49 / 85
65話 生体実験
しおりを挟む
治療用の魔術陣、そのまま口にしていては少し長いので、この魔術陣を俺は“治術陣”と命名することにした。
ちなみに、爆発魔術陣を“破術陣”、硬化魔術陣を“硬術陣”と名付けてみた。
俺が着ていた、形状を記憶し維持する魔術陣は硬術陣の亜種ということで“硬術陣・記”とした。
同じ要領で、発熱魔術陣は“熱術陣”として、加熱なら後ろに“加”、冷却なら“減”が付く。
他にも、物体に運動エネルギーを付与する魔術陣は“動術陣”として、その後ろに付与した物体の名称を入れることにした。
動術陣・水とか動術陣・風、ってな感じだ。
今までは“何々する魔術陣”って呼んでたから、これで少しは口にしやすくなったというものだ。
正直、治療期間中ずっとやることもなかったので、こんなことばっかり考えていたのだ。
だが、今はそうでもない。
神父様やメル姉ぇからの話を基に、せっせと治術陣の開発に取り組んでいた。
で、昨日の今日で早速一つ試作品を作ってみた。
とはいっても、どちらかというと実験用の側面が強い仕様になっているので効果のほどはあまり望めないのだが……
治療魔術については、話を聞いただけでは未だ不明な点も多くある。
魔力の拒絶反応なんがいい例だろう。
例えば、自分の魔力で、治術陣を起動させて使う分にはたぶん問題はないのだろうが、自分以外の人間の魔力によって起動された治術陣で治療行為を行った場合はどうなるのだろうか? とかな。
自分の魔力だけではカバーしきれない様な重篤患者が出てしまった場合、外部からの魔力の供給は避けては通れない課題なのだ。
とはいえ、初っ端から人間で治術陣の実験をするなど怖くて出来る訳がない。何が起きるか分からんからな。
まずは人間以外で試して少しずつ人間用に改造していくのが無難だろうな。
で、その日の診察で……
メル姉ぇから、ようやく外出の許可を頂けた。
完治……とは言えないが、体の調子もメル姉ぇのおかげで随分とよくなり、これからはリハビリを兼ねて簡単な運動ならしてもいいとのお達しを頂いたのだ。
ただし、必ず誰かと一緒にいることが条件だったが、それくらいはまぁ、よしとしよう。
ベッドに釘付けにされていた日々からの解放されたことが重要なのである。
と、いう訳で……
俺は早速、診察の終わったメル姉ぇと神父様にお願いしてミーシャの実家へと連れて来てもらっていた。
村の多くの人たちに、かなりの心配を掛けてしまったようなので、一応の快復報告だ。
手始めにご近所ということで、ミーシャの家から行くことにした。
俺が顔を見せると、ガゼインおじさんもノーラおばさんも我が子の様に俺の快復を喜んでくれて、ノーラおばさんに至っては、泣きながら俺の事を抱きしめてくれた。
病み上がりの体には多少痛いものがあったが……それ以上に、たいへんやわらかいものを存分に堪能出来たので、結果的にはプラスだろうか? まぁ、役得ってやつだな。ゲヘヘヘッ。
って、別におっぱいが目的でここに来た訳では断じてない。
勿論、本題は別にあるのだ。
……ホントダヨ?
