5 / 5
5・彼のお母さん
しおりを挟む気づいたのは友達のアヤカの方だった。
「あ、後ろ、カズ君のお母さんだ」
「え、そうなんだ」
一瞬背筋が伸びるが、後ろの席は振り向けない。
カズ君とは、隣クラスの私の彼氏。
私は、まだ彼のお母さんと会ったことないが、カズ君と小中学校一緒のアヤカは面識があったようだ。
カルピスを飲みながら、店員が運んできた熱々ポテトをケチャップに浸し、アヤカとの会話の続きに戻る。
課題を広げつつも、ペンを握ることなくポテトと会話で盛り上がる。
「やだ、かっこいい!」
後ろからの声に意識が向いた。
「でっしょ!? ウチの息子イケメンに育ったでしょぉ?」
「かーくん、大きくなったわねぇ」
話の内容は息子であるカズヤ君の話だった。
母親って息子自慢しちゃうのね、なんて思いながら聞いていた。
「でも、中身は園児と一緒よ、もう、どこに行くのもべったり」
「やっだ、かわいいじゃない!」
え……、カズ君ってそうなの?
「台所だけじゃなく、トイレやお風呂も一緒なのよぉ」
ええっ!? トイレにお風呂もー!?
「わかるー! 男の子ってお母さん大好きなのよねー」
えええっ!?
「うちの男の子も私にばかり甘えてくるのよ」
「あら、娘ちゃんは?」
「女の子の方はお父さんべったりでねー」
え、え、え、べったりって、子供の頃ならわかるけど、カズ君、高校生にもなってまだお母さんにくっついてるの!?
「かーくんったらご飯も見ててあげないと食べないのよ」
『朝は絶対食べろって、監視されてるんだよなー』
朝起きれないカズ君は、食欲がなくても無理やり食べさせられるんだって聞いたことあった。
「全部食べたら、お茶碗を見てーって呼ぶの」
「褒めてほしいのねー」
えええ、そうだったの????
「たまに私が側に来るまで一口分残して待ってたりするのよ、ホントかーわいいの!」
「やっだ! かっわいい!」
どこが!?
高校生になった男が毎朝ご飯食べたのお母さんに褒めてもらってるの!?
湧き上がる嫌悪感。
こんなとこで彼氏のマザコン度を知ってしまい、私はショックで固まっていた。
バスケ部のカズ君は身長もある。
そんな大きな男が母親にべったり?
「最近寒くなったから、また一緒に寝るようになったのよぉ」
「っ!!」
限界だった。
急に立ち上がった私を怪訝な顔で見上げるアヤカに「もう、出よう」と、これ以上聞きたくなかった。
付き合って二ヶ月。
休み時間、遊びなのに必死にバスケットボールを追いかけるカズ君の姿に目を奪われた。
こっそり部活の様子も覗きに行ったりして、彼のことをもっと知りたくて、中学の頃のことをアヤカに聞いたりもした。
アヤカと同じ中学校という接点から、同じクラスの男子たちと、クラスの違うカズヤ君も含めて数人で遊ぶようになって距離を縮めていった。
彼を好きになって三ヶ月、クラスも違うカズヤ君と廊下で会っても、普通に話せるようになって、そして、告白したのは私からだった。
やっと彼氏彼女になれたのに!
なのに!!
彼がマザコンだったなんて……ムリ。
無理無理無理。
あんな話聞いてしまったら、無理。
***
「え、別れる? は? え、なんで?」
翌日の放課後、私は彼に別れを告げた。
無理に決まってる。
「私ね、昨日、ファミレスでカズ君のお母さんの話聞いちゃったのよね」
「は? ウチのおかんの?」
「息子自慢? 親だし、一人息子のカズ君がかわいいのはわかるよ? でも、この歳になっても、お母さんにいつまでもべったりって、気持ち悪い……マザコンとか無理なの!」
「はぁ? マザコン? え、なんだそれ? いや、それオレじゃないし! 他人だろ!?」
カズくんに腕を掴まれたけど、身をよじる。
「聞き間違いじゃないよ! アヤカだってカズ君のお母さんだって言ったし、私も聞いた! “寒くなったから、かーくんと一緒に寝てる”って!」
「か……かーくん……?」
呆然と、そしてカズ君はガクリを膝を落とした。
「なに……」
彼はゆっくりと、スマホを私に向けた。
「にゃん?」
「いやぁぁん! かーくん、かっこいい!!」
“かーくん”とはカズ君のお家の猫ちゃんだった。
名前はカイラ君。お母さんの好きな漫画の推しキャラらしい。
毛並みはツヤツヤ真っ黒、白襟に黒の蝶ネクタイの首輪で凛と佇む姿は、イケメンすぎた。
お母さんにべったりの自慢の息子は、カズ君ではなくて、黒猫のかーくんだったのだ。
初めて会ったのに、ぐるぐると喉を鳴らしながら体を擦り寄せて甘えてくれる姿はかわゆすぎた。
「カイラぁ、お前、それ浮気だぞぉ」
「えー、かーくんとなら私、浮気したいー」
「ダメです。浮気はダメです」
腰を引かれてカズ君に抱きしめられてしまったわ(照)。
40
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
婚約破棄する王太子になる前にどうにかしろよ
みやび
恋愛
ヤバいことをするのはそれなりの理由があるよねっていう話。
婚約破棄ってしちゃダメって習わなかったんですか?
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/123874683
ドアマットヒロインって貴族令嬢としては無能だよね
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/988874791
と何となく世界観が一緒です。
出戻り勇者の失恋報告
ひろか
恋愛
十六歳の誕生日、その日オレは幼馴染のチアキに告白し、ただの幼馴染という関係を変えたかった。
なのに、いきなり異世界へ勇者として召喚されアチラで二年間を過ごし、帰還した。共に戦った仲間の命を犠牲にして。
そして、ずっと会いたかった幼馴染は……。
※完結済みですが、後日おまけ続編up予定
※2/14タイトル変更
※表紙画像に「とびはねメーカー」を使用。
【完結】“自称この家の後継者“がうちに来たので、遊んでやりました。
BBやっこ
恋愛
突然乗り込んできた、男。いえ、子供ね。
キンキラキンの服は、舞台に初めて上がったようだ。「初めまして、貴女の弟です。」と言い出した。
まるで舞台の上で、喜劇が始まるかのような笑顔で。
私の家で何をするつもりなのかしら?まあ遊んであげましょうか。私は執事に視線で伝えた。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
( *´艸`)
ドキドキワクワク😃💕しましたぞ!
これって猫ちゃんへの溺愛のお話ですよね(ФωФ)
毎回 始めの方は ひどい男がいるもんだって読んでいたけど……擬人化…面白い‼️
確かに愛猫家さんの発言だわ(≧▽≦)
感想ありがとうございます(*´ω`*)
はい、溺愛の話です
恋人で、息子で娘で、神(←)なのですっ
こういう話大好きです(^-^)/
期待を裏切られるっていうのは、いいもんですね(^-^)
michael様
読んでくださりありがとうございます
楽しんでいただけたようで私も嬉しいです(照)
実話な部分もあったり…なのです(苦笑)
エローい。
嘘うそ。
こういうミスリードって、時々やりたくなるんですよね?(笑)
読んでくださりかんしゃー
エロさを匂わせました(*´ω`*)
はい、やってみると楽しかったですわ!