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62話 鎧熊 その8
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ずんっ、と腹に響く爆音。
そして、質量すら感じるほどの風の奔流が俺とクマのおっさんを襲った。
「おおぅっ!?」
「ぶへっ!?」
その暴風に、俺たちは激流に流される木の葉の様に、あっけなく吹き飛ばされてしまった。
流石にクマのおっさんほどの巨体ともなると、宙に浮く様なことはないが、風に煽られて地面をゴロゴロと転がる羽目になった。
おっさんが転がる度、俺は何度もおっさんの下敷きとなり、その都度おっさんの重量に圧殺されそうになった。
そうやって何度も転がっているうちに、ようやく風は収まり回転が止まった。
のはいいのだが……
「ぐえぇっ!! 死ぬから! 今度こそ本気で死ぬからぁ!!
早く退けぇぇ!!」
おっさんの止まったタイミングが最悪だった。
俺はクマのおっさんに圧し潰され、その重量で圧死しそうになっていた。
……なんか俺ってば、毎回クマのおっさんに止め刺されそうになっているような気がするな。
「ぐっ……すまん……何か言っているのか?
くそっ……よく聞こえん……」
クマのおっさんは、ややぐったりした様子でそう答えた。
俺だって耳がクワンクワンしていて音が聞こえ難くなっていたが、俺の場合、クマのおっさんが防壁の役割をしてくれていたお陰でこの程度で済んでいるのだろう。
あんな至近距離で爆音と衝撃を受けたおっさんへのダメージは、いくら斧を盾にいくらかは防いでいたとしても俺の比ではないことくらい簡単に予想が出来た。
しかし、このまま下敷きにされては、俺が死ぬ。
なので、俺は“退けっ!”という意思を伝えるために、クマのおっさんの頭をペシペシと叩き続けた。
少ししてようやく理解してくれたのか、クマのおっさんがその巨体をのっそりと起こす。
ふぅー、危うくいろいろと中身をぶちまけるところだった……
「下敷きにしていたのか、すまんな……
しかし、その様子からするとお前も無事の様だな……」
「今、死にかけたけどなっ!」
「だからすまん、と言っているだろう……
で、鎧熊はどうなった?」
多少は聞こえるようになったのか俺に文句に応えると、クマのおっさんはそう問いかけて来た。
が……
「知らんっ!!
爆発した時の閃光の所為で、どうなったのかなんて全然見えなかったからな」
「そうか……」
俺とおっさんは、揃って鎧熊のいた方へと顔を向けた。
事前の打ち合わせでは、もし爆発型魔術陣の一撃で鎧熊を仕留められなかった場合は副団長たちが止めを刺す手筈になっていた。
勿論、出来れば……の話ではあるが。
視線の先に鎧熊の姿は、ない。
しかし、戦闘を継続している雰囲気もない……
結局どうなったのだろうか……
「どうなったんだ? やった……のか?」
クマのおっさんも、俺と同じことを感じたらしい。
倒せたのならそれでいい。
だが、倒しきれていないとしたら?
ここからでは、その判別を付けられなかった。
考え得る最悪のケースとしては、止めを刺せずに遠くに吹き飛ばしただけ、という状況だろうか。
ここに来て取り逃がすというのは、あまりに手痛い。
「どうだろうな……」
「そうか……ぐっ……」
俺の答えを聞くと、何を思ったのかクマのおっさんは手にしていた棒で体を支えながら緩慢な動きで立ち上がったのだった。
たぶんこの棒は、クマのおっさんの相棒の成れの果てだろう。
肝心の斧頭部分が綺麗さっぱり無くなってしまっていた。
あの爆発の衝撃を防いだことで、折れてしまったのだと思うが……逆に鎧熊の一撃を受け止めた時に折れなくてよかった、とも思った。
「おっ、おい! 何してんだよ! 無茶すんなって! じっとしてろよっ!」
「奴の生死を確認すまでは油断は出来ん……
これから確かめに行く!」
「いやいやいやっ!
そんな体プルプルさせて言うことじゃないって!
おっさんの体も得物も、もうボロボロじゃないかっ!
そんなんで、もしまだあいつが生きてたらどうすんだよ!?
碌に戦えないだろっ!
あとは副団長たちに任せておけって! そういう手筈だっただろ?」
「しかし……んっ?」
突然言い淀んだクマのおっさんの視線を追うと、そこにはこちらに向かってゆっくりと近づいてくる副団長の姿があった。
「よぉ、お前ら無事だったか。なによりだ」
「バルディオ殿っ! 奴は……鎧熊はどうなりましたか!?」
「落ち着け。ってか、俺の様子見りゃそんくらい予想出来るだろうが……終わったよ。
よくやってくれた、ロディフィス。それにフェオドル、お前もな……今はその傷付いた体を休めておけ。
っと、言ったところでお前の性格からして現物見るまでは納得しないだろうからな……連れてってやるよ。
よっとっ!」
そう言うやいなや、バルディオ副団長はクマのおっさんに肩を貸すと、ゆっくりと来た道を戻り始めた。
「お手を煩わせてしまい、申し訳ない……」
「何、気にすんな」
………
……
…
俺たちが、鎧熊と戦っていた場所、そこから少し……いや、結構離れた所、森の入り口付近で、茂みに埋もれるようにして、それは転がっていた。
周囲には、先に来ていた自警団の面々がそれを取り囲むようにして立っている。
そこで、俺たちが目にしたのは、鎧熊であったもの、だった。
まず、胸から上が綺麗さっぱり無くなっていた。
頭部はいうに及ばず、肩の大半も消失している。
腕など、僅かに残った筋肉で辛うじて胴体と繋がっている、といった程度に過ぎない。
傷口……といっていいのか、その断面は完全に炭化しており、血の一滴も流さずにそこに存在していた全てを根こそぎ抉り取っていた……
「これは……」
「俺もこいつを見た時は我が目を疑ったよ。
“なんの冗談だ”ってな」
バルディオ副団長の話ではあの爆発の時、俺たちが爆風で吹き飛ばされたように、この鎧熊もまた爆風で吹き飛ばされたらしい。
副団長たちは、生死の確認、また生きていた場合は止めを刺すために透かさず鎧熊の後を追った、とのことだった。
そして、これを見つけた……
「まぁ、なんにしてもボクたちの勝ちってことだね。
お手柄じゃないかロディ」
誰もが沈黙する中、先生が近づいて来てそう声を掛けて来た。
「勝った……のか……」
先生の言葉を繰り返すように、誰かが絞りだすような声でそう呟いた。
たぶん、誰もがこの状況を素直に呑み込めないでいるのだろう。
俺だってそうだ。
現物を目の前にしても尚、正直信じられないでいるところはあったが、動かなくなった鎧熊の躯が転がっているのもまた事実……
先生の言葉を皮切りに、団員たちの間に“自分たちは勝ったのだ”という意識が伝搬し、“やったー!”だとか“うおおぉぉ!!”だとか、誰のものとも分からない歓声が上がっていった……それはやがて勝鬨の声となって辺りに響き渡った。
「おらおらっ!
いくら勝ったのが嬉しいからって、いつまでもボサっとしてんじゃねぇぞっ!
まだまだやるこたぁいくらでもあるんだからなぁ!
まずは負傷者の救護と治療だっ!
走れる奴は、ひとっ走りしてシスター連れて来いっ!
軽傷な奴は、子どもら連れて村へ帰れっ! 荷の事は取り敢えず気にするなっ! あとで取りに来ればいいっ!
ああ、村長にこのことを報告すんの忘れんじゃねぇぞっ!」
誰もが勝利の咆哮を上げる中、その声をかき消さんばかりの大声でバルディオ副団長が指示を飛ばす。
団員のみんなも、すぐに意識を切り替えて、自分の役わりを果たすために散って行った。
「しかし……
なんつーえげつない火力してんだよ……自分でやっといて言うのもあれだけど、ドン引きだよ……」
「確かにな……あれだけ手こずっていた鎧熊を一撃か……
なんとも凄まじい力だ……」
誰も彼もが忙しなく走り回る中、俺とクマのおっさんは、無残な姿となって横たわる鎧熊を見下ろしてしみじみと呟いた。
こいつもこんな所まで出て来なければ、死ぬこともなかったろうに……
いや、今回はたまたま俺たちが勝っただけだな。
もし、俺が爆発型魔術陣を作っていなかったり、もしくは家に置いていたりしていたら、負けていたのは俺たちの方だったのかもしれないのだから。
しかし……
この爆発型魔術陣は、もう作らない方がいいかもしれないな。
はっきり言って危険過ぎる。
あっ、でも今回みたいなことがもう二度と起こらない、とも言いきれない以上、保険として持っておいた方がいいのだろうか?
何が起こるか分からない世界だ。
むしろしっかり研究して、安全に使えるようにした方がいいのかもしれない、のか?
まぁ、とにかく俺一人で結論を出すには少々荷が勝ちすぎる問題だ。
帰って落ち着いたら、神父様と相談して決めよう。
ああ、そういえば……
「なぁなぁ、おっさん? もうそろそろ降ろしてくんね?
いい加減苦しくなって来たし……」
「ん? ああ、そうだな。
とは言え、結び目は後ろで手が届かんし、生憎と刃物の類は持ち合わせていなくてな。
誰かに頼むしか……」
「ならボクが解きますよ」
そう言って近づいて来たのは、たまたま俺たちの近くで団員に指示を出していたにいたディムリオ先生だった。
先生は若いが、その実力そして人柄から人望はかなり厚い。
みなが彼の言葉に従うのは、何も副団長の息子だから、というだけではないのだ。
「おお、そうか? では頼むとしようか」
「はいな」
先生は腰の剣帯から一振りのナイフを取り出して、俺たちを縛っていたロープをザクリと切り落とした。
今まで感じていた圧迫感から、体が解放される。
結構強めに縛っていた所為だろう、解けた瞬間に下半身に向かって流れ込む血流を感じた程だ。
あっ、なんだか足がビリビリして来た……
ずっと正座をしていた状態から、一気に立った時の感覚に似ているかもしれない。
今までクマのおっさんの背中に繰られていたお陰か、多少なりとも力が回復した俺は、なんとか自力でおっさんの背中から降りることが出来た。
おお、なんだか久しぶりの大地のような気がするな。
痺れる足で大地を踏み締めた俺は、ほっと一息を吐いた。
やっぱり足が地面に付いているのはいいね。吊るされているのはどうにも落ち着かないからな。
と……
「あ……れ……?」
それは、なんの前触れもなくやって来た……
突然、世界がぐにゃりと歪み、回り始めたのだ。
もう自分が立っているのか、座っているのか、はたまた倒れているのかすら、分からなくなった。
そして込み上げてくる強烈な吐き気……
「ごほぉっ!」
何かが食道を駆け上がり、胸が焼ける嫌な感覚がした。
口の中一杯に広がる、鉄っぽい味に急激に気分が悪くなる。
なんだ……? 何が起きた?
そう思った瞬間、今まで昼間だった世界は、闇夜に包まれた。
あれ……この感覚……前にどこかで……
バタッ
「なっ! ロディっっ!」
「おいっ! ロディフィスっ! どうしたっ!
おいっ! しっかりしろっっ!! ロディフィスっ!」
「ロディが倒れたっ!
誰かっ! シスター呼んで来てっ! 早くっっ!!」
何処か、ずっとずっと遠くで、誰かが俺の名前を呼んでいる……
そんな気がした。
-------------------------------------
ちゅん……ちゅんちゅん……
「ん……う……んっ?」
何処からかスズメの鳴き声が聞こえて来た。
……いや、この世界にスズメはいないんだったな。
あれは、スズメに似た別の鳥だな。
なんてことを考えながら、目を覚ました。
そこにはよく見知った天井が見えた。
俺の家の、俺の部屋の天井だ。
あれ? 俺ってばいつの間に帰って来たのだろうか?
……記憶にない。
そういえば。あれからどうなったんだっけ……?
鎧熊を倒して、それから……
どうにもそこから先の記憶があやふやになってしまっている。
「あだっ! あだだだだっ……」
体を起こそうとしたら、全身に激痛が奔った。
筋肉痛と打ち身と骨折と……とにかくそんなような痛みを全部ひとまとめにしてミキサーに掛けて一気飲みしたような痛みだった。
……なにが言いたいかというと、ようはすごく痛いってことなんだが……まぁいいか。
試しに指先を少しだけ動かしてみようとしたが、同じような痛みに襲われて、断念した。
これではしばらくはまともに動けそうにないな……
観念して、素直にベッドに身を委ねる。と……
左手だけが妙に暖かい事に気が付いた。
首一つ動かすのも正直しんどいのだが、気になったのでなんとか痛みを堪えて視線を向ければ……
「……母さん?」
そこにはベッドサイドで、俺の手を握ったまま眠っている母親の姿があった。
「んっ……ろでぃ……?」
俺の呟きで起こしてしまったのか、寝ぼけ眼で俺の事を見る母さんと目が合った。
「あ~、ごめん起こしちゃったかな?
おはよう、母さん」
「……っ!!
ロディっ! 目を覚ましたのねっ!!
ああぁ、ロディ……よかった……本当に……よかっ……」
母さんは全ての言葉を言い終わる前に、がばぁっと寝ている俺の事を力強く抱きしめた。
耳元で、母親の咽び泣く声が聞こえてくる……
相当心配をかけてしまったのだろう。
その姿に、胸が苦しくなる。
そりゃそうか、自分の子どもがズタボロになって帰って来て、心配しない親などいない……か。
まぁ、俺は親になったことがないのだが……
しかし……
「いだだっ! イダダダダッ!
痛いよ、母さん……」
正直、少し触れただけでも相当痛いのだ。
そんな神経むき出しのような状態の体に、力強い抱擁はちと辛い……
「ああぁ……ごめんなさいロディ。
あっ! そうだ! はやく、あなたが目を覚ましたことを、ロランドに教えてあげなくちゃ!
お父さんもずっとあなたの事を心配していたんだからね。
いい? じっとしているのよ? 分かったわね?」
そう言って、母さんは俺の返事など聞かずに急ぎ足で部屋を出ていった。
「あなたぁ! ロランド!
ロディが……ロディフィスが目を覚ましたわっ!
「なにっ!? 本当かっ!? すぐに……のわぁ!!」
その直後、何かをひっくり返すような派手な音が家中に響いたのだった。
……まったく、なにやってんだか。
………
……
…
少しだけ前の話をしよう。
結果だけを言ってしまえば、俺は一命を取り留めることが出来た。
それもこれも、俺が倒れた時、クマのおっさんやディムリオ先生、それにシスターたちが必死になって俺の治療に当たってくれたからに他ならない。
彼らの行為には、ただただ頭が下がる思いしかない。
当初、俺はかなり危険な状態であった、とはあとになってから聞いた話だ。
治療に当たってくれたシスターの話では、かなりの箇所を骨折していて、内臓へのダメージも相当であったようだ。
そんな状態で、意識を保って動けていたことが信じられないと、治療をしてくれたシスター本人に言われてしまった。
これはあれだろう。
人間は大きな怪我を負ったとき、アドレナリンだかなんだかが脳内で分泌されて痛みを感じなくなるとかいう……よく知らんけど、たぶんそんな感じのあれだな。
ただ、運がいいことに重要器官への負傷はなく、出血も少なかったことが幸いしていたらしい。
魔術による治療は万能ではない。傷を治すことは出来ても、失ったものを補填することは出来ないのだ。
つまり、大量に出血してしまうと、怪我の治療は出来てもそのまま出血性のショック死を引き起こす可能性までは拭い去ることが出来ない、という事だ。
俺が自宅に運び込まれた時、母さんはあまりのショックから倒れてしまっただとか……
それほどまでに、俺の容態は酷かったらしい。
ホント、申し訳ないことをしてしまったと思う。
しかし、骨折の一部はクマのおっさんに下敷きにされたのが原因ではないかと思うのだが……まぁいいか。
一番驚いたのは、俺が目を覚ましたのが、あの鎧熊との大捕り物から三日も経ってから、ということだろう。
どうやら、俺は丸々二日間も眠っていたらしい。
そりゃ、両親も気が気でない訳だ……
今回の騒動で、自警団の人たちに死者は出ていない。
俺の様に、大怪我をした人たちは数名いるらしいが、皆命に別状はないらしい。
この件で怪我を負った者は皆、今はシスターによる治療を受けている真っ最中だ。
村に治癒魔術を使える人が、一人しかいないため遅々として進まないが、それでも皆確実に快方へと向かっている。
俺もそんな患者の一人な訳だけどな。
ちなみに、倒した鎧熊をどうしたかというと……
結局、村に運び込むには人手が足りないため、皮だけその場で剥いで身は置いて来たらしい。
鎧熊の毛皮ともなれば、相当高額で売ることが出来るだろうからな。
ゲットしておかない手はない。
しかし、ディムリオ先生なんかは“熊鍋がぁ~”と大層残念がっていたらしいが……
そんなに食いたかったのか? 熊鍋。
もう今頃は、森狼たちに食い尽くされているだろう、というのがクマのおっさんの見解だ。
まぁ、あいつらだって死に物狂いで戦ったのだ。
多少の報酬はあって然るべきだろう、とも思う。
熊肉でも食って、養生して欲しい。
それで元気になりすぎて、人間を襲うようになってしまっては困りものだが……
これらの話は、昨日、俺が目を覚ましたその日にクマのおっさんやバルディオ副団長から聞いたことの顛末だった。
その日はそれだけ話して、彼らは早々に切り上げて帰って行った。
とくにお見舞いなどの来客もなかったので“薄情な奴らだなぁ”と内心愚痴っていたのだが、どうやらそうではなく、起き抜けだからと気を使って一日開けてくれていたらしいのだ。
と、いう訳で本日は朝から来客の嵐だった。
ミーシャやグライブといったいつもの面々は言うに及ばず、学校の生徒たち、自警団の人たち、それに直接は関係なかった村の人たちまでやって来る始末だった。
皆、口々に俺を心配する言葉と、感謝の言葉を口にしてくれた。
正直、少しばかりこそばゆい。
中には、聖王様の再来だっ! とか言って持て囃す人もいたが、そんな大層なことをした覚えはない。
そもそも、俺一人でどうにかした訳でもないしな。
勿論、その中には助けたあの女の子もいて、再度しっかりとお礼を言われた。
その際、手をがっしりと握られ、やたら熱っぽい視線を向けられ様な気がするのだが……
その光景を無言の圧力を以て見ていた、ミーシャ、タニア、シルヴィの視線がずいぶんと怖かったので、正直よく覚えていない。
とっ、とにかく、だ。
一通りお見舞いも終わったところで、今、俺の目の前にはクマのおっさん、それにバルディオ副団長、そして神父様の姿があった。
彼らの場合、お見舞いも兼ねて、俺にいろいろ聞きたいこともあるらしい。
「しっかしロディフィス……今にして思えば、あの鎧熊から防具の類もなしに直撃を受けて、よく生きていたものだな……
あの時点で、死んでいてもおかしくはないと思ったのだが……」
「ああ、あれ?
まぁ、あれにはちょっとしたタネがあって……
レティ、アーリー、あの時俺が来てた服を上着だけでいいから持って来てくれないかな?
母さんに聞けば、出してくれると思うから……」
そう、俺はベッドの両サイドに張り付いていた妹たちに頼んだ。のだが、
「やぁあー! にーちゃのそばにいるのぉー!」
「いるのぉー!」
俺が目を覚ましてからというもの、二人は片時も俺から離れようとしなかった。
一人がひとつずつの手を取って、離さないのだ。
手を碌すっぽ使えないこの状態では、食事をするのも一苦労なのだが……
無理に追い出そうとしたり、手を振り解こうとすると泣きわめくので、今は彼女たちの好きにさせている。
俺の近くにいる時は、静かにしていなくてはいけない、と母さんから言われているので二人ともそれをしっかり守って、おとなしくじっとしてる。
怪我人から遠ざけた方が騒がしい、というのも奇妙な話しだ。
「ほら? にーちゃん動けないだろ?
二人にお願いしないと、にーちゃんはなーんにも出来ないんだよ。
だから、お願いだ」
「うー……わかった! いってくる!」
「うー……いってくゆ!」
渋々といった様子で二人とも俺の“お願い”を了承すると、ピューと部屋を出て行った。
「おーかーさーん! にーちゃのふくどこー?」
「どーこー?」
そんな二人を見送ると、ふっと、クマのおっさんが小さく笑った。
「なんだよ……?」
「いやなに……人を使うのがうまいと思ってな」
「人聞きの悪い言い方すんな……ただのお願いだよ」
ほどなくして、二人があの時来ていた俺の上着を持って来てくれた。
俺はそれを受け取ると、少しばかり服をいじってから、クマのおっさんへと差し出した。
「なんだ?」
「取り敢えず、そいつを破いてみてくれよ。
出来るなら……だけどな」
「はぁ?」
上着を受け取って、一瞬で怪訝な表情になるおっさん。
「物は大切にだなぁ……」
「いいから、試してみてくれって。
絶対破れないから」
未だ怪訝な表情のまま、クマのおっさんは“どうなっても知らんぞ”と、呟いてから渡した上着を力いっぱい引っ張った。
「ふんっ! ん!?
ぐぬぬぬぬぬぬっ!?
ふんっぬぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!!!
ふんっふんっふんっ!!!
でりゃー! とりゃー! ふんぬぐらばぁぁぁぁ!!」
「魔術陣……ですか?」
おっさんが一人、変な踊りを踊っている横から、神父様が平然と的確な指摘をして来た。
……少しはおっさんの事も気にかけてあげてどーぞ。
「はい。
その服自体はグライブからのお下がりなんですけど、母さんが俺用に仕立て直してくれたんですよ。
森に入って破くのも嫌だったので、なんとか破れないように出来ないかなっと……
あっ、魔術陣は服の内側に書いてあるんですよ」
「しかし、“固着”の魔術陣ではこうも柔軟には……」
「ええ、ですから……」
そう、そこなのだ。
固着の魔術陣は、確かに物体の強度を跳ね上げる。
しかし、それでは魔術陣の効果が発揮された時点で、ただの鉄板になってしまいとてもではないが服としての機能は失われてしまう。
服としての、布としての柔軟性は維持しつつ、破損しないようにす必要性があったのだ。
そこで俺が考えたのが、“物体を固くする”ということではなく“如何に現状を維持するか”という点だった。
服の柔軟性は、言ってしまえば繊維の伸縮に他ならない。
伸びたり縮んだりといった変化は容認し、繊維の破断のような物理的な破損を防ぐ……
そういう方面で考えた結果、作り上げたのがこの服に使われている魔術陣だった。
「……なるほどな。
しっかし、よく考えつくもんだな」
俺の説明を一通り聞き終わった後、副団長が大きく頷いていた。
頷いてはいたが……本当に、理解しているのだろう?
若干怪しいものがある。
「ようは、そいつを着てれば斬撃を打撃に変えられるってこったろ?
切れねぇ剣で斬りかかっても、そいつはただの鈍器だからな。
肉が裂けることは耐えるのは難しいが、殴られるだけなら耐えられる……ってか」
まぁ、発想としては概ね合っていた。
簡単に言ってしまえば、鎖帷子と理屈は同じなのだが……そこまでの防御能力は、残念ながらこの服にはないけれどな。
しかし、この服のおかげで助かったのも事実だった。
俺は、自分の胸元を見下ろした。
と、いうのも今は包帯で隠れているが、その下には三本の太い痣が走っていた。
鎧熊の爪痕だ。
もし……あの時、着ていたのが普通の服であったな、俺は臓物をばらまいて死んでいたってことだ。
この服が、切り裂くことを止めることが出来たおかげで、助かったともいえるのだ。
勿論、この服では衝撃を緩和することはできないので、運がよかっただけ、というのもまた事実だった。
防刃繊維の服を着ているからといって、ダンプカーに撥ねられても平気という道理はない。
それに、鎧熊の爪が胴体ではないところ、例えば頭部などに当たっていても死んでただろう。
結局は、様々な偶然が重なったことで助かった、ということなのだと思う。
「だぁーーー! 無理だっ! 破れねぇ!」
まだやってたのかよ、おっさん……
「では、私からもいいでしょうか?」
「はい、なんですか?」
「あの鎧熊に止めを刺した魔術陣のことなのですが……」
神父様の聞きたいこととは、要点をまとめてしまえば、あれだけの規模の爆発を起こしておいて、なぜ俺やクマのおっさんが無事なのか? とうことだった。
通常衝撃は、中心から放射状に広がっていくものだ。
だから、中心からの距離が同じなら、同じだけの衝撃を受けることになるのだが……
「ああ、それは、爆発の衝撃に指向性を与えたんですよ」
「しこうせい……ですか?」
たまにだが、こちらの世界にない概念の言葉を無理やり伝えようとすると、理解されないときがあった。
そういう時は、いつだって説明するのに苦労する。
「えっと……向きっていうのか、方向っていうのか……
とにかく、爆発時の衝撃を全部“魔術陣の正面”に放射されるように設定しておいたんですよ」
感覚としては、指向性爆薬に近いと思う。
「とは言っても、反動で結局吹き飛ばされた訳ですけどね」
前に放出される力は、それは即ち後ろに進む力と同じなのだ
後ろにも同等の力を掛けていれば、吹き飛ばされる事もない。
所謂、無反動砲ってやつだな。
が、元々は低出力の試験型。
そこまで考慮して作ってはいなかった。
急拵えにては、よく出来ていた方だろうと、自画自賛している。
「難しい話は、俺には分からねぇが……
とにかく、男を見せたじゃねぇか、ロディフィスよぉ!
どうだ? 将来……と言わず、今からでも自警団に入る気はないか?
お前みたいに気概のある奴は、大歓迎だぜ?
お前がその気なら、俺が付きっきりで鍛えてやんぞ? どうだ?」
その隣で“だっはっはっ!”と豪快な笑い声を上げてから、話かけて来たのがバルディオ副団長だった。
自警団入りは、村の男の子連中なら誰もが一度は憧れるものだ。
一昔前の、プロ野球の選手になりたい、とか、サッカー選手になりたい、とかと似た感じだな。
しかし、俺はそこまで自警団という組織に憧れを持っている訳でもない。
第一、筋肉至上主義の副団長にマンツーマンで指導された日には、ゴリマッチョへの道をまっしぐらなのではっきり言って遠慮したい。
「筋肉ダルマになるつもりはないので、丁重にお断りします」
「そうかっ! 残念だっ!
が、気が変わったのならいつでも声を掛けてくれっ!
