私、魔術師の弟子やってます。

ひろか

文字の大きさ
2 / 4

2

しおりを挟む
 勉強は好き。頑張った分だけ数字に表れるから。でも魔法学は……。

 はぁぁー…

 先日の実施学習の評価が戻ってきた。ドコにあるの? 私の類を見ない魔力……。

「そんな点でよく魔術師の弟子やってんなー」
「カイト! もう、見ないでよ!」

 いちいち突っかかってくるのがコイツ。魔法学だけは上単位のカイト。

「ふん。先生が実施学最下位のお前に資料室の片付けをしろっての、伝えに来たんだよ」

 さ、最下位~?
 カイトの言葉に目眩が……。あぁ、お師様。私の類を見ない魔力はいつ表に出てくるんですか?

「だから、このオレも手伝ってやるから感謝しろよ」

 ショックで話を聞いていなかったから何が“だから”なのかよく分からなかったけど、手伝ってくれるなら素直に感謝するよ。

「ありがとう、カイト」
「っ! お、おう……」



 資料室の本棚は高く、ハシゴを昇り、片手でファイルをしまう作業は一人では時間かかっていただろう、感謝するよ。ハシゴの上からエラソーに「次赤いファイル取れ」とか言ってても感謝するよ。アンタのおかげで早く片付くのだから。

「その本は向こうの棚だ」言いながらハシゴを降りるカイト。最後の一冊くらいはと、本を片手にハシゴに足を掛けた私にカイトが何か叫び、振り向いた私は間抜けにも足を踏み外してしまった。

 落ち――……あれ?

「あっぶねー…」

 カイトに抱かれた自分に気づいた。

 息遣いが耳元にあり、背中に密着した熱を意識した。

「うにゃーっ!?」
 ワタワタとカイトから離れた。

「ご、ごめん!ありがとう!助かった!ありがとう!ありがとう!」

 びびび、びっくりしたー!

「そのハシゴ、四段目が腐りかけてたんだよ」
「そそそ、そーなんだ!危な」

 顔、あっつ、やばい。絶対真っ赤だわ、こんな顔カイトに見られたら末代までからかわれる!

「怪我ないか?」

 ななな、なに!?カイトのくせに私を心配してくれるの!?

「ななな、ない、ないです!」

 しまった。吃りすぎてる、落ち着けー!

「そうか、良かった」

 はぁぁ?良かった??

 信じられない言葉に、思わず振り返った私と目が合った瞬間、カイトは顔をそむけた。ありえないくらい真っ赤になっているカイトなんだけど……。

「な、なぁ、お前って……」




 ***
「アンー?アン、どうしたー?」

「っ!あ、いえ、なんでもないです!」

 顔を覗き込むお師様に手を振り答えたけど、なんでもアリ過ぎて頭パニックなのです。

「アン?フォークではスープ、掬えないよ?」
「っ!あ、あははは、そですねー」

「アン、告白でもされたの?」

 どっきーーん!

「なななっ」

 なんで!?なんで、わかるのー!?

 お師様はふわりと笑い、目を細めた。

「わかるよ、アンのことなら。子供のころからずっと一緒にいるんだから」

 ひぃぃ!また心を読んでるように!お師様にはバレバレー!?

「で、誰?」
「あ、いや、」

「あぁ……カイト=ロウエンか」

 ドッキーーーーン!

「ななななな、なんで」

 ナゼにピンポイントで、カイトの名前が!?

「うん、におい、いや、子供のころからずっと一緒にいるんだから分かるに決まってるだろ?」

 イヤーー!私ってそんなに顔に出やすいの!?お師様にバレバレ過ぎだよ!
 再び、あの瞬間のカイトの言葉がリピートされた。





「な、なぁ、お前って……好きなヤツとか、いんの?」

「はぁ!?」

 驚きすぎて固まった。カイトから出た言葉に固まった。

 カイトは真っ赤な顔で眉間にしわ寄せた。

「好きなヤツいんのかって聞いたんだよ!」
 なぜ怒って言う!?
「い、いないわよ!」
 同じノリで返してしまったし。

 私の言葉に一瞬緩んだ表情をしたカイトは、また眉間にしわ寄せて、立ち上がり、えっらそーに見下ろし、えっらそーに言い放った。

「なら、オレにしろ。好きなヤツが他にいないなら、オレと、付き合って、オレの、こと、好きに、なればいい」
「……は?」
「オ、オレは、お前がいい。いいな、い  い  な!」
「は、はい!」

 勢いにつられしてしまった返事に、生まれた後悔はしかし一瞬で消えた。
 ふにゃりとしたカイトの笑顔に、やられてしまった。

 こんな表情、見たことないから。


 オレ様すぎるカイトからの告白を思い出し、真っ赤になって頭を抱える私の耳には、お師様の声は届いていなかった。


「オレの半身に手を出すとは、いいど度胸だ……」


 その夜、お師様はお仕事の依頼を受けているからと、陽が落ちたころに出かけて行った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

透明な貴方

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。  私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。  ククルス公爵家の一人娘。  父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。  複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。 (カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)

寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~

紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。 「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。 だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。 誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。 愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。

敗戦国の元王子へ 〜私を追放したせいで貴国は我が帝国に負けました。私はもう「敵国の皇后」ですので、頭が高いのではないでしょうか?〜

六角
恋愛
「可愛げがないから婚約破棄だ」 王国の公爵令嬢コーデリアは、その有能さゆえに「鉄の女」と疎まれ、無邪気な聖女を選んだ王太子によって国外追放された。 極寒の国境で凍える彼女を拾ったのは、敵対する帝国の「氷の皇帝」ジークハルト。 「私が求めていたのは、その頭脳だ」 皇帝は彼女の才能を高く評価し、なんと皇后として迎え入れた! コーデリアは得意の「物流管理」と「実務能力」で帝国を黄金時代へと導き、氷の皇帝から極上の溺愛を受けることに。 一方、彼女を失った王国はインフラが崩壊し、経済が破綻。焦った元婚約者は戦争を仕掛けてくるが、コーデリアの完璧な策の前に為す術なく敗北する。 和平交渉の席、泥まみれで土下座する元王子に対し、美しき皇后は冷ややかに言い放つ。 「頭が高いのではないでしょうか? 私はもう、貴国を支配する帝国の皇后ですので」 これは、捨てられた有能令嬢が、最強のパートナーと共に元祖国を「実務」で叩き潰し、世界一幸せになるまでの爽快な大逆転劇。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~

よーこ
ファンタジー
婚約者が男爵家の庶子に篭絡されていることには、前々から気付いていた伯爵令嬢マリアーナ。 しかもなぜか、やってもいない「マリアーナが嫉妬で男爵令嬢をイジメている」との噂が学園中に広まっている。 なんとかしなければならない、婚約者との関係も見直すべきかも、とマリアーナは思っていた。 そしたら婚約者がタイミングよく”あること”をやらかしてくれた。 この機会を逃す手はない! ということで、マリアーナが友人たちの力を借りて婚約者と男爵令嬢にやり返し、幸せを手に入れるお話。 よくある断罪劇からの反撃です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...