26 / 35
第2章 クリューガー公国との戦い
ラディムの述懐
しおりを挟む
「公太子殿下......よく意味が」
カレルの言葉にくすっと笑うラディム。
「ここには二人しかいないし、あなたは私――いや僕の臣下でもない。少し年上の先輩として話をしてみる気になりませんか」
意外なラディムの誘いに驚きをカレルは隠せない。
「僕もまだ十五歳の子供ですから。自分の与えられた役割はよく理解しています。公太子、そして若くしてクリューガー公爵となる身の上は。だからこそ、同年代の同性の方とたまに楽しくお話したいという気持ちもあります。年下なので『ラディム』とでも二人の時はお呼びください」
「なにをお戯れを......」
普段あまり焦りを顔に出さないカレルが、完全にラディムに圧倒され、その気色を失っていた。
「カレルさんは辺境伯――おねえさまのことが大好きですね」
さらにラディムはぐいぐいと押していく。
「この間二人でお話したとき、『おねえさま』と良いと許可を頂いたので。カレルさんにはちゃんとお伝えしないとと思いまして。お互いに彼女を好きな者同士」
にこにこと笑みを浮かべるラディムに、カレルはまるで蛇ににらまれた蛙のように、その動きを失う。
「ハルトウィン様に対して失礼な言説はいかに公太子殿下といえでも......」
「僕は長くは生きられないと思う」
カレルの言葉を遮って、ラディムがそうつぶやく。
「別に病気があるわけでもないけど......そういう気がしてしょうがないんだ」
この時代、貴人の血を多く引き継いだ者の予言はよく当たるという迷信があった。まして、自分の運命を、少年としか思えないラディムがさらりと語ること自体が言葉の重さを増していた。
「『おねえさま』――は辺境伯殿です。二人だけの呼び方って言ったんだけど、カレルさんには教えてあげるね」
すっと、ラディムは立ち上がる。
「僕には肉親がいないから」
後ろ姿を見せながらそうラディムは告げる。
「私は、辺境伯殿に利用されているとは思っていない。むしろ、恩義のある立場だ。クバーセク副使殿にも本日命を助けていただいた。とりあえずは、とっておいていただけないだろうか。いずれまた、報いさせていただく」
そのまま、ラディムは帷幕を退出した。
なぜか軽い体の震えを感じるカレル。そっと体の傷を包帯の上から触る。
机の上には、短剣が一つ置かれていた。ラディムのものらしい。クリューガーの紋章があつらえてあり、古くはあるが重厚な雰囲気が感じられた。
すっ、とその鞘を抜く。銀色のよく手入れされた刃がその姿をあらわす。その刃に自分の姿を写す。怪我をした自分の顔がそこに映っていた。
刃をおさめ、それを腰につける。
ゆっくりと再び椅子に座ると、突然睡魔がカレルを襲う。
カレルは椅子に座ったままま、朝を迎えた――
カレルの言葉にくすっと笑うラディム。
「ここには二人しかいないし、あなたは私――いや僕の臣下でもない。少し年上の先輩として話をしてみる気になりませんか」
意外なラディムの誘いに驚きをカレルは隠せない。
「僕もまだ十五歳の子供ですから。自分の与えられた役割はよく理解しています。公太子、そして若くしてクリューガー公爵となる身の上は。だからこそ、同年代の同性の方とたまに楽しくお話したいという気持ちもあります。年下なので『ラディム』とでも二人の時はお呼びください」
「なにをお戯れを......」
普段あまり焦りを顔に出さないカレルが、完全にラディムに圧倒され、その気色を失っていた。
「カレルさんは辺境伯――おねえさまのことが大好きですね」
さらにラディムはぐいぐいと押していく。
「この間二人でお話したとき、『おねえさま』と良いと許可を頂いたので。カレルさんにはちゃんとお伝えしないとと思いまして。お互いに彼女を好きな者同士」
にこにこと笑みを浮かべるラディムに、カレルはまるで蛇ににらまれた蛙のように、その動きを失う。
「ハルトウィン様に対して失礼な言説はいかに公太子殿下といえでも......」
「僕は長くは生きられないと思う」
カレルの言葉を遮って、ラディムがそうつぶやく。
「別に病気があるわけでもないけど......そういう気がしてしょうがないんだ」
この時代、貴人の血を多く引き継いだ者の予言はよく当たるという迷信があった。まして、自分の運命を、少年としか思えないラディムがさらりと語ること自体が言葉の重さを増していた。
「『おねえさま』――は辺境伯殿です。二人だけの呼び方って言ったんだけど、カレルさんには教えてあげるね」
すっと、ラディムは立ち上がる。
「僕には肉親がいないから」
後ろ姿を見せながらそうラディムは告げる。
「私は、辺境伯殿に利用されているとは思っていない。むしろ、恩義のある立場だ。クバーセク副使殿にも本日命を助けていただいた。とりあえずは、とっておいていただけないだろうか。いずれまた、報いさせていただく」
そのまま、ラディムは帷幕を退出した。
なぜか軽い体の震えを感じるカレル。そっと体の傷を包帯の上から触る。
机の上には、短剣が一つ置かれていた。ラディムのものらしい。クリューガーの紋章があつらえてあり、古くはあるが重厚な雰囲気が感じられた。
すっ、とその鞘を抜く。銀色のよく手入れされた刃がその姿をあらわす。その刃に自分の姿を写す。怪我をした自分の顔がそこに映っていた。
刃をおさめ、それを腰につける。
ゆっくりと再び椅子に座ると、突然睡魔がカレルを襲う。
カレルは椅子に座ったままま、朝を迎えた――
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる