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ろく。
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「馬で行った方が早い」と、ニージオは先に駆けて行ってしまった。
くっ、私だって早く行きたいんだよっ
私も陽が明けない内に馬車を出した。ウチの御者は高齢ゆえに朝が早くて助かった。しかし、転移門を使っても領地端の屋敷まで三時間。私がいくら焦ってもキッカリ三時間。屋敷について、通された部屋で見たのは──。
「チェルの焼いたスコーンは美味しいなぁ」
「きゃ、私の指まで食べないでくださいー」
ニーチェルを膝上でイチャつくニージオ達に、
「イルジオン様、お越しくださりありがとうございます」
ぎこちない微笑みを浮かべたイーシア。
「ほーら、こっちの指にもクリームが付いてるだろ?」」
「やん、ニィ君ったらぁ」
私に気づかずイチャつくニージオ達とのこの差。
ナニコレ! たった一週間でこんなに親しくなれるのか!?
「それは毎日欠かさず会いに来られて、飾らない言葉で愛を叫ばれたら女性はイチコロですわ」
叫んだ!? イチコロ!?
動揺を察して耳元で伝えてくれたタマオ。
「ニージオ様、ニィチェル様、イルジオン様来られましたわ」
「お、イッ君、やっと来たか、じゃあオレ達は部屋に「ニージオ様」ひっ「良いお天気ですからお部屋に直行しないでお二人で街へお出かけされることをお勧めいたしますわ」はひ……」
低いタマオの声に素直に頷き部屋からでるニージオ達。
すぐに部屋にこもろうとするんだからと、こめかみにしっかり青筋付けて呟くタマオがお茶を入れてくれた。
ソファーの斜め横に座ったイーシアが遠い。コレが私達の今の距離なのだ。手紙では会いたいと、会える日を楽しみにしていると云いあっても、実際言葉では何も伝えてない。……今日こそ、先言の撤回をしなければ。と拳を握り顔を上げればイーシアとバチリと目が合い、同時にそらした。
「イ、イルジオン様……お手紙を、ありがとう、ございました」
「っ! わ、私も、君からの手紙、うれしかった」
「……、…………。………………?」
反応がないことにソロリと顔を向ければ、真っ赤になって俯くイーシアの姿!
「っ!」
つられて熱くなる顔。慌てて顔をそらした先に満足げな、めっさイイ笑顔で頷くタマオの姿。
ぎゃあ、み、見られた!
“ほらほら、旦那様もよいお天気ですから街へ行かれてはどうですか?”
“そ、そうだな”
タマオとの念会話に頷き、「わ、私たちも街へ行こうか」と差し出した手におずおずと乗せられた細い手は、ガサッとした荒れた指先だった。自分がしてきたことを思い出し胸が苦しくなったよ。手を使うような生活はしてこなかったはずの女性だ。使用人がすることをしてきたのかと思うと、罪悪感いっぱいで埋まりたい。償います、なんだってします。この先彼女にティーカップより重たいものを持たせないと心に誓ったよ。
まず私たちが向かったのは宝石店だ。
女性は皆宝石が好きだ、間違いないだろう。
「彼女に似合う物を」と言えば店に入った瞬間に私の服装に目を走らせた店主は、店頭には出されていない上質な宝石だけを並べた。客の質をよく見ている店主だ。買えなくはない給料一月分からの品ばかり出して来たからね。背中に汗が流れるが、店主のお薦めに鷹揚に頷いた。
イーシアの好みはどんなものだろうか、とチラリと伺えば彼女は棚の中の宝石を見ていた。給料の四分の一からというお手軽な宝石が並んでいた。
「こちらの棚はあのユフィー・アンセル、デザインの品です! 昨年のデザインですが人気が高く、当店でもやっと追加入荷した品でございます」
嬉しそうに一つの髪飾りを見つめるイーシアに、ここに来て正解だと心でガッツポーズをしたさ。
「店主、この品を」
「ありがとうございます!」
「え、あの、イルジオン様っ」
遠慮するイーシアの髪に小花を寄せ集めた髪飾りを留める。うん、似合う。
「あ、あの!「よく似合ってるよ」」
懐から財布を取り出した私に、彼女は真っ赤になって慌てた。
「待ってください! この髪飾りは昨年の誕生日にいただいた物と同じです!」
一気に温度下がったね。店内も、私の体温も。
「す、すみません……」
イーシアの呟きもはっきり聞こえるほど店内は無音だったね。
「は、ははは、うん、知ってる、よ、もちろんさー…、はは」
そっと財布を戻し、髪飾りも戻したよ。
ないわぁー、うわぁー、ないわぁー…って店主の目が辛く、私たちは店を後にした。
フラワーショップ・エリザベスのマル得メモリアルパック……。帰ったら納品書の確認をしようと心に誓ったよ。
くっ、私だって早く行きたいんだよっ
私も陽が明けない内に馬車を出した。ウチの御者は高齢ゆえに朝が早くて助かった。しかし、転移門を使っても領地端の屋敷まで三時間。私がいくら焦ってもキッカリ三時間。屋敷について、通された部屋で見たのは──。
「チェルの焼いたスコーンは美味しいなぁ」
「きゃ、私の指まで食べないでくださいー」
ニーチェルを膝上でイチャつくニージオ達に、
「イルジオン様、お越しくださりありがとうございます」
ぎこちない微笑みを浮かべたイーシア。
「ほーら、こっちの指にもクリームが付いてるだろ?」」
「やん、ニィ君ったらぁ」
私に気づかずイチャつくニージオ達とのこの差。
ナニコレ! たった一週間でこんなに親しくなれるのか!?
「それは毎日欠かさず会いに来られて、飾らない言葉で愛を叫ばれたら女性はイチコロですわ」
叫んだ!? イチコロ!?
動揺を察して耳元で伝えてくれたタマオ。
「ニージオ様、ニィチェル様、イルジオン様来られましたわ」
「お、イッ君、やっと来たか、じゃあオレ達は部屋に「ニージオ様」ひっ「良いお天気ですからお部屋に直行しないでお二人で街へお出かけされることをお勧めいたしますわ」はひ……」
低いタマオの声に素直に頷き部屋からでるニージオ達。
すぐに部屋にこもろうとするんだからと、こめかみにしっかり青筋付けて呟くタマオがお茶を入れてくれた。
ソファーの斜め横に座ったイーシアが遠い。コレが私達の今の距離なのだ。手紙では会いたいと、会える日を楽しみにしていると云いあっても、実際言葉では何も伝えてない。……今日こそ、先言の撤回をしなければ。と拳を握り顔を上げればイーシアとバチリと目が合い、同時にそらした。
「イ、イルジオン様……お手紙を、ありがとう、ございました」
「っ! わ、私も、君からの手紙、うれしかった」
「……、…………。………………?」
反応がないことにソロリと顔を向ければ、真っ赤になって俯くイーシアの姿!
「っ!」
つられて熱くなる顔。慌てて顔をそらした先に満足げな、めっさイイ笑顔で頷くタマオの姿。
ぎゃあ、み、見られた!
“ほらほら、旦那様もよいお天気ですから街へ行かれてはどうですか?”
“そ、そうだな”
タマオとの念会話に頷き、「わ、私たちも街へ行こうか」と差し出した手におずおずと乗せられた細い手は、ガサッとした荒れた指先だった。自分がしてきたことを思い出し胸が苦しくなったよ。手を使うような生活はしてこなかったはずの女性だ。使用人がすることをしてきたのかと思うと、罪悪感いっぱいで埋まりたい。償います、なんだってします。この先彼女にティーカップより重たいものを持たせないと心に誓ったよ。
まず私たちが向かったのは宝石店だ。
女性は皆宝石が好きだ、間違いないだろう。
「彼女に似合う物を」と言えば店に入った瞬間に私の服装に目を走らせた店主は、店頭には出されていない上質な宝石だけを並べた。客の質をよく見ている店主だ。買えなくはない給料一月分からの品ばかり出して来たからね。背中に汗が流れるが、店主のお薦めに鷹揚に頷いた。
イーシアの好みはどんなものだろうか、とチラリと伺えば彼女は棚の中の宝石を見ていた。給料の四分の一からというお手軽な宝石が並んでいた。
「こちらの棚はあのユフィー・アンセル、デザインの品です! 昨年のデザインですが人気が高く、当店でもやっと追加入荷した品でございます」
嬉しそうに一つの髪飾りを見つめるイーシアに、ここに来て正解だと心でガッツポーズをしたさ。
「店主、この品を」
「ありがとうございます!」
「え、あの、イルジオン様っ」
遠慮するイーシアの髪に小花を寄せ集めた髪飾りを留める。うん、似合う。
「あ、あの!「よく似合ってるよ」」
懐から財布を取り出した私に、彼女は真っ赤になって慌てた。
「待ってください! この髪飾りは昨年の誕生日にいただいた物と同じです!」
一気に温度下がったね。店内も、私の体温も。
「す、すみません……」
イーシアの呟きもはっきり聞こえるほど店内は無音だったね。
「は、ははは、うん、知ってる、よ、もちろんさー…、はは」
そっと財布を戻し、髪飾りも戻したよ。
ないわぁー、うわぁー、ないわぁー…って店主の目が辛く、私たちは店を後にした。
フラワーショップ・エリザベスのマル得メモリアルパック……。帰ったら納品書の確認をしようと心に誓ったよ。
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