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一四四話
しおりを挟む倉庫への保存食の搬入、また倉庫自体の冷蔵庫化の改造を終え、村の中央広場に戻ると、朝にはまだその原型を留めていた赤鎧の姿が綺麗さっぱり無くなっていた。
何とはなしに、周囲の会話に聞き耳を立ててみれば、朝、ヨームに渡した包丁が大活躍したらしいことがなんとなく伝わって来た。
後は、切り分けた肉を保存用に加工して倉庫にしまったら、解体作業のすべての工程が終了することになる。
とはいえ、現状終わった工程は、肉の切り分けだけなので、次の工程である食品加工を行うグループは大忙しだろうな。
丁度、時刻も昼近くということもあり、俺達が広場に戻るとそのまま昨日と同じく、村人全員参加の焼肉パーティーが始まる流れになった。
勿論、提供されるのは赤鎧の肉である。
昨日設置した加熱テーブルだが、実はオーラさんからの頼みで、そのまま広場に残されたままになっていた。
何でも、今後もそのまま加熱テーブルとして使いたいと言うのだ。祭りとか、集会とか、とにかく人が広場に沢山集まる時なんかに使う予定らしい。
というわけで、片付けなくていいと言われたので、ここからは俺はノータッチである。
そもそも、使っている素材はすべて村で採取された物なので、残して欲しいというのなら俺からとやかく言うつもりはまったくなかった。
昨日も焼肉……正確にはモツ焼きだったが……今日も焼肉と、若干、コレステロール値のことは気にはなったが……主に腹回りで……旨いものは背に腹は代えられないと、今日も今日とて昼から赤鎧の焼肉に舌鼓を打つ。
ただ、若干の気休め程度に、バーベキューの時に使った野菜核種を俺から提供していた。
これで少しはバランスが取れるやろ……取れんか……
昨日はほぼほぼ内蔵、モツばかりだったが、今日は赤味肉も結構出て来ていた。
肉質が少し硬い気はしたが、赤身は赤味で十分に美味しかった。
食事中、ミウラちゃんをお姫様だったしたヴェゼルとフーリカさんが俺の所にやって来て、改めてお礼を言われた。
昨日の焼パ(注・焼肉パーティーの略)には参加していなかったらしいが、ミウラちゃんに少しでも精の付く物を食べさせたいと、今日はこうして連れて来たとのことだった。
で、先日仲良くなったアイラちゃんが「一緒に食べよう」と持ち掛けたことで、ミウラちゃん一家と同席することに。
それから間を置かずして、今度は腕が千切れかけていた、というか実際千切れていた男、バラドも俺の所に顔を出し改めて礼を言われた。
一応、腕の調子を尋ねたら、もうすっかり元通りになったとのことだ。
で、感謝の品だと言って大体1メートルくらいある、歪に枝分かれした奇妙な水晶柱を渡された。
透明度が非常に高く、見る角度によっては光を無数に反射し、煌びやかに光り輝く美しい品だ。
この水晶、実は晶角鹿という鹿の角らしい。
ソアラ曰く、極めて希少な品だ、という話しだったので、一度は断ったのだが、感謝の気持ちだからとどうしても受け取って欲しいというので、押し切られる形で受け取ることになってしまった。
ただこの晶角鹿の角だが、赤鎧の甲殻や竜血晶のような、何か特別な効能・効果・能力は無いようなので、ただただ綺麗な角、といったところか。
ダイヤモンドの様な宝石や、金銀といった鉱石同様、希少性でそれなりの価値は付きそうだが、まぁ、俺としてはそこまでって感じかね。
金銭的価値より、何か特殊な効果なり能力なりが付いていた方が、まだ面白味があった。
とはいえ、感謝の証として渡された物だからな。これはこれで大切にするとしよう。
そうして、バラドは再三に渡り俺に礼を言うと、その場を去って行った。
ミウラちゃん一家との会食を終え、午後からはソアラ、アイラちゃんそしてヴォーラさんは現在忙殺されている食品加工組の手伝いとして駆り出されて行った。
というわけで俺はフリーとなり、特にやることもないので、広場で一人テーブルに座ったまま久しぶりにぼぉーっとした午後を過ごした。
なんだかんだで、この村に来てから色々やっていたからな。
こんなにボケーっとしたのは、この村に着て初ではなかろうか?
この時間を利用して、以前約束したマジックシリーズの日用雑貨を渡して回ってもいいかも? とは思ったのだが、よくよく考えたら、それを欲しがっているご婦人の方々は現在絶賛お肉の加工中なので、それどころではないんだよなぁ……
変なタイミングで話し掛けたら、逆に怒りを買いそうだ。
と、そんな感じで広場でボケっとしていたものだから、俺と同じく暇を持て余していたガキんちょ共に久しぶりに絡まれた。
俺が赤鎧を倒したことは周知の事実であり、当然それは子ども達にも知れ渡っていた。
なので、子ども達からその時の話しを聞きたいとせがまれたので、ちょっと芝居チックに大袈裟な身振り手振りを交えて、対赤鎧戦のことを語って聞かせた。
とはいっても、戦闘時間自体は非常に短かったので話すこともすぐになくなってしまった。
なので、その時使っていた人形、黒騎士ケンタウロスフォームを子ども達に見せることにした。
最初に黒騎士を出し、次いでドーカイテーオー。
黒騎士を見るのは二度目となるはずだが、それでも初見の子も居たようで、それなりに周囲から歓声があがった。
だが、ドーカイテーオーを見るのはここに居る誰も初めてだったので、金属で出来た巨大な馬という存在に、子ども達のヴォルテージが一気に跳ね上がる。
その興奮冷めやらぬ内に、いつもより当社比三割増しの無駄アクションを持って、黒騎士とドーカイテーオーを合体。
必要も無いのに、背中の大剣・竜牙大剣を引き抜き馬上大剣モードにした挙句、無駄にオーラエッジまで展開する。
流石に【潜在開放】までしなかったがな。
そして最後に、最大限の安全を確認しつつ竜牙大剣・馬上大剣モードを振り回し、華麗にポーズを決める。
戦隊ヒーローよろしく、背後に爆破演出も加えようかと思ったが、流石に村の中で爆破は拙いだろうと、泣く泣く自己却下。
実はこの黒騎士ケンタウロスフォームだが、“ドゥンケル・リッター・ツェンタァー”という正式名称が存在する。
ドゥンケル・リッターはドイツ語で闇の騎士を意味し、ツェンタァーはケンタウロスのドイツ語版である。
我ながらイタイ名前を付けたものである。
そんな俺プロデュースによる、黒騎士とドーカイテーオーの変形合体ショーだったのだが……
何故か訪れたのは、遠くの喧騒や、風の音、葉擦れの音までが聞こえてくるほどの静寂だった。
……あれ? もしかしてスベったか?
と、一瞬焦ったのも束の間。
ぬおおおおおおおおっっっっ!!
という、大地も割らんばかりの歓声? 雄たけび? ……とにかく、そういう声が周囲に響き渡った。
子ども達が思い思いの言葉を口にしている所為で、最早誰が何を言っているかなんて分かりはしないが、ギリギリ聞こえた言葉の中には「すげー!!」とか「カッコイイ!!」とか「強そうっ!!」とか、概ね良好な感じな言葉が多く、ホっと胸を撫で下ろした。
スベったんじゃなくて良かったぁ~
特に興奮しているのは、やっぱりというか小学生くらいの男子が主なようだな。
やはり、俺のセンスはこの世界でも、子ども、それも主に小学生男子には刺さるようだ。
そういえば、と、何時かのソアラの言葉が脳裏を過る。
中には興奮しすぎて、顏を真っ赤にして鼻血を吹き出す奴までいたくらいだ。
……分かった。お前の琴線に触れたのは分かったから少し落ち着け。
取り敢えず俺は鼻血小僧をとっ捕まえると、ポーションを飲ませて鼻血を止める。
気付けば次第に無秩序になりつつある子ども達を、一旦は宥めようとしたのだが、既に暴走列車よろしくまるで人の話しを聞かない状態になってしまったていた。
小学校の先生の気苦労が垣間見えた瞬間だった。
そこで一計を案じ、静かにしたら黒騎士の背中に乗せてやる、といったところ瞬間で静かになるっていうね……
聞こえてんなら初めから話を聞けやガキんちょ共め……
まぁ、約束は約束ということで、午後からは黒騎士の背に子ども達を乗せて村の周囲を回ることになった。
観光馬車的なアレである。
ただ黒騎士ケンタウロスフォームの背に乗せて、ゆっくりと歩くだけという、特に走り回ったり飛び跳ねたりと、そんなアクロバティックな要素は皆無であったが、それでも子ども達からは概ね好評だった。
流石に全員を一度に乗せられないので、数人ずつの交代制だ。
乗れなかった子達は、後部に連結した荷台……銀採掘の時に使ったアレ……の上に乗って順番待ちである。
勿論、安全の為に武装……といっても大剣だけだが……はすべて取り外して、今は亜空間倉庫の中だ。
こうして、俺は子ども達が満足するまで黒騎士の背に子ども達を乗せて、延々村の周りをグルグルグルグルすることになったのだった。
で、日が沈むまで俺が解放されることはなかったっていうね……
結局、何だかんだで今日も忙しい一日でしたマル。
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