最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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四話

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「っ!!」

 少女が男を見て、体を強張らせたのがすぐに分かった。
 それだけ、こいつらに怖い思いをさせられた、ということだろう。可哀そうに。
 俺は彼女を背中に庇う様に、男と少女の間に立つ。

「ん? なんだテメェ?」
「なに、ただの通りすがりの正義の味方さ」
「はぁ? ふざけた野郎だな。まぁ、いい。
 とっととそのガキをこっちに寄越しな。素直に渡せば楽に殺してやるよ」
「渡したのに殺されるなら、渡さなかったら一体どうなるのかねぇ?」
なぶり殺しにしてやるよ」

 男は実に楽しそうな笑みを浮かべて、手にした山刀をぺちぺちと手の中で弄ぶ。
 どっちにしても殺すことは確定なのね。
 てか、どうしてこの手の人間ってのは、こうも下卑た笑みってのが似合うのかね……
 練習しても、中々ああ巧くは笑えないだろうに。NPCながら関心してしまう。
 さて、ここからどうするかだけど……
 いくら勝つ自信があるとはいえ、このまま戦うには少しばかり場所が悪い。どうにかしてアレ・・を出せるだけの場所に移動しないといけないんだが……
 いや、その前にこの子を逃がすのが先か。
 男の狙いがこの子である以上、俺だけが移動してもなんの意味もない。まずはこの子にどうやってあの場所まで移動してもらうか、だが……

「…………」
「どうした? びびっちまって声も出ないのか? 正義の味方さんよぉ?」

 男には、俺が黙っているのがビビっているようにでも見えたのだろう。本当はただ、別の事を考えていただけなのだが、そんなこととは露知らず、男はバカにしたように俺を煽ってくる。
 まぁ、体格差だけを考えれば、どう見ても俺に勝ち目はないからな。
 この山賊まがいな男と俺の体格を比較するなら、プロレスラーと一般人くらいは違う。ライオンとネコ。コモドオオドラゴンとトカゲだ。
 だから、この男は自分が負けるなんて微塵も考えてはいないのだろう。そして、俺の方が圧倒的に強い、ということも……
 
 俺はそんな男の言葉を軽く無視して、今後のプランについてサクっとまとめると、半歩下がって少女へと近づき、男に聞こえないギリギリの小声で話しかけた。

「(あいつに勝つのは簡単なんだが、ここじゃ少し場所が悪い。
 出来ることなら、俺が君を抱き上げて、颯爽と走って逃げれればカッコイイんだろうけど、生憎と俺のSTRでは無理な話でね。
 今から君には自力で走って逃げてもらいたんだけど、走られそうかい?)」
「(あのっ! 早く逃げてくださいっ! 私を置いて行けば、まだ逃げられるはずですからっ!)」

 この期に及んで、まだ助けられる事を拒否するような少女の言動に、少しばかりイラっとする。
 なんだ、このNPC? こんなにスムーズにイベントが進まなかったことは初めてだぞ。普通なら、フラグが立った時点でこちらの指示に従うようになるんだが……

「(正直、君がそこでじっとしていると、奴をブチのめすことが出来ないんだよ。で、走れるのか? 走れないのか?)」

 走れないなら走れないで、別のプランも考えなくちゃいけないしな。

「(どうしてそこまで……)」
「(その答えが聞きたきゃ後でいくらでも答えてあげるから。今、重要なのは、君が助かりたいのか、そうでないのか、それだけだ。
 で、いい加減質問の答えが聞きたいんだが?
 あちらさんも、そろそろ痺れが切れそうなんでな)」

 ちょっと強めの口調でそう少女に問いかけると、少し何かを考えているような間を開けてから、少女が口を開いた。

「(……走れます。先ほど頂いた不思議な薬のお陰で、すっかり元気になりましたらっ!)」
「(なら良し。ちなみに、脚に自信は?)」
「(あの人たちから逃げられる程度には)」

 少女の言葉に、確かにな、と思う。
 俺と出会う前まで、この子はあいつらから走って逃げていたのだ。脚が遅ければとうに捕まっているはずだ。

「(良い答えだ。なら、3カウントで左方向に全力疾走。真っ直ぐ行った先に、少しだけ開けた場所がある。そこがゴールだ。
 俺のことは置いて行って構わない。とにかく全力で走れ。いいな?)」
「(分かりましたっ!)」

 背中に目がないので、彼女がどんな顔をしているのかは俺には分からない。だが、声からははっきりとした力強さを感じ取ることが出来た。

「おいっ! さっきから何ごちゃごちゃ話してやがんだ? あぁ?
 まさかここから逃げられるとでも思ってんじゃねぇーだろうな? 逃がすわけねぇだろ、バーカ」

 俺が相手なら勝てると確信しているのか、男が不用意なまでにズカズカと俺達の方へと寄って来る。
 しかし、そのデカイ体躯が災いしてか、周囲の木々が邪魔でうまく前に進めないでいた。とはいえ、手にした山刀で枝を打ち払い、少しず
つ、そして確実に俺たちへと近づいて来ていた。

「(んじゃ……3……2……1……)走れっ!!」

 俺の合図に従って、少女は勢い良く走り出した。

「クソっ! あのガキ、また逃げやがって!」

 思った通り、男にとって俺の相手より少女の方が重要なのだろう。
 男は少女が駆け出すのを見るや、俺のことなど無視して慌てて少女のことを追い出した。

「素直に負わせるわけないだろっと……」

 男の注意が俺から外れた瞬間。俺はインベントリから、攪乱用の煙幕玉を取り出した。
 見た目はまんま、コンビニなんかに置いてあるあの防犯用カラーボールと同じだ。それを、男の前方に向かって放り投げる。と、空かさず距離を取る。
 煙幕玉は綺麗な放物線を描くと、狙い通り男の前方一メートルくらい前に着弾し、パリンという軽い音を立てて砕け散った。
 ちなみに、男が近づくまで少し待ったのは、この煙幕玉を確実に当てられる距離まで近づかせるためと、俺たちが巻き込まれないようにする為だ。
 刹那。
 煙幕玉に封じ込められていた煙が、ものすごい勢いで拡散。瞬時に男と周囲を白い煙で包み込んでしまった。
 その直後。

「なんだ? この煙、何処から……ぐおおぉぉぉっ!! なんだ!? ゲホっゲホっ! 目がっ!! 鼻がぁぁぁ!! ゲホっゲホっ!!」
「っ!?」

 なんだ? どういうことだ?
 未だに煙がもくもくする中、突然、煙に包まれた男が苦しみ出し、地面を転げ回って咳き込み出したのだ。

「グゾっ!! デメ゛ェな゛に゛を゛じや゛がっだっ!!」

 地面に倒れ、涙と鼻水に塗れた男が、俺に向かって憎悪の篭った恨みがましい視線を向ける。
 ぶっちゃけ、そんなこと俺が知りたいくらいだよ。
 煙幕玉には、相手に行動力低下と索敵阻害のデバフを与える効果しかない。こんな苦しむような効果はなかったはず……いや、待てよ?
 そういえば、煙幕玉のフレーバーテキストに“催涙効果のある刺激性の煙が封入されているので、取り扱い注意”なんて書いてあったな。
 もしかして、フレーバーテキストが効果に反映されている? そんなバカな……

 実際、今まで何度もこの煙幕玉を『アンリミ』で敵に向かって使って来たが、こんな苦しむような演出が起きたことは一度もなかった。
 そもそも、こういったある種の相手を苦しませるような残虐な表現は、規制の対象になっているはずだ。
 いや、一部年齢制限のあるゲームならこういう表現も可能だったように思うが、少なくとも『アンリミ』は全年齢向けゲームだから、規制の対象になっているのは間違いない。
 なのになんで……
 地面を転がりのたうち回る男を見るに、相当に苦しく痛いらしいことは分かる。

 一体何がどうなっているのか……
 それはまったく分からないが、今考えても分からないことは、一旦脇に置いておくことにした。
 さて、今のうちに俺も逃げないとな。
 いくら男がほぼ戦闘不能状態とはいえ、今のじゃあどう足掻いてもこの男を倒すのは無理そうだしな。
 なにせ、俺は今、まともな武器を何一つ装備していない手ぶら状態なのだから。出来ることといえばパンチとキックくらいなものだった。
 それでこの男にダメージを与えるのは……まぁ、無理だわな。
 一応、こいつにダメージを与えられる武器を持っていないわけではないのだが……少々、取り出すのが面倒な状態になっているので、今回はパスだ。 
 
 一先ず、苦しむ男を尻目に、俺は先に逃げ出した少女の後を追う……って、速っ!
 ほんの僅かな時間にも関わらず、もうすっかり少女の背中は小さくなってしまっていた。
 てか、さっきステータスを見た時は、そこまで【敏捷性AGI】値は高くなかったはずなのに……どうなってんだ?

 小柄な体を利用して、立ち並ぶ木々を右へ左へと颯爽と躱して行くその様は、まるで風が駆け抜けていくが如くである。
 なるほど。これじゃ男共が捕まえるのに苦労するわけだ……
 あれ? もしかして彼女が俺に逃げろって言ったのは、“自分一人なら逃げきれる自信があるから、足手まといはどっか行け”と、そういう意味だったのだろうか?

 ……だとしたら、俺メッチャカッコ悪くないか? 

 何が“奴をブチのめすことが出来ない”だ、何が“重要なのは、君が助かりたいのか、そうでないのか”だ。
 自分より能力高い相手にめっちゃカッコつけてた俺ってば、ただの道化じゃないですか! やだぁー!

 自分の顔が、カッカッと熱を帯びるのを感じる。
 正直、彼女がNPCとはいえ、もう一度顔を合わせるのは気恥ずかしい。が、助けると言った手前このまま放置というわけにはいかんだろう。

 俺も男だ。二言はない、と腹を括ると、俺もまた少女の背中を追いかけて走り出したのだった。

 ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢

「へぇ……はぁ……ほぉ……はぁ……」
「あ、あの……だ、大丈夫ですか?」

 目的地に、息も絶え絶えで辿り着いた俺を、先に着いていた少女が甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
 その表情には、不安しかない。だろうな……
 てか、この子。俺と同じ距離を俺より早く走って来たはずなのに、一切息が乱れていないんだが? 
 あれ? NPCってスタミナゲージ無限だっけ? いやいや、すべてのNPCにはステータスが細かく設定されているははずだ。
 なら、この子が初期から高いってことか?
 俺が居なければこの子だけで簡単に逃げられた説。あると思います。

「だ、大丈……た、ただの、スタミナ不足……な、だけ……だから……ひっひっふー、ひっひっふぅ~」

 にしても、何でこんなに息が上がるんだよっ! ゲームだろ、ここっ!
 心臓は今にも爆発しそうなくらいバクバクいってるし、額からは汗が止めどなく吹き出していた。
 汗を大量に含んだシャツが、肌にベッタリと張り付いて気持ちが悪い。が、今はそんなことを言っている場合ではないわな。
 しかし、こんなのゲームで再現することじゃないだろ……
 って、いかんな。これじゃ本当にただのお荷物ではないか。カッコ悪い。

 取り敢えず、インベントリからスタミナ回復ポーションを取り出し、一気に飲む。
 底を突いて真っ赤になっていたゲージがもりもり回復していき、上がっていた息もあっという間に落ち着いていった。
 ふぅ~、なんとか人心地ついた、といった感じか。

「よくもやってくれたなぁこのクソ野郎!! ブっ殺してやる!!
 ただじゃ殺さねぇ! 手足一本ずつ捥いで、泣き叫ばせながらブっ殺してやるぅぅぅ!!」

 あらあら、随分とご立腹なご様子で……
 俺の到着から少し遅れて、飲み終わったポーションの瓶をインベントリに片付けた頃、あの男が俺達を追って姿を現した。
 顔中の涙と鼻水それに涎は、さっきよりも尚酷くなっており、もう顔中ベタベタになっていた。
 煙幕玉……てか最早、催涙玉だよなアレ……の効果は絶大だったようだ。

「随分と男前な顔になったじゃないか。
 も滴るいい男、ってね? まぁ、俺は近づくのも御免だけどな。ばっちぃったらない。エンガチョエンガチョ」

 幻聴だろうが、プツン、と何かが切れる音を聞いたような気がした。

「ぶ、ぶぶぶ、ブッコロス!」

 怒りのあまりだろうか。語彙が単調になってしまった男が、額に青筋を五、六本浮かべて、俺へと猛烈に突進して来た。
 突進、とはいってもその速度の遅いこと遅いこと。これなら、目を瞑っていても避けられそうだ。
 まぁ、ステータスから考えれば当然といえば当然なんだが。

「あっ! あのっ! あのっ!」

 俺にとっては大したことではなくても、そうではなかったのが少女の方だった。逃げるでもなく、かといって武器を手に立ち向かうでもなく。
 ただ男が近づいて来るのを、じっと待っている俺の服の裾を少女が力強く引く。
 逃げよう、ということなのだろうが、俺はそんな彼女の手に軽く自分の手を重ねた。
 
「怖かったら、君だけでも逃げていいから」
「でもっ! そのっ! でもっ!」
「大丈夫、大丈夫」

 わたわたと焦る少女を、宥めるようにそっと言う。まぁ、自分で言っておいてなんだが、信用出来ないだろうなぁ……とは思ったよ。うん。
 何せ、さっきまで目の前でひぃひぃ言っていた男の言葉だ。俺なら絶対に信用しない。置き去りにして逃げる。
 だが、少女はわたわたとしながらも、俺から離れるようなことはしなかった。
 それが俺を信じてのことなのか、それとも、ただ単に逃げるタイミングを失ってしまったからなのか……

 俺としては、前者であると思いたいところだ。

 さて、ここらで本当に何かカッコイイところを見せておかないと、ただの道化になってしまうな。

「死ねぇやぁぁぁぁぁ!」

 男がのっそのっそと眼前まで迫り、振り上げた山刀を猛烈なスピードで振り下ろされる。
 走るのは遅いが、山刀を振り下ろすスピードはまぁまぁといったところか。
 俺のステータスなら、当たれば一発アウト確定だな。まぁ、当たらんけど。

「きゃぁぁぁぁ!!」

 ガキィィィィィン!!

 静かな森に響いたのは、肉を打つ鈍い音ではなく、甲高い少女の悲鳴と金属の激突音だった。

「なっ! だっ、誰だテメェ!? 何処から出てきやがったっ!!」

 振り下ろされた山刀は、俺に当たる数十センチ手前でその動きをピタリと止めていた。
 山刀を止めているのは、巨大な一本の真っ黒な大剣だ。
 それも、男の身長と同じくらいの長さで、幅など俺がすっぽりと隠れられてしまう程に分厚い。それこそ、男の持つ山刀がペティナイフと見紛うほどの巨大な大剣だ。
 そんな大剣を持つのは、これまた大剣に引けを取らない、身長二メートルは下らないであろう全身を漆黒の甲冑に身を包んだ一人の騎士だった。
 黒き鎧の騎士は、軽々とした動きで大剣を手にした右手・・を振る。

「ぐおっ!」

 たったそれだけの動きで、体重が一〇〇キログラムは下らないであろう男を数メートルも弾き飛ばした。

「なるほどな……こいつが隠れてる所まで逃げて来たってわけかよ……ちっ。
 だがまぁ、どうでもいいがな。そこのデカぶつも俺様がまとめて叩き潰してやるよっ! ついでにその御大層な装備ごと、俺様が頂いてやるから有難く思いなっ!」

 今し方、力比べで圧倒的に負けていたにも関わらず、男は何を思ったのか黒騎士へと向かって襲い掛かって来た。
 何故に? まさか勝てるとでも思っているのか? 何を根拠に?
 今ので彼我の力量差は明白になったはずだ。本来ならここは逃げるか、仲間を呼ぶところだろ?
 少なくとも、今まで戦って来た敵性NPCは、そういう行動を取って来た。あの雑魚オブ雑魚のゴブリンですら、だ。
 
 『アンリミ』のAI判定と明らかに違う動きをしている……?

 何か腑に落ちないものはあるが、逃げないというならむしろ好都合。このまま無力化して逃げることにしよう。
 わざわざ相手を待つ必要はないので、今度は黒騎士から仕掛けることにした。
 黒騎士は少しだけ態勢を低くすると……次の瞬間にはその姿を消していた。

「なっ!? きえ……」

 キンッ

 突然のことで男の足が止まり、そして、小さく響く甲高い金属音。

「へっ?」

 何が起きたのか、男にはまったく理解出来なかっただろう。
 消えたと思った騎士が、次の瞬間には右手の大剣を振り抜いた姿で目の前にいたのだ。しかも、手にした山刀は根元から綺麗に斬られている……
 これが山刀ではなく男の首だったなら、男は自分の死にすら気づくことなくこの世を去っていたことだろう。
 まぁ、実際にやりはしないけど。
 少女の怪我といい、どうやらゴア規制が掛かっていないようなので、まともにぶっ斬ったらスプラッタになる予感しかしないからな。

「えっ……?」

 男は、まるで狐にでもつままれたような顔で、手にしていた山刀へと視線を向ける。
 理解が現実に追い付かないのか、男は呆けた顔のまま、斬られた山刀をじっと眺める。
 だが、生憎と相手の理解を待ってやる道理もない。
 黒騎士は、無慈悲に手にしていた左手の・・・大剣を軽く薙いだ。

「おぶっ!!」

 刃の部分を当てると真っ二つになってしまうので、面の部分を叩きつける。
 メキッ、と鈍い音を立てて、男は真横へとかっ飛んで行った。その様は、まるでビリヤードの玉の如くである。

 この程度の相手に、全力を出す必要もないと、相当軽く・・むしろ撫でる程度で振るったつもりだったが、それでもまだ強過ぎたらしい。
 男は近くの木へと激突すると、そのまま派手な音を立ててぶつかった木を薙ぎ倒した。
 だが、一本では勢いが止まらなかったのか、二本、三本と薙ぎ倒し、四本目を圧し折ってようやく止まったようだった。
 ……どれも決して細い木、というわけでもないのに。

 まるで野菜戦士たちが戦う某アニメのバトルシーンのようだな……と、他人事ながらにそう感じる。
 ちなみに、『アンリミ』ではダンジョンに設置されているオブジェクトは絶対に破壊不可能になっているが、木や岩といった一部のフィールドオブジェクトなら破壊することが可能になっていた。
 木材や石材、鉱石なんかの採取クエストがあるからな。
 破壊されたオブジェクトは一定時間で復活し、その気になれば無限回収も可能である。
 ただ、あまりそれをやる意味はないけれど。
 
「あっ、あのっ! あの騎士様は? 貴方の仲間……なんでしょうか?
 何もない所から、突然、姿を現したように見えたんですが……」

 俺の背中にしがみついていた少女が、俺を盾にするようにひょっこり顔を覗かせて、大剣を振るった状態で停止・・している騎士を見て、そう問いかけて来た。

「あ~、取り敢えず、安心して話せる場所に移動してからにしよっか?
 結構派手な音を立てたから、他の奴らが様子を見に来るかもしれないし」

 人攫い共が、俺が見た人数ですべてなら余裕で倒せるが、他にいないとも限らない。
 それに、俺は殲滅戦は得意だが、何かを守りながら戦う防衛戦は苦手としていた。
 この少女の安全を考えるなら、敵の強い弱いに関係なく、出来るだけ戦闘は避けた方がいいだろう。

「あっ、はい。そう……ですね……」

 俺の提案に納得はしつつも、まだ気になるのか、それからしばらく少女は黒騎士に目が釘付けになっていた。
 ちなみに、出て来た時同様、黒騎士が突然姿を消した時の少女の驚きっぷりは、見ていて実にかわいらしいものだった。
 これが、彼女の本来の性格なのかもしれないな。
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