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86話 外見と本質と
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“どうする?”と聞かれても、そもそも村長はこの状況下で、俺にどうせいというのだろうか?
ってか、なんでそんな大事なことをただのガキの俺に聞く?
……まぁ、子どもらしい言動をした覚えは何もないけどさぁ。
俺は、周囲を欺くためとはいえ、某“体は子ども頭脳は大人な名探偵”のように“あれれー? おかしいぞぉー?”なんてネコは被れそうもない。
一瞬、周囲の大人に子どもっぽく接している自分の姿を想像して……吐き気がした。おっぷっ。
無理っすわ、やっぱ……
ん? 若いねぇちゃんに抱きつきたいがために、散々子どもっぽく媚びを振りまいているじゃないかって?
それはそれ! これはこれ!
俺ルールでは、まったくの別ものだから、それでいいのだっ!
……でも、あれやると周囲の目がものっそいイタイんだよなぁ、特に最近はシルヴィがまるで汚物を見るような目で俺の事を見て来るのだ。
それはそれで、背筋がゾクゾクする感じがして……って、そんな話はどうでもいいか。
「どうするって言われてもな……俺は正直もっと単純な話だと思ってたよ。
ヴァルターが野盗かなんかの下っ端でさ、アジト吐かせて先生やクマのおっさん辺りを嗾けて強襲。んで、一網打尽。
ついでに、ため込んでた金銀財宝かっばっらって、賊は冒険者組合に突き出せばそれで万事解決ってな。
それに確か、賊を捕まえると冒険者組合から賞金が出るんだよな?
あれっ? もしかして野盗狩りって一粒で二度おいし、い……?」
「また、悪い顔してるよロディ……
っていうか、ボクやクマーソンさんを犬みたいに言わないでよ……もう。
一体ボクたちのことなんだと思ってるんだい?」
そりゃ勿論、村の最大戦力トップ3の内のナンバー2とナンバー3だと思っています。
当然ナンバー1は、バルディオ副団長だがな。
クマのおっさんと先生はどちらが強いのか分からないので、一応年功序列ってことでクマのおっさんがナンバー2で先生がナンバー3と、俺の脳内設定ではそうなっている。
もしこれがタクティカル・シミュレーション・ゲームだったなら、三人ともエース級ユニットだろうな。
しかも、重量級タンク二枚に軽量級高機動アタッカーが一枚と、実に使い勝手もいいしな。
まぁ、いったところで伝わらないだろうから、いわないけどね。
STR・DEFカンストの脳筋ゴリラと、AGI・DEX極振りの高回避・高命中剣士。
ってか、このステだと先生二刀流にしてシーフとかアサシンに転職した方がいいんじゃなかろうか?
手数とクリティカルでゴリ押し……みたいな。
遠距離担当ってことで、魔法使い枠で神父様を入れたいが……あの人の実力って俺知らないんだよなぁ。
“昔はすごかった”なんて話は聞くけど、実際どれほどのものなのか。
以前、鎧熊と戦った時も神父様は一緒になって戦っていたが、俺は俺で人の事を気にしている場合ではなかったので、しっかりとは見ていないのだ。
って、そんな話をしているんじゃなかったな……
「ってか、ロディフィス。
勘違いしてるようだから教えといてやるが、賊は金銀財宝なんて持ってねぇぞ?
あいつらは、金がないから賊をしてんだよ。そんな奴らが、お宝なんて持ってる訳ねぇーだろ?
大体、賞金だって、正式な依頼として引き受けるか、懸賞金の掛かってる様なビッグネーム以外、突き出したところで一リルダにもなりゃしねぇーぞ?
まぁ、治安は良くなるだろうけどな」
俺の話を聞いたイスュが、“んなこと当然だろ?”と言いたげな顔で言って来た。
「えっ!? マジかっ!?」
こう、よくあるファンタジーなお話では、山賊とか野盗って洞窟かなんかに住み着いていて、近隣の村だの町だの行商だのを襲っては金品を巻き上げて、住んでる洞窟にため込んでいる……なんてイメージがあるが……
何? 所詮ファンタジーはファンタジーでしかないってことか? ショックだ……
まぁ、確かに考えてもみれば、襲ってる場所が貧しい村とか個人商人とかじゃ、実入りが小さすぎるから、どんなに回数襲ったとしても金銀財宝……ってのにはならないか。
にしても、賊を捕まえて突き出しても、賞金が出ないとか……治安維持に貢献したから金一封、みたんなのはないらしい。
ファンタジーも、意外と世知辛いもんだね……
って、だから、そういう話をしてんじゃないって!
「いやいや! そんな話がしたい訳じゃないんだよ俺はっ!」
「自分から言い出したくせに……」
先生、五月蠅いっ!
「ごほんっ……俺が言いたいのは、“話の規模が大きすぎる”ってことが言いたいのっ!
こんな村の存亡に関わる重要な事、本来なら村長が中心になって村人全員で考えることだろ?
それをなんで俺みたいなガキに、いの一番で聞くんだよ? 普通に考えたらおかしいだろ?」
「勿論、お前の言う通り、皆にも話すし意見も聞くさ……
だがな、今はまだその時じゃねぇ。
余計な事を話して、不安を煽っても仕方ないだろ?
それは、お前からの話を聞いた後で十分だ」
「だからなんで……」
「何今更、“普通の子ども”ぶってやがるんだロディフィス。
大体な、ガキは自分の事を“ガキ”だなんて言わねぇんだよ。
……ロディフィス。お前は、自分が子どもである事、そして周囲の事をよく理解してやがる。
こっちが寒気を感じる程に……な。
共同の洗濯場を造る、なんて言い出した時からそうだ。
作業に必要な人数はどれくらいか? その人員はどこから集めるか?
必要になる資材は何か? それを用意するにはどうすればいいのか?
それらの事をお前は一人で考えた。誰に相談する訳でもなくな。
他の事にしたってそうだ。
石のランプに、白黒石、浴場造ったり、教会での食事の提供、水路、それに鎧熊の一件……
どれ一つとっても、“ただのガキ”に出来る事じゃねぇ」
村長はそこで一度言葉を区切ると、睨む、という程キツくはないが、真っすぐな視線を俺へと向けた。
まぁ、村長が言わんとしていることは、分からなくもない。
教会で椅子と机を作ったことや、銭湯にバーや食堂を入れたこなんかも含めれば、実際はもっと増えるからな。
こうして今までの事を並べられると、本当に俺もいろいろとして来たものだと思う。
これでは普通……なんてとても言えんわな。
とはいえ、実際に手を動かして来たのは俺じゃなくて村の人たちな訳だけどな。
俺がしている事といえば、提案をして、方法を示しただけだ。あと“魔術陣”というちょっとしたズルを使っているくらいなものだ。
「特に異常なのが、お前のそのカネの使い方だ。
鎧熊の件を除けば、“知識”の一言で片づけられることかもしれねぇが、その金銭感覚だけは知識でどうこう出来るもんじゃねぇだろ。
今まで、この村にゃカネなんて碌すっぽありゃしなかった。使う機会だってほとんどなかった。
なのにお前は、まるで“使い慣れたものを扱うように”カネを使う。
それがどんな高額でも“必要”だと判断すれば躊躇がない。
普通なら、んなこと怖くてよう出来ん……少なくとも俺には無理だ。
出すべきところには出して、蓄える分はしっかりと蓄える。
いざって時に、村の助けになるようにってな……」
村長が言っているのは、日頃からのイスュからの買い物とか、銭湯を作る時のこと、それに今さっきのヴァルターを買収した時のことを言ってるのだと思う。
特にストップも入らなかったから、かなり好き勝手にやってたからな。
取り分け、銭湯を立てる時はかなり散財したからなぁ。
銭湯の建設費用で、村をどれくらいの期間養えたかを考えると……ちょっと無理したかなぁ、と思わなくもない。
だが、村の人たちだって喜んでいるようだし、何より村に活気が出て来たのでよしとしようではないか。
ってか、言うにことかいて“異常”って……ひどくね?
「これだけの事をしておいて、今更“ただのガキ”として扱えってのは無理な話だ。
たとえ、外見が子どもだとしても、俺はお前を子ども扱いしたりなんてしねぇ。
中身はまるで別もんが詰まってやがるからな。
村の連中だってそうだ。あまり口にはしないが、皆内心こう思ってんじゃないのか“ロディフィスはバケモノだ”ってな……」
「っ!! バルっ! いくら貴方でもそんな言い方は……っ!」
「黙ってろよヨシュア……俺ぁ今、こいつと話してんだ。
大体テメェだって、似たようなことは考えたんじゃないのか?」
「っ……」
その一言に、あの物静かな神父様が声を荒げて怒ってくれていたが、村長の一瞥に押し黙ってしまった。
俺の事を気にかけてくれているのは大変ありがたいことだが、村長の言ってることも強ち的外れでもないので、なんと言ったらいいものか……
にしても……“異常”をあっという間に通り越して、遂に“バケモノ”にまでクラスチェンジしてしまった。
スピード出世だな、おい。
「で、当の本人はまるで気にしちゃいねぇ……てな。
いつもみたいにボケっとした面してやがる。
こいつ自身、よく分かってんだよ、自分が“普通じゃない”ってことにな……だろ?
ロディフィス」
「そりゃ、まぁ……ねぇ」
村長の言葉に、俺は曖昧気味に頷いた。
そりゃ“普通”じゃないだろ。なにせ前世の知識を引き継いで異世界に転生してる訳だからね。普通な訳がない。
バケモノと言われれば、確かにバケモノなのだ。
仮に前世で“私は転生者です。前世の記憶があります”なんて言うやつが目の前に現れたら、間違いなく不思議ちゃんか、中二病を疑っただろう。
自分がこんな体験をしている今となっては、割と信じてしまいそうだけど……
とはいっても、自分から“転生者”だと名乗り出るつもりは毛頭ないがな。
“転生者”だとバレるくらいなら、頭イッてるヤバい奴、だと思われる方がずっとましだ。
もし俺が“転生者”だと知られれば、それこそ本当にバケモノ扱いされかねん。
それに、きっと両親が悲しむ。俺はあの二人が辛そうにしている姿など見たくないのだ……
ただ、それを理解していても面と向かって、はいそうです私は普通ではありません、と答えるのもなんだか抵抗感があった。
なんだか、性癖を暴露するみたいで嫌というか、恥ずかしいというか……
だからこその、曖昧な返事だ。
曖昧な対応は日本人の専売特許だからなっ!
「ってか、こんな美少年捕まえてボケ面ってひどくね? 村長」
「はっ! “バケモノ”呼ばわりされて、萎縮するどころかこれだぞ、ヨシュア?
大物なのか、ただのバカなのか……いや、だからこそか。
だからこそ、初めに聞きてぇんだよ。
“普通じゃない”お前の考えってやつを、な」
あれま……俺ってばなんだか村長から、随分と買いかぶられているようで……
そこまで聞きたいってんなら、てことで俺は取り敢えず思いつくままに案を口に上げることにした。
実用性のあるなしなど二の次だな。
会議の質など、いくつ原案が出せるかで決まるものなのだ。
初めから完璧な案など存在しない。
いくつもの案の中から、何が良くて、何がダメなのかを検討し、使えそうなそうなパーツを見つけて、それを寄せ集めて一つにするのが会議の本質だ。
中には、不要な要素を明確化するために、ボツ案こそ重要、という人だっているからな。
大体、初めから完成形を提示できるなら、そいつ一人いれば事足りる訳だ、そもそも頭数を揃えて話し合う必要などないのだから……
ってか、なんでそんな大事なことをただのガキの俺に聞く?
……まぁ、子どもらしい言動をした覚えは何もないけどさぁ。
俺は、周囲を欺くためとはいえ、某“体は子ども頭脳は大人な名探偵”のように“あれれー? おかしいぞぉー?”なんてネコは被れそうもない。
一瞬、周囲の大人に子どもっぽく接している自分の姿を想像して……吐き気がした。おっぷっ。
無理っすわ、やっぱ……
ん? 若いねぇちゃんに抱きつきたいがために、散々子どもっぽく媚びを振りまいているじゃないかって?
それはそれ! これはこれ!
俺ルールでは、まったくの別ものだから、それでいいのだっ!
……でも、あれやると周囲の目がものっそいイタイんだよなぁ、特に最近はシルヴィがまるで汚物を見るような目で俺の事を見て来るのだ。
それはそれで、背筋がゾクゾクする感じがして……って、そんな話はどうでもいいか。
「どうするって言われてもな……俺は正直もっと単純な話だと思ってたよ。
ヴァルターが野盗かなんかの下っ端でさ、アジト吐かせて先生やクマのおっさん辺りを嗾けて強襲。んで、一網打尽。
ついでに、ため込んでた金銀財宝かっばっらって、賊は冒険者組合に突き出せばそれで万事解決ってな。
それに確か、賊を捕まえると冒険者組合から賞金が出るんだよな?
あれっ? もしかして野盗狩りって一粒で二度おいし、い……?」
「また、悪い顔してるよロディ……
っていうか、ボクやクマーソンさんを犬みたいに言わないでよ……もう。
一体ボクたちのことなんだと思ってるんだい?」
そりゃ勿論、村の最大戦力トップ3の内のナンバー2とナンバー3だと思っています。
当然ナンバー1は、バルディオ副団長だがな。
クマのおっさんと先生はどちらが強いのか分からないので、一応年功序列ってことでクマのおっさんがナンバー2で先生がナンバー3と、俺の脳内設定ではそうなっている。
もしこれがタクティカル・シミュレーション・ゲームだったなら、三人ともエース級ユニットだろうな。
しかも、重量級タンク二枚に軽量級高機動アタッカーが一枚と、実に使い勝手もいいしな。
まぁ、いったところで伝わらないだろうから、いわないけどね。
STR・DEFカンストの脳筋ゴリラと、AGI・DEX極振りの高回避・高命中剣士。
ってか、このステだと先生二刀流にしてシーフとかアサシンに転職した方がいいんじゃなかろうか?
手数とクリティカルでゴリ押し……みたいな。
遠距離担当ってことで、魔法使い枠で神父様を入れたいが……あの人の実力って俺知らないんだよなぁ。
“昔はすごかった”なんて話は聞くけど、実際どれほどのものなのか。
以前、鎧熊と戦った時も神父様は一緒になって戦っていたが、俺は俺で人の事を気にしている場合ではなかったので、しっかりとは見ていないのだ。
って、そんな話をしているんじゃなかったな……
「ってか、ロディフィス。
勘違いしてるようだから教えといてやるが、賊は金銀財宝なんて持ってねぇぞ?
あいつらは、金がないから賊をしてんだよ。そんな奴らが、お宝なんて持ってる訳ねぇーだろ?
大体、賞金だって、正式な依頼として引き受けるか、懸賞金の掛かってる様なビッグネーム以外、突き出したところで一リルダにもなりゃしねぇーぞ?
まぁ、治安は良くなるだろうけどな」
俺の話を聞いたイスュが、“んなこと当然だろ?”と言いたげな顔で言って来た。
「えっ!? マジかっ!?」
こう、よくあるファンタジーなお話では、山賊とか野盗って洞窟かなんかに住み着いていて、近隣の村だの町だの行商だのを襲っては金品を巻き上げて、住んでる洞窟にため込んでいる……なんてイメージがあるが……
何? 所詮ファンタジーはファンタジーでしかないってことか? ショックだ……
まぁ、確かに考えてもみれば、襲ってる場所が貧しい村とか個人商人とかじゃ、実入りが小さすぎるから、どんなに回数襲ったとしても金銀財宝……ってのにはならないか。
にしても、賊を捕まえて突き出しても、賞金が出ないとか……治安維持に貢献したから金一封、みたんなのはないらしい。
ファンタジーも、意外と世知辛いもんだね……
って、だから、そういう話をしてんじゃないって!
「いやいや! そんな話がしたい訳じゃないんだよ俺はっ!」
「自分から言い出したくせに……」
先生、五月蠅いっ!
「ごほんっ……俺が言いたいのは、“話の規模が大きすぎる”ってことが言いたいのっ!
こんな村の存亡に関わる重要な事、本来なら村長が中心になって村人全員で考えることだろ?
それをなんで俺みたいなガキに、いの一番で聞くんだよ? 普通に考えたらおかしいだろ?」
「勿論、お前の言う通り、皆にも話すし意見も聞くさ……
だがな、今はまだその時じゃねぇ。
余計な事を話して、不安を煽っても仕方ないだろ?
それは、お前からの話を聞いた後で十分だ」
「だからなんで……」
「何今更、“普通の子ども”ぶってやがるんだロディフィス。
大体な、ガキは自分の事を“ガキ”だなんて言わねぇんだよ。
……ロディフィス。お前は、自分が子どもである事、そして周囲の事をよく理解してやがる。
こっちが寒気を感じる程に……な。
共同の洗濯場を造る、なんて言い出した時からそうだ。
作業に必要な人数はどれくらいか? その人員はどこから集めるか?
必要になる資材は何か? それを用意するにはどうすればいいのか?
それらの事をお前は一人で考えた。誰に相談する訳でもなくな。
他の事にしたってそうだ。
石のランプに、白黒石、浴場造ったり、教会での食事の提供、水路、それに鎧熊の一件……
どれ一つとっても、“ただのガキ”に出来る事じゃねぇ」
村長はそこで一度言葉を区切ると、睨む、という程キツくはないが、真っすぐな視線を俺へと向けた。
まぁ、村長が言わんとしていることは、分からなくもない。
教会で椅子と机を作ったことや、銭湯にバーや食堂を入れたこなんかも含めれば、実際はもっと増えるからな。
こうして今までの事を並べられると、本当に俺もいろいろとして来たものだと思う。
これでは普通……なんてとても言えんわな。
とはいえ、実際に手を動かして来たのは俺じゃなくて村の人たちな訳だけどな。
俺がしている事といえば、提案をして、方法を示しただけだ。あと“魔術陣”というちょっとしたズルを使っているくらいなものだ。
「特に異常なのが、お前のそのカネの使い方だ。
鎧熊の件を除けば、“知識”の一言で片づけられることかもしれねぇが、その金銭感覚だけは知識でどうこう出来るもんじゃねぇだろ。
今まで、この村にゃカネなんて碌すっぽありゃしなかった。使う機会だってほとんどなかった。
なのにお前は、まるで“使い慣れたものを扱うように”カネを使う。
それがどんな高額でも“必要”だと判断すれば躊躇がない。
普通なら、んなこと怖くてよう出来ん……少なくとも俺には無理だ。
出すべきところには出して、蓄える分はしっかりと蓄える。
いざって時に、村の助けになるようにってな……」
村長が言っているのは、日頃からのイスュからの買い物とか、銭湯を作る時のこと、それに今さっきのヴァルターを買収した時のことを言ってるのだと思う。
特にストップも入らなかったから、かなり好き勝手にやってたからな。
取り分け、銭湯を立てる時はかなり散財したからなぁ。
銭湯の建設費用で、村をどれくらいの期間養えたかを考えると……ちょっと無理したかなぁ、と思わなくもない。
だが、村の人たちだって喜んでいるようだし、何より村に活気が出て来たのでよしとしようではないか。
ってか、言うにことかいて“異常”って……ひどくね?
「これだけの事をしておいて、今更“ただのガキ”として扱えってのは無理な話だ。
たとえ、外見が子どもだとしても、俺はお前を子ども扱いしたりなんてしねぇ。
中身はまるで別もんが詰まってやがるからな。
村の連中だってそうだ。あまり口にはしないが、皆内心こう思ってんじゃないのか“ロディフィスはバケモノだ”ってな……」
「っ!! バルっ! いくら貴方でもそんな言い方は……っ!」
「黙ってろよヨシュア……俺ぁ今、こいつと話してんだ。
大体テメェだって、似たようなことは考えたんじゃないのか?」
「っ……」
その一言に、あの物静かな神父様が声を荒げて怒ってくれていたが、村長の一瞥に押し黙ってしまった。
俺の事を気にかけてくれているのは大変ありがたいことだが、村長の言ってることも強ち的外れでもないので、なんと言ったらいいものか……
にしても……“異常”をあっという間に通り越して、遂に“バケモノ”にまでクラスチェンジしてしまった。
スピード出世だな、おい。
「で、当の本人はまるで気にしちゃいねぇ……てな。
いつもみたいにボケっとした面してやがる。
こいつ自身、よく分かってんだよ、自分が“普通じゃない”ってことにな……だろ?
ロディフィス」
「そりゃ、まぁ……ねぇ」
村長の言葉に、俺は曖昧気味に頷いた。
そりゃ“普通”じゃないだろ。なにせ前世の知識を引き継いで異世界に転生してる訳だからね。普通な訳がない。
バケモノと言われれば、確かにバケモノなのだ。
仮に前世で“私は転生者です。前世の記憶があります”なんて言うやつが目の前に現れたら、間違いなく不思議ちゃんか、中二病を疑っただろう。
自分がこんな体験をしている今となっては、割と信じてしまいそうだけど……
とはいっても、自分から“転生者”だと名乗り出るつもりは毛頭ないがな。
“転生者”だとバレるくらいなら、頭イッてるヤバい奴、だと思われる方がずっとましだ。
もし俺が“転生者”だと知られれば、それこそ本当にバケモノ扱いされかねん。
それに、きっと両親が悲しむ。俺はあの二人が辛そうにしている姿など見たくないのだ……
ただ、それを理解していても面と向かって、はいそうです私は普通ではありません、と答えるのもなんだか抵抗感があった。
なんだか、性癖を暴露するみたいで嫌というか、恥ずかしいというか……
だからこその、曖昧な返事だ。
曖昧な対応は日本人の専売特許だからなっ!
「ってか、こんな美少年捕まえてボケ面ってひどくね? 村長」
「はっ! “バケモノ”呼ばわりされて、萎縮するどころかこれだぞ、ヨシュア?
大物なのか、ただのバカなのか……いや、だからこそか。
だからこそ、初めに聞きてぇんだよ。
“普通じゃない”お前の考えってやつを、な」
あれま……俺ってばなんだか村長から、随分と買いかぶられているようで……
そこまで聞きたいってんなら、てことで俺は取り敢えず思いつくままに案を口に上げることにした。
実用性のあるなしなど二の次だな。
会議の質など、いくつ原案が出せるかで決まるものなのだ。
初めから完璧な案など存在しない。
いくつもの案の中から、何が良くて、何がダメなのかを検討し、使えそうなそうなパーツを見つけて、それを寄せ集めて一つにするのが会議の本質だ。
中には、不要な要素を明確化するために、ボツ案こそ重要、という人だっているからな。
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