不死の魔王と不滅の魔女 ~悠久スローライフのススメ~

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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11話 ガチャじゃないよ?

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 それから十数分が経ちました……
 相変わらず、勇者様が大人しくなる様子はありません。
 未だに、地面に転がってジタバタしておりました。
 ……なかなかの持久力です。
 僧侶様と魔法使い様は、勇者様の相手をするのを早々に止めており、今は部屋の隅の方で手に入れたアイテムについて語り合っておられました。

「……すまないが、また宝箱を開けさせてやることはできまいか?」
「申し訳ありません。一つの宝箱につき一度の入城・・・・・で開けられる回数は一度となっておりますので……」

 戦士様が、呆れ果てた様子でそのようにお尋ねになってきたのですが、私はそれは出来ない事であると伝えました。

「ん? それはつまり、一度出て・・・・からならば再度入城すればまた宝箱を開くことが出来る、ということだろうか?」
「……確かに、その方法であるなら可能です」

 出来るか出来ないか、可か不可か、と問われれば確かに可でした。
 しかし、高々ノーマルの宝箱開けたさに、魔王城を出たり入ったりするなど……聞いたことがありません。
 戦士様が、その事実を勇者様へと伝えると勇者様は突然その動きをピタリと止めて、ムクリと起き上がりました。
 そして、拳を高々と突き上げ……

「エスケープっ!」

 シュイン!

 数分後……

 ダダダダダダダダダダッ!!

「はぁ……はぁ……はぁ……これでいいんだな?」

 勇者様は肩で息をしながら、宝物庫の前に立っておられました。
 そして、宝箱の前まで歩み寄ります。

「はぁ……はぁ……ゴクッ……てぇあぁっ!」

 パカッ……

「……なんだコレ?」

 勇者様は、宝箱の中に入っていた布切れを取り出して、ぽつりとつぶやきました。

「ゴブリンの腰巻です。
 ……有り体に言ってしまえば、ゴミ、ですね……」
「チクショー! エスケープ!」

 シュイン!

 数分後……

 ダダダダダダダダダダッ!!

「はぁ……はぁ……はぁ……もう一度だっ! とぅりゃぁぁぁ!」

 パカッ……

「……」
「コボルトの腰巻ですね。ゴミです」
「クソッタレ! エスケープ!」

 シュイン!

 数分後……

 ダダダダダダダダダダッ!!
 
「はぁ……はぁ……はぁ……まだまだ! うぉりゃぁぁぁ!」

 パカッ……

「オーガの腰巻ですね。ゴミです」
「ドチクショウメっ!! エスケーーーープっ!!」

 シュイン!

 数分後……

 ダダダダダダダダダダッ!!

「ぜぇっ……ぜぇっ……ぜぇっ……まっ……だだっ……まだっ!」

 勇者様は息も絶え絶えといった様子で宝箱に縋(すが)り付くと、宝箱を力なく開けました。

 パカッ……

「クッセェッ!!」
「オークの腰巻ですね。ゴ……」
「なんで腰巻ばっか出るんだよ!! エスケェェェェプッッッ!!」

 シュイン!

 数十分後……

 ズリッ……ズリッ……ズリッ……

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……くっ! まっ……まだ……まだだ……」

 勇者様は、這いずるように宝物庫へと入ってきました。
 回を重ねる毎に、戻ってこられるまでの時間が徐々に延びていっていますね。
 そろそろ体力の限界でしょうか?

「今度こそ……今度こそっ!」

 パカッ……

「……」
「スライムの腰……」
「スライムに腰巻は必要ねぇだろっ! っざけんなっ! エスケープッ!」

 シュイン!

 …………
 ………
 ……
 …

 パカッ……

「ローパーのこ……」
「ローパーの腰ってどこだよ! エスケープ!」

 パカッ……

「スケルトンのこ……」
「奴らぶっちゃけ全裸じゃねぇーか! どこ隠すってんだ! エスケープ!」

 パカッ……

「ゴーレムのこ……」
「ゴーレムに服着せんなっ! エスケープ!」

 パカッ……

「ダークウィッチのこ……」
「魔術師系の魔物なら、せめてローブを寄越せ! エスケープ!!」

 パカッ……

「エルダートレントのこ……」
「もう、それはこも巻き(注:木に藁を巻く害虫駆除法。冬になると木に巻きつけられてるアレ)じゃねぇーか! エスケープ!!」

 勇者様の意外な博識ぶりに、私、少々驚きました。
 そしてなにより、必ず出てきたアイテムに一言添える勇者様の行動が、なんだか少し楽しくなってきました。
 それからというもの、勇者様は何度も何度も何度も何度も何度も何度も……
 宝箱に挑戦致しましたが、結果、満足のいく物は出ませんでした。

「エスケーーーーープ!!」

 シュイン!
 
 …………
 ………
 ……
 … 

 最後の転送魔法から、約三十分ほどが過ぎましたが勇者様が一向に帰って来る様子がありません。
 僧侶様と魔法使い様は、ずいぶん前から床の上に布を敷いて座り、ガールズトークに花を咲かせているようですが、戦士様は室内をウロウロとし、勇者様の事を案じているようでした。
 戦士様は、なんだかんだと言いつつも、面倒見のよい方なのでしょう。
 それから程なくして、戦士様が勇者様を探しに行く事を進言し、僧侶様と魔法使い様がしぶしぶながら同行することとなりました。
 結果だけを申し上げさせて頂きますと、勇者様はすぐに見つかりました。
 なぜなら、勇者様は魔王城・城門前で膝を抱えて座り込んでいたのですから。
 そう、勇者様は度重なる再入城がたたり、遂にお財布が空となり魔王城の入場料が払えなくなってしまったのです。
 まるで汚物を見るような皆様の視線に晒されながらも、勇者様は“これで最後にするから”と“後生だから”と“一生のお願いだから”と、僧侶様に泣きつき、懇願し、お金を融通して頂いていました。
 人間、こうなると惨めなものですね……
 そうして、勇者様の最後の挑戦が、今、始まろうとしていました……

「いいですね勇者? これが本当に本当の最後ですからね?
 これを引いたら、何が出たとしても魔王の間を目指しますからね? 分かりましたか?」

 宝物庫へと戻ってきた勇者御一行様。
 宝箱を前にする勇者様に、僧侶様は強めの口調で注意をしておりました。
 その姿はまるで、子供をしかる母親のようでした。

「……分かってるよ……今度こそ……今度こそ……」

 勇者様は呪詛のように同じ言葉繰り返しながら、宝箱へと手を伸ばしました。
 そして、宝箱の蓋をハシッと掴むと……

「っ!!」

 勇者様は目をつぶり、一気に蓋を持ち上げました。

 キラキラ、ペカペカ、テッカーーー!!

「おっ!? おおっ!! 遂に……遂にやったぜっ!」

 宝箱を開くと、そこからは眩い光があふれ出しました。
 この輝きは……間違いなく、伝説級アイテムの輝きです。

「よかったな勇者! この輝き、魔法使いと同じじゃないかっ!」
「ふぅ~、これでやっと終わる……」

 輝きが収まるり、勇者様の手には握られたそれは……

「……なんだこれ?」
「そっ……そっ……それはっ!」

 私は、勇者様が握っていたそれから目を離すことができませんでした。
 まさか、こんな所で伝説の……

「なんだメイド? これってすごい・・・ものなのか?」
「はい……それは伝説の……伝説の“魔王の腰巻”でございます……」
「また、腰巻かっ! ちっくしょーがっ!」

 ベシッ!

 なんということでしょう!
 勇者様はこともあろうに、手にしていた魔王様の腰巻を地面へと叩き付けたのですっ!
 私、人形ですので心はありませんが、いくらお客様であるとはいえ、魔王様の所持品だった物を傷つけるなど……私、勇者様の行動に怒りを禁じえませんでした。

「まぁ……まぁ、待て勇者……仮にも“魔王”の名が付いたアイテムだ……
 もしかすると、とんでもない能力が……」
「ありません。
 それは昔、魔王様が着用していたというだけでただの布切れでございます。
 所謂(いわゆる)、“コレクターズアイテム”というものです。
 なので、特に変わった能力は一切ありません」

 私、勇者様の暴挙の所為で対応が少し淡白になってしまいました。
 しかしこれは、仕方がないことなのです。
 私が敬愛する魔王様の所有していた物をないがしろにするなど……
 むしろ、そのアイテムは私が欲しいくらいだというのに……
 ふと気付けば、魔王様の腰巻は未だ床の上に置いたままになっているではありませんか。
 私は、周囲を確認した上で叩き付けられた魔王様の腰巻をさっと回収すると、そっと懐へと忍ばせました。
 まさか、こんな所でこのようなお宝を入手することが出来るとは、なんたる僥倖。
 これは、奥方様にバレないようにしなくてはなりません……
 もしバレたら、没収されてしまいますからね。
 それは何としてでも阻止しなければなりません。

「チクショウ……チクショウ……」

 私が、思いもかけない取得物に喜ぶ傍ら、勇者様は宝箱の前にひざまずき……泣いていました。
 号泣です。ちょっと引きます……

 ピコピコピコーン

 そんな時、私に一件の魔法通信が魔王城管理システムより届きました。
 内容は……

「勇者様、少しよろしいでしょうか?」
「グスッ……グスッ……なんだよ、メイド?」
「おめでとうございます。
 なんと、勇者様は“腰巻シリーズ”をコンプリートなされましたので魔王様に代わり私から、“腰巻コレクター”の称号を授与したいと思います」
「いらなねぇよっ!
 なんだよ“腰巻コレクター”って! そんなのただの変質者じゃねぇーか!」
「しかし、魔王城には称号システムと言うものがありまして、称号を持っておられますと様々な恩恵が……」
「いらねぇって言ってるだろ! “腰巻”からの恩恵ってなんだよっ! 人のことバカにしやがって!」

 冷静さを失っているのか、勇者様は力なく項垂れると“チクショウチが……クショウが……”と泣きながら繰り返すばかりでした。
 そんな勇者様を皆様、哀れむような困ったような複雑な視線で見つめていま……いえ、一名、魔法使い様だけがニヤニヤと笑みを浮かべて“ザマァw”と笑っておられました。
 実にいい笑顔でした。

「では……本当に称号の授与を辞退するという事でよろしいでしょうか?
 注意事項として、一度放棄された称号は、再度条件を満たさない限り再取得は不可能になりますがよろしいですか?」
「いらねぇって言ってんだろっ! 何度も言わせんなよっ!」
「了解いたしました。それでは称号をキャンセルいたします……」

 私は、魔王城管理システムであるキャロル様に称号辞退の連絡を入れました。
 程なくして、データを破棄したとの返信が届きました。

「称号取得条件のクリアを確認しました……
 しかし、実に勿体無いですね……“腰巻コレクター”はその数の多さから入手が非常に困難な称号ですので、他の称号よりも得られるボーナス値が高く設定されていたのですが……」
「……その“称号システム”とは一体どのような物なのだろうか?」

 私の呟きに、たまたま近くにいた戦士様がそう尋ねていらっしゃいました。
 先ほどまで、勇者様を慰めていたと思ったのですが、どうやら僧侶様と交代したようです。
 今、勇者様の隣には僧侶様が着いており、項垂れる勇者様にお説教をしているようでした。

「はい。“称号システム”とは、魔王城内をより楽しく探索して頂く為の隠しボーナスシステムとなっております。
 城内においてある特定の行動をとった場合、もしくは特定の条件を満たした場合に、“称号”が授与されます。
 授与された称号によって、得られる恩恵は異なりますがどれも魔王城を探索するにあたり必ず役に立つものばかりとなっております」
「例えばどのようなものがあるのだろうか?」
「そうですね……
 例えば、詳しい取得条件は明かせませんが“チェリオット”という称号が御座います。
 これは、授与された者のSTRを200%上昇させる恩恵を与える称号になります」
「ほう……それは確かに便利そうだな……
 では、先ほどの“腰巻コレクター”という称号の効果はどう言ったものだったのだろうか?」
「はい。
 “腰巻コレクター”の効果は“幸運値の反発上昇”と言う物でございます」
「……幸運値? 反発?」
「はい。いわば、元が不幸であればあるほど得られる幸運値が増えるという代物です。
 空箱を引き当てしまうほどのマイナス方向への強運であるなら、そこから得られる幸運値は天文学的単位になると思ったのですが……残念です……」

 私の話を聞き終わり、戦士様はなんとも微妙な表情を浮かべておりました。

「それは……」
「本当……なのか……?」

 戦士様の言葉を遮るようにして、何処からか声が聞こえてきました。
 私が、声のした方へ振り向きますと、そこには幽鬼のようにふらふらと立っている勇者様がおりました。
 たぶん、戦士様との会話を聞いていたのでしょう。

「本当に運が良くなるのか……?
 だったら、あんな変な名前の称号でもいいっ! 俺にその称号を……」
「申し訳ありませんが、称号の取得条件は既に破棄されておりますので、再取得のためには再度条件を満たして頂く必要があります」

 まるで、ゾンビか何かのようにゆらゆらと勇者様は私に近づいてきましたが、私がそう説明すると勇者様は力なくその場に崩れ落ちてしまいました。

「なんだよ……チクショウ……ううっ……」

 勇者様はただ静かに、その場で涙を流していました……

-------------------------------------

「どうせ俺なんて居なくてもいいんだよ……だってそうだろ?
 誰も俺の言う事なんて聞いてくれないしさ……直ぐ殴るしさ……
 運だってないし……はっ、俺だけだぜ? いいアイテム引けなかったの?
 確かに伝説級のアイテムは引いたよ? 引いたけどさ……何? “魔王の腰巻”?
 なにそれ強いの? って思ったらタダの布キレって言われるしさ……
 そもそも“勇者”って立ち位置が微妙なんだよ……
 魔法は俺だって使えるけど、魔法使いの方が全然威力強いしさ……物理攻撃力なら戦士の方がイイじゃん?
 そりゃさ……聖剣のおかげで俺の方が攻撃力とかステは高いよ? でもさ、俺が使える剣撃スキルより戦士のスキルの方が優秀じゃん? 範囲系多いし……
 ほらっ、俺って基本単体スキルか自己バフしかないじゃん?
 でも、その単体スキルだって、結局魔法使いの魔法の方がダメ高いし?
 回復魔法だって使えるけど、僧侶の方が回復効率高いし魔法の種類多いしさ……
 器用貧乏なんだよ、勇者って……
 何? 俺って何?
 もう、いなくていいじゃん俺……」

 先ほどから、勇者さまは部屋の隅で三角座りをして壁に向かってぶつぶつと話しかけていました。
 正直、ちよっと怖いですね……

「何時まで拗ねてるつもりですか! ほらっ! 行きますよ勇者!
 さっき、何が出でても魔王の間を目指すって約束したじゃないですか!」

 ほかの皆様は既に準備を整え、いつでも出発出来る状態になっていました。
 しかし、勇者様は……

「やだ……俺、行かない……」
「勇者よ、我侭を言うのもいい加減にしないかっ!」
「……(チラ)……(プイ)……」

 勇者様は、一瞬、戦士様の方へと視線を向けましたが、直ぐに壁の方へと戻してしまいました。

「別に、俺なんて居なくても皆さんなら魔王とかもう、余裕じゃないっスかね?
 秘宝級とか? 伝説級とか? あとは何でしたっけ?
 ああ、そうそう神話級なんてアイテムが手に入っていたじゃないですか?
 腰巻ばっかり手に入れてた俺なんかが一緒に行っても、きっと足手まといにしかならないッスよ。
 俺の事なんて気にしないで、どうぞ、先行ってください」
「何こいつ……チョーむかつくんだけど……」
「なにひがんでるんですか勇者!! だから、勇者には聖剣があると何度言えば……っ!」
「ふーんだ……いいアイテム引いてるお前らには、俺の気持ちなんて分からないんだよ!
 ほらっ! さっさと魔王の間とかいう所へ行って、手に入れたアイテムで魔王を倒してこればいいだろ!」
「ダメだ……これでは埒が開かんな……」

