにいないのだ……
素振りはメチャクチャ、構えもなってない、と自警団の先生たちに言われているのに何故か勝てない……あれは獣の動きだな。あいつは野生児に違いない。
タニアに勝てないのだから、当然グライブにもリュドにも勝った事はない。
魔術の才能もない、剣術もダメダメ……俺がファンジー世界に憧れたあれやみれやが、軒並み破綻して行くよ……
別に“俺が世界最強になるっ!”なんて言うつもりはないが、少しくらい……ほら? ねぇ?
折角こうして、転生なんて奇跡みたいな事を体験している訳だから、“特殊能力で無双”みたいな展開があってもいいのでないでしょうか神様?
……別に神なんて信じちゃいなかったが、“転生”が起きている身としては信じなくもない心境だったりする。
ちなみに模擬戦で使う棒は、素振りに使っている硬い棒ではなく、ガマの穂先を巨大化させた様なモフモフした物を使っている。
感触としてはウレタンに近く、これで殴られてもあまり痛くないのだ。
とは言え、こんな物でポコポコ練習しているのは俺たち幼年期組みくらいなもので、グライブたちは素振りに使う棒で打ち合っていた。
硬い棒を使うので、もちろん怪我だってする。
が、そこはファンタジー世界だ。
シスターの一人に、治療系の魔術を使える人がいるので、怪我をした時は皆、彼女に治療してもらっている。
今日は、彼女の世話になるような怪我を負ったものはいなかったのか、先生たちへのあいさつが終わると、皆三々五々自分の家へと帰っていった。
「お~い! ロディ、今日も川に行くんだろ?」
訓練で自分が使った分の備品を片付けていると、先に片付けを終えたグライブが声をかけてきた。
「当たり前だろ? 汗かいてベタベタで気持ち悪いし、この暑さだからなぁ……」
日差しはすっかり夏のそれだった。
最近の日課として、俺たちは学校帰りに近場の川へと寄ってから帰る事にしていた。
剣術の訓練は、この炎天下の中で棒切れを振り回すと言う過酷なものだ。
その所為で汗の量がハンパないのだ。
それこそ、着ているシャツやパンツを絞ったら、どれだけ汗が滴る事か……
そんな訳で、このまま帰るのも気持ちが悪いと、川で汗を流してから帰るのが最近の流れになっていた。
勿論、着替え用に代えの服一式は、愛用の肩掛けカバンの中に入っている。
で……
「それに、今日あたり今作ってる実験機が完成しそうだしさ」
そう。物はついでにと、俺は川である実験をするためにここ数日えっちらおっちらとその下準備を進めていたのだった。
最近は朝、実験資材を回収してから、ミーシャ(たまにタニアも)を愛車に乗っけての登校となっている。
資材は、手で運ぶには重いのよ……
「んじゃ、またアレに乗っけてくれよ? どうせ今日もアレで来てるんだろ?」
グライブの言う“アレ”とは、勿論荷車の事だ。
そんな事を繰り返していた所為か、今ではすっかり俺が荷車で登校するのが当たり前の風潮になっている。
ちょっとした移動や荷物の運搬時には、神父様たちでさえたまに“貸して欲しい”と言いに来るぐらいだからなぁ……
「あいよー。俺はまだ片づけが残ってるから、荷車の所で待ってろよ。
行くのはどうせ、いつもの面子なんだろ?」
「ああ。んじゃ、残りのやつらに声かけてくるわっ!」
そうして、グライブは教会の方へと向かって走っていった。
この暑い中、よく走る気になるものだ……
走り去ったグライブを見送って、俺はまたいそいそと片づけを始めたのだった。
いつもの面子とは、俺、ミーシャ、タニア、グライブ、リュドの5人の事だ。
ずっと室内にいたはずのミーシャでさえ、汗だくだくで服の色が汗を吸って変わっていた。
日本のようなあのジメジメとした嫌な暑さはさすがにないが、それでも暑いものは暑いのだ。
俺はみんなを荷車へと乗せると、一路川へと向かって走らせた。
教会の近くには、小さな川が流れている。
距離にして、歩いて5分程の所にある。
大衆洗濯場のある川に繋がる支流の一本で、一応は洗濯場よりも上流にある。
以前、イスュを連れて来た川もこの支流だ。まぁ、連れて行った(行かれた、か?)場所はここから少し下流に行った所だけどな。
ここは、村に一番近い水源ではあるのだが、岩が多いわ、道が悪いわで、水を汲んだり洗濯をしたりと言った、生活水源には使い難い場所だった。
実際ここで水を調達しているのは、教会に住んでいる神父様くらいなもので、その神父様だって、魔術を使って運搬の負担を軽減していると言っていた。
“そうでもしなければ、わざわざこんな所の水を汲みになんて来はしませんよ”とは、神父様の言だ。
ちなみに……
教会に住んでいるのは、神父様だけでシスターたちはちゃんと家があります。
一つ屋根の下、神父様が若い女性3人と一緒に暮らしている、なんて言うことはないのです!
川の近くまで来て、俺は荷車を止めた。
ここからは悪路であるため、荷車では先に進めないのだ。
とは言え、川はもう目と鼻の先なのだがな。
ミーシャとタニアは荷車飛び降りると、一目散に川の方へ向かって走っていった。
グライブとリュドには、ここまで運んでやった見返りとして、荷車に積んであった実験資材であるレンガを、川まで運ぶのを手伝わせた。一日5~6ずつをちまちま運んで今日、ようやく完成……する予定だ。
このレンガはただのレンガではなく、洗濯槽を造るのに使ったあの魔術陣のスタンプされた物と同じ物だった。
この川は川幅も狭く、水量も少ないため流れも穏やかで、一番深い所でも水深が40cmもない浅い川だ。
そのため、この季節になるとここは子どもたちの格好の遊び場となる。
そんな川に真っ先に飛び込んだのは、タニアだった……それもマッパで……
パンツすら脱ぎ捨てて、正真正銘の真っ裸で、飛び込んでいったのだ。
その後を、グライブ、リュドが追う。勿論こっちもマッパだ。
川岸では、ミーシャがもぞもぞと服を脱いでいる途中だった。
その様子から、ミーシャも全裸で川に入るつもりらしい。
かくいう俺もすでに全裸で川の中である。
……いいじゃない、子どもだもの……
生前の年齢と容姿で、全裸で川に入っていたら、猥褻物陳列罪で速攻御用となっていたかも知れないが(おまけに全裸の少年少女が近くに居ようものなら、罪状がいくつ追加されることやら……)、今は5歳児なので問題ない。
近くでやいのやいのと遊ぶガキんちょ共を尻目に、俺は軽く水を被って汗を流すと、早速作業へと取り掛かった。
とは言え、既に完成しているも同然なので大した作業はなのだけどね。
………
……
…
と、言う訳で出来上がったのがコレである。
一言で言ってしまえば、石を積み上げて作った生簀……の、様なものだ。
大きさは、横幅2m程、奥に1m程の大きさで石を積んだ高さは30cmもないほどの小さな物だ。
でもまぁ、一応水面は超えているので、実験機としては上出来だろう。
で、この生簀の上流部分には、水面近くまで魔術陣の刻印されたレンガが数列に渡って積み上げられていた。
「おっし! 完成だなっ!」
「何が完成したって?」
と、グライブの声がしたので振り向けば、そこには先ほどまでやいやい遊んでいた面子が雁首揃えて俺の近くに立っていた。
遊ぶのにも飽きたのか、俺の様子を見に来た様だな。
「で、石をコツコツ、コツコツ積み上げて、リトルオルガはこの間から一体何作ってんだよ?」
リュドのヤツも、俺が作った生簀が気になるのか、中を覗き込んでいるが、残念ながらそこには何もないのだよ。
「ふっふっふー!
丁度いい、今から実験するからそこで見てなっ!
あっ! 危ないから石で作った囲いには近づくなよ? いいな?」
皆が頷き、石で作った囲いから離れるのを確認した上で俺は、積み上げたレンガの一番上の魔術陣へ手を突いた。
チリチリとあのマナを吸い取られる独特の感覚が手の平全体に広がっていく。
マナを供給された事で、魔術陣は……いや、今や魔道具となったレンガの塊は、決められた手順に則って魔術を発動した。
時間にしたなら30秒ほどだろうか……
生簀の中から、次第にゆらゆらと白いものが立ち上り始めたのが見えた。
俺はそれを確認して、魔道具と化したレンガの塊から手を退けた。
「さってさて~温度は如何ほどかねぇ~」
そして、おもむろに俺は生簀の中へと手を突っ込んで……
「あっちゃやぁぁああーー!!!」
あまりの熱さに、慌てて手を引っこ抜いて冷たい川へドボンと浸けた。
加熱時間が長すぎたか……?
煮え立つ様な温度ではなかったが、人がこの中に入るには些か抵抗がある温度ではあった。
バラエティ番組としてなら使えそうな温度だったが、俺は普通に使いのだ。
この辺りは要調整だな……
「なぁ、ロディ……お前、もしかしてお湯を作ったのか?」
ゆらゆら立ち上る湯気を指差して、グライブがそんな事を聞いてきた。
確かに、俺はグライブの言う通りお湯を作った。
しかしそれは、真実ではあっても真理ではなかった……
なぜなら……
「違うっ!
俺が作ったのはお湯じゃないっ! “風呂”だ!」
俺の言葉に、誰もがキョトーンとした顔で俺の事を見ていた。
無理もないだろう。
この世界で、風呂と言ったらお湯で湿らせた布で体を拭く事だ。
日本の様に、お湯を溜めて体を浸す様な風呂はないのだ。
「……と言っても、このままじゃ入れないから、水で割るぞ!」
俺は、川の水をバシャバシャと生簀の中へと放り込んだ。
「ほれほれ! 突っ立てるくらいなら水入れるのを手伝えって!」
俺がそう声をかけると、真っ先にタニアが何が楽しいのか笑いながらマネをしだして、次にミーシャがそして、グライブ、リュドが困惑気味ではあったがあとに続いた。
適当な所で一旦作業の手を止めて、近くに転がっていた棒で生簀の中を攪拌、手を入れて温度を確認した所、多少下げすぎてしまった感があるが問題はないだろう。
再加熱すると、またあつあつになってしまう恐れがあったので今回はこれで良しとした。
「さて、んじゃお先に失礼してっと……」
俺は、“よいこらしょっ”と声を上げて石垣を跨ぎ生簀の中へと入っていった。
所詮、石で作った囲いなため、囲い付近は石の隙間から外の冷たい水が流れ込んでしまっていたが、中心部分に向かうに連れて、温度が一定化して行く。
そして適当な場所を見繕って、俺はどかりと腰を落とした。
「っああぁぁぁ~~……」
温度が多少低いとか、水かさが低くて肩まで浸かれないとか、石がゴロゴロしている所為でケツが痛いとか……とてもそれは、俺が恋焦がれた風呂ではなかった。
しかし、この世界に来て初となる日本式の風呂は、それも露天風呂は……間違いなく“最高”の風呂だった。
「ほら、何してんだよ? お前らも入って来いよ! 早くしないと温くなっちまうぞ?」
生簀の外で、俺の行いをぼけーっと眺めていた4人に向かって声をかける。
「ロディ、お前さっき自分から危ないから近づくなって言っておいて、今度は入って来いって言うのかよ?」
「魔術陣を動かしてるときは、危ないから近づくな、って事だよ。今は大丈夫」
「じゃあ、あたし入るぅ~!! ていっ!!」
グセイブが不機嫌そうに聞いてきたので、簡潔に答えると、代わりにタニアのヤツが勢い良く石垣を飛び越えて生簀の……いや、浴槽の中に飛び込んできて、バッシャーン! と盛大な水しぶきを上げた。
「うおおぉぉ!! なんだこれ暖ったけぇ~! ミーシャも来なよ! 面白いぞっ!」
本来、風呂とは静かに入るものなのだが、タニアのヤツはそんなこたぁ知らんとばかりに……いや、実際しらないんだが……浴槽の中で手足をバタつかせた。
銭湯の大きな浴槽で子どもの頃、誰もが一度はそうするように、本当はタニアもこの浴槽の中を泳ごうとしたのかもしれないが、残念な事にこの即席の浴槽では圧倒的に水かさが少ないので泳ぐ事はできなかった。
おかげでバタ足で上がった水しぶきが、顔に掛かる事掛かる事……
そんな楽しそうにしているタニアに釣られたのか、ミーシャがそしてグライブ、リュドが浴槽へと入ってきた。
「うわぁ……あったかい……」
「おいおい、川の水がお湯になっちまったっ! マジか……」
「ロディ……これ、お前がやったのか?」
「まぁなっ!」
困惑したような表情でそう聞いてきたグライブに、俺はドヤ顔で答えたのだった。
タニアは相変わらず笑いながらバタバタと暴れ、グライブとリュドは不思議そうな顔で水面を眺め、ミーシャはほけーっとした顔で、俺の隣で湯に浸かる……
そんな思い思いに風呂を楽しむ俺たちだったが、それも20分もしないうちに終わりを向かえてしまった。
浴槽のお湯が、もうお湯とは呼べないほど冷めてしまったのだ。
元々、隙間だらけの石垣で作った囲いだ。
随時、冷たい水が入り込み、中のお湯は外に出てしまっているのだから仕方がない。
が、これはあくまで実験だ。それも、加熱魔術陣の実験だ。
浴槽の問題点など、あとで如何様にもできる。
そして、その実験も見事な成功を見た。
これで作れるっ!
