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一七二話
しおりを挟むはい、着きましたサーイ村。所要時間は約三〇分。
日も高くなり、村では働く村人達の姿がそれなりに目に付くようになってきた。
マルトム村の時同様、まずは近場にいた村人を捕まえ、村長の家を聞く。
で……
「これはこれは、あのようなはした金で依頼を受けて下さるとは、本当にありがとうございます」
村長に訪問の理由を説明すると、何処かで聞いたセリフをまた聞かされた。
なんたるデジャヴ……これはセリフの使い回しか?
ここでもまた詳しく話を聞くと、今度はどうやら森の中で狩りをしていた者が、獲物を追っている最中に不審者を見掛けとのことだった。
取り敢えず、その目撃した者からも詳しく話を聞きたいと呼び出してもらうことに。
で、やって来た年嵩のある男性から話を聞き、さっきと同じよう現場まで案内してもらった。
「痕跡はマルトム村で見たものより新しいな。……ふむ。特徴はほぼ一致しているから、マルトム村で目撃された集団と同一のもの、と見て間違いないだろう」
というのが、美少女……美女? まぁ、どっでもいいが……名探偵セリカの推理だった。
相変わらず俺には、ただ草木が生い茂った地面にしか見えんのだがな……
「やっぱり、もうここにはいないのか?」
「既に移動して何日か経過しているな」
「向かった先は?」
「イノック村方面だ」
やっぱりか……
というわけで、もう村は安全だと村長に説明し俺達は次なる村、イノック村を目指すことに。
ちなみに、サーイ村では酪農が主産業のようで、チーズとかの乳製品を扱っていたいた。
なので、こちらでも報酬額を遥かに超える乳製品を購入してから次の村を目指すことにした。
村長達からは、非常に感謝された。
はい、着きましたイノック村。所要時間は以下略。
「これはこれは、あのようなはした金で依頼を受けて下さるとは、本当にありがとうございます」
これまた同じ手順で村長宅を教えてもらい、同じようなやり取りをする。
てか、村長は必ずそういうようにプログラムでもされてんのか? と思うくらい、みんな同じことを言うな。
それはさておき。
今回の目撃者は木こりの男性だった。
村で使う薪の確保の為、間伐作業も兼ねて木を切ろうと森へ入ったところ、不審な一団を目撃したのだという。
そして例によって、木こりの男性の案内の下、現場検証スタート。
「これは新しいな。推定で三日、ないしは四日前といったところか。特徴も一致しているから、例の一団で間違いあるまい。
そう遠くない場所に潜んでいる可能性があるな」
名探偵セリカさんの見立てでは、この近くに俺達が追っている賊(仮)が居るらしい。
「目撃情報があるのはここまでだから、ここから先は直接痕跡を追った方がいいのか?」
「ふむ…………」
そう俺が尋ねたが、セリカは何か考え込むように黙ったままだった。
少しして……
「そうだな。何処に向かったか確証が持てない以上、先回りも出来ん。跡を追うことにしよう」
ということに決まった。
ちなみに、何を悩んでいるのかを聞いたら、賊(仮)の移動ルートの延長にトレイルというそこそこ大きな街があるらしいのだとか。
このトレイルは交易が盛んな街なようで、中には盗品などを違法に売買しているような闇組織もあるのだと、セリカはいう。
仮に、今追っている賊(仮)がどこぞで盗んだか奪った品を現金化させようと考えているなら、おそらくこのトレイルを目指していると踏んだのだが、賊(仮)の目的がはっきりしない以上、先回りするより痕跡を追った方が正確だろうという結論に達したようだ。
確かに、先回りしても読み間違えていたら終わりだしな。
木こりの男性とはここで別れて、彼には一人で村に戻ってもらうことにした。
ついでに、一応安全のために、村長に俺達が戻るまで森に村人を近づけないように言付けを頼んでおいた。
「それにしても、マルトム村からの依頼要請から随分時間が空いているのに、まだこんな所をうろついているとか、随分とゆっくりとした賊だな」
マルトム村から出された依頼日が、大体十日程前になっていたからな。
実際には、依頼を出すまでに更に数日は掛かっているだろうことを考えると、目撃したのはもっと前ということになる。
木こりの男性を見送ったあと、何となく思ったことを呟いたら、セリカから凄い呆れた様な目を向けられてしまった。
「はぁ……お前の感覚が万人に共通するものだと思うなよ?
本来、村と村の間の移動でさえ馬車で短くて一日、長くて二日を要する距離なんだぞ? それを半刻そこらで移動してしまうお前が異常なのだ。
ましてや、連中は人目を避けるように街道を使わず、森の中を徒歩で移動している。
ともなれば、当然、街道を移動するより二倍から三倍の労力が必要となる。
それを考えれば、おそらくマルトム村からここイノック村まで五、六日は掛かっいるだろう。
それをお前は街道を使っているとはいえ、数刻で走り抜けているのだからな?
普通に移動していたら、ここまで来るのに調査も兼ねて何日掛かっていたことか……
お前の国ではどうかは知らんが、ここではお前の能力は異端なのだ。少しはその異常性を理解しろ」
で、何故か説教されるっていうね……
まぁ、確かに言われればそうだよなぁ、とは思うけどよ……
「なんか、すまんかった」
なので、一応謝っておく。確かに、想像力が足りなかったのは認めよう。
「ふむ。次からは発言に気を付けるのがいいだろう」
そんな俺に、うんうんと満足そうにセリカは頷いた。
「さて、ではここからは私達も足での追跡だ」
「ちっと待った」
そう言って、森の中を進もうとするセリカに、俺が待ったをかけた。
「どうした?」
「いや、今から普通に歩いて追いかけても、追いつくのにどれだけの時間がかかるんだって話だよ」
当たり前の話しだが、先行する者に追い付くには、追う側の時間当たりの移動量が相手を上回っていない限り永遠に追いつくことは出来ない。
現状どれだけ先行しているのか分からないが、既に広がっている差を自力で埋めるのは中々に至難の業だ。
というか、俺の体力などを考慮すればほぼ不可能だといっていい。それが森の中の強行軍ともれば尚更だ。
なにせ俺はモヤシもいいところだからな。
と、いうことをセリカに軽く説明する。
「……そんな虚弱自慢をされてもな」
「俺はお前みたく体を鍛えているわけでもないからな。俺は極々平凡な一般人なんだよ」
「一般人でももう少し体力はあるぞ?
まぁ、この際、お前が一般人かはともかくとして、だが。
ならばどうする? これだけ茂った森の中を、お前自慢の鋼馬で以て駆け抜けでもするか?」
鋼馬とは、セリカが付けたドーカイテーオーの呼称だ。まぁ、見たまんまだな。
「やってやれないこともないが、そうなると木々を薙ぎ倒して行くことになるだろうから止めておこうか」
やったらやったで軽い環境破壊だし、それ以上に追っている賊(仮)に間違いなく感づかれるだろうことも問題だ。
「出来るのか……」
そんな俺の一言に、やや引き気味に呟くセリカ。
「まぁ、発想自体はその通りなんだが、もっと都合がいいものがあるってことだな。
例の如く、亜空間倉庫から出すのに開けた場所が必要だから、少し移動していいか?」
ということで、一旦森から出て、来る道中で見掛けた開けた場所まで戻ることにした。
そして、十分な広さが確保されたところで、目的のブツを亜空間倉庫からポンと出す。
「っ! これは……また、とんだバケモノが出て来たな」
セリカの目の前に出したのは、昨日、神秘学研究会の研究棟でセレスに見せたあの巨大ムカデの人形、百貫百足だ。
「バケモノとは失礼な……まぁ、気持ちは分かるが」
確かに、こんなデカい虫がリアルで存在したら、出会った瞬間悲鳴を上げて泡を吹いて倒れるだろうからな。
自分でこんなものを作っておいていうのもアレだが、俺は虫があまり得意ではないのだ。
カブトムシだとかクワガタムシとかなら問題はないが、クモとかゲジの類はどうにも受け付けないんだよ……Gなんて以ての外だ。
ニセモノだと分かっているから耐えられるのであった、ホンモノなんて想像しただけで鳥肌ものである。
「……それで、このムシのバケモノをどうしようと?」
「こいつに乗って移動するんだよ。
流石にドーカイテーオー程の速度は出ないが、人が歩くよりはずっと早く楽に移動出来るはずだ」
そう言って、俺は百貫百足の節の一つに手を伸ばし、ポンポンと叩いて見せた。
それに、多脚故に地形の影響を受けにくく、こう見えて実は小回りも利く。
ドーカイテーオーで木々を薙ぎ倒しながら走るよりは、こっちの方がずっとスマートに移動出来る、というわけだ。
ちなみに、節のいくつかには簡易座席シートが内蔵されているため、乗ることにそれ程苦労はない。
というわけで、俺達は簡易座席シートを展開した百貫百足の背に乗り、賊(仮)の痕跡を追って俺達は森の中へと入って行ったのだった。
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