 皆様一様に深い溜息を吐いていました。

「また勇者に宝箱を開けさせるか? そうすれば、多少は機嫌も……」
「嫌です。勇者が満足のいく物が出るまで何度繰り返すつもりですか?
 そんなことをしていたら、私たちのサイフはあのバカな勇者のようにあっという間に空ですよ。
 私たちはただ運が良かったに過ぎないんです。
 そんな幸運は何度もおきません」

 戦士様の提案に、僧侶様は全力で反対していました。
 それはそうでしょう。
 レア度の高いアイテムを立て続けに引いたお三方様が例外で、普通は勇者様のような引きになるのが普通なのです。
 まぁ、ある意味勇者様の引きの強さ・・も異常でしたが……

「しかしこのままでは……
 あっ! そう言えば……すまない、メイド殿。一つよろしいか?」
「はい、なんでございましょう?」

 何か思いついたのか、戦士様は手をポンと打ち鳴らすと、私に声を掛けられました。

「城門にいたゴブリンに聞いた話だが、城内には宝箱が幾つかあるという。
 ならば、ここ以外にも何処かに宝箱があるのではないだろうか?」
「はい。確かにここ第一宝物庫以外にも幾つかございますがおすすめはいたしません」
「(ピクンッ)……」

 私、“ある”ことは肯定しつつも、ご案内するのは極力避けたいと思っておりました。
 と、言うのも……

「それは何故か聞いていいだろうか?」
「はい。魔王城攻略難易度ノーマルに置ける宝箱の設置数は計五つです」
「っ!!(ピクピクピクンッ)」
「一つはここ第一宝物庫ですが、残りは先ほど勇者様が誤って入ってしまった“迷宮回廊”の先にございます。
 現在、魔物の類は出現することはありませんが、設置されているトラップは未だ健在。
 どれも、ノーマル難易度を逸脱した高難易度トラップばかり設置されているため、相応の実力を伴っていなくては大変危険でございます」
「……(コソコソコソ)」

 通称“御もてなしルート”と呼ばれいてるこの右のルートにトラップはありません。
 来城者サービス用の宝箱一つと、魔王の間への直接通路があるだけです。
 しかし、左の“迷宮回廊”ルートは違うのです……
 正に、文字通りの迷宮なのです。

「一度踏み入れれば、後戻りを許さない結界だらけの通路は蜘蛛の巣のように入り組み、しかも、一定時間毎に通路が自動で組み代わる“ダンジョン自動生成機能”を完備。
 これによりマッピング技能の一切が役に立ちません。
 正解の道引き当てる運、そして、難解なトラップを掻い潜る技量。
 その両方を兼ね備えていなくては、とても踏破することは不可能でしょう……」
「そこまでなのか……」

 私の説明に、戦士様が苦虫を噛んだような表情で俯いてしまいました。

「戦士大変よ!」

 そんな時でした。
 僧侶様が、突然、切羽詰ったような大声を上げたのです。

「どうした僧侶? そんな大声を出してキミらしくもない」
「そんな悠長な事言ってる場合じゃないわ! 勇者の姿が見当たらないのよ!
 私が、ちょっと目を離した隙に……」
「なにっ!?」

 戦士様方共々、私も勇者様がいじけて座り込んでいた場所へ目を向けましたが、確かにそこに勇者様の姿は見当たりませんでした。

「っ!? まさか我々の話を聞いて“迷宮回廊”の宝箱に向かったのではないだろうなっ!
 また余計な事を……直ぐに見つけ出して止めるぞっ!」
「マジか……? メンドクサっ!!」
「今止めさせなければ、もっと面倒なことになりますよっ!
 魔法使いも手伝ってください!」
「へいへい……」

 そう仰って、皆様第一宝物庫から飛び出して行きました。

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蛇足知識その11
“腰巻シリーズ”について
当初、腰巻に“パンツ”というルビを振っていましたが、そうすると魔王のパンツを回収していたドロシーさんがただのHENTAIになってしまうので止める事にしましたとさ。
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