我々自警団はキミをいつでも歓迎しようっ!」
「では、その時に……」
半分はリップサービスと受け取りつつ、その話題を以てお開きとなった。
三人が帰った後……
静かだと思ったら、レティもアーリーも俺の隣ですっかり眠ってしまっていた。
まだ日は高いが、今日はなんだか疲れたな……
そのつもりはなかったのだが、気持ちよさそうに眠りこけている二人を見ていたら俺の瞼も次第に重くなってくるのを感じた。
どの道今は絶対安静を言い渡されているので、出来ることなど何もないんだよなぁ。
そうして、知らず知らずのうちに、俺もまた妹たちと一緒に眠りへと落ちて行ったのだった……
そして、質量すら感じるほどの風の奔流が俺とクマのおっさんを襲った。
「おおぅっ!?」
「ぶへっ!?」
その暴風に、俺たちは激流に流される木の葉の様に、あっけなく吹き飛ばされてしまった。
流石にクマのおっさんほどの巨体ともなると、宙に浮く様なことはないが、風に煽られて地面をゴロゴロと転がる羽目になった。
おっさんが転がる度、俺は何度もおっさんの下敷きとなり、その都度おっさんの重量に圧殺されそうになった。
そうやって何度も転がっているうちに、ようやく風は収まり回転が止まった。
のはいいのだが……
「ぐえぇっ!! 死ぬから! 今度こそ本気で死ぬからぁ!!
早く退けぇぇ!!」
おっさんの止まったタイミングが最悪だった。
俺はクマのおっさんに圧し潰され、その重量で圧死しそうになっていた。
……なんか俺ってば、毎回クマのおっさんに止め刺されそうになっているような気がするな。
「ぐっ……すまん……何か言っているのか?
くそっ……よく聞こえん……」
クマのおっさんは、ややぐったりした様子でそう答えた。
俺だって耳がクワンクワンしていて音が聞こえ難くなっていたが、俺の場合、クマのおっさんが防壁の役割をしてくれていたお陰でこの程度で済んでいるのだろう。
あんな至近距離で爆音と衝撃を受けたおっさんへのダメージは、いくら斧を盾にいくらかは防いでいたとしても俺の比ではないことくらい簡単に予想が出来た。
しかし、このまま下敷きにされては、俺が死ぬ。
なので、俺は“退けっ!”という意思を伝えるために、クマのおっさんの頭をペシペシと叩き続けた。
少ししてようやく理解してくれたのか、クマのおっさんがその巨体をのっそりと起こす。
ふぅー、危うくいろいろと中身をぶちまけるところだった……
「下敷きにしていたのか、すまんな……
しかし、その様子からするとお前も無事の様だな……」
「今、死にかけたけどなっ!」
「だからすまん、と言っているだろう……
で、鎧熊はどうなった?」
多少は聞こえるようになったのか俺に文句に応えると、クマのおっさんはそう問いかけて来た。
が……
「知らんっ!!
爆発した時の閃光の所為で、どうなったのかなんて全然見えなかったからな」
「そうか……」
俺とおっさんは、揃って鎧熊のいた方へと顔を向けた。
事前の打ち合わせでは、もし爆発型魔術陣の一撃で鎧熊を仕留められなかった場合は副団長たちが止めを刺す手筈になっていた。
勿論、出来れば……の話ではあるが。
視線の先に鎧熊の姿は、ない。
しかし、戦闘を継続している雰囲気もない……
結局どうなったのだろうか……
「どうなったんだ? やった……のか?」
クマのおっさんも、俺と同じことを感じたらしい。
倒せたのならそれでいい。
だが、倒しきれていないとしたら?
ここからでは、その判別を付けられなかった。
考え得る最悪のケースとしては、止めを刺せずに遠くに吹き飛ばしただけ、という状況だろうか。
ここに来て取り逃がすというのは、あまりに手痛い。
「どうだろうな……」
「そうか……ぐっ……」
俺の答えを聞くと、何を思ったのかクマのおっさんは手にしていた棒で体を支えながら緩慢な動きで立ち上がったのだった。
たぶんこの棒は、クマのおっさんの相棒の成れの果てだろう。
肝心の斧頭部分が綺麗さっぱり無くなってしまっていた。
あの爆発の衝撃を防いだことで、折れてしまったのだと思うが……逆に鎧熊の一撃を受け止めた時に折れなくてよかった、とも思った。
「おっ、おい! 何してんだよ! 無茶すんなって! じっとしてろよっ!」
「奴の生死を確認すまでは油断は出来ん……
これから確かめに行く!」
「いやいやいやっ!
そんな体プルプルさせて言うことじゃないって!
おっさんの体も得物も、もうボロボロじゃないかっ!
そんなんで、もしまだあいつが生きてたらどうすんだよ!?
碌に戦えないだろっ!
あとは副団長たちに任せておけって! そういう手筈だっただろ?」
「しかし……んっ?」
突然言い淀んだクマのおっさんの視線を追うと、そこにはこちらに向かってゆっくりと近づいてくる副団長の姿があった。
「よぉ、お前ら無事だったか。なによりだ」
「バルディオ殿っ! 奴は……鎧熊はどうなりましたか!?」
「落ち着け。ってか、俺の様子見りゃそんくらい予想出来るだろうが……終わったよ。
よくやってくれた、ロディフィス。それにフェオドル、お前もな……今はその傷付いた体を休めておけ。
っと、言ったところでお前の性格からして現物見るまでは納得しないだろうからな……連れてってやるよ。
よっとっ!」
そう言うやいなや、バルディオ副団長はクマのおっさんに肩を貸すと、ゆっくりと来た道を戻り始めた。
「お手を煩わせてしまい、申し訳ない……」
「何、気にすんな」
………
……
…
俺たちが、鎧熊と戦っていた場所、そこから少し……いや、結構離れた所、森の入り口付近で、茂みに埋もれるようにして、それは転がっていた。
周囲には、先に来ていた自警団の面々がそれを取り囲むようにして立っている。
そこで、俺たちが目にしたのは、鎧熊であったもの、だった。
まず、胸から上が綺麗さっぱり無くなっていた。
頭部はいうに及ばず、肩の大半も消失している。
腕など、僅かに残った筋肉で辛うじて胴体と繋がっている、といった程度に過ぎない。
傷口……といっていいのか、その断面は完全に炭化しており、血の一滴も流さずにそこに存在していた全てを根こそぎ抉り取っていた……
「これは……」
「俺もこいつを見た時は我が目を疑ったよ。
“なんの冗談だ”ってな」
バルディオ副団長の話ではあの爆発の時、俺たちが爆風で吹き飛ばされたように、この鎧熊もまた爆風で吹き飛ばされたらしい。
副団長たちは、生死の確認、また生きていた場合は止めを刺すために透かさず鎧熊の後を追った、とのことだった。
そして、これを見つけた……
「まぁ、なんにしてもボクたちの勝ちってことだね。
お手柄じゃないかロディ」
誰もが沈黙する中、先生が近づいて来てそう声を掛けて来た。
「勝った……のか……」
先生の言葉を繰り返すように、誰かが絞りだすような声でそう呟いた。
たぶん、誰もがこの状況を素直に呑み込めないでいるのだろう。
俺だってそうだ。
現物を目の前にしても尚、正直信じられないでいるところはあったが、動かなくなった鎧熊の躯が転がっているのもまた事実……
先生の言葉を皮切りに、団員たちの間に“自分たちは勝ったのだ”という意識が伝搬し、“やったー!”だとか“うおおぉぉ!!”だとか、誰のものとも分からない歓声が上がっていった……それはやがて勝鬨の声となって辺りに響き渡った。
「おらおらっ!
いくら勝ったのが嬉しいからって、いつまでもボサっとしてんじゃねぇぞっ!
まだまだやるこたぁいくらでもあるんだからなぁ!
まずは負傷者の救護と治療だっ!
走れる奴は、ひとっ走りしてシスター連れて来いっ!
軽傷な奴は、子どもら連れて村へ帰れっ! 荷の事は取り敢えず気にするなっ! あとで取りに来ればいいっ!
ああ、村長にこのことを報告すんの忘れんじゃねぇぞっ!」
誰もが勝利の咆哮を上げる中、その声をかき消さんばかりの大声でバルディオ副団長が指示を飛ばす。
団員のみんなも、すぐに意識を切り替えて、自分の役わりを果たすために散って行った。
「しかし……
なんつーえげつない火力してんだよ……自分でやっといて言うのもあれだけど、ドン引きだよ……」
「確かにな……あれだけ手こずっていた鎧熊を一撃か……
なんとも凄まじい力だ……」
誰も彼もが忙しなく走り回る中、俺とクマのおっさんは、無残な姿となって横たわる鎧熊を見下ろしてしみじみと呟いた。
こいつもこんな所まで出て来なければ、死ぬこともなかったろうに……
いや、今回はたまたま俺たちが勝っただけだな。
もし、俺が爆発型魔術陣を作っていなかったり、もしくは家に置いていたりしていたら、負けていたのは俺たちの方だったのかもしれないのだから。
しかし……
この爆発型魔術陣は、もう作らない方がいいかもしれないな。
はっきり言って危険過ぎる。
あっ、でも今回みたいなことがもう二度と起こらない、とも言いきれない以上、保険として持っておいた方がいいのだろうか?
何が起こるか分からない世界だ。
むしろしっかり研究して、安全に使えるようにした方がいいのかもしれない、のか?
まぁ、とにかく俺一人で結論を出すには少々荷が勝ちすぎる問題だ。
帰って落ち着いたら、神父様と相談して決めよう。
ああ、そういえば……
「なぁなぁ、おっさん? もうそろそろ降ろしてくんね?
いい加減苦しくなって来たし……」
「ん? ああ、そうだな。
とは言え、結び目は後ろで手が届かんし、生憎と刃物の類は持ち合わせていなくてな。
誰かに頼むしか……」
「ならボクが解きますよ」
そう言って近づいて来たのは、たまたま俺たちの近くで団員に指示を出していたにいたディムリオ先生だった。
先生は若いが、その実力そして人柄から人望はかなり厚い。
みなが彼の言葉に従うのは、何も副団長の息子だから、というだけではないのだ。
「おお、そうか? では頼むとしようか」
「はいな」
先生は腰の剣帯から一振りのナイフを取り出して、俺たちを縛っていたロープをザクリと切り落とした。
今まで感じていた圧迫感から、体が解放される。
結構強めに縛っていた所為だろう、解けた瞬間に下半身に向かって流れ込む血流を感じた程だ。
あっ、なんだか足がビリビリして来た……
ずっと正座をしていた状態から、一気に立った時の感覚に似ているかもしれない。
今までクマのおっさんの背中に繰られていたお陰か、多少なりとも力が回復した俺は、なんとか自力でおっさんの背中から降りることが出来た。
おお、なんだか久しぶりの大地のような気がするな。
痺れる足で大地を踏み締めた俺は、ほっと一息を吐いた。
やっぱり足が地面に付いているのはいいね。吊るされているのはどうにも落ち着かないからな。
と……
「あ……れ……?」
それは、なんの前触れもなくやって来た……
突然、世界がぐにゃりと歪み、回り始めたのだ。
もう自分が立っているのか、座っているのか、はたまた倒れているのかすら、分からなくなった。
そして込み上げてくる強烈な吐き気……
「ごほぉっ!」
何かが食道を駆け上がり、胸が焼ける嫌な感覚がした。
口の中一杯に広がる、鉄っぽい味に急激に気分が悪くなる。
なんだ……? 何が起きた?
そう思った瞬間、今まで昼間だった世界は、闇夜に包まれた。
あれ……この感覚……前にどこかで……
バタッ
「なっ! ロディっっ!」
「おいっ! ロディフィスっ! どうしたっ!
おいっ! しっかりしろっっ!! ロディフィスっ!」
「ロディが倒れたっ!
誰かっ! シスター呼んで来てっ! 早くっっ!!」
何処か、ずっとずっと遠くで、誰かが俺の名前を呼んでいる……
そんな気がした。
-------------------------------------
ちゅん……ちゅんちゅん……
「ん……う……んっ?」
何処からかスズメの鳴き声が聞こえて来た。
……いや、この世界にスズメはいないんだったな。
あれは、スズメに似た別の鳥だな。
なんてことを考えながら、目を覚ました。
そこにはよく見知った天井が見えた。
俺の家の、俺の部屋の天井だ。
あれ? 俺ってばいつの間に帰って来たのだろうか?
……記憶にない。
そういえば。あれからどうなったんだっけ……?
鎧熊を倒して、それから……
どうにもそこから先の記憶があやふやになってしまっている。
「あだっ! あだだだだっ……」
体を起こそうとしたら、全身に激痛が奔った。
筋肉痛と打ち身と骨折と……とにかくそんなような痛みを全部ひとまとめにしてミキサーに掛けて一気飲みしたような痛みだった。
……なにが言いたいかというと、ようはすごく痛いってことなんだが……まぁいいか。
試しに指先を少しだけ動かしてみようとしたが、同じような痛みに襲われて、断念した。
これではしばらくはまともに動けそうにないな……
観念して、素直にベッドに身を委ねる。と……
左手だけが妙に暖かい事に気が付いた。
首一つ動かすのも正直しんどいのだが、気になったのでなんとか痛みを堪えて視線を向ければ……
「……母さん?」
そこにはベッドサイドで、俺の手を握ったまま眠っている母親の姿があった。
「んっ……ろでぃ……?」
俺の呟きで起こしてしまったのか、寝ぼけ眼で俺の事を見る母さんと目が合った。
「あ~、ごめん起こしちゃったかな?
おはよう、母さん」
「……っ!!
ロディっ! 目を覚ましたのねっ!!
ああぁ、ロディ……よかった……本当に……よかっ……」
母さんは全ての言葉を言い終わる前に、がばぁっと寝ている俺の事を力強く抱きしめた。
耳元で、母親の咽び泣く声が聞こえてくる……
相当心配をかけてしまったのだろう。
その姿に、胸が苦しくなる。
そりゃそうか、自分の子どもがズタボロになって帰って来て、心配しない親などいない……か。
まぁ、俺は親になったことがないのだが……
しかし……
「いだだっ! イダダダダッ!
痛いよ、母さん……」
正直、少し触れただけでも相当痛いのだ。
そんな神経むき出しのような状態の体に、力強い抱擁はちと辛い……
「ああぁ……ごめんなさいロディ。
あっ! そうだ! はやく、あなたが目を覚ましたことを、ロランドに教えてあげなくちゃ!
お父さんもずっとあなたの事を心配していたんだからね。
いい? じっとしているのよ? 分かったわね?」
そう言って、母さんは俺の返事など聞かずに急ぎ足で部屋を出ていった。
「あなたぁ! ロランド!
ロディが……ロディフィスが目を覚ましたわっ!
「なにっ!? 本当かっ!? すぐに……のわぁ!!」
その直後、何かをひっくり返すような派手な音が家中に響いたのだった。
……まったく、なにやってんだか。
………
……
…
少しだけ前の話をしよう。
結果だけを言ってしまえば、俺は一命を取り留めることが出来た。
それもこれも、俺が倒れた時、クマのおっさんやディムリオ先生、それにシスターたちが必死になって俺の治療に当たってくれたからに他ならない。
彼らの行為には、ただただ頭が下がる思いしかない。
当初、俺はかなり危険な状態であった、とはあとになってから聞いた話だ。
治療に当たってくれたシスターの話では、かなりの箇所を骨折していて、内臓へのダメージも相当であったようだ。
そんな状態で、意識を保って動けていたことが信じられないと、治療をしてくれたシスター本人に言われてしまった。
これはあれだろう。
人間は大きな怪我を負ったとき、アドレナリンだかなんだかが脳内で分泌されて痛みを感じなくなるとかいう……よく知らんけど、たぶんそんな感じのあれだな。
ただ、運がいいことに重要器官への負傷はなく、出血も少なかったことが幸いしていたらしい。
魔術による治療は万能ではない。傷を治すことは出来ても、失ったものを補填することは出来ないのだ。
つまり、大量に出血してしまうと、怪我の治療は出来てもそのまま出血性のショック死を引き起こす可能性までは拭い去ることが出来ない、という事だ。
俺が自宅に運び込まれた時、母さんはあまりのショックから倒れてしまっただとか……
それほどまでに、俺の容態は酷かったらしい。
ホント、申し訳ないことをしてしまったと思う。
しかし、骨折の一部はクマのおっさんに下敷きにされたのが原因ではないかと思うのだが……まぁいいか。
一番驚いたのは、俺が目を覚ましたのが、あの鎧熊との大捕り物から三日も経ってから、ということだろう。
どうやら、俺は丸々二日間も眠っていたらしい。
そりゃ、両親も気が気でない訳だ……
今回の騒動で、自警団の人たちに死者は出ていない。
俺の様に、大怪我をした人たちは数名いるらしいが、皆命に別状はないらしい。
この件で怪我を負った者は皆、今はシスターによる治療を受けている真っ最中だ。
村に治癒魔術を使える人が、一人しかいないため遅々として進まないが、それでも皆確実に快方へと向かっている。
俺もそんな患者の一人な訳だけどな。
ちなみに、倒した鎧熊をどうしたかというと……
結局、村に運び込むには人手が足りないため、皮だけその場で剥いで身は置いて来たらしい。
鎧熊の毛皮ともなれば、相当高額で売ることが出来るだろうからな。
ゲットしておかない手はない。
しかし、ディムリオ先生なんかは“熊鍋がぁ~”と大層残念がっていたらしいが……
そんなに食いたかったのか? 熊鍋。
もう今頃は、森狼たちに食い尽くされているだろう、というのがクマのおっさんの見解だ。
まぁ、あいつらだって死に物狂いで戦ったのだ。
多少の報酬はあって然るべきだろう、とも思う。
熊肉でも食って、養生して欲しい。
それで元気になりすぎて、人間を襲うようになってしまっては困りものだが……
これらの話は、昨日、俺が目を覚ましたその日にクマのおっさんやバルディオ副団長から聞いたことの顛末だった。
その日はそれだけ話して、彼らは早々に切り上げて帰って行った。
とくにお見舞いなどの来客もなかったので“薄情な奴らだなぁ”と内心愚痴っていたのだが、どうやらそうではなく、起き抜けだからと気を使って一日開けてくれていたらしいのだ。
と、いう訳で本日は朝から来客の嵐だった。
ミーシャやグライブといったいつもの面々は言うに及ばず、学校の生徒たち、自警団の人たち、それに直接は関係なかった村の人たちまでやって来る始末だった。
皆、口々に俺を心配する言葉と、感謝の言葉を口にしてくれた。
正直、少しばかりこそばゆい。
中には、聖王様の再来だっ! とか言って持て囃す人もいたが、そんな大層なことをした覚えはない。
そもそも、俺一人でどうにかした訳でもないしな。
勿論、その中には助けたあの女の子もいて、再度しっかりとお礼を言われた。
その際、手をがっしりと握られ、やたら熱っぽい視線を向けられ様な気がするのだが……
その光景を無言の圧力を以て見ていた、ミーシャ、タニア、シルヴィの視線がずいぶんと怖かったので、正直よく覚えていない。
とっ、とにかく、だ。
一通りお見舞いも終わったところで、今、俺の目の前にはクマのおっさん、それにバルディオ副団長、そして神父様の姿があった。
彼らの場合、お見舞いも兼ねて、俺にいろいろ聞きたいこともあるらしい。
「しっかしロディフィス……今にして思えば、あの鎧熊から防具の類もなしに直撃を受けて、よく生きていたものだな……
あの時点で、死んでいてもおかしくはないと思ったのだが……」
「ああ、あれ?
まぁ、あれにはちょっとしたタネがあって……
レティ、アーリー、あの時俺が来てた服を上着だけでいいから持って来てくれないかな?
母さんに聞けば、出してくれると思うから……」
そう、俺はベッドの両サイドに張り付いていた妹たちに頼んだ。のだが、
「やぁあー! にーちゃのそばにいるのぉー!」
「いるのぉー!」
俺が目を覚ましてからというもの、二人は片時も俺から離れようとしなかった。
一人がひとつずつの手を取って、離さないのだ。
手を碌すっぽ使えないこの状態では、食事をするのも一苦労なのだが……
無理に追い出そうとしたり、手を振り解こうとすると泣きわめくので、今は彼女たちの好きにさせている。
俺の近くにいる時は、静かにしていなくてはいけない、と母さんから言われているので二人ともそれをしっかり守って、おとなしくじっとしてる。
怪我人から遠ざけた方が騒がしい、というのも奇妙な話しだ。
「ほら? にーちゃん動けないだろ?
二人にお願いしないと、にーちゃんはなーんにも出来ないんだよ。
だから、お願いだ」
「うー……わかった! いってくる!」
「うー……いってくゆ!」
渋々といった様子で二人とも俺の“お願い”を了承すると、ピューと部屋を出て行った。
「おーかーさーん! にーちゃのふくどこー?」
「どーこー?」
そんな二人を見送ると、ふっと、クマのおっさんが小さく笑った。
「なんだよ……?」
「いやなに……人を使うのがうまいと思ってな」
「人聞きの悪い言い方すんな……ただのお願いだよ」
ほどなくして、二人があの時来ていた俺の上着を持って来てくれた。
俺はそれを受け取ると、少しばかり服をいじってから、クマのおっさんへと差し出した。
「なんだ?」
「取り敢えず、そいつを破いてみてくれよ。
出来るなら……だけどな」
「はぁ?」
上着を受け取って、一瞬で怪訝な表情になるおっさん。
「物は大切にだなぁ……」
「いいから、試してみてくれって。
絶対破れないから」
未だ怪訝な表情のまま、クマのおっさんは“どうなっても知らんぞ”と、呟いてから渡した上着を力いっぱい引っ張った。
「ふんっ! ん!?
ぐぬぬぬぬぬぬっ!?
ふんっぬぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!!!
ふんっふんっふんっ!!!
でりゃー! とりゃー! ふんぬぐらばぁぁぁぁ!!」
「魔術陣……ですか?」
おっさんが一人、変な踊りを踊っている横から、神父様が平然と的確な指摘をして来た。
……少しはおっさんの事も気にかけてあげてどーぞ。
「はい。
その服自体はグライブからのお下がりなんですけど、母さんが俺用に仕立て直してくれたんですよ。
森に入って破くのも嫌だったので、なんとか破れないように出来ないかなっと……
あっ、魔術陣は服の内側に書いてあるんですよ」
「しかし、“固着”の魔術陣ではこうも柔軟には……」
「ええ、ですから……」
そう、そこなのだ。
固着の魔術陣は、確かに物体の強度を跳ね上げる。
しかし、それでは魔術陣の効果が発揮された時点で、ただの鉄板になってしまいとてもではないが服としての機能は失われてしまう。
服としての、布としての柔軟性は維持しつつ、破損しないようにす必要性があったのだ。
そこで俺が考えたのが、“物体を固くする”ということではなく“如何に現状を維持するか”という点だった。
服の柔軟性は、言ってしまえば繊維の伸縮に他ならない。
伸びたり縮んだりといった変化は容認し、繊維の破断のような物理的な破損を防ぐ……
そういう方面で考えた結果、作り上げたのがこの服に使われている魔術陣だった。
「……なるほどな。
しっかし、よく考えつくもんだな」
俺の説明を一通り聞き終わった後、副団長が大きく頷いていた。
頷いてはいたが……本当に、理解しているのだろう?
若干怪しいものがある。
「ようは、そいつを着てれば斬撃を打撃に変えられるってこったろ?
切れねぇ剣で斬りかかっても、そいつはただの鈍器だからな。
肉が裂けることは耐えるのは難しいが、殴られるだけなら耐えられる……ってか」
まぁ、発想としては概ね合っていた。
簡単に言ってしまえば、鎖帷子と理屈は同じなのだが……そこまでの防御能力は、残念ながらこの服にはないけれどな。
しかし、この服のおかげで助かったのも事実だった。
俺は、自分の胸元を見下ろした。
と、いうのも今は包帯で隠れているが、その下には三本の太い痣が走っていた。
鎧熊の爪痕だ。
もし……あの時、着ていたのが普通の服であったな、俺は臓物をばらまいて死んでいたってことだ。
この服が、切り裂くことを止めることが出来たおかげで、助かったともいえるのだ。
勿論、この服では衝撃を緩和することはできないので、運がよかっただけ、というのもまた事実だった。
防刃繊維の服を着ているからといって、ダンプカーに撥ねられても平気という道理はない。
それに、鎧熊の爪が胴体ではないところ、例えば頭部などに当たっていても死んでただろう。
結局は、様々な偶然が重なったことで助かった、ということなのだと思う。
「だぁーーー! 無理だっ! 破れねぇ!」
まだやってたのかよ、おっさん……
「では、私からもいいでしょうか?」
「はい、なんですか?」
「あの鎧熊に止めを刺した魔術陣のことなのですが……」
神父様の聞きたいこととは、要点をまとめてしまえば、あれだけの規模の爆発を起こしておいて、なぜ俺やクマのおっさんが無事なのか? とうことだった。
通常衝撃は、中心から放射状に広がっていくものだ。
だから、中心からの距離が同じなら、同じだけの衝撃を受けることになるのだが……
「ああ、それは、爆発の衝撃に指向性を与えたんですよ」
「しこうせい……ですか?」
たまにだが、こちらの世界にない概念の言葉を無理やり伝えようとすると、理解されないときがあった。
そういう時は、いつだって説明するのに苦労する。
「えっと……向きっていうのか、方向っていうのか……
とにかく、爆発時の衝撃を全部“魔術陣の正面”に放射されるように設定しておいたんですよ」
感覚としては、指向性爆薬に近いと思う。
「とは言っても、反動で結局吹き飛ばされた訳ですけどね」
前に放出される力は、それは即ち後ろに進む力と同じなのだ
後ろにも同等の力を掛けていれば、吹き飛ばされる事もない。
所謂、無反動砲ってやつだな。
が、元々は低出力の試験型。
そこまで考慮して作ってはいなかった。
急拵えにては、よく出来ていた方だろうと、自画自賛している。
「難しい話は、俺には分からねぇが……
とにかく、男を見せたじゃねぇか、ロディフィスよぉ!
どうだ? 将来……と言わず、今からでも自警団に入る気はないか?
お前みたいに気概のある奴は、大歓迎だぜ?
お前がその気なら、俺が付きっきりで鍛えてやんぞ? どうだ?」
その隣で“だっはっはっ!”と豪快な笑い声を上げてから、話かけて来たのがバルディオ副団長だった。
自警団入りは、村の男の子連中なら誰もが一度は憧れるものだ。
一昔前の、プロ野球の選手になりたい、とか、サッカー選手になりたい、とかと似た感じだな。
しかし、俺はそこまで自警団という組織に憧れを持っている訳でもない。
第一、筋肉至上主義の副団長にマンツーマンで指導された日には、ゴリマッチョへの道をまっしぐらなのではっきり言って遠慮したい。
「筋肉ダルマになるつもりはないので、丁重にお断りします」
「そうかっ! 残念だっ!
が、気が変わったのならいつでも声を掛けてくれっ!
我々自警団はキミをいつでも歓迎しようっ!」
「では、その時に……」
半分はリップサービスと受け取りつつ、その話題を以てお開きとなった。
三人が帰った後……
静かだと思ったら、レティもアーリーも俺の隣ですっかり眠ってしまっていた。
まだ日は高いが、今日はなんだか疲れたな……
そのつもりはなかったのだが、気持ちよさそうに眠りこけている二人を見ていたら俺の瞼も次第に重くなってくるのを感じた。
どの道今は絶対安静を言い渡されているので、出来ることなど何もないんだよなぁ。
そうして、知らず知らずのうちに、俺もまた妹たちと一緒に眠りへと落ちて行ったのだった……
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