俺は確信していた。
一度は諦めた、日本式の風呂っ!
俺は、この村に日本式の風呂を再現するっ!
そして、毎日あつあつの風呂に入るのだっ!
そうと決まれば、早速準備開始だ。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
感想にもちょくちょく出ていましたが、“風呂ぐらい作れるんじゃねぇの?”と言う事で今回からそのお風呂編です。
断っておきますと、これは初めから予定していた話で、感想で上がってきたから書いた訳ではありません。
ホントウダヨ?
と言うか、自分に感想に合わせてプランを変えるなんて器用な芸当はできませんので、例え先読みされても突き進むのみ! です。
なぜ、今までロディが風呂を作らなかったのか・・・その辺りの話しは次回ということで・・・
ガキ共が声を揃えて一斉に頭を下げた。
勿論、その“ガキ共”の中には俺だってきっちり含まれている。
俺たちは今、丁度護身剣術の授業を終えて、自警団から教練のために出張って来てくれた先生たちに向かって終了の挨拶をしていた所だった。
辺境にある田舎のこの村では、“自分たちの村は自分たちの手で守る”それが当たり前の事だった。
もし不測の事態に陥ったとしても、助けを呼ぼうにも近くには何もないし、誰もいないのだ。
隣村や町までだって馬(っぽい生き物)をとばしても一日は掛かるくらい離れているからな。
故に、子どもの内から少しずつでも戦う術を知っていかなければ、いざと言う時、何も守れない。
……とは言え、ここアストリアス王国はここしばらく戦争もしていない、比較的平和な国だ。
そんなに肩肘を張る必要もないだろう、と俺は思うのだが……
極稀に、野盗が出た、と言う話も聞くには聞くが、専ら大きな街道沿いで隊商を襲ったと言うウワサを聞くくらいで、現物なんて見たこともない。
まぁ、見たいとは思わないけどな……
そもそも、奴等が狙っているのは金持ちの商人とかな訳だから、こんなビンボー村を襲っても得になる事なんて、何一つない。
それが、この村が安全である理由の一つだ。
それにもし犯罪を犯して“お尋ね者”にでもなろうものなら、そこら中から賞金稼ぎたち(俗に、冒険者と呼ばれている連中)に付回されるのがオチだ。
この世界……と言うか、国では治安を維持する保安機構の様なもの(自警団なんかがその代表)はあるようなのだが、犯罪者を取り締まる警察のようなものはないらしい。
代わりに、そう言った犯罪者は国や自治体から“賞金”を掛けられ冒険者組合を通して、全国に一斉指名手配される。
短期間で確保すると賞金が上乗せされる、と言うシステムもありその検挙率(?)は意外と高いと言う。
しかも、その刑罰は“目には目を、歯には歯を”のハンムラビ法典も真っ青な過激な物が多く、まず、殺人は基本死刑。放火も同じく死刑。サギも死刑で、強盗も死刑だ。
死刑、多すぎだろ……と、思ったのだが、死刑よりも上の“死ぬまで重労働”と言うのがあるので、楽に死ねるだけマシ……なのか?
変わり処の刑罰では、強姦等の性的暴力犯罪を犯した者は、“アソコ”をチョン切られた上で、“新宿二丁目”のような所に放り込まれる、と言うような物があった。
襲われる側の恐怖を味わえ……と言うことなのだろうか?
何故、そんな事を知っているのかと言うと、神父様の所に所蔵されている一冊に、刑罰について書かれたものがあったからだ。
案外面白かったので、記憶に残っているものが多い。
まぁ、まっとうに生きている人たちにとっては、まったくもって関係ない事なのでどうでもいいと言えばどうでもいいのだけどね……
良からぬ事をしても良い事はないよ、と言うことだな。
じーさんたちの話だと、ここ数十年はそう言った“野盗に襲われる”と言う様な事案は発生していないと言う。
じーさんたちが若かった頃は、結構あったようだがその時も村人が団結して立ち向かい、撃退したのだと聞かされていた。
その時の武勇伝は、ウチのじーさんから耳がタコになるほど聞かされている……
だが、この世界では人間以外でも脅威となる物がある。
それが、魔獣だ。
魔獣は通常の獣より大きく、凶暴だと言う。
ここ、ラッセ村の北側にも、魔獣が潜む大きく深い森が広がっているのだが……
どういうわけか、ここに住む魔獣は滅多なことでは森の奥深い所からは出て来ないのだと言う。
稀に極少数が、森の浅い所まで出て来る事があるらしいが、それも自警団が巡回などをして討伐しているので特に問題はないらしい。
何故、森の奥から出てこないのか……
何か理由があるのか、それともただの引きこもりなだけなのか……
それは分からないが、どちらにしろ村にとっては良いことだ。
そんなこんなで、ここラッセ村は比較的平和なのだが、“転ばぬ先のつっかえ棒”“備えあれば嬉しいな”と言う言葉もある。
いつ何時、野盗が襲ってくるとも限らないし、どんな気まぐれで魔獣が群れを成して村にやってくるかもわからない。
だからこうして“備える”ために、日夜厳しい訓練に身を捧げているのだが……
ここ最近気付いたことだがある。
それは、どうやら俺に剣術の才能はない、と言う事だ。
今の体の性能自体は生前のものより遥かに高性能だ。
体は柔らかいし、体力だってある、機敏に動くし、視力もいい、足腰だって丈夫だ。
……生前のあの体はなんだったのか……
初めてガンダ○に乗った、アム○の気分がよく分かるよ……
しかし……
事、剣術になるとからっきしだった。
素振りをしていると「筋は悪くない」と褒められるのだが、いざ掛かり稽古(格上の者に対して、一方的に攻めの練習をするやつ)となると棒が相手に当たらないのだ。
避けられるとか、そう言う次元の話ではない。
当たらない、のだ。
自分では当てるつもりで振っているのだが、手前過ぎて空振りしたり、逆に突っ込みすぎて体当たりになったりと散々な結果を出している。
体術(護身剣術には、相手を投げ飛ばしたり、動きを封じたりする体術も一部組み込まれている)の方はまだマシではあったが、あくまで剣術の補助的技能であるため、基礎となる剣術がしっかりできていなければあまり役に立つことはない。
しかも、ここ最近ではタニアを相手にした模擬戦でも連戦連敗中だ……
あいつはすばしっこくて、棒を振り下ろした時には、もうそこにいないのだ……
素振りはメチャクチャ、構えもなってない、と自警団の先生たちに言われているのに何故か勝てない……あれは獣の動きだな。あいつは野生児に違いない。
タニアに勝てないのだから、当然グライブにもリュドにも勝った事はない。
魔術の才能もない、剣術もダメダメ……俺がファンジー世界に憧れたあれやみれやが、軒並み破綻して行くよ……
別に“俺が世界最強になるっ!”なんて言うつもりはないが、少しくらい……ほら? ねぇ?
折角こうして、転生なんて奇跡みたいな事を体験している訳だから、“特殊能力で無双”みたいな展開があってもいいのでないでしょうか神様?
……別に神なんて信じちゃいなかったが、“転生”が起きている身としては信じなくもない心境だったりする。
ちなみに模擬戦で使う棒は、素振りに使っている硬い棒ではなく、ガマの穂先を巨大化させた様なモフモフした物を使っている。
感触としてはウレタンに近く、これで殴られてもあまり痛くないのだ。
とは言え、こんな物でポコポコ練習しているのは俺たち幼年期組みくらいなもので、グライブたちは素振りに使う棒で打ち合っていた。
硬い棒を使うので、もちろん怪我だってする。
が、そこはファンタジー世界だ。
シスターの一人に、治療系の魔術を使える人がいるので、怪我をした時は皆、彼女に治療してもらっている。
今日は、彼女の世話になるような怪我を負ったものはいなかったのか、先生たちへのあいさつが終わると、皆三々五々自分の家へと帰っていった。
「お~い! ロディ、今日も川に行くんだろ?」
訓練で自分が使った分の備品を片付けていると、先に片付けを終えたグライブが声をかけてきた。
「当たり前だろ? 汗かいてベタベタで気持ち悪いし、この暑さだからなぁ……」
日差しはすっかり夏のそれだった。
最近の日課として、俺たちは学校帰りに近場の川へと寄ってから帰る事にしていた。
剣術の訓練は、この炎天下の中で棒切れを振り回すと言う過酷なものだ。
その所為で汗の量がハンパないのだ。
それこそ、着ているシャツやパンツを絞ったら、どれだけ汗が滴る事か……
そんな訳で、このまま帰るのも気持ちが悪いと、川で汗を流してから帰るのが最近の流れになっていた。
勿論、着替え用に代えの服一式は、愛用の肩掛けカバンの中に入っている。
で……
「それに、今日あたり今作ってる実験機が完成しそうだしさ」
そう。物はついでにと、俺は川である実験をするためにここ数日えっちらおっちらとその下準備を進めていたのだった。
最近は朝、実験資材を回収してから、ミーシャ(たまにタニアも)を愛車に乗っけての登校となっている。
資材は、手で運ぶには重いのよ……
「んじゃ、またアレに乗っけてくれよ? どうせ今日もアレで来てるんだろ?」
グライブの言う“アレ”とは、勿論荷車の事だ。
そんな事を繰り返していた所為か、今ではすっかり俺が荷車で登校するのが当たり前の風潮になっている。
ちょっとした移動や荷物の運搬時には、神父様たちでさえたまに“貸して欲しい”と言いに来るぐらいだからなぁ……
「あいよー。俺はまだ片づけが残ってるから、荷車の所で待ってろよ。
行くのはどうせ、いつもの面子なんだろ?」
「ああ。んじゃ、残りのやつらに声かけてくるわっ!」
そうして、グライブは教会の方へと向かって走っていった。
この暑い中、よく走る気になるものだ……
走り去ったグライブを見送って、俺はまたいそいそと片づけを始めたのだった。
いつもの面子とは、俺、ミーシャ、タニア、グライブ、リュドの5人の事だ。
ずっと室内にいたはずのミーシャでさえ、汗だくだくで服の色が汗を吸って変わっていた。
日本のようなあのジメジメとした嫌な暑さはさすがにないが、それでも暑いものは暑いのだ。
俺はみんなを荷車へと乗せると、一路川へと向かって走らせた。
教会の近くには、小さな川が流れている。
距離にして、歩いて5分程の所にある。
大衆洗濯場のある川に繋がる支流の一本で、一応は洗濯場よりも上流にある。
以前、イスュを連れて来た川もこの支流だ。まぁ、連れて行った(行かれた、か?)場所はここから少し下流に行った所だけどな。
ここは、村に一番近い水源ではあるのだが、岩が多いわ、道が悪いわで、水を汲んだり洗濯をしたりと言った、生活水源には使い難い場所だった。
実際ここで水を調達しているのは、教会に住んでいる神父様くらいなもので、その神父様だって、魔術を使って運搬の負担を軽減していると言っていた。
“そうでもしなければ、わざわざこんな所の水を汲みになんて来はしませんよ”とは、神父様の言だ。
ちなみに……
教会に住んでいるのは、神父様だけでシスターたちはちゃんと家があります。
一つ屋根の下、神父様が若い女性3人と一緒に暮らしている、なんて言うことはないのです!
川の近くまで来て、俺は荷車を止めた。
ここからは悪路であるため、荷車では先に進めないのだ。
とは言え、川はもう目と鼻の先なのだがな。
ミーシャとタニアは荷車飛び降りると、一目散に川の方へ向かって走っていった。
グライブとリュドには、ここまで運んでやった見返りとして、荷車に積んであった実験資材であるレンガを、川まで運ぶのを手伝わせた。一日5~6ずつをちまちま運んで今日、ようやく完成……する予定だ。
このレンガはただのレンガではなく、洗濯槽を造るのに使ったあの魔術陣のスタンプされた物と同じ物だった。
この川は川幅も狭く、水量も少ないため流れも穏やかで、一番深い所でも水深が40cmもない浅い川だ。
そのため、この季節になるとここは子どもたちの格好の遊び場となる。
そんな川に真っ先に飛び込んだのは、タニアだった……それもマッパで……
パンツすら脱ぎ捨てて、正真正銘の真っ裸で、飛び込んでいったのだ。
その後を、グライブ、リュドが追う。勿論こっちもマッパだ。
川岸では、ミーシャがもぞもぞと服を脱いでいる途中だった。
その様子から、ミーシャも全裸で川に入るつもりらしい。
かくいう俺もすでに全裸で川の中である。
……いいじゃない、子どもだもの……
生前の年齢と容姿で、全裸で川に入っていたら、猥褻物陳列罪で速攻御用となっていたかも知れないが(おまけに全裸の少年少女が近くに居ようものなら、罪状がいくつ追加されることやら……)、今は5歳児なので問題ない。
近くでやいのやいのと遊ぶガキんちょ共を尻目に、俺は軽く水を被って汗を流すと、早速作業へと取り掛かった。
とは言え、既に完成しているも同然なので大した作業はなのだけどね。
………
……
…
と、言う訳で出来上がったのがコレである。
一言で言ってしまえば、石を積み上げて作った生簀……の、様なものだ。
大きさは、横幅2m程、奥に1m程の大きさで石を積んだ高さは30cmもないほどの小さな物だ。
でもまぁ、一応水面は超えているので、実験機としては上出来だろう。
で、この生簀の上流部分には、水面近くまで魔術陣の刻印されたレンガが数列に渡って積み上げられていた。
「おっし! 完成だなっ!」
「何が完成したって?」
と、グライブの声がしたので振り向けば、そこには先ほどまでやいやい遊んでいた面子が雁首揃えて俺の近くに立っていた。
遊ぶのにも飽きたのか、俺の様子を見に来た様だな。
「で、石をコツコツ、コツコツ積み上げて、リトルオルガはこの間から一体何作ってんだよ?」
リュドのヤツも、俺が作った生簀が気になるのか、中を覗き込んでいるが、残念ながらそこには何もないのだよ。
「ふっふっふー!
丁度いい、今から実験するからそこで見てなっ!
あっ! 危ないから石で作った囲いには近づくなよ? いいな?」
皆が頷き、石で作った囲いから離れるのを確認した上で俺は、積み上げたレンガの一番上の魔術陣へ手を突いた。
チリチリとあのマナを吸い取られる独特の感覚が手の平全体に広がっていく。
マナを供給された事で、魔術陣は……いや、今や魔道具となったレンガの塊は、決められた手順に則って魔術を発動した。
時間にしたなら30秒ほどだろうか……
生簀の中から、次第にゆらゆらと白いものが立ち上り始めたのが見えた。
俺はそれを確認して、魔道具と化したレンガの塊から手を退けた。
「さってさて~温度は如何ほどかねぇ~」
そして、おもむろに俺は生簀の中へと手を突っ込んで……
「あっちゃやぁぁああーー!!!」
あまりの熱さに、慌てて手を引っこ抜いて冷たい川へドボンと浸けた。
加熱時間が長すぎたか……?
煮え立つ様な温度ではなかったが、人がこの中に入るには些か抵抗がある温度ではあった。
バラエティ番組としてなら使えそうな温度だったが、俺は普通に使いのだ。
この辺りは要調整だな……
「なぁ、ロディ……お前、もしかしてお湯を作ったのか?」
ゆらゆら立ち上る湯気を指差して、グライブがそんな事を聞いてきた。
確かに、俺はグライブの言う通りお湯を作った。
しかしそれは、真実ではあっても真理ではなかった……
なぜなら……
「違うっ!
俺が作ったのはお湯じゃないっ! “風呂”だ!」
俺の言葉に、誰もがキョトーンとした顔で俺の事を見ていた。
無理もないだろう。
この世界で、風呂と言ったらお湯で湿らせた布で体を拭く事だ。
日本の様に、お湯を溜めて体を浸す様な風呂はないのだ。
「……と言っても、このままじゃ入れないから、水で割るぞ!」
俺は、川の水をバシャバシャと生簀の中へと放り込んだ。
「ほれほれ! 突っ立てるくらいなら水入れるのを手伝えって!」
俺がそう声をかけると、真っ先にタニアが何が楽しいのか笑いながらマネをしだして、次にミーシャがそして、グライブ、リュドが困惑気味ではあったがあとに続いた。
適当な所で一旦作業の手を止めて、近くに転がっていた棒で生簀の中を攪拌、手を入れて温度を確認した所、多少下げすぎてしまった感があるが問題はないだろう。
再加熱すると、またあつあつになってしまう恐れがあったので今回はこれで良しとした。
「さて、んじゃお先に失礼してっと……」
俺は、“よいこらしょっ”と声を上げて石垣を跨ぎ生簀の中へと入っていった。
所詮、石で作った囲いなため、囲い付近は石の隙間から外の冷たい水が流れ込んでしまっていたが、中心部分に向かうに連れて、温度が一定化して行く。
そして適当な場所を見繕って、俺はどかりと腰を落とした。
「っああぁぁぁ~~……」
温度が多少低いとか、水かさが低くて肩まで浸かれないとか、石がゴロゴロしている所為でケツが痛いとか……とてもそれは、俺が恋焦がれた風呂ではなかった。
しかし、この世界に来て初となる日本式の風呂は、それも露天風呂は……間違いなく“最高”の風呂だった。
「ほら、何してんだよ? お前らも入って来いよ! 早くしないと温くなっちまうぞ?」
生簀の外で、俺の行いをぼけーっと眺めていた4人に向かって声をかける。
「ロディ、お前さっき自分から危ないから近づくなって言っておいて、今度は入って来いって言うのかよ?」
「魔術陣を動かしてるときは、危ないから近づくな、って事だよ。今は大丈夫」
「じゃあ、あたし入るぅ~!! ていっ!!」
グセイブが不機嫌そうに聞いてきたので、簡潔に答えると、代わりにタニアのヤツが勢い良く石垣を飛び越えて生簀の……いや、浴槽の中に飛び込んできて、バッシャーン! と盛大な水しぶきを上げた。
「うおおぉぉ!! なんだこれ暖ったけぇ~! ミーシャも来なよ! 面白いぞっ!」
本来、風呂とは静かに入るものなのだが、タニアのヤツはそんなこたぁ知らんとばかりに……いや、実際しらないんだが……浴槽の中で手足をバタつかせた。
銭湯の大きな浴槽で子どもの頃、誰もが一度はそうするように、本当はタニアもこの浴槽の中を泳ごうとしたのかもしれないが、残念な事にこの即席の浴槽では圧倒的に水かさが少ないので泳ぐ事はできなかった。
おかげでバタ足で上がった水しぶきが、顔に掛かる事掛かる事……
そんな楽しそうにしているタニアに釣られたのか、ミーシャがそしてグライブ、リュドが浴槽へと入ってきた。
「うわぁ……あったかい……」
「おいおい、川の水がお湯になっちまったっ! マジか……」
「ロディ……これ、お前がやったのか?」
「まぁなっ!」
困惑したような表情でそう聞いてきたグライブに、俺はドヤ顔で答えたのだった。
タニアは相変わらず笑いながらバタバタと暴れ、グライブとリュドは不思議そうな顔で水面を眺め、ミーシャはほけーっとした顔で、俺の隣で湯に浸かる……
そんな思い思いに風呂を楽しむ俺たちだったが、それも20分もしないうちに終わりを向かえてしまった。
浴槽のお湯が、もうお湯とは呼べないほど冷めてしまったのだ。
元々、隙間だらけの石垣で作った囲いだ。
随時、冷たい水が入り込み、中のお湯は外に出てしまっているのだから仕方がない。
が、これはあくまで実験だ。それも、加熱魔術陣の実験だ。
浴槽の問題点など、あとで如何様にもできる。
そして、その実験も見事な成功を見た。
これで作れるっ!
俺は確信していた。
一度は諦めた、日本式の風呂っ!
俺は、この村に日本式の風呂を再現するっ!
そして、毎日あつあつの風呂に入るのだっ!
そうと決まれば、早速準備開始だ。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
感想にもちょくちょく出ていましたが、“風呂ぐらい作れるんじゃねぇの?”と言う事で今回からそのお風呂編です。
断っておきますと、これは初めから予定していた話で、感想で上がってきたから書いた訳ではありません。
ホントウダヨ?
と言うか、自分に感想に合わせてプランを変えるなんて器用な芸当はできませんので、例え先読みされても突き進むのみ! です。
なぜ、今までロディが風呂を作らなかったのか・・・その辺りの話しは次回ということで・・・
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