「えっと……あの子だよ……」
ミーシャの案内のもと、俺たちがやってきたのはミーシャの家が所有している牛舎の中だった。
たいして広い場所ではなかったが、そこには、五、六頭の牛がおり、食事時だったのか飼料用に加工された麦わらをうまそうにもぐもぐしているところだった。
こいつらは食肉用ではなく、貴重な労働力兼、半分は俺たちにおいしい牛乳を提供してくれる生産者たちである。
そもそも、村ではよっぽどのことがない限り、牛を潰したりはしないからな。
で、ミーシャが指をさしたのはその中の一頭だった。
その牛は、エサも食べずに牛舎の隅でひっそりと座っていたのだ。
「あの子ね……少し前から元気がないの……
ゴハンも全然食べてくれないし、ずっとあそこに座ったままだし……病気なのかなぁ……心配だよ」
と、ミーシャは心底心配そうに、その牛の事を見ていた。
実をいうと、俺はこの体調不良と思しき牛のことを少し前から知っていた。
と、いうのも俺が目を覚ました翌日から学校帰りにミーシャたちが毎日俺のお見舞いに来てくれていて、その日学校であったことなどを俺に話して聞かせてくれていたからな。
さっきもメル姉ぇの診察前に、お見舞いに来てくれていたミーシャたちとは顔を合わたばかりだ。
シルヴィなんて、家の位置からしたら遠回りもいいところなのに、毎日来てくれていたのだから、なんとも嬉しい話ではないか。
で、その話の中に、この牛の話が度々上がっていたのだ。
この牛には悪いが、丁度いいのでこの試作型治術陣の実験台・第一号になってもらうことした。
が、その前に……
「どうメル姉ぇ? 何か分かる?」
「ん……ごめん……やっぱりよく分からない……色がはっきり見えないから……
でも、あの子だけ……他の子より魔力の色が薄い……っというか、滲んでる……ような気がするの……」
メル姉ぇ曰く……
メル姉ぇは、他者の魔力を色として認識することが出来るらしい。
そして、その魔力の色・流れ方からその人が持っている魔力の量や質などを知ることが出来るのだとか。
延いては、魔力の流れから体の何処が悪いのか、なんてことも分かるのだそうだ。
それが、治癒術士としての能力なのか、それともメル姉ぇ個人の資質なのかは分からないが、その能力を見込んで、今回の実験に協力してもらうことにした。
しかし、そこは人間と動物。
魔力の質に違いでもあるのか、人間のようにははっきりと魔力を読み取ることが出来ないうえ、人間以外への治療魔術は効果が極めて低い、というのが彼女から事前に聞かされた話だ。
「……ごめんね……役に立てなくて……」
ショボーンと見るからに落ち込むメル姉ぇ。
「そんなことないって!
初めから“見えにくい”ってことは聞いていたんだし、それを承知の上で無理を言って協力をお願いしたのは俺なんだから、メル姉ぇが気に病むことはないよ。
それに少しでも見えるっていうなら、俺にはそれで十分なんだしね」
「……フィー君……やさしい」
そう言って、メル姉ぇが俺の頭をそっと撫でてくれた。
クマのおっさんなんかがやった日には、ソッコで拒否るところだが、メル姉ぇのような若い女の子なら大歓迎である。
今回の治術陣の実験に関しては、家を出る前に神父様とメル姉ぇ両名には事前に実験の趣旨を説明していた。
神父様には、魔術陣を開発する上でいろいろとアドバイスをもらっているので、新しく何かを始める時は必ず声を掛けることにしている。そもそも、そういう約束もしているしな。
あまり魔術陣と関係のないメル姉ぇに声を掛けたのは、外出の付き添いという意味もあるが、その魔力を視覚として捉えることが出来る能力が非常に重宝すると思ったからだ。
メル姉ぇの目に掛かれば、作った治術陣が機能しているのかを、視覚的に確認することが出来る。
なので、是非にとこちらから協力の要請をしたところ、二つ返事で快諾してくれたのだ。
「それで、これからどうするのですか?」
と、メル姉ぇに頭を撫でられていた俺に、神父様が声を掛けて来た。
いつまでも撫でられている訳にもいかないので、一頻り撫でられて満足した俺は、メル姉ぇの手からするりと抜けると、懐にしまっていた一枚の紙を取り出した。
「こいつを貼り付けます」
こいつが今回の本命、試作型治術陣だ。
「それがロディフィスの言っていた治術陣というものですか?」
「……の、試作・第一号ですよ。
とても“治療”だなんて大層なことは何も出来ないんですけどね」
というのも、今回はあくまで試験ということで、傷を治すといったような高性能な機能はまだ何もない。
この試験型治術陣の効果は、ただ体内の魔力の循環をサポートするだけものだ。
メル姉ぇによれば“体の悪い所は、魔力の流れが悪い”らしい。
血行不良の魔力版といった感じだろうか?
血行不良による体調不良の例など、枚挙に暇がないからな……
肩こり・腰痛・冷え性に肌荒れ……etc.
“生命力”とも言い換えることが出来る魔力の循環が滞れば、体に何かしらの悪い影響が出て当然といえなくもない。
ならば、体全体に満遍なく魔力が行き渡るようにすれば体調の改善に役立つのではないか? と考えたのだ。
血行促進で健康生活! ……って、違うか。
と、まぁ、そんな感じだ。
今回の実験の目的は、魔術陣がというよりは魔力そのものが人体……ではないが、生物の肉体にどんな影響を与えるのかを知ることにあるのだ。
効果も抑えめにしているので、もし何か不具合があったとしても今より体調が悪くなったりだとか、死んでしまったりすることはない……と、思う。たぶん……
もし死んじまったらゴメンよ……牛。
俺は、治術陣の裏に予め用意しておいたのりを適量付ける。
これは村では割と普通に使われている補修材の一つだ。
植物の根などを磨り潰して作った天然素材のでんぷんのりで、主に茶碗などの陶器に出来た小さな穴やひび割れを補修するのに使われている。
それを、治術陣の固定用に使うのだ。
治術陣の出力がかなり低い為、密着していないとたぶん効果が表れないので仕方ない。
まさか、治術陣を固定するためだけに、牛を包帯でぐるぐる巻きにする訳にはいかないからな。
天然素材のでんぷんのりなので、お肌にも安心だ。
剥がすときは……まぁ、お湯でもかければ剥がせるるだろう……
「んじゃ、ちょっと失礼しますよっと……」
と、俺は仕切りの策の隙間を潜って中へと入っていく。
で、件の大人しく座っている牛の傍へ近づき、
ペタンッ
と、背中の真ん中辺りに手にしていた治術陣を貼り付けてやった。
「ブモっ?」
貼り付いた治術陣が気になるのか、牛はしきりに背中を気にしていたが、結局届かないとあきらめて、そのまま眠ってしまった。
なんというか……呑気なものだ。
即効性があるものでもないので、今日明日は様子見だろう。
俺は治術陣を貼り終えると、柵の外で待っている神父様たちの所へと戻った。
「はい。今日はこれにて終了です。お疲れさまでした。
また明日、様子を見に来ることにしましょう。解散!」
「特に変わった様子はないのですね……
メルフィナ、貴女の目にはどう見えていますか?」
「……さっきと、一緒……」
「ふむ……そうですか……」
……お願いします。スルーは止めて下さい……寂しくなるから……
「……効力は弱めに設定しているので、そんなにすぐには変化はないと思いますよ?
実際に効果が現れるのは、たぶん明日以降になると思います。
ああ、でも念のために……ミーシャ、お願いがあるんだけどいいか?」
「なに? ロディくん?」
「もし、あの牛の体調が今より悪くなるようだったら、背中に貼ってある紙を剥がしてあげて欲しいんだ。
お湯でも掛けてあげれば剥がれると思うから……
お願いしていいか?」
「うん。分かった」
と、話も落ち着いたところで、この日は解散となった。
その後、俺はメル姉ぇと一緒に、リハビリも兼ねてご近所さんに快復報告へと向かった。
反応は……まぁ、みんな喜んでくれていた。
なんというか、嬉しいやら恥ずかしいやら……
で、翌日……
「食べていますね」
「食べてますねぇ、こう……もりもりと、もりもりと!」
「……何で二回言ったのですか?」
「大事なことだからです!」
という訳で、早速メル姉ぇの診察を受けた後に、例の牛の様子を見に来たら、背中に治術陣・試作一号を貼り付けた牛が麦わらをもりもりと食べていた。
この牛に変化が現れたのは、昨晩のことからであるらしい。
「いや~、こいつは結構な高齢でしてね、最近じゃエサもあんまり食べなくて、乳の出も悪くなっていたんですよ。
それで家内とも“そろそろ寿命なのかねぇ”って話をしてたばっかりなんですが、それが昨日の夜、こいつらにエサを持って来た時にですね、急にエサの食いつきがよくなったんですよ!
そりゃもう、他の牛たちを押しのけてまでエサに食いつてたんで、びっくりしましたよ!」
というのが、この牛舎の主であるガゼインおじさんの言葉だった。
更に……
「しかも、今朝の搾乳の時なんですがね? もう、出るわ出るわ!
んでもって、味も今までより格段にいいと来た!
ありゃ、ウチで一番若い牛より、量も質も上いってますわ!」
と、えらくご機嫌だった。
「で、ロデ坊、お前一体こいつに何したんだよ?
昨日は“治療がどうの……”“実験がどうたら……”って言ってたけどよ?」
いくら気心の知れた相手とはいえ、勝手に人様の牛を実験台にする訳には行かなかったので、昨日の段階で一応は何をするのか簡単な説明はしていたのだが……
このおっさん、話を理解してなかったのに“おう! 好きにしろや!”とか言ったのか?
まぁ、いいけどさ……
「あ~、元気になるおまじない? みたいな?」
「なんだそりゃ?
……まぁ、詳しく話されたって俺じゃ分っかんねぇだろうから、どうでもいいっちゃいいんだが……」
なら聞くなよ、と思ってしまう。
「ただ、あの“紙っ切れ”が何かしたってのだけは分かる。
……で、相談なんだが……
あの“紙っ切れ”を、もう数枚もらえないか?
他の牛にも貼ってやって、乳の出をよくしたいんだよ。
なぁ? いいだろ? なぁ~なぁ~」
急にネコ撫で声で、カゼインおじさんが俺にベタベタとして来た。
「えーいっ! 鬱陶しいわっ!
別に欲しいって言うなら、あげるけどさぁ……ただ……」
「ただ……なんだよ?
まっ、まさか金を取るとか言うんじゃないだろうなっ!
おっ、俺とお前の仲じゃないかっ!
将来、お前の“お義父さん”になるかもしれない人から、金なんて取らないよなぁ!」
可能性はゼロではないが……気が早すぎるわっ!
で、当の本人のミーシャはと言えば、ただキョトンとこちらを見ているだけだった。
よかったなっ! ミーシャが言葉の意味がよく分かってなくてっ!
もし、理解してたら照れてどっかに走っていっちまってたぞ!
この子は、これで結構な恥ずかしがり屋だからな。
「ちがうわっ!
ただ、エサは大丈夫なのかって話。
他の牛にまで治術陣貼り付けたら、たぶん、みんなこいつくらいエサ食うぞ?」
と、俺は未だにもりもり麦わらを食べている牛を指さした。
こいつはかなり高齢とのことなので、こいつより若い牛に治術陣を貼り付けたら、こいつ以上にエサを食うのではないかと思うのだが……
「……あっ」
どうやら、ガゼインおじさんも理解したらしい。
一人、ガックリと項垂れる。
「メルフィナ、この牛ですが、昨日となにか変わっているところはありますか?」
俺とガゼインおじさんとのやり取りの傍ら、神父様がメル姉ぇにそう聞いていた。
メル姉ぇの目を通して、この牛を見た時、果たして何が変わって見えるのだろうか……
その答えには、俺も強く興味を惹かれた。
「……魔力が、はっきりと見える……昨日より、ずっと……
全身、真っ赤……とっても力強い色……」
ほぅ……この牛の魔力は“赤”なのか……
それにしても、メル姉ぇが“見えにくい”と言っていた、人間以外の魔力がそうもはっきりと見えるというのは驚きだ。
一体どれだけ元気になったんだよ、この牛……
体内を巡る魔力の量は、毎日一定という訳ではないのだと、メル姉ぇは言う。
体調の良い日は、多くの魔力が体を巡り、不調の時は少ないのだとか……
エーベルハルト氏の理論からすれば、魔力とは即ち生命力であるという。
その魔力を、体の隅々まで循環させることで、肉体が良好な状態を保ち、体調が良くなったことで、より体内に巡る魔力の量が増え、それを更に循環させることで肉体は更に活性化して……
というような、好循環が生まれている、というのが俺の立てた予想だ。
たぶんだが、メル姉ぇがしていることも、これと大体同じようなことなのではないかと思う。
ふむふむ、実験の一段階目としては、順調な滑り出しと言っていいのではないだろうか?
さて、では次の段階にステップアップしようではないか!
ちなみに、爆発魔術陣を“破術陣”、硬化魔術陣を“硬術陣”と名付けてみた。
俺が着ていた、形状を記憶し維持する魔術陣は硬術陣の亜種ということで“硬術陣・記”とした。
同じ要領で、発熱魔術陣は“熱術陣”として、加熱なら後ろに“加”、冷却なら“減”が付く。
他にも、物体に運動エネルギーを付与する魔術陣は“動術陣”として、その後ろに付与した物体の名称を入れることにした。
動術陣・水とか動術陣・風、ってな感じだ。
今までは“何々する魔術陣”って呼んでたから、これで少しは口にしやすくなったというものだ。
正直、治療期間中ずっとやることもなかったので、こんなことばっかり考えていたのだ。
だが、今はそうでもない。
神父様やメル姉ぇからの話を基に、せっせと治術陣の開発に取り組んでいた。
で、昨日の今日で早速一つ試作品を作ってみた。
とはいっても、どちらかというと実験用の側面が強い仕様になっているので効果のほどはあまり望めないのだが……
治療魔術については、話を聞いただけでは未だ不明な点も多くある。
魔力の拒絶反応なんがいい例だろう。
例えば、自分の魔力で、治術陣を起動させて使う分にはたぶん問題はないのだろうが、自分以外の人間の魔力によって起動された治術陣で治療行為を行った場合はどうなるのだろうか? とかな。
自分の魔力だけではカバーしきれない様な重篤患者が出てしまった場合、外部からの魔力の供給は避けては通れない課題なのだ。
とはいえ、初っ端から人間で治術陣の実験をするなど怖くて出来る訳がない。何が起きるか分からんからな。
まずは人間以外で試して少しずつ人間用に改造していくのが無難だろうな。
で、その日の診察で……
メル姉ぇから、ようやく外出の許可を頂けた。
完治……とは言えないが、体の調子もメル姉ぇのおかげで随分とよくなり、これからはリハビリを兼ねて簡単な運動ならしてもいいとのお達しを頂いたのだ。
ただし、必ず誰かと一緒にいることが条件だったが、それくらいはまぁ、よしとしよう。
ベッドに釘付けにされていた日々からの解放されたことが重要なのである。
と、いう訳で……
俺は早速、診察の終わったメル姉ぇと神父様にお願いしてミーシャの実家へと連れて来てもらっていた。
村の多くの人たちに、かなりの心配を掛けてしまったようなので、一応の快復報告だ。
手始めにご近所ということで、ミーシャの家から行くことにした。
俺が顔を見せると、ガゼインおじさんもノーラおばさんも我が子の様に俺の快復を喜んでくれて、ノーラおばさんに至っては、泣きながら俺の事を抱きしめてくれた。
病み上がりの体には多少痛いものがあったが……それ以上に、たいへんやわらかいものを存分に堪能出来たので、結果的にはプラスだろうか? まぁ、役得ってやつだな。ゲヘヘヘッ。
って、別におっぱいが目的でここに来た訳では断じてない。
勿論、本題は別にあるのだ。
……ホントダヨ?
「えっと……あの子だよ……」
ミーシャの案内のもと、俺たちがやってきたのはミーシャの家が所有している牛舎の中だった。
たいして広い場所ではなかったが、そこには、五、六頭の牛がおり、食事時だったのか飼料用に加工された麦わらをうまそうにもぐもぐしているところだった。
こいつらは食肉用ではなく、貴重な労働力兼、半分は俺たちにおいしい牛乳を提供してくれる生産者たちである。
そもそも、村ではよっぽどのことがない限り、牛を潰したりはしないからな。
で、ミーシャが指をさしたのはその中の一頭だった。
その牛は、エサも食べずに牛舎の隅でひっそりと座っていたのだ。
「あの子ね……少し前から元気がないの……
ゴハンも全然食べてくれないし、ずっとあそこに座ったままだし……病気なのかなぁ……心配だよ」
と、ミーシャは心底心配そうに、その牛の事を見ていた。
実をいうと、俺はこの体調不良と思しき牛のことを少し前から知っていた。
と、いうのも俺が目を覚ました翌日から学校帰りにミーシャたちが毎日俺のお見舞いに来てくれていて、その日学校であったことなどを俺に話して聞かせてくれていたからな。
さっきもメル姉ぇの診察前に、お見舞いに来てくれていたミーシャたちとは顔を合わたばかりだ。
シルヴィなんて、家の位置からしたら遠回りもいいところなのに、毎日来てくれていたのだから、なんとも嬉しい話ではないか。
で、その話の中に、この牛の話が度々上がっていたのだ。
この牛には悪いが、丁度いいのでこの試作型治術陣の実験台・第一号になってもらうことした。
が、その前に……
「どうメル姉ぇ? 何か分かる?」
「ん……ごめん……やっぱりよく分からない……色がはっきり見えないから……
でも、あの子だけ……他の子より魔力の色が薄い……っというか、滲んでる……ような気がするの……」
メル姉ぇ曰く……
メル姉ぇは、他者の魔力を色として認識することが出来るらしい。
そして、その魔力の色・流れ方からその人が持っている魔力の量や質などを知ることが出来るのだとか。
延いては、魔力の流れから体の何処が悪いのか、なんてことも分かるのだそうだ。
それが、治癒術士としての能力なのか、それともメル姉ぇ個人の資質なのかは分からないが、その能力を見込んで、今回の実験に協力してもらうことにした。
しかし、そこは人間と動物。
魔力の質に違いでもあるのか、人間のようにははっきりと魔力を読み取ることが出来ないうえ、人間以外への治療魔術は効果が極めて低い、というのが彼女から事前に聞かされた話だ。
「……ごめんね……役に立てなくて……」
ショボーンと見るからに落ち込むメル姉ぇ。
「そんなことないって!
初めから“見えにくい”ってことは聞いていたんだし、それを承知の上で無理を言って協力をお願いしたのは俺なんだから、メル姉ぇが気に病むことはないよ。
それに少しでも見えるっていうなら、俺にはそれで十分なんだしね」
「……フィー君……やさしい」
そう言って、メル姉ぇが俺の頭をそっと撫でてくれた。
クマのおっさんなんかがやった日には、ソッコで拒否るところだが、メル姉ぇのような若い女の子なら大歓迎である。
今回の治術陣の実験に関しては、家を出る前に神父様とメル姉ぇ両名には事前に実験の趣旨を説明していた。
神父様には、魔術陣を開発する上でいろいろとアドバイスをもらっているので、新しく何かを始める時は必ず声を掛けることにしている。そもそも、そういう約束もしているしな。
あまり魔術陣と関係のないメル姉ぇに声を掛けたのは、外出の付き添いという意味もあるが、その魔力を視覚として捉えることが出来る能力が非常に重宝すると思ったからだ。
メル姉ぇの目に掛かれば、作った治術陣が機能しているのかを、視覚的に確認することが出来る。
なので、是非にとこちらから協力の要請をしたところ、二つ返事で快諾してくれたのだ。
「それで、これからどうするのですか?」
と、メル姉ぇに頭を撫でられていた俺に、神父様が声を掛けて来た。
いつまでも撫でられている訳にもいかないので、一頻り撫でられて満足した俺は、メル姉ぇの手からするりと抜けると、懐にしまっていた一枚の紙を取り出した。
「こいつを貼り付けます」
こいつが今回の本命、試作型治術陣だ。
「それがロディフィスの言っていた治術陣というものですか?」
「……の、試作・第一号ですよ。
とても“治療”だなんて大層なことは何も出来ないんですけどね」
というのも、今回はあくまで試験ということで、傷を治すといったような高性能な機能はまだ何もない。
この試験型治術陣の効果は、ただ体内の魔力の循環をサポートするだけものだ。
メル姉ぇによれば“体の悪い所は、魔力の流れが悪い”らしい。
血行不良の魔力版といった感じだろうか?
血行不良による体調不良の例など、枚挙に暇がないからな……
肩こり・腰痛・冷え性に肌荒れ……etc.
“生命力”とも言い換えることが出来る魔力の循環が滞れば、体に何かしらの悪い影響が出て当然といえなくもない。
ならば、体全体に満遍なく魔力が行き渡るようにすれば体調の改善に役立つのではないか? と考えたのだ。
血行促進で健康生活! ……って、違うか。
と、まぁ、そんな感じだ。
今回の実験の目的は、魔術陣がというよりは魔力そのものが人体……ではないが、生物の肉体にどんな影響を与えるのかを知ることにあるのだ。
効果も抑えめにしているので、もし何か不具合があったとしても今より体調が悪くなったりだとか、死んでしまったりすることはない……と、思う。たぶん……
もし死んじまったらゴメンよ……牛。
俺は、治術陣の裏に予め用意しておいたのりを適量付ける。
これは村では割と普通に使われている補修材の一つだ。
植物の根などを磨り潰して作った天然素材のでんぷんのりで、主に茶碗などの陶器に出来た小さな穴やひび割れを補修するのに使われている。
それを、治術陣の固定用に使うのだ。
治術陣の出力がかなり低い為、密着していないとたぶん効果が表れないので仕方ない。
まさか、治術陣を固定するためだけに、牛を包帯でぐるぐる巻きにする訳にはいかないからな。
天然素材のでんぷんのりなので、お肌にも安心だ。
剥がすときは……まぁ、お湯でもかければ剥がせるるだろう……
「んじゃ、ちょっと失礼しますよっと……」
と、俺は仕切りの策の隙間を潜って中へと入っていく。
で、件の大人しく座っている牛の傍へ近づき、
ペタンッ
と、背中の真ん中辺りに手にしていた治術陣を貼り付けてやった。
「ブモっ?」
貼り付いた治術陣が気になるのか、牛はしきりに背中を気にしていたが、結局届かないとあきらめて、そのまま眠ってしまった。
なんというか……呑気なものだ。
即効性があるものでもないので、今日明日は様子見だろう。
俺は治術陣を貼り終えると、柵の外で待っている神父様たちの所へと戻った。
「はい。今日はこれにて終了です。お疲れさまでした。
また明日、様子を見に来ることにしましょう。解散!」
「特に変わった様子はないのですね……
メルフィナ、貴女の目にはどう見えていますか?」
「……さっきと、一緒……」
「ふむ……そうですか……」
……お願いします。スルーは止めて下さい……寂しくなるから……
「……効力は弱めに設定しているので、そんなにすぐには変化はないと思いますよ?
実際に効果が現れるのは、たぶん明日以降になると思います。
ああ、でも念のために……ミーシャ、お願いがあるんだけどいいか?」
「なに? ロディくん?」
「もし、あの牛の体調が今より悪くなるようだったら、背中に貼ってある紙を剥がしてあげて欲しいんだ。
お湯でも掛けてあげれば剥がれると思うから……
お願いしていいか?」
「うん。分かった」
と、話も落ち着いたところで、この日は解散となった。
その後、俺はメル姉ぇと一緒に、リハビリも兼ねてご近所さんに快復報告へと向かった。
反応は……まぁ、みんな喜んでくれていた。
なんというか、嬉しいやら恥ずかしいやら……
で、翌日……
「食べていますね」
「食べてますねぇ、こう……もりもりと、もりもりと!」
「……何で二回言ったのですか?」
「大事なことだからです!」
という訳で、早速メル姉ぇの診察を受けた後に、例の牛の様子を見に来たら、背中に治術陣・試作一号を貼り付けた牛が麦わらをもりもりと食べていた。
この牛に変化が現れたのは、昨晩のことからであるらしい。
「いや~、こいつは結構な高齢でしてね、最近じゃエサもあんまり食べなくて、乳の出も悪くなっていたんですよ。
それで家内とも“そろそろ寿命なのかねぇ”って話をしてたばっかりなんですが、それが昨日の夜、こいつらにエサを持って来た時にですね、急にエサの食いつきがよくなったんですよ!
そりゃもう、他の牛たちを押しのけてまでエサに食いつてたんで、びっくりしましたよ!」
というのが、この牛舎の主であるガゼインおじさんの言葉だった。
更に……
「しかも、今朝の搾乳の時なんですがね? もう、出るわ出るわ!
んでもって、味も今までより格段にいいと来た!
ありゃ、ウチで一番若い牛より、量も質も上いってますわ!」
と、えらくご機嫌だった。
「で、ロデ坊、お前一体こいつに何したんだよ?
昨日は“治療がどうの……”“実験がどうたら……”って言ってたけどよ?」
いくら気心の知れた相手とはいえ、勝手に人様の牛を実験台にする訳には行かなかったので、昨日の段階で一応は何をするのか簡単な説明はしていたのだが……
このおっさん、話を理解してなかったのに“おう! 好きにしろや!”とか言ったのか?
まぁ、いいけどさ……
「あ~、元気になるおまじない? みたいな?」
「なんだそりゃ?
……まぁ、詳しく話されたって俺じゃ分っかんねぇだろうから、どうでもいいっちゃいいんだが……」
なら聞くなよ、と思ってしまう。
「ただ、あの“紙っ切れ”が何かしたってのだけは分かる。
……で、相談なんだが……
あの“紙っ切れ”を、もう数枚もらえないか?
他の牛にも貼ってやって、乳の出をよくしたいんだよ。
なぁ? いいだろ? なぁ~なぁ~」
急にネコ撫で声で、カゼインおじさんが俺にベタベタとして来た。
「えーいっ! 鬱陶しいわっ!
別に欲しいって言うなら、あげるけどさぁ……ただ……」
「ただ……なんだよ?
まっ、まさか金を取るとか言うんじゃないだろうなっ!
おっ、俺とお前の仲じゃないかっ!
将来、お前の“お義父さん”になるかもしれない人から、金なんて取らないよなぁ!」
可能性はゼロではないが……気が早すぎるわっ!
で、当の本人のミーシャはと言えば、ただキョトンとこちらを見ているだけだった。
よかったなっ! ミーシャが言葉の意味がよく分かってなくてっ!
もし、理解してたら照れてどっかに走っていっちまってたぞ!
この子は、これで結構な恥ずかしがり屋だからな。
「ちがうわっ!
ただ、エサは大丈夫なのかって話。
他の牛にまで治術陣貼り付けたら、たぶん、みんなこいつくらいエサ食うぞ?」
と、俺は未だにもりもり麦わらを食べている牛を指さした。
こいつはかなり高齢とのことなので、こいつより若い牛に治術陣を貼り付けたら、こいつ以上にエサを食うのではないかと思うのだが……
「……あっ」
どうやら、ガゼインおじさんも理解したらしい。
一人、ガックリと項垂れる。
「メルフィナ、この牛ですが、昨日となにか変わっているところはありますか?」
俺とガゼインおじさんとのやり取りの傍ら、神父様がメル姉ぇにそう聞いていた。
メル姉ぇの目を通して、この牛を見た時、果たして何が変わって見えるのだろうか……
その答えには、俺も強く興味を惹かれた。
「……魔力が、はっきりと見える……昨日より、ずっと……
全身、真っ赤……とっても力強い色……」
ほぅ……この牛の魔力は“赤”なのか……
それにしても、メル姉ぇが“見えにくい”と言っていた、人間以外の魔力がそうもはっきりと見えるというのは驚きだ。
一体どれだけ元気になったんだよ、この牛……
体内を巡る魔力の量は、毎日一定という訳ではないのだと、メル姉ぇは言う。
体調の良い日は、多くの魔力が体を巡り、不調の時は少ないのだとか……
エーベルハルト氏の理論からすれば、魔力とは即ち生命力であるという。
その魔力を、体の隅々まで循環させることで、肉体が良好な状態を保ち、体調が良くなったことで、より体内に巡る魔力の量が増え、それを更に循環させることで肉体は更に活性化して……
というような、好循環が生まれている、というのが俺の立てた予想だ。
たぶんだが、メル姉ぇがしていることも、これと大体同じようなことなのではないかと思う。
ふむふむ、実験の一段階目としては、順調な滑り出しと言っていいのではないだろうか?
さて、では次の段階にステップアップしようではないか!
2
あなたにおすすめの小説
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる