前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~(原文版)

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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24話 反響

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「おっふっろ~♪」
「おふっろー♪」
「「ふぅーー!!」」

 妹たちが後ろでヘンな歌を歌っていた……
 昨日、初めて日本式の風呂を堪能した妹たちは、即日で風呂の魅力にハマり、すっかり魅了されてしまっていた。
 今日も“お風呂に行くぞー”と声を掛けるや、“散歩に行くぞー”と言われた犬の様な勢い俺で向かって突っ込んで来たのだ。
 気に入ってもらえたのなら嬉しいが、喜びを体当たりで表現するのはいい加減止めて欲しいところだ。
 にーちゃん、痛くてそろそろ泣きそうだよ……
 ちなみに、親父たちからもそれなりの好評は受けてはいるが、レティやアーリー程ではなかった。
 今日も、自分から進んで、と言うよりは“子どもたちの付き添いとして”と言った感が強い。
 と、言う訳で俺たちは今、昨日出来たばかりの風呂場へと向かっている最中だった。勿論、荷車クララで、そして運転は俺で、だ。
 妹たちは荷車クララが大のお気に入りで、事ある毎に“のせてー! のせてー! のせろー!!”とせがんでくるのだ。
 本来なら、歩いても十分に近いので(だって、教会の近くだし)わざわざ荷車クララで行く必要はないのだが、妹たちのそんな“おねがい”コールに俺は折れてしまった……
 ウチの妹たちは宇宙一カワイイから、これは仕方が無い事なのだ……うん。
 そんな訳で、妹たちは大好きな荷車クララに乗ってご機嫌、お風呂が楽しみで期待感アゲアゲ、興奮状態×2の様なステータス異常を食らっている所為で、テンションが少しおかしな方へ飛んでいた。
 そんな歌ってはしゃぐ妹たちを、親父が“ご近所の迷惑になるから止めなさい”とたしなめている姿が、目の端にちらりと映った。
 おっ? たまには父親らしい事もするじゃないかパパン。
 昼間ならどんなに騒ごうが気にする事はないが、流石に夜ともなると辺りが静まり返る分、音が響きやすくなる。
 先日も“あんたっ! いい加減におしよっ!”“ご、ごめんよ、かぁちゃ~ん(パリーン!!)”と言うどこぞのご家庭の夫婦喧嘩の声がウチまで届いてきたくらいだからな。
 あれは正直恥ずかしい。
 そんな賑やかしい荷車クララの荷台だったが、荷車クララには他に3人の乗客が乗っていた。
 ハインツ一家の、ミーシャちゃん、グライブ君、ガゼインおじさんの3名だ。
 俺たちが丁度家を出たタイミングでかち合い、ご一緒する事になったのだ。

「ロディくん? わたしに手伝えることってある?」

 後ろで妹たちが、そして親父たちが楽しそうに談笑する中、ミーシャが俺の下へとやって来てそう声をかけて来た。
 ホントええ子やねぇ~。

「んじゃ、悪いんだけど、そのランプでもう少しだけ手前を照らしてくれるか?
 暗くって、道がよく見えないんだよ」
「うん、わかった!」

 ミーシャは一つ頷くと、俺の横に置かれていた石ランプを掲げて、進行方向の地面を照らしてくれた。
 そして、そのまま俺に引っ付く様にして隣に座る。
 今は夜の7時だか8時だか……まぁその辺りの時間だった。
 外灯の一つもないこの村じゃ、陽が沈めば辺りはすっかり真っ暗だ。
 多少改良を加えて、光量を増すことに成功した石ランプ・改ではあったが流石に1つでは心許なかったか……
 もう一つ用意するか、荷車クララに本格的な前照灯……ヘッドライトだな……を装備する必要があるかもしれないな。
 これからは風呂に入りに、夜間の外出も増えるだろうし……
 この時間帯は、いつもならそろそろベッドの中に入る時刻なのだが、昨日から寝る前は風呂に入る時間と決められていた。
 この村は夜がとにかく早いのだ。
 石ランプの普及に伴い、若干夜更かし出来るようになったとは言え、基本、日が沈んだら“寝る”以外にする事がなかったからな。
 しかし、昨日からは“寝る”以外に“風呂に入る”と言う楽しみができた。
 娯楽が乏しいこの村では、“入浴”さえも一種の娯楽になる。
 てか、“スーパー銭湯”なんてまんま“娯楽施設”に分類されてるわけだから立派な娯楽か……

 なんて事を考えながら、荷車クララを転がす事数分……
 目的地へと辿り着くと、そこには一種異様な光景が広がっていた。

「……人がいっぱいいるね」
「……そうだな」

 その光景を見たミーシャがこぼした呟きに、俺はそう答えるしかなかった……

 そこには、人垣が出来ていた。
 しかも、普段なら真っ暗で何も何も見えなくなる様な場所が、日中の様に煌々と輝いていた。
 集まった人たちが、手に手に普通のランプや、俺が作った石ランプなどを持っていたのがその原因だ。
 一応、風呂は夜間利用がメインと言うことで、石ランプを風呂の周囲に数点設置しておいたのだが、これなら必要ないかもしれないな。
 しかし……
 人気が出てくれればいいなぁ~、と思っていたのは確かだが、これは流石に色々とおかしいだろ……
 だって、完成したのは昨日で、俺はまだこの事を村人たちには告知をしていないのだ。
 使い方を書いた立て看がまだ完成していないので、その完成を待ってから発表するつもりでいたのだが……
 で、その肝心の立て看はと言うと、俺が学校の一時間目を使って現在、鋭意製作中な訳なのである。
 何でもう、人がこんなに来てんだよ?
 あの風呂の存在を知っているの、あの場にいた俺を含めた5人を除けば神父様くらいなものだ。
 神父様には、今日の朝、試作風呂が完成した事を話してはいたが、そこから村人たちに話したとしても情報の拡散速度が速すぎる。
 いや、たとえ話を聞いたとして、いきなりこれだけの大人数が大挙して押し寄せるだろうか?
 まずは様子見をするのが普通だ。
 で、評判が良ければ次第に足を運ぶ人たちが増えていく……
 それが通常の流れだと思うんだが……
 取り敢えず俺は、この人だかりの先にある風呂が、今どう言う状況になっているのかを確かめるべく、奥へと向かって足を進めた。

 “おいっ! 何時まで入ってんだ! 早く出やがれ!”“うるせぇ! おらぁ、今入ったばっかだってんだ!”“後ろが詰まってんだから、早くしろよな!”“てか、なんで3つしかないんだよこれ!?”

 集団の先頭部分に近づくにつれて、聞こえて来たのはそんな怒号だった。
 人の隙間を縫って、ようやく風呂を設置した川縁までたどり着くと、そこに広がっていた光景は……裸祭りのそれだった。
 数十人にも及ぶ男たちが、裸でひしめき合っていたのだ。
 ……あまり見ていて気分のいい風景じゃないなコレは……これが全部、美人のねぇーちゃんだったらホクホク出来たかもしれないが……
 取り敢えず、誰か何かを知っているかもしれないので、近くに立っていた若いにーさん辺りにお話を伺って見る事にした。

「あのー、ちっとばっかしいいですか?」
「ん? おお、ロランドさんとこの坊主じゃないか。
 どうしたよ? お前も“風呂”の話を聞いて……って、そう言えばこれを作ったのも坊主なんだってな?」
「あー、その話はまた今度と言うことで……
 それよりも、この人だかりは一体?
 そもそも、皆どーやってここの事を知ったんだよ?」
「ん? ああそいつは昨日な……」

 にーさんの話をまとめるとこうだ。
 この一件の犯人は、リュドとタニアそしてその親父であるらしい。
 ここからは、にーさんの話を元にした俺の憶測だが……
 昨日、俺たちと別れた後リュドとタニアは農作業をしていた父親の元へと向かったと思われる。
 そして、何らかの理由で父親と共に風呂のある川辺へと戻り、風呂を使った。
 タニアたちの事だ。父親に作った風呂を自慢したかったのかも知れない。
 その際、たぶん一緒に作業をしていた他の村人数名も一緒に連れて行ったのだろう。
 タニアとリュドが、ドヤ顔で風呂の使い方をレクチャーしている姿が目に浮かぶようだ……
 で、風呂を利用した村人たちが情報を拡散した。
 この時の情報が“こんな物があったよ”程度の物であったなら、“ふーん、珍しい物が出来たんだ”と話のタネになる程度で、ここまでの盛況ぶりを見せることも無かったのだろうが……
 どうやら、この時風呂を使った人たちは、かなり自慢げに吹聴して回ったらしい。
 “あれは、良いものだ”とか“一度は使ってみるべきだ”とかね……
 “そうまで言うなら、ならば自分も一度は……”と言う事で、話を聞いた人たちが集まり、この状態を作っているのだと言う。
 ちなみに、サイクルが悪過ぎて夕方くらいから、ずっとこの状態なんだとか……まぁ、浴槽3つしかないしね……

「ロディくん」

 くいくいっ、と後ろから服の裾が引っ張られ、ついでに聞き覚えのある声が俺を呼ぶので振り返ると、そこには案の定ミーシャが立っていた。
 
「どうした?」
「んっと……おとーさんたちが“帰るから、戻ってこい”って……」

 だろうな……
 この状態じゃ、今からじゃとても風呂になんて入れそうに無い。
 仕方ないから、今日は風呂を諦めるしかないみたいだな……
 と言う事で、俺は渋々親父たちの所へと戻ったのだが……

「「……おふろ入れないの?」」

 と、寂しげな表情で言うレティとアーリーを見て気が変わった。

「よしっ! 今からにーちゃんが製作者権限でもって、今入ってるおっさんども叩き出して一つ確保して来るっ!
 だから、ちょっと待っているがいい! 妹たちよ!」
「おふろ入れる?」
「入れるともっ!」
「「わーいっ! おっふっろ! おっふっろ!」」

 ではさっさと、おっさん共を叩き出す為また風呂の設置してある場所まで戻ろうとした時、突然ガバッとミーシャに背後から抱きつかれた。

「ちょ! ダ、ダメだよ! ロディくん! そういうズルは良くないよ! 順番は守らないとダメなんだよ!?」

 どうやら、俺の事を止めようとしているらしい。
 何故だ? 何故止めようとする?
 妹たちが悲しい顔をしているんだぞ?
 あの太陽の様な笑顔が曇るなど、あってはならない事なのだ!
 もし、あの子たちの笑顔を陰らせるものがあるのならば、俺が全力を持ってそれ排除するのみだぁ!

「ええいっ! 放せっミーシャよ!
 妹たちの笑顔を守るためには仕方が事なんだ!」
「ダ、ダメだよぉ! そう言うのは良くないよぉ!?」

 こんな体ではあるが、力ずくで振り解こうと思えば、力の無いミーシャくらい簡単に振り解く事が出来る。
 だが、そんな事をしてミーシャに怪我なんてさせたくない。
 必死にしがみついて、俺を止めようとするミーシャに、結局俺は何も出来ないまま“放せ!”“ダメだよ!”と言う押し問答だけが続いたのだが、ふと、ある事を思い出した。
 加熱魔道具の実験に使ったあの生簀いけすの事だ。
 大人は浅すぎて無理だろうが、子どもである俺たちなら十分……とは言えないが、使えない事も無い。
 俺はミーシャに考えた事を話すと、4人……俺とレティ、アーリー、ミーシャな……で生簀いけすと向かった。
 一応、グライブを含めて親父たちにも話は振ったが3人揃って“止めておく”と言う答えが返ってきた。
 んで、“先に帰る”と言って俺たちを置いたまま帰ってしまった。
 こんな時間に子どもだけにするのかよ?
 とも思ったが、大きな町ならいざ知らず、な~んにも無いこんな村では今が夜で暗い事を除けば危ない事も特にないか……
 と言う事で、俺はさっさと生簀いけすの準備を終えると4人で仲良く入ったのだった。
 多少浅くはあったが、反面何倍も広い“風呂”に、妹たちも終始ご機嫌でこれはこれで彼女たちに受け入れられた様だった。
 ちなみに……
 こっちの生簀いけすの方の加熱魔道具だが、普段は俺以外の人間が使えないようにレンガの一部を組み替えていた。
 たったそれだけの事で、魔道具は動かなくなってしまうのだ。
 これは、試作風呂の方の加熱魔道具と違って、一切の安全装置が取られいてないため危険だからに他ならない。
 俺がいない間に、勝手に使ってチンされたのでは寝覚めが悪すぎるからな……

 妹たちも大満足のなか、帰り道に揺れる荷車クララの上で、ミーシャが、

「ロディくんってレティちゃんと、アーリーちゃんの事になると、時々おかしくなるよね……」

 と呟いていたが……
 別におかしい所なんて何処にもないよな? これって普通だよな?
 ミーシャの言葉に少し引っかかるものを感じながら、俺は家に向かって荷車クララをコロコロと転がしたのだった。
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