最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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一八三話

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やべ……公開設定するの忘れてた……


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 セリカに子ワーウルフを預けた翌日。
 俺は俺で金級推薦のため、自由騎士組合へと足を運び、塩漬けとなっている依頼の消化に励むことにした。
 で。
 次にジュリエットから渡された依頼が、老朽化した城壁、及び街壁がいへきの補修作業へのヘルプだった。
 城壁とは言わずもがな、城を囲んでいる壁のことで、街壁というのは街を囲んでいる壁のことだ。
 王都マリアーダは、都市全体を壁で囲ったその中にある城を、更に壁で囲うという二重構造になっていた。
 どちらも城郭という意味では同じなのだが、ここではそれぞれ呼び分けているみたいだな。

 それでこの仕事なんだが、内容からも分かるように公共事業なので、その依頼主は国である。
 なので、賃金の支払い自体は確実であることが保証されている反面、他の依頼に比べ重労働の割に賃金が安いと、中々に人手が集まらず遅々として作業が進んでいないらしいのだ。

 その他の高額依頼というのが、護衛や魔獣の討伐、古代遺跡での魔石の採取など、割と命の危機があるからこそ高額なのに対して、こちらは事故などを除けば比較的安全にそれなりの金額がもらえるわけだから、少しは募集もありそうな気もするが……

 まぁ、なんにしてもだ。
 現状、ノールデン王国は他国と戦争状態にあるわけではならしいが、それでも防衛の要となる場所だけに、早く工事を終わらせたい、とのことだった。
 まぁ、場所が場所だからな。気持ちは分からなくもない。

 とにかく、詳しい作業内容については現場で確認してくれとジュリエットに言われ、街外れにある街壁工事の現場へとやって来たのだが……

 あれ? 工事やってなくね?

 地図を渡され、指定された場所に来てみたはいいのたが……これといって、作業をしている人が殆ど見当たらなかった。
 確かに表面の漆喰のような部分が剥がれ落ちたり、中には基礎部分が剥き出しになっているような大きな壁に、足場らしきものが組まれ、何かの作業に着工している雰囲気はあるのだが……
 どいうことだ?

「おい兄ちゃん。こんな所で突っ立ってると危ねぇぞ?」

 どうしたものかと、暫し思案に暮れていると、背後から声が聞こえて来た。
 多分、俺のことだろうと振り返ると、薄手のシャツに革製の厚手のズボンを穿いたガテン系の大男が一人そこに立っていた。

「ん? この辺じゃ見ねぇツラだな? 観光客ならとっとと帰りな。こんな所に見て面白いもんは何もねぇぞ?」
「観光客じゃなくて、ここへは仕事で来たんだ。責任者がいるなら教えて欲しいんだが?」
「仕事だぁ? 舐めてんのかおめぇ? そんななまっちょろい体で、ここで働けるわけねぇだろ?」

 そういうと、大男は俺を一瞥してから呆れたようなため息を吐きつつ、そう言った。
 ワイトもそう思います。ぶっちゃけ、肉体労働系ではないからな、俺は。

「まぁ、こっちにも色々と事情があってね。一応、自由騎士組合のギルマスから紹介状は預かって来ているんだが……」

 ここで事情を細かく説明するよりは早いだろうと、俺はジュリエットが書いてくれた紹介状をポケットから取り出すと、それを目の前の大男へと差し出した。
 
「紹介状だぁ?」

 差し出された書状を訝しみつつ受け取ると、大男は差出人を確認する。

「……確かに。これはジュリエルド・・・・・・隊長のサインだな」

 ジュリエットのことを本名で、なおかつ隊長と呼ぶと言うことは、こいつはもしかして……

「ジュリエルド隊長って……もしかしてあんたは国家騎士なのか?」
「ああ。名乗るのが遅れたが、俺はノールデン王国騎士団・第三工兵大隊所属、大隊長のジエロ・ダイアという。ジュリエルド隊長の元部下で、今はここの責任者を務めている」

 おっと、まさか声を掛けて来た本人が責任者だったとは。これは思わぬ出会い方をしたものだ。
 それにしても、何処からどう見ても土木工事のおっさんなのだが、実は立派な騎士様らしい。
 この見た目からは、騎士成分は微塵も感じられないがな。
 あ、いや、待てよ?
 そもそも俺が出会った騎士って、アグリスタの自由騎士組合のギルマスであるブルックに、セリカの部下であるグリッド達強面集団、それにジュリエットなど、見た目騎士っぽくない奴らばっかじゃね?

 騎士と言われて納得出来そうなのと言えば、セリカや、セリカの部下に居る極少数な普通っぽい見た目の奴ら、それとアグリスタで騎士の見習いをしていたアシス君くらいなものではなかろうか?

 こう考えると、八割方なんか違うんじゃないか? って奴らばっかりなのか……

「俺はスグミだ。これでも一応、銀級の自由騎士をしている。まぁ、よろしく」

 大男、ジエロに倣い、俺も軽く自己紹介。

「ほぉ、銀級か。それなりに実力はある、ということか。では、手紙を改めさせてもらうぞ」
「どうぞ」

 別に封蝋がされているわけでもないので、ジエロは包みから書状を取り出すと文面に視線を走らせる。
 
「……ふむ、ジュリエルド隊長からは好きに使えと、そう書いてあるな。
 使えないようなら送り帰せ、とも書いてある」
「なんだそれ? 随分と適当だな……」
「して、スグミと言ったな? お前は何が出来る? 銀級の自由騎士だというなら、見た目通りということもあるまい?」
「そうは言われてもな……そもそも、ここでどういう作業をしているのかすら俺は聞かされていないんだ。
 まずは何をしているのか、それを教えてくれないか?」

 というわけで、ジエロからここでの作業内容を詳しく聞くことに。
 とはいえ、だ。
 話を聞けばやっていること自体は非常に簡単なことだった。
 まずは老朽化して傷んでいる壁を破壊し、そこに新しい石材で壁を作り、最後に強度の増加、また見た目を整える為に、補強材でコーティングして終了。
 漆喰に見える部分が、そのコーティング剤であるらしい。
 しかし、言うは易く行うは難し。
 壊すのはまぁいいとしても、大きな石材を運びそれを積み上げ壁にするのはかなりの重労働であることは間違いない。
 なにせ見える限りでも、石一個が業務用の大型冷蔵庫より大きいからな。もはや、石というより岩だ、岩。

 確かに、こんなサイズの岩を運んだり持ち上げたりするのが仕事だというのなら、俺みたいなモヤシが仕事をしに来ましたと言えば、舐めてんのか? と言われても仕方あるまい。
 てか、これだけのことをさせておいて賃金が安いというのだから、そりゃ人も来ねぇだろうよ。

「ほぉ~ん、でもそう言う割には、働いている人が少ないような気がするが?」

 およそ、少人数では出来そうもない重労働の割に、人の姿がちらほらしか見当たらないことに関して、ジエロにそう尋ねてみる。

「元々人手が足りてねぇ、ってもあるが今は肝心の石材の確保が遅れていてな……
 取り敢えず、手を入れられるところから手分けで片付けているところだ」

 なるほど。ここで俺がやることが見えて来たな。要は、エルフの村でやって来たこと同じである。
 城郭用の石材が無いというのなら、作ればいいだけの話しだ。
 普通なら出来ないようなことでも、俺なら出来ることはそれこそ山のようにあるのだ。

 今でこそ、街壁の一部が崩され、基礎部が剥き出しになってはいるが、間違いなく元々はそこに老朽化して取り除かれた石材が入っていたはずだ。
 ならば、それら取り除かれた材料を元に、【結合バンド】なり【形状変化シャープ・チェンジ】なりを使用してまた新しい石材に作り替えてしまえば、追加資材なしで補修することが可能となる。

「おーけー。仕事内容は大体理解した。で、まずは論より証拠、これを見て欲しいんだが……」

 俺はそう言うと、足元に転がっていた石ころに数個拾い、それをジエロに見えるように差し出した。

「石ロコ? これが何だって言うんだ?」
「まぁ、見てなって」

 というわけで、ジエロの目の前で、俺は【結合バンド】を使い複数の石ころを合体させ、【形状変化シャープ・チェンジ】で綺麗な立方体へと成型する。
 石という固い固形物がウニウニと液体の様に蠢き、まるで水銀の様に一つにまとまる様は、何度見ても変な感じがするな。

「なっ!? お前っ! 今何をっ……」

 その様子を見て、驚くジエロ。

「とまぁ、俺はこういう芸当が出来るわけだ」
「お前……錬金術師だったのか?」
「似た様なもの、だと思ってくれればいい。どうだ? 役に立ちそうだろ?」

 詳しく説明するのも面倒なので、そういうことにしておく。
 ちなみに、セリカ曰く、こうした物体の形状を変える魔術は、正確には錬成術というらしいのたが、そんなことをここで言っても意味はないのでスルーしておく。

「……その力で、どれくらいの大きさの石まで作れる?」

 俺の能力を見て、ジエロが少し何を思案するように黙る。
 と、急に視線が鋭くなり突然前置きもなくそんなことを聞いて来た。
 おそらく、俺と同じようなことを考えたのだろ。

「どれくらいでも。例えば、そこの城郭に使っている石くらいのサイズなら、材料があれば簡単に作れるぜ?」
「……分かった。採用だ」

 というわけで、無事採用が決定しました。
 よし、取り敢えず門前払いになるようなことはなくてよかったよかった。
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