不死の魔王と不滅の魔女 ~悠久スローライフのススメ~

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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1話 ようこそ魔王城へ!

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艱難辛苦を乗り越えて、勇者たちは今、魔王城の前に居た。
 それは、とても長い……長い道のりだった。
 宮廷占い師が魔王の復活を告げ、祖父である国王に魔王の討伐を命ぜられた時はどうなるかと思った。
 勇者は勇者になる前は、一国の王子だった。
 剣の腕が立つわけでもなく、魔法の才があるわけでもなく……
 戦いなど知らない、極々平凡な王子に過ぎなかった。
 そんな王子がある日突然、“魔王を倒すのじゃ!”と祖父に言われ半ば強引に旅立たされたのだ。
 一人では、絶対にたどり着けなかった道だ。
 しかし、王子には……勇者には仲間たちがいた。
 心から信頼を寄せられる、頼もしい仲間たちだ。
 仲間たちと冒険をすることで、勇者は身体的にも精神的にも大きく成長することが出来た。
 窮地を幾度となく救ってくれた頼もしい戦士(男)。
 心が折れそうになる度に支えてくれた僧侶(女)。
 迷ったときに道を示してくれた魔法使い(女)。
 そんな仲間が、勇者には沢山いた。
 仲間たちに助けられながら、勇者はなんとかここまで辿り着く事が出来た。
 魔王は、もう目の前だ。
 そして、この長い旅の終わりもまた……

「勇者……」

 僧侶の言葉に、皆が勇者へを見る。
 勇者は皆を見渡すと、一つ頷き一歩を踏み出した。

 ぐっ……

 目の前にそびえ立つ、巨大な門に勇者は手を伸ばし、力を込める。

「くっ!」

 更に、力を込めるが、城門はピクリとも動かなかった。
 巨石を片手で持ち上げ、オーガの一撃さえ受け止められる勇者がどんなに力を込めても、城門はピクリとも動かなかった。

「代わって、勇者さま」

 声を掛けたのは魔法使いだった。
 勇者は素直に場所を空けた。
 魔法で一撃で吹き飛ばしてしまおうと言うのだ。
 魔法使いの瞬間火力は、このパーティーの中でも随一だった。
 今まで、魔法使いのその強大な魔法に救われた事は一度や二度ではない。
 勇者は絶対の信頼を、魔法使いに寄せていた。

「紅蓮の焔よ! 輝ける紅き龍の灼熱のかいなを持って!
 今! その一切を灰燼へと帰さん!
 熱爆灼獄フレイム・インフェルノ!!」

 一瞬の閃光。
 その一拍の後に、すさまじい爆風と爆音が辺りに木霊した。
 肌を焦がすような熱風が、勇者の頬を薙いで行く。
 立ち込める煙が晴れる……しかし、城門は未だそこにあった。

「うそ……」
「流石は、魔王城を守っている門だけの事はありますね。
 かなり強固な結界が施されているようです。
 なら、ここは私の出番でしょう」

 そう言って一歩前へと踏み出したのは僧侶だった。
 僧侶の神聖魔法にはいつも世話になってた。
 しかし、僧侶の真価は回復魔法だけにある訳ではなかった。
 味方を守る結界の構築、そして、敵の結界の破壊。
 それこそが、僧侶の本領だった。

「生と死、そして戦の神ヴァハよ! その大いなる力の一端をこいねがう!
 今、我らの前にある壁を打ち壊し! 我らが前に光の道を創らん!
 聖衝破鎚セイクリッド・ブレイク!!」

 衝撃はない……
 ただ、先ほどとは比べものにならないほどの閃光が辺りを満たした。
 白。
 世界は白一色に塗り上げらのではないかと、そう錯覚するほどの光量に目がかすんだ。
 そして、次第に視力を取り戻したその先には……

「なんて結界なの……私の持つ最大級の結界破壊魔法で壊せないなんて……」

 変わらず、門はそこにあった。

「どうする勇者? ここは諦めて別の入り口を探すか?
 多分、我々の全力を持ってすればこの結界を破壊することは出来るだろうが……
 ここで無駄に体力や魔力を消費するのは得策ではないぞ?
 この後に控えてるのは魔王なのだからな」

 百戦錬磨の戦士は、何時だって的確なアドバイスをくれた。
 戦士の言うことは最もだ。
 勇者たちは魔王を倒す事が目的であり、城門を破壊することではない。
 勇者は戦士の言葉に頷くと、別の進入口を探して歩き始め……ようとした時……

 バカンッ!!

「なっ、なんて事をするゴブか~!? 人様の家の玄関に、いきなり大魔法ブッ放とか!
 なに考えるゴブっ!」

 大きな城門にばかりついつい目が行ってしまい、勇者たちはまったく気が付かなかったが、城門の隣にとても小さな、それこそ人が一人通れる位のサイズ扉が据え付けられていた。
 それが突然勢い良く開くと、中から勇者の身長の半分もない位の緑色をした小さな人影がすごい形相で飛び出してきたのだ。
 低い身長、緑色の体色、そして特徴的な尖り釣りあがった耳……
 ゴブリンだ。
 しかも、何処にでもいる、極々普通の、なんの変哲もない、それこそ駆け出し冒険者にフルボッコにされる、あの、ただのゴブリンだ。
 何故か最終ダンジョンの門前に、そんなふつーのゴブリンがいた。

-------------------------------------

『ぎょうむにっし。
 エルダのつき、23にちめ。はれ。
 きにゅうしゃ ごぶーりん・あれくさんどろ・ほーえんはいむ3せい。
 きょうは、まだ、だれもきてないゴブ。
 きのうもだれもこなかったゴブ。だから、きょうもきっとだれもこないゴブ。
 おひるに、おくがたサマがつくってくれた“さんどいっち”をたべたゴブ。
 とても、おいしかったゴブ。
 おくがたサマはさいきんは“きょうかりょうり”というのにハマっているらしいゴブ。
 たべるだけでつよくなる“りょうり”だ、といっていたゴブ。
 そういわれると、ゴブもなんだかつよくなったようなきがするゴブ。
 いまなら“ほぶごぶりん”にしんかできそうなきがするゴブ。
 ゴブのユメはいつか“ろーど・ごぶりん”になって、まおうサマのように“いっこくいちじょう”のあるじにな……』

 ドッゴーーーン!!

「なっ、何事ゴブか!?」

 その日、ゴブは事務所で業務日誌を書いていたゴブ。
 そしたら、突然とんでもない爆発音が城門のウラ・・側から聞こえてきたんだゴブ。
 魔王様が張った結界のお陰で、事務所の方は少しの振動で済んだゴブがこの威力だと城門の向こう側はどうなっているかわかった物じゃないゴブ。
 入城者の受付管理はゴブの仕事ゴブ。
 何か問題が起きたら、ゴブが怒られてしまうゴブ!
 ゴブは日誌を書くのを途中で止めて、の様子を見に行く事にしたんだゴブ。
 事務所を出て、入城管理をしている受付小屋に入ろうとした時、何か一瞬空が光ったような気がしんだゴブ。
 ゴブが“何かな?”と思って空を見上げたら……

 ペッカーーー!!

「ゴブゥゥゥゥゥ!!!
 目がっ!! めがぁぁぁぁぁ!!」

 あまりの閃光に、ゴブの愛らしい瞳が潰れたかと思ったゴブ。
 しばらく地面をゴロゴロしていたら……何とか見えるようになてきたんだゴブ。
 ってか、何でいきなし魔法なんてブッ放してるゴブか!?
 人間共の軍隊ゴブか!? それとも、何か“勘違い”して“また”冒険者が腕試しにでも来たゴブか!?
 ゴブは、まだチカチカする目でフラフラしながら、受付小屋に入ると業務用の小さな通用口から、外に飛び出したんだゴブ。
 この時、ゴブの怒りは既に“有頂天”だったゴブ!
 文句の一つや二つも言わないと、収まりそうになかったんだゴブ。

「なっ、なんて事をするゴブか~!? 人様の家の玄関に、いきなり大魔法ブッ放とか!
 なに考えるゴブっ!」

 正門である城門と、通用口とは少し離れているんだゴブ。
 だから、城門前まで、ゴブは少し走ったゴブ。
 そしたら、そこには四匹の人間がいたんだゴブ。
 オスが二匹にメスが二匹だったゴブ。

「ホント何考えてるゴブか!? 人間には常識ってものがないゴブか!!」

 ゴブがそう怒鳴ると、人間共は急にオタオタし出したんだゴブ。
 この偉大なるゴブリン。
 ゴブーリン・アレクサンドロ・ホーエンハイムⅢ世様を前に恐れをなしたのが直ぐに分かったゴブ。

「なぁ? コレってふつーのゴブリンだよな? 何で最終ダンジョンにこんな雑魚・・がいるんだ?」

 オスの小さい方が、何かとんでもない事を口走りやがったゴブ!?
 トサカに来たゴブ! 許せないゴブ!

「ゴブはそんじょそこらのゴブリンと一緒にされるのは心外ゴブ!
 ゴブは魔王様にお仕えする由緒正しき“事務ゴブリン”ゴブ!」
「事務ゴブリン……? 聞いたことないぞ、そんなゴブリン……」

 なにか人間共は、互いに顔を見合わせていたゴブ。
 当たり前ゴブ!
 ゴブの使命は、魔王様の“ですくわーく”のお手伝いゴブ。
 そこらのゴブリンの様に、野山をウロウロしている奴らと一緒にして欲しくないゴブ!
 “いんてり”な“きゃりあ”官僚なんだゴブ!

「でも、まぁン“ゴブリ”だし一応、っとくか? 仲間とか呼ばれるとやっかいそうだし……」

 小さいオスが、当然のようになんかごつい剣を抜いたゴブ!
 力があれば、何をしても許されると思ってるクチゴブね!!
 ドタマに来たゴブ!! ちょっとそこ座れゴブ!! 

「そうやって直ぐ、殺す事で解決しようとするから人間の世界から戦争がなくならないゴブ!
 貴様らのその行いが戦火を拡大して、果ては飢えや貧困の温床になってるゴブ!
 そのしわ寄せは、何時だって弱い者が被っている事実に目を向けろゴブ!」

 奥方様は、世界各地の戦災孤児なんかを集めては、手厚く保護しているゴブ。
 しかも、魔術とか教えていつかは自立出来るように支援もしてるゴブ。
 たまにゴブも付いて行って、小さな人間共の世話をしているゴブ。
 こいつらに、奥方様の爪の垢でも飲ませてやりたいゴブ!

「魔王の手先に、人道的な事を言われた……なんか、すごく複雑な気分……」

 とんがった帽子を被っていたメスが、何か言っていたゴブ。しらんゴブ。

「あの~勇者? このゴブリンは至極まっとうな事を言っています。
 少し話を聞いた方がいいのではないでしょうか?
 もしかしたら、ここは私たちが目的としている魔王とは別の魔王の城なのかも知れませんし……」

 なんか角張った帽子を被ったメスが、困り顔でそんな事を言っていたゴブ。
 こいつは、きっとバカゴブね。
 世界に何人も魔王がいるわけないゴブ。
 魔王は偉大なる魔王様ただお一人ゴブ!

「だな……
 今ここでこいつを殺したら、間違いなく我々はただの悪党に成り下がってしまうぞ?」
「むむむ……わかったよ……
 とりあえず、話だけな……」

 小さいオスは、渋々といった様子で剣を鞘に収めたゴブ。
 まったく、最近の人間は礼儀がなってなくて困るゴブ!

「で? お前たちは一体何の用で魔王様の城に来たゴブか?
 事と次第によっては、ただじゃおかないゴブよ?」
「ちっ……ゴブリンの癖に生意気な……」
「まぁまぁ、落ち着いて勇者。
 えっと……その、私たちは勇者一行でして……
 その、魔王と戦いに……」

 ああ、いつもの・・・・魔王様への挑戦ゴブね。

「アポはちゃんと取ってるゴブか?」
「えっ……あぽ? あの……“あぽ”って何でしょうか?」

 角張った帽子のメスが困惑した顔で、こっちを見ていたゴブ。

「アポはアポゴブ。“あぽいんとめんと”……面会の予約の事ゴブ。
 そんなことも知らないゴブか? 呆れるゴブ……」
「は、はぁ……すいません……」
「なぁ、こいつやっぱり斬っていいか?」
「落ち着け勇者。一先ひとまずここは僧侶に任せようではないか」
「ええっ!? 私に丸投げしないでよ戦士!」
「で? アポは取ってるゴブか?」
「えっ? あっ、いえ……多分、取ってないです……」
「ノンアポで来ておいて魔法ブッ放っしたゴブか!? 信じられないゴブ……
 礼儀とか、常識以前の話コブね……
 分かったゴブ。
 手続きをするゴブから、こっちに来るゴブ」
「あっ、はい……お手数をお掛けして……すいません……」
「いいゴブ。これもゴブの仕事ゴブ」

 ゴブは勇者一行を連れて、受付窓口へと案内したゴブ。
 ゴブが飛び出した通用口の直ぐ横に、その窓口があるゴブ。

「なぁ……コレを見てどう思う……」
「なんか……なんか……ね……」

 小さいオスととんがり帽子のメスが、受付窓口のを見て何か言っていたゴブ。
 ゴブも何かあるのかと思って見上げてみたゴブが、特に変わったものはなかったゴブ。
 そこにはただ『魔王城入城受付はこちら ようこそ! 魔王城へ!!』という看板が掛かっていただけゴブ。
 堅苦しくなりがちな城門前の雰囲気を、少しでも和やかなものにしたいという奥方様の提案で、皆で考えた看板ゴブ。
 パステルカラーに彩られた、華やかな看板ゴブ。
 会心の出来ゴブ!
 一文字一文字、色合いを変えたのがこだわりポイントゴブ。
 ゴブは通用口から、また受付小屋へと入ると、閉ざされたままになっていたシャッターを開けたゴブ。

「え~っと、まずは所属はあるゴブか?」

 コブは受付カウンターに座ると、入城手続き用の書類一式を取り出したゴブ。

「えっと……私たちは国王様の命で魔王討伐の旅をしていまして……」
「国付き勇者ゴブか……じゃ、国の名前を言うゴブ」
「エスタリカ王国です……」
「エスタリカ……? ちょっと、待つゴブ」

 その名前には聞き覚えがあったゴブ。
 確か、到着予定未定一覧の中にそんな名前の国があったような気がしたゴブ。
 コブは、来城予定表に手を伸ばすと“未定”の項目を開いたゴブ。
 ……あったゴブ。
 国王・・からの直々の要請ゴブか……

「お前たち、しっかり予約が入ってるゴブよ」
「えっ!? ウソ! なんで!?」
「そんなこと知らんゴブ。ただ、入城料はまだ払われてないみたいゴブね……」
「入城料……ですか……」
「おいおい! 魔王倒すのに金払えってのかよ! ふざけんなっ! 魔王って奴はどんだけ金にがめついんだよ!」

 この小さいオスは五月蝿いゴブ。

「魔王様は、お金にガメツクないゴブ!
 このお金だって、戦災孤児の支援や、重い病に苦しむ者のための新薬の開発、痩せた土地でも育つ作物の研究費なんかに回されるゴブ!
 私利私欲で集めてるわけじゃないゴブ!」
「ねぇ、ここって本当に魔王の城なの……?」
「そんな事、私に聞かないでよ……」

 ゴブは、来城予定表の今日の項目を開いてエスタリカの勇者たちが到着した事を記入したゴブ。
 序ついでに、未定表の方もちょちょっと書き換えておいたゴブ。
 デキるゴブは仕事が早いゴブ。

「入場料は、一人に付き500RDリルダゴブ。でも、お前たちは四人パーティだから、団体入場チケットが断然お得ゴブ。
 四人以上八人以下で、1500RDリルダゴブ。
 お前たちなら500RDリルダ、最大で2500RDリルダもお得になるゴブ」
「なんだよ。金を取るとか言うから、一体いくら取られるかと思ったら、子どもの小遣い程度じゃないか……」
「えっと……じゃあ、それでお願いします」
「分かったゴブ」

 ゴブは角張った帽子のメスから1000RDリルダ紙幣を二枚渡されたから、500RDリルダ硬貨を一枚返したゴブ。
 このエリートゴブに掛かれば、この程度の計算頭の中だけで答えが出せるゴブ。
 優秀なゴブは、仕事が多くて困るゴブ。

「じゃあ、お前ら手を出すゴブ」
「手?」

 小さいオスがゴブに向かって手のひらを差し出したゴブ。

「違うゴブ! 手のウラ・・側ゴブ!」
「裏側……?」
「“甲”のことではないでしょうか?」
「えっと……こっちか?」

 角張った帽子のメスに言われて、小さいオスが手をくるりとひっくり返したゴブ。

「そうゴブ」

 ペタン

 ゴブは、小さいオスの手にハンコを押してやったゴブ。

「おっ、おい!? 今、何をした!?」

 小さいオスが、すごい勢いで手を引っ込めたゴブ。
 何をビビっているコブ。肝っ玉のちいさいオスゴブね。

「城門を通るための魔方陣を押したゴブ。それが無いと、城門の結界に阻まれて通れないゴブよ」
「魔方陣……だと? 何もないぞ……」

 小さいオスは、ゴブが“すたんぷ”した場所をまじまじと見ていたゴブ。
 そんな事をしたって見えるわけないないゴブ。

「当たり前ゴブ。目には見えない魔法のインクを使っているゴブ。
 何か魔術的な干渉でもない限り、目に見えないゴブ」

 そんな話をしながら、ゴブは残っていた奴らにもペタンペタンと“すたんぷ”してやったゴブ。

「確かに……微弱だけど、魔力の流れを感じる……」

 とんがり帽子のメスも、小さいオスと同じ様に“すたんぷ”した場所をじっと見ながらそんな事を言っていたゴブ。
 このメスは少しは、魔力を感じ取れるみたいゴブね。
 ちなみに、ゴブにはまったく分からないゴブ!

「それじゃ、次はこの用紙に名前を書くゴブ。“ふるねーむ”ゴブよ?
 で、“ぱーてぃーりーだー”の名前は必ず一番上に書くゴブ」
「それなら、俺からか……」

 小さいオスがが近づいてきたから、ゴブはペンと紙をオスに渡したゴブ。
 小さいオスはスラスラと記入すると、ペンを大きなオスに渡して、大きなオスは角張った帽子のメスに渡して、角張った帽子のメスはとんがり帽子のメスに渡して、とんがり帽子のメスがペンをゴブに返したゴブ。

「ゴブ。問題ないゴブ」

 ゴブは、記入漏れがないか“ちぇっく”をしてからOKを出したゴブ。

「じゃあ、次は……」
「まだ何かあるのかよ……」
「いちいちうるさいゴブ。お前の様な小僧はもう少し、辛抱する事を覚えるゴブ。
 他の奴らは大人しく従ってるゴブ。もっと見習うゴブ」
「てっ、テメェ……」
「まぁまぁ、落ち着け勇者」

 小さいオスは大きなオスに宥められていたゴブ。

「ゴホン……話が途切れたゴブ。続きゴブ。
 次は、城内の難易度設定をするゴブ」
「……難易度……ですか……?」

 角張った帽子のメスは、ゴブの話をちゃんと聞くいいメスゴブ。
 知らないことをちゃんと聞いてくるゴブ。
 ただ、知らない事が多過ぎゴブ。もっと勉強するゴブ。

「難易度設定は、城内でのモンスターの強さを決める事ゴブ。
 難易度は全部で七段階あるゴブ。
 一番下は“びぎなー”。これは、モンスターが一切出ない“もーど”ゴブ。
 城内を観光気分で見学しながら、魔王の間を目指すといいゴブ。
 魔王様と戦う事だけが目的の場合にオススメゴブ。
 無駄な体力・魔力を消費しなくていいゴブ。
 次が“いーじー”ゴブ。ここまで来れる冒険者なら“わんぱん”で倒せる弱っちいモンスターが出るゴブ。
 冒険の臨場感を体験したい人向きゴブ。残念ながら、この難易度のモンスターは倒してもお金もアイテムも落とさないゴブ。宝箱もないゴブ。
 その上が“のーまる”ゴブ。少し強いモンスターが出るゴブ。
 冒険を楽しみたい人向けゴブ。
 この“もーど”から、モンスターがお金とアイテムを落とすようになるゴブ。城内にも無数の宝箱が設置されるようになるゴブ。
 でも、ぶっちゃけちゃっちい物しか入ってないゴブ。お金も全然手に入らないゴブ。
 その上に“はーど”“べりーはーど”“すぺしゃる”“へる”と続くゴブが、ここからは完全に腕試し用ゴブ。それに、仕様も一緒ゴブ。
 ただ、難易度が高ければ高いほどいい物が出たり、お金が沢山手に入るゴブ」
「一番上だと、どれくらい強いの……?」

 とんがり帽子のメスが、そんな事を聞いて来たから素直に答えてやったゴブ。

「伝説級のモンスターがごろごろ出てくるゴブ。
 その代わり、手に入るアイテムも伝説級、神話級と珠玉の一品が手に入るゴブ。
 お金だって、モンスターを一匹倒せれば一千万単位で手に入るゴブ」
「一千万単位……」

 とんがり帽子のメスの目がお金になってるゴブ……

「どうしましょうか勇者?」
「そんなの一番上に決まってるだろ!」

 こいつはバカゴブか? ゴブの話を着ていたゴブか?
 お前らがどれくらい強いか知らないゴブが、たぶん、入って一秒で灰ゴブ。

「無難に“のーまる”辺りがいいと思うんですが……」

 角張った帽子のメスは、小さいオスの言葉が聞こえなかったのか気にせず話を進めていたゴブ。
 結構大きい声でしゃべっていたと思うゴブが……
 若いのに耳が遠いゴブか……ちょっとかわいそうゴブ。
 奥方様に診療して貰った方がいいかもしれないゴブ。

「いや、この際“びぎなー”とやらで楽に行くのもありかもしれんぞ?
 我々の目的は魔王の打倒であり、モンスターの討伐でも、ましてや金銀財宝や伝説の武具でもないのだからな。
 温存できる物は、温存しておくに越したことない」
「ですが……
 後で冒険譚を聞かれたときに“魔王城は素通りで楽でした”なんて言えませんよ?
 戦っても居ないのに“すごく大変だった”とか言うのも良心の呵責が……」
「僧侶は真面目過ぎ……もっと気楽に考えればいいのに……」
「魔法使いが気楽過ぎなんです!」
「ふむ……僧侶的には“実際に戦った”という実績が欲しいわけか?」
「……はい」
「と、なるとやはり“のーまる”が妥当だろうな……」
「いや! だから、一番上だって……!」
「勇者は黙っていて下さい!」
「勇者、今大事な話をしている。少し静かにしていてくれ」
「勇者さま、うるさい……」
「ぐっ……お前ら……」

 あっ、なんか小さいオスが涙目になってるゴブ。

「……ですね。
 では、難易度は“のーまる”でお願いします」

 話が付いたのか、角張った帽子のメスがそう言って来たゴブ。

「分かったゴブ」

 ゴブは勇者一行が名前を書いた紙に大きく“のーまる”と記入したゴブ。

「少し待つゴブ」

 ゴブは近くに置いてあった“まいく”を引き寄せると“すいっち”を入れたゴブ。

「あ~あ~、テステス、あ~あ~、テステス。“まいく”テステス。
 只今より勇者一行が城内に入るゴブ。難易度は“のーまる”、難易度は“のーまる”。
 担当各員は速やかに持ち場に着くゴブ。
 全員ケガをしない様、安全確認は各自徹底するゴブ。
 今月は、“安全強化月間”ゴブ。
 合言葉は“注意一秒怪我一生” 合言葉は“注意一秒怪我一生”ゴブ。
 では、今日もお勤めに精をだすゴブ」

 ゴブは“まいく”の“すいっち”を切って、元の場所に戻したゴブ。
 これで準備は完了ゴブ。

「それじゃ、城門から入るゴブ。
 あっ、城内の地図を渡すのを忘れていたゴブ」

 コブは机の引き出しから、紙を一枚取り出して角張った帽子のメスに渡したゴブ。

「あっ、ありがとう……ございます……」

 このエリートゴブが、うっかりミスをするところだったゴブ。
 危ない危ないゴブ。

「もし、道に迷ったり、何か“とらぶる”が起きた場合は、手に押した魔方陣に向かって“えすけーぷ”と唱えるゴブ。
 そうすれば、一瞬でここに戻ってこれるゴブ。
 但し、緊急脱出魔法を使うと魔方陣の魔力は切れてしまうゴブから、再度入城する場合はもう一度入城料を払って貰う事になるコブ。
 使うときは考えて使うゴブよ」
「ねぇ、ここって本当に魔王の城なの……?」
「だから、そんな事、私に聞かないでよ